やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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新たなる戦いは刻々と近づいている。(B)

 

「え……?」

 

 海老名は気がつけば、竹林の真ん中で自分一人だけが突っ立っていることを悟って唖然とした。つい今しがたまで、目の前には戸部がいたはずなのに。

 

「ど、どうなってるの……? とべっち、どこ行ったのぉ?」

 

 混乱しながらも戸部の名を呼ぶが……返事はどこからもなかった。

 

「一体どうなってるの……!? みんな、隠れて見てるんでしょ!? 出てきてよっ!」

 

 誰でもいいから出てきてほしいと願って声を張るものの、やはり周囲は静まり返っていた。

 明らかに異常な状況に、海老名も言い知れぬ恐怖に駆られて立ちすくむ。その時、

 

「どうかしましたか、お嬢さん」

 

 不意に背後から声を掛けられる。海老名が振り向くと、いつの間にか見知らぬ同世代らしき男が、こちらに対して左向きにたたずんでいた。

 一瞬安堵しかけた海老名だったが、この異様なありさまに突然現れた見知らぬ人物である。内心警戒を覚える。

 

「あの、それが……さっきまで友達といたんですけど、いつの間にかはぐれちゃって……」

「ほう、それはいけない。こんな夜中に女の子が一人きりだと危ないですよ」

 

 男は何故か、左側を向いたままで海老名に向き直ろうとしない。海老名からは、彼の左半面が見えなかった。

 訝しむ海老名だが、彼女に対して男が告げる。

 

「ところで……その友達というのは、もしかして比企谷八幡という名前ではないですか?」

「えっ、違いますけど……ヒキタニくんのこと知ってるんですか?」

 

 意外そうに目を大きく開ける海老名。

 

「ええ、よく知ってますよ。彼とはただならぬ関係でしてね」

「ただならぬ関係!?」

 

 男のひと言に海老名はグイッと食いつき、つい警戒を緩めて近寄っていく。

 

「そ、それどういうことですか? ヒキタニくんとは一体どんなご関係で!?」

「ははは、ひと言では言い表せないほどに深い関係ですよ。何故なら……」

 

 男は海老名が近づいてきたところで、踵を返して海老名に顔を向けた――。

 

「俺の顔をこんなにしやがった奴だからなぁぁぁッッ!!」

「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 男の顔を正面から目にした海老名が絶叫する。

 男――魔導師暴君レイデュエスの左半面には、額から頬にまで走る裂傷の跡が深々と刻み込まれているのだ。

 腰が抜けてしりもちを突く海老名。レイデュエスは彼女に覆いかぶさるように顔を近づけ、彼女を恫喝する。

 

「この醜い傷跡を見ろッ!! これは奴につけられたものだ……何をしても消えないッッ!!」

「あ……あ……!?」

「この傷の恨みは絶対に晴らしてやる……! お前はそのための餌だッ! 奴をおびき寄せる餌になってもらうぞッ!!」

 

 獰猛に口の端を吊り上げて怒号を発するレイデュエス。海老名は訳が分からないものの、おぞましい威圧感を間近からぶつけられて、震え上がり青ざめる。

 その時に、レイデュエスが不意に顔の傷跡を撫でながら目を上に向けた。

 

「うずく……この傷がうずくぞッ! 奴が近づいている……!」

 

 レイデュエスの意識が海老名からそれ、顔を上げて正面を向く。

 

「比企谷八幡ンンッ!」

 

 レイデュエスの下に、レムの誘導によって歪められた空間を突破してきた八幡たち三人がたどり着いていた。

 

「あいつ……!」

「やっぱ、生きてやがったのかテメェ……!」

 

 八幡たちはレイデュエスをひと目見るなり、身体を強張らせて警戒心を最大に強めた。

 

「ハッ! 俺がひと言でも死にましたと言ったかぁ!?」

 

 冗談めかすレイデュエスだが、その目は全く笑っていなかった。紫の瞳によどんだ憎しみをたぎらせて、八幡を射抜かんばかりににらむ。

 

「姫菜……!」

 

 結衣はレイデュエスの足元でへたり込んでいる海老名を見やると咄嗟に身を乗り出すが、その瞬間にオガレスとルドレイが現れて海老名の両腕を捕らえ、無理矢理立たせて人質にする。

 

「全員動くんじゃねぇぞ。下手なことしたらこの小娘は一瞬で首がもげて死ぬぞ比企谷ぁ! ここじゃウルトラマンジードと呼んだ方がいいか!?」

「……人の秘密をあっさりばらして……!」

 

 捕まって顔面蒼白になっている海老名に目を向けながら、雪乃が吐き捨てた。

 

「俺がテメェらに配慮する訳ねぇだろうがぁッ!」

 

 雪乃の非難に荒々しく言い捨てるレイデュエスには、以前までのもったいぶったような澄ました態度は見られない。尊大な振る舞いはかなぐり捨てて生の本性を剥き出しにし、八幡と対面している。

 

「……俺たちにリベンジする気なら、普通に俺たちのとこに来いよ。海老名さん関係ないだろうが……!」

 

 八幡が激しい怒りを灯した眼差しでレイデュエスをにらみ返したが、レイデュエスは嘲笑を返しつつ言い放った。

 

「そんな道理が通ると思うのか?」

「何……?」

「テメェの周りにいるってだけで、関係のねぇ奴なんかいねぇんだよッ! この娘はその中からたまたま選ばれたってだけだ。テメェを追いつめ苦しませるためだったら誰だってよかった! たとえテメェが全く見ず知らずの人間でもなぁッ!!」

「……外道っ……!」

 

 レイデュエスの下種っぷりに雪乃も結衣も怒りで打ち震えるが、レイデュエスは意にも介さない。

 

「それが正義の道に生きるってことだよ! 戦いの勝者は負けた奴らの恨みを背負う。戦い抜けば抜くほどに、恨みは大きくなるッ! 怨念に道理なんか通用しねぇ! 正義に生き続ける限り、比企谷、テメェの周りの奴らはテメェが背負う怨念に巻き込まれるッ! 避けるには、誰一人近寄らせない孤独になる他はないッ! それでも本物になるってのかぁテメェはッ!!」

「ぐッ……!」

 

 レイデュエスのなじるような怒号に、八幡は声を詰まらせた。怯え切っている海老名の顔を見ると、迂闊な回答が出来ない。

 

『……!』

 

 その八幡の様子で、ジードも声にならない苦悶を発した。

 窮している八幡たちに代わって、声を発したのは――。

 

「――あんたなんかの勝手な言い分なんて、知らないんだからっ!」

 

 結衣であった。彼女は脂汗を垂らして、小刻みに震えながらも、まっすぐにレイデュエスを見据えている。

 

「ああ……?」

「ゆ、由比ヶ浜……!?」

「由比ヶ浜さん……!」

 

 全員の視線が結衣に集まる。その中で、結衣は精一杯に声を張り上げた。

 

「あたしは、どんなことがあったってヒッキーを孤独にはしないもん! だって、あたしは……仲間だから! あたしだって何度かウルトラマンジードになったし! あんたみたいな悪い奴の言う通りになんて、絶対なんないんだからっ!」

 

 結衣の言葉に背中を押されるように――雪乃も一歩前に出て口を開いた。

 

「私も同じ気持ち……! ここは私たちの星、私たちの世界よ! 比企谷くんに任せきりにするのではなく、自ら働きかけていくのは、当然のことよ!」

 

 そう主張する二人に、八幡が振り返って聞き返した。

 

「お前ら……本気なのか……!?」

 

 雪乃と結衣は冷や汗を流しながらも、確かな口調で肯定する。

 

「もちろん……! たとえ何があろうとも、あんな輩に屈しはしない。そう決めたの」

「あたしたち自体には何の力もなくたって……心は負けないよ!」

 

 言い切った雪乃と結衣に対して、レイデュエスの目が座る。

 

「ほーう、そうかいそうかい……」

 

 その様子が変わったことで、八幡たちはどんな行動に打って出るかと身を引き締めた。

 が――レイデュエスは真顔でこう言った。

 

「いい仲間を持ってるじゃねぇか」

「――え」

「これは何の忌憚のない、正直な気持ちだ」

 

 悪逆非道な悪党から出たとは思えない、あまりに意外なひと言――。八幡たちだけでなく、オガレスとルドレイまでもが驚いてレイデュエスを見つめ返した。

 しかしレイデュエスはすぐに残忍な表情に戻ってブラッドサイズを振りかざす。

 

「じゃあ実際にテメェらのための犠牲を出してやろうじゃねぇかッ!」

「――!!」

 

 大鎌の刃が海老名に向けられる。海老名の恐怖心がいよいよ頂点に達し、八幡は何が何でも止めようと身を乗り出しかける。

 しかしそこに、レイデュエスの足元に手投げ弾がコツンと投げ込まれた。

 

「ッ!」

 

 レイデュエスが目を下に向けたと同時に手投げ弾が炸裂し、瞬時に煙幕が立ち込めてレイデュエス一味の視界を一瞬ふさいだ。

 

『八幡ッ!』

 

 瞬間、ジードが叫ぶ。それに八幡は前に飛び出すことで応じ、ひと跳びでオガレスとルドレイの顔面に蹴りを入れた。

 

『ぐわぁッ!?』

 

 のけぞったオガレスたちの腕が海老名から離れ、八幡はその隙に彼女の肩を抱えて下がらせようとする。

 

「比企谷――!」

 

 レイデュエスが八幡の首を狙ってブラッドサイズを振りかぶったが、そこに弾丸の雨が撃ち込まれて斬撃が阻止された。この間に八幡は海老名を連れて雪乃たちの下へと戻る。

 

「比企谷くん……!」

「姫菜! 怪我はない!?」

 

 八幡から海老名を預かる雪乃と結衣。結衣は海老名に呼びかけるが、海老名のわななく唇からは返事が出ない。

 代わりのように、竹林の中から八幡たちの前に飛び出してきたのはゼナと陽乃の二人であった。

 

「ゼナさんッ!」

「姉さん……!」

『大丈夫だったか?』

「ごめんね、遅くなっちゃって」

 

 八幡たちをかばってレイデュエス一味と対峙するゼナたち。二人は八幡たちの周辺の警護のために京都に来てくれていたようだ。

 ゼナはレイデュエス一味に銃を向けて威嚇する。

 

『レイデュエス……生きていたとはな』

「ふん……死んだと思ってたか?」

 

 AIBにたじろぐオガレスとルドレイとは対照的に、レイデュエスは全身に銃弾を浴びながらも平然と立っており、弾痕は瞬く間にふさがって完全に消え去る――が、顔面の裂傷跡は依然として残り続ける。

 

『半信半疑だったがな。しかし、復活早々に派手なことをしてくれたものだ。空間など歪めて、我々が感知しないとでも思ったか?』

「そうだったら随分となめてくれるね~?」

 

 レイデュエスへと完全に冷え切った視線を向ける陽乃。だがレイデュエスは意に介さず嘲笑を返した。

 

「当然だろう? お前らにこの俺に対抗できるだけの『力』があるのか?」

『……』

 

 ゼナは黙して答えず、陽乃はかすかに目を苛立たしげに吊り上げた。

 

『で、殿下、申し訳ございません。人質を奪い返されてしまい……』

 

 オガレスとルドレイは海老名を取り返されたことを謝罪するが、レイデュエスは興味なさそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん、結局人質などまどろっこしいだけだ。やはり、こうするのが一番手っ取り早い……!」

 

 レイデュエスが取り出したのはブラッドライザー。それを見て即座に銃撃するゼナたちだが、今度は闇の障壁に阻まれて銃弾が届かない。

 その間に、レイデュエスは怪獣カプセルを起動していく。

 

「イッツ!」『ギィィィィ!』

「マイ!」『ヌエェイッ!』

「ショウタイム!!」

 

 金属質の人型の怪物と金色の鬼のような宇宙人のカプセルをナックルに装填し、ブラッドライザーを起動。

 

フュージョンライズ!

「ぬうあああぁぁぁぁッ!」

 

 暗黒の異空間の中、レイデュエスが星人態から魔人態へと姿を変え――魔人態の顔面にも傷跡が刻み込まれている――カプセルから現れた二体のビジョンを吸い込んでいく。

 

ミーモス! ババルウ星人!

レイデュエス! メタリックババルウ!!

 

 フランス人形とレコードプレーヤーを踏み潰し、レイデュエス融合獣が完成する!

 ――しかし八幡たちの前に立ち上がった巨体は、ウルトラマンジード・プリミティブのものだった!

 

「ウオオオオッ!」

「!?」

 

 それを見上げた八幡たちは、すぐに昨夜の偽者のジードを思い出した。

 

「やっぱあの野郎が正体だったのか……!」

 

 舌打ちする八幡。ゼナはにせジードに銃を向けながら陽乃に指示を出す。

 

『後退するぞ!』

「了解です!」

 

 八幡は雪乃と結衣に向けて手を扇ぐように振って、下がるよう身振りした。

 

「お前らも海老名さん連れて逃げろ!」

「え、ええ……!」

 

 雪乃はためらいつつもうなずいたが――結衣の脳裏には、ダークオーヴァーゼットンに殺される寸前だったジードや、レギオノイドの攻撃で一時爆炎の中に姿を消したジードの姿がよぎった。

 

「……ジーッとしてても、ドーにもならない……!」

 

 冷や汗を垂らした彼女は――覚悟を固めた顔で、八幡の下に踏み込んだ。

 

「ヒッキー、あたしも一緒に戦う!」

「は!?」

 

 八幡も、雪乃も、驚愕して一瞬固まった。

 

「いや、何言ってんだお前!? もうその必要は……」

 

 断りかけた八幡だが、結衣はそれをさえぎってまくし立てた。

 

「だって……あいつは姫菜を危険な目に遭わせたんだよ! 絶対許せないもん! あたしの手で、あいつをやっつけてやりたいの!!」

「けどな……!」

「お願い! やらせてっ!」

 

 真剣な眼差しで、自分の瞳を覗き込む結衣。八幡はためらうものの、問答している時間はなかった。

 

「ええいッ……! ドーなっても知らねぇぞ!?」

「うんっ! 決めてるよ、覚悟!!」

 

 八幡からウルトラカプセルを受け取る結衣。雪乃はそんな二人に手を伸ばしかけたものの――その手は、そこで止まった。

 その様子を、陽乃がじっと見つめていた。

 

「ユーゴーッ!」『シェアッ!』

 

 八幡が一つ目のカプセルを起動し、ウルトラマンのビジョンが腕を振り上げる。

 

「アイゴーっ!」『フエアッ!』

 

 結衣が二つ目のカプセルを起動し、ベリアルのビジョンが腕を振り上げた。

 

「ヒアウィーゴーッ!!」

 

 装填された二つのカプセルを、八幡がジードライザーでスキャン。

 

[フュージョンライズ!]

「おおおおお……! はッ!」

 

 ジードライザーの機能により、結衣とともにフュージョンライズしていく。

 

「ジィィィ―――――――ドッ!」

[ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!]

[ウルトラマンジード! プリミティブ!]

 

 変身して飛び出した本物のウルトラマンジードが、空中からにせジードに対して攻撃を放つ。

 

「「『レッキングリッパー!!!」」』

 

 結衣も声をそろえて技名を叫んで繰り出された光刃は、爆発を巻き起こしてにせジードを煙の中に覆い隠した。

 竹林の中に着地するジードだが、にせジードはそのまま出てくる気配がない。

 

『「もうやっつけちゃったの?」』

『そんなはずはない……。気を緩めないで!』

 

 警戒を怠らないジード。その時、煙の中からゆらりと人影が動いた。

 しかし飛び出てきたのは、にせジードではなかった!

 

「ヌエアァッ!」

「!?」

 

 真っ黒い肉体のウルトラマンが振るってきた爪を反射的にかわしたジードは驚愕。

 

『なッ……ウルトラマンベリアル!?』

 

 八幡と結衣は、黒いウルトラマンが今装填ナックルに収まっているカプセルの片方と同じものであるとすぐに分かった。

 にせジードは、ウルトラマンベリアルの姿に変わっていた。

 

『ベリアルの姿になって、何のつもりだッ!』

 

 激昂したジードがにせベリアルに飛びかかるものの、その平手打ちは易々と弾き返され、とがった爪のカウンターで吹っ飛ばされる。

 

「ウワァッ!」

 

 竹林から飛ばされて町の中に倒れ込むジード。にせベリアルも町中に踏み込んできてしまう。

 

『「やばい……! 町に移動してきちまった……!」』

 

 冷や汗を流す八幡。京都の人たちは突然の巨人の戦いに大混乱。こんな場所で戦えば被害が格段に拡大してしまう。

 

『どうにか押し返そう! 肉弾に優れた形態に!』

『「おう……!」』

『「うんっ!」』

 

 ジードが立ち上がると、八幡と結衣は新しいカプセルを取り出してスイッチを入れた。

 

『「ユーゴーッ!」』『イヤァッ!』

『「アイゴーっ!」』『タァーッ!』

『「ヒアウィーゴーッ!!」』

 

 レオカプセルとアストラカプセルを装填し、再びフュージョンライズ!

 

[ウルトラマンレオ! アストラ!]

[ウルトラマンジード! リーオーバーフィスト!!]

『「滾るぜ! 闘魂!!」』

 

 八幡が叫び、宇宙拳法の構えを取ってにせベリアルと向かい合うジード。しかし、

 

「――フアァッ!」

 

 にせベリアルはジードの変身を見ると、たちまち姿を変え、今度は真紅のウルトラ戦士の姿となった!

 

『「えッ!?」』

 

 唖然とする八幡たち。その姿は……リーオーバーフィストの力の片割れ、アストラのものなのだ!

 

「イヤァッ!」

「ウワッ!?」

 

 にせアストラが猛然とジードに殴りかかってきた!

 

 

 × × ×

 

 

 星雲荘から京都で行われているジードの戦いを見守っているライハは、次々とにせのウルトラ戦士に姿を変えるレイデュエス融合獣に目を見張っていた。

 

「さっきからフュージョンライズに使ってるカプセルのウルトラ戦士に化けてる……。力を借りて変身するリクたちへの当てつけのつもり……?」

[それだけではないでしょう]

 

 ライハの推理に、レムが己の見解を伝えた。

 

[戦況に合わせて形態を変えるジードに対抗するために、向こうも様々なウルトラ戦士に変身できる融合獣になったものと思われます]

「ジードに対抗して……つまり、リクたちを確実に倒すために……!」

 

 ジードに怒涛の攻めを繰り出しているにせアストラの姿を、ライハは戦慄しながら見つめた。

 

 

 × × ×

 

 

(♪来襲!破滅招来体)

 

「ダァッ!」

「ウワァァッ!」

 

 にせアストラの正拳を食らい、大きく殴り飛ばされるジード。肉弾戦に長けるリーオーバーフィストなのに、圧倒的に押されてしまっている。

 

『何てパワーだ……オリジナルの力は、やっぱりカプセルとは段違いなのか……!?』

『「……それだけじゃねぇ……」』

 

 にせアストラの一撃の重さにひるむジードに、八幡は脂汗をかきながらつぶやいた。

 

『「上手く言えねぇけど……奴の攻撃は、今までは何かが違う……。執念みてぇなもんを感じる……!」』

『「ヒッキー……」』

 

 レイデュエスの猛攻にたじろいでいる八幡たちだが、それを振り払うように三度目のフュージョンライズを敢行する。

 

『「拳で駄目なら、剣でどうだッ!」』

 

 ヒカリカプセルとコスモスカプセルをナックルに入れ替えてスキャン。

 

[ウルトラマンヒカリ! ウルトラマンコスモス!]

[ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!!]

 

 アクロスマッシャーになるとともに前に飛び出し、右腕から光剣を伸ばす。

 

「「『スマッシュビームブレード!!!」」』

 

 だがにせアストラは、鎧を纏ったウルトラマンヒカリ――にせハンターナイトツルギとなってこちらも光剣を出し、ジードの斬撃を軽く受け止めた。

 

「ヌアァァッ!」

「ウゥッ……!?」

 

 そして繰り出されるにせツルギの猛烈な斬撃の嵐。ジードはそれを防ぐだけで手いっぱいであり、アクロスマッシャーのスピードを活かすことが出来ない。

 

『「ちッ……これでも駄目か……!」』

 

 追いつめられたジードは突き飛ばされ、そこにナイトシュートを撃ち込まれる。

 

「メッ!!」

「ウワアアアァァァァァァ―――――――!!」

『「ぐああああッ!!」』

『「きゃああああっ!!」』

 

 その威力はすさまじく、ジードを吹き飛ばしたばかりか京都の町も衝撃が襲い、あちこちで建物の倒壊が起こる。

 その中である家屋の塀が倒れ、そこを避難中に通りかかった沙希が巻き込まれた!

 

「あぁぁぁぁっ!?」

「川崎!?」

 

 生徒たちを誘導していた平塚が川崎の悲鳴に振り返り、すぐにその場に駆けつける。

 

「川崎、大丈夫かっ!」

「せ、先生……足が……!」

 

 沙希の足が塀の下敷きとなり、逃げられなくなってしまった。すぐ近くではにせツルギが暴れている。このままでは命が危ない。

 

「待っていろ、すぐに助けて……うぐぐ……!」

 

 塀を持ち上げようとする平塚だが、彼女も女。その細腕では塀はかすかにも持ち上がらない。

 

「先生、あたしのことはいいですから……ここにいたら、先生まで……」

 

 青ざめた顔でにせツルギを見上げ、平塚を逃がそうとする沙希だが、平塚は塀から手を放さなかった。

 

「馬鹿を言うな……! 生徒を見捨てて先に逃げるなど教師失格だ……! 私はそんなことはしないっ!」

 

 毅然と言い放った平塚の胸の中に、ほのかな光が灯る。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉっ! とあぁっ!!」

 

 そして気合いの雄たけびとともに塀が軽々と持ち上がり、遠くへと投げ飛ばされた!

 

「えっ……!? すごっ……!」

 

 突然平塚が見せた怪力に沙希は仰天。しかし驚いているのは平塚自身もであった。

 

「い、今のは……まさか、私に秘められた内なる力が土壇場で目覚めてしまったのか!?」

 

 少年漫画的な解釈をする平塚だが、もちろんそうではない。よろよろと起き上がるジードの目が、平塚から上る光の柱を捉える。

 

『リトルスターだ!』

『「あそこにいるのって……平塚先生っ!?」』

 

 平塚のリトルスターの反応はにせツルギにも気づかれてしまい、にせツルギは平塚の方へ剣を振り上げにじり寄っていく。

 

「ヌウゥンッ!」

『「ッ! やめろぉぉッ!」』

 

 ジードがすぐに回り込んでいき、平塚たちを背にかばってにせツルギの剣を受け止める。

 その剣圧に押されて膝を突きながらも、ジードは――八幡は、力を振り絞って押し返す。

 

『「ぐぅぅ……! 先生に、手ぇ出すんじゃねぇ……!!」』

 

 必死に自分たちを守るジードの背に、沙希をかばいながら平塚は祈りを込めた。

 

「ウルトラマンジード……がんばってくれ! 川崎を助けてくれ!」

 

 その想いに反応して、リトルスターが彼女から離れてジードに飛び込み、八幡の持つカプセルに宿る。

 即座にカプセルを取り出す八幡。新しいカプセルに、赤と銀のボディに黒い胸部のプロテクターを持ったウルトラ戦士の絵柄が浮き上がった。

 

『デュワッ!』

[ガイアカプセル、起動しました]

 

 報告するレム。八幡と結衣は顔を見合わせると、すぐにうなずき合った。

 

『「ユーゴーッ!」』

『デュワッ!』

 

 八幡はカプセルを交換し、今しがた手に入れたガイアカプセルを起動。カプセルからウルトラマンガイアのビジョンが現れて腕を振り上げた。

 

『「アイゴーっ!」』

『テヤッ!』

 

 結衣はヒカリカプセルを再び起動して、装填ナックルに収める。

 

『「ヒアウィーゴーッ!!」』

[フュージョンライズ!]

 

 この二つのカプセルを八幡がスキャンして、準備完了!

 

『「ジィィィ―――――――ドッ!」』

[ウルトラマンガイア! ウルトラマンヒカリ!]

[ウルトラマンジード! フォトンナイト!!]

 

 赤い輝きの中から結晶の渦を伴って、ジードが飛び出していく!

 

「オォォッ!」

 

 ジードから発せられたすさまじい閃光にひるんで後退するにせツルギ。その前にジードが雄々しく立ち上がる。

 

「ヌオッ!?」

 

 ジードの肉体は大きく変化。赤と青のマッシブなボディの胸元には黒いプロテクターと勲章のスターマークが並び、その身体を銀のマントが包み込んでいる。

 ウルトラマンガイアの鍛え抜かれた肉体美にヒカリの高潔な精神を宿した宇宙の偉大なる剣士、フォトンナイトだ!

 

『「テメェには誰にも手を出させやしねぇ。護り抜いてやるぜ……!」』

 

 八幡は背にしている平塚たちと、自らとともに来た結衣を一瞥しながら、にせツルギへと宣言した。

 

『「咲かすぜ! 騎士道!!」』

 

(♪フォトンストリーム)

 

 ジード・フォトンナイトがマントを大きく翻して、右腕のブレスより光のロングソードを伸ばす。

 

「「『フォトンビームブレード!!!」」』

「ヌオオオオッ!」

 

 フォトンビームブレードとにせツルギのナイトビームブレードがぶつかり合う。激しく火花の散る鍔迫り合いが一瞬起こったが、

 

「ハァァッ!」

 

 今度はジードの方が押し返し、にせツルギの胴体に深々と剣の一撃を叩き込んだ!

 

「ヌガアァァァァッ!」

 

 強烈な剣戟によってにせツルギの姿が破られ、その下から融合獣が真の姿を晒す。

 鬼のような角を生やした、鈍色の金属の肌の巨大怪人。これが次々とウルトラ戦士に変身してジードを苦しめた、メタリックババルウの正体だ!

 

「ヌグウゥゥッ!」

 

 メタリックババルウは片腕をさすまたの形に変えてジードに突き出すが、屈強な肉体のフォトンナイトには通じなかった。

 

「テヤァッ!」

 

 フォトンビームブレードのひと振りがさすまたをあっさりへし折る。メタリックババルウは武器を切り替えて肩から金属ブーメランを射出するも、ジードはそれをも切り裂いた。

 

『よし! とどめだ!』

『「おうよ!」』『「うんっ!」』

 

 形勢逆転したジードは左手首に右手首を重ね、光の尾を引きながら右腕を持ち上げていく。そして右腕に折り重なった光の線が走り、溜めたエネルギーを光線として発射!

 

「「『ナイトストリーム!!!」」』

 

 ほとばしる赤と青の光の奔流が、メタリックババルウの身体の中央を突き破って風穴を開けた!

 

「ヌッ……ガァァァァ―――――――ッ!!」

 

 身体を貫かれたメタリックババルウは、耐えられるはずもなく爆発四散した。ジードの勝利である。

 

「ハァッ!」

 

 復活したレイデュエスの挑戦を退けたジードは、高々と夜空に飛び上がって京都の町から去っていったのだった。

 

 

 × × ×

 

 

 修学旅行最終日。八幡たち奉仕部の三人は、帰りの新幹線を待つまでの間、京都駅の屋上にたたずんで別れを告げる京都の町並みをながめていた。――昨日の戦いの影響により、町の一部は倒壊してしまっている。

 その時間の中で、結衣がぼんやりとひと言つぶやいた。

 

「……一応、姫菜の依頼は叶えたことにはなるのかな」

「まぁ……告白が流れたことは事実よね」

 

 肯定する雪乃。しかし三人の表情は浮かない。

 戸部の告白は、レイデュエスの横やりによってそれどころではなくなったことで、結果的に阻止された形にはなった。今後しばらくは、戸部は海老名に告白しようとはしないだろう。

 何故なら――肝心の海老名が、死に瀕した恐怖が今になっても収まり切らず、心を乱してしまったからである。身体の震えが止まらない彼女は三浦たちに気遣われながら、修学旅行の残りの時間を他の生徒たちから隔離されて過ごした。

 また、海老名は八幡ら奉仕部、いやジード部の秘密を知ってしまったが、昨晩己の身に降りかかった事態も含めて、そのことを黙して誰にも話さなかった。――それはAIBから口止めされたからだけではない。

 海老名は、八幡たちの事情に関わることを拒絶したからである。

 

『ヒキタニくん、ごめんね……。あなたが悪いんじゃないってのは分かってるし、むしろ助けてくれたんだってことも承知してる……。だけど――しばらくは私に近づかないでくれるかな……? お願い……』

 

 海老名はゼナたちに連れられて八幡たちと別れる直前、八幡にそう言った。――恐怖を心に刻み込まれた彼女からしたら、たとえジードであったとしても――その気になれば自分を簡単にひねり潰せる存在が近くにいることが怖くて仕方がないのであろう。

 このことについて、結衣がポツリとつぶやく。

 

「あたしさ……出来ないってのは分かってたけど、もしもヒッキーがウルトラマンジードだってみんなが知ってくれたら、ヒッキーのこと見直してくれるんじゃないかって思ってた。けど……そうじゃなかったんだね……。姫菜が、あんな反応するなんて……」

 

 落胆を隠し切れない結衣。それを一瞥しつつ、口を開く雪乃。

 

「人間は……どんな相手であろうとも、「自分たちとは違う」存在を受け入れられないのよ。その度合いが大きければ大きいほど……」

『……』

 

 雪乃のひと言に、ジードも、ペガも無言を貫いていた。この二人は、それを痛いほど理解している。

 八幡は、最後にこう口にする。

 

「……これから俺たちの周りがどんなことになったって、結局やることは変わらねぇよ。ジーッとしてても、ドーにもならねぇ。それだけのことだ……」

 

 ジードから授かった信条を唱えるが――今日ばかりは、その声音に力がなかった。

 

 

 

『ウルトラストーリーナビ!』

 

結衣「今回は『ウルトラマンガイア』第二十七話「新たなる戦い~ヴァージョンアップ・ファイト!~」だよ!」

結衣「我夢は前回の戦いで藤宮からアグルの光を託されて、ガイアV2に変身したんだけど、これからは一人で戦わなくちゃいけないことに戸惑いを感じてた。そんな時にクリシスから放たれたコンピュータウィルスがエリアルベースのシステムに感染して、エリアルベースが墜落の危機に! それはどうにか回避されたけど、根源的破滅招来体の本当の狙いは過去に倒された金属生命体の破片の方で、新たな金属生命体として復活しちゃう! 我夢はアグルがいなくなった今、破滅招来体の刺客に勝つことが出来るのか! っていう内容だよ」

結衣「ガイアは物語の折り返しでV2に進化するんだけど、それが本格的に活躍するようになった回だね。特に前回はフォトンストリームを撃つだけだったスプリームバージョンが大活躍したの!」

結衣「スプリームバージョンはほんとに強くて、負けどころか苦戦すらほとんどなかったんだよね。そのパワフルな戦いぶりは未だに語り草だよ!」

ジード『パワフルすぎて、敵役のミーモスのスーツアクターさんは投げられすぎたあまりに全身打撲になったなんて逸話もあるけどね……』

結衣「それじゃ、次回もよろしくね!」

 




小町「お兄ちゃんいないと静かだねー。ねぇカー君?」
カマクラ「にゃー」
小町「ところで、最近のお兄ちゃん何か変だよね。妙によそよそしい時があるし。何やってるのかな?」
カマクラ「(……俺は知ってる。小町の兄があの巨人だ。猫の俺の前だと、あいつも遠慮なく自分の同居人たちと話をするからな)」
カマクラ「(だけどそのことを小町に伝える術はない。まぁ、大人しく見守ってるか……)」
小町「お兄ちゃんいないと暇だなー……って言いたいけど、実は新しい猫ちゃん拾ってきたんだー!」
カマクラ「(新しい猫? この辺に捨てられそうな猫がいたかな?)」
小町「まだお母さんたちの許可は取ってないけど、きっと大丈夫だよね。ほらカー君、あなたの後輩ですよ~」
ルナー「モコ!」
カマクラ「!?」
小町「珍しい猫だよねー、何て種類かな? まぁいいや。お兄ちゃんも驚くだろうな~!」
カマクラ「(小町ちゃん、違うよ! そいつ猫じゃない!)」
カマクラ「(ちょッ! 誰かAIB呼んで~!!)」



次回、『比企谷八幡は青春の光と影を見る。』

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