やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
「ギィィィィ……!」
クラッシャーゴンに踏み荒らされる大通りに着地したジードが顔を上げると、その目に飛び込んできたのは、巨大なハサミに摘み上げられたハイヤーであった。しかも車内には人の影がある。
『いけない!』
『「こんのぉッ!」』
ジードはすぐにクラッシャーゴンに飛び掛かり、相手の右腕とハイヤーを押さえてシャッターの中に放り込まれるのを防ぐ。
「ギィィィィ……!」
「ウゥゥゥ……!」
万力のようなパワーで抵抗するクラッシャーゴンに苦戦するジードだったが、渾身の力で相手の腕をひねり上げ、ハイヤーを奪い取ることに成功した。
「タァッ!」
その一瞬、八幡はハイヤーの後部座席に、見知った顔が乗っているような気がした。
『「ん? 雪ノ下……?」』
しかし今しがた一緒にいた雪乃がこのハイヤーの車内にいるはずがない。よく確かめている暇もないので、ジードはハイヤーをクラッシャーゴンから離れた道路の上にそっと置いた。ハイヤーは直ちに発進して逃げていく。
「ギィィィィ……!」
ウオォンウオォンウオォン……!
クラッシャーゴンはハイヤーを奪い取られた代わりのように標的をジードに移し、鈍い駆動音を鳴らしながら接近してきた。ジードは振り返ってクラッシャーゴンに殴りかかる。
「ハァッ!」
鋭いチョップを頭部に打ち込むが……自分の手を痛める結果になってしまう。
『「いっでぇぇぇ!? さっきから痛がってばっかだ!?」』
『硬すぎる……! この姿じゃ不利だ!』
『「この姿じゃって、どうすんだ!?」』
一旦距離を取ったジードは八幡に指示を飛ばした。
『フュージョンライズし直そう! セブンカプセルを出して!』
『「あ、ああ!」』
八幡は事前に教えられた通りのカプセルをケースから取り出した。刃物状のトサカが生えた真紅のウルトラ戦士のカプセルだ。
『ユーゴー!』
そのスイッチをスライドして起動!
……しようとしたのだが、スイッチを入れてもカプセルはうんともすんとも言わない。
『「あれ!? 何も起こらないんだけど!?」』
『えッ!? そんな馬鹿な! もう一度!』
八幡は焦りながらもスイッチを戻して、もう一度スライドする。
『ユーゴー!』
……しかし、やはりカプセルは光らなかった。ビジョンも一向に現れない。
『ど、どうしてだ!?』
『「壊れてるんじゃねぇの!?」』
『そんな馬鹿な……うわぁッ!』
戸惑っている間に、ジードがクラッシャーゴンに蹴り倒された!
(♪進撃(M38A))
「ギィィィィ……!」
「ウッ! グゥッ!」
倒れたジードの腹をぐりぐりと踏みにじるクラッシャーゴン。ジードはどうにか相手の足を押し返して脱出、転がって距離を開けるものの、
「ギィィィィ……!」
クラッシャーゴンは脚部の関節のバネを軋ませて、大ジャンプでジードに飛び掛かる!
「ウワァァッ!」
飛び膝蹴りを顔面に食らって転がるジード。更に七つの発光体からの赤いレーザーを浴びせられて更に苦しめられる。
「ウッ! グワアァァァァッ!」
「ギィィィィ……!」
もがくジードの首をクラッシャーゴンのハサミが捕らえ、ギリギリと締め上げる。ジードは余計に悶絶し、カラータイマーが青から赤に変わった。危険信号だ。
『「うッ、うぅぅぅぅ……!」』
『まずい、このままじゃ……!』
八幡も苦しめられ、焦るジードだが、状況に合わせたフュージョンライズによる形態の使い分けこそが彼の最大の強み。それが使えないのでは、十全の実力を発揮できないのである。
『こうなったら……いちかばちかッ!』
それでもジードはあきらめずに、勝負に出た。
「ハァッ!」
最後に残った力を振り絞ってハサミを開くと、その隙に自ら後ろに倒れ込んで拘束から脱する。一瞬身体が自由になった間に、腕を十字に組んでエネルギーを纏わせた。
「『レッキングバースト!!」』
ジードの背面が地面につくと同時に発射された光線が、クラッシャーゴンに突き刺さる!
「ギィィィィ……!」
光線を正面から受けたクラッシャーゴンから爆発が生じ、もうもうと立ち上った黒煙が辺りを覆い隠す。
それとともに、ジードもまた忽然と姿を消したのであった。
× × ×
戦闘後、変身が解けた八幡は星雲荘に帰投し、レムに質問をしていた。
「さっきのロボット、あれで倒せたか? 最後どうなったかよく見えなかったんだよ」
出来ればそうであってほしい、と八幡は願っていたのだが、レムの回答は、
[いえ、恐らく一時的に撤退しただけでしょう。高確率で、明日にでも再び現れるものと思われます]
「ま、マジでか……」
唖然と立ち尽くす八幡。彼に代わって、ペガが疑問を口にする。
「でも、どうしてセブンカプセルが反応しなかったの? こんなこと初めてだよ!」
それについて、レムが分析結果から回答を導き出した。
[それはカプセル内のリトルスターの波長と、ハチマンの精神の波長の同調率が著しく低いからと推測されます]
「リトルスター?」
オウム返しに問い返した八幡に、ライハから説明がなされた。
「簡単に言えば、ウルトラカプセルを動かしてるエネルギーよ。私たちはこれを巡った戦いをいくつもしたのだけれど……」
次いでレムが語る。
[リトルスターはいわば、ウルトラ戦士の力の結晶です。その力を扱うには、彼らの精神の主たる部分を占める勇気の感情が必要となります。ハチマン、あなたは深層心理においてこの感情が必要数値に達していないので、精神の波長がリトルスターとシンクロせずカプセルを起動させられないのです。現状フュージョンライズできるのは、ジードの基本形態であるプリミティブのみとなっています]
レムの話を受けて、八幡がかなり気まずそうに聞き返した。
「えーっと、要するに……俺が足引っ張ってるってこと?」
[リクがあなたと一体化した以上、リクはあなたの影響を受けます。良いようにも悪いようにも。そういうことです]
「つまり、勇気が足りないからウルトラ戦士の力が応えてくれないってところね」
ライハのまとめのひと言で、八幡はズーン……と落ち込んだ。
「勇気って何だよ……。日食が来れば見えるものなのかよ……?」
どんよりとブツブツつぶやく八幡だが、ジードは彼を励ますように言う。
『八幡に勇気がないなんてことはないはずだ!』
「ジード……」
『僕は確かに、八幡の中に強い勇気があるのを見た。きっと、普段は隠れてて見えないだけなんだ。僕は八幡、君を信じるよ!』
と力説するジードだが、そこでペガが水を差すように口を挟んだ。
「でもあの融合獣がまた現れた時に、他のカプセルが使えないのはまずいよ。同じ手はもう通用しないだろうし……」
「そうね。それまで、つまり明日までにどうにかしないと……」
ライハも同意し、二人で八幡をじっと見つめた。注目を集めた八幡は、実に気まずそうに目を泳がせる。
「そ、そんなこと言われたって、たった一日でどうしろと……」
戸惑う彼にジードが説いた。
『とにかくやるしかない! こういう時こそ、ジードの精神だ!』
「は? ジードの?」
何のことか分からない八幡が聞き返すと、ジードが説明する。
『ジーッとしてても、ドーにもならない。悩んでないでまずは行動から! それが僕の信条さ』
「信条って……まさかそれが名前の由来?」
『まぁ別の意味もあるんだけど……ところで八幡は何か信条ってあるの?』
聞かれた八幡は、ポツリと答えた。
「押してだめなら諦めろ……」
「うわぁ……」
ライハやペガがドン引きしていた。
「い、い、いいじゃないか人の信条なんてッ!」
流石にいたたまれなく、どもりながら反論する八幡であった。
そんなこんなで八幡が全てのウルトラカプセルを使えるようにする訓練が実施されたのだが――何をどうすれば良いのかも分からない状態であるため、当然のように上手くはいかなかった。
「う~ん……一向に変わらないねぇ」
上にライハに乗っかられて、汗だくになりながら腕立て伏せさせられている八幡をながめながらペガが肩をすくめた。
「いっそのこと、ジープで追いかけ回すのはどうかしら」
「や、やめて下さい! それだけはッ!」
ライハの提案に八幡が必死な声で懇願した。
結局、何も変わることのないまま八幡は明日を迎えることとなった――。
× × ×
翌日、奉仕部の部室。
「ふーん……あのライハっていう女の人、ヒッキーの中学の先輩なんだ」
「まぁ……そんなとこだ」
八幡が結衣に、ライハのことをごまかしていた。総武には八幡の中学時代の同級生はいないので、多分ばれる恐れはないだろう。
「っていうか俺の人間関係なんかどうだっていいだろ。何で蒸し返すんだよ」
「べっ!? 別に大した理由じゃないよ! 何かすごい剣振り回してたから、ただ興味を引かれただけなんだから!」
「ああいう趣味の人なんだ」
「そうなの? それにえーっと……ろくに友達がいないヒッキーには珍しいなーって思っただけだから!」
「そうですか……」
聞き返された結衣はわたわたしながらそう答えた。それから焦ったように話題を切り換える。
「そ、それと、昨日何かすっごいジャンプしてなかった? ヒッキーあんなに運動神経いいの?」
今度は八幡がギクッ! と肩を震わせた。今の彼はジードと一体化した影響で身体能力が人間離れしたほどに向上しているのだが、まだそれを上手にコントロールできていないのであった。
「あ、あれはちょっと勢いつき過ぎただけだ! パニくると勢い余っちまうことってあるだろ!?」
「そんなレベルじゃなかったと思うんだけどなぁ……」
ごまかす八幡だが、今度は結衣も疑い深かった。雪乃に振り向いて尋ねかける。
「ねぇ、ゆきのんはどう思う?」
すると雪乃は、妙に無言を貫いてから、平坦な口調で答えた。
「……由比ヶ浜さん、あまり他人のことについてどうこう言うのは良くないわ」
「えっ? あぁ、うん、そうだね……」
「比企谷くんがたまたま大きくジャンプしたからと言って、特にあげつらうことでもないでしょう。気にすることじゃないわ」
諭されて結衣は質問を取りやめたので助かった八幡ではあったが、しかし雪乃の様子と言動が気に掛かった。いつもの彼女だったら、八幡をかばうようなことを言ったりはしないはずだ。
(どうしたんだあいつ……。そう言えば、昨日からちょっと様子がおかしいような)
表面上は変化がないように見える雪乃を密かに観察しながら疑問を抱いていた、その時。
「あっ!? あれっ!」
急に町のスピーカーから警報がけたたましく鳴り渡り、三人が何事かと窓の外を見やったら――昨日のクラッシャーゴンが再び町の中に現れていた! 八幡たちの懸念は的中してしまった。
しかも総武高校からそう遠く離れていない場所だ。
「近いな……! 逃げるぞ雪ノ下、由比ヶ浜!」
「う、うん!」
八幡の促しで、三人は駆け足で避難していく――のだが、途中で最後尾の八幡が密かに二人から離れ、無人の廊下へと駆け込んだ。
「……」
周囲に誰もいないことを確認してから、セブンカプセルを取り出してスイッチを入れる――が、やはりカプセルは起動しなかった。
「駄目か……」
『八幡……』
カプセルにじっと目を落としたまま立ち尽くす八幡。ジードも、無理に変身を命ずるようなことはしない。
他の形態にフュージョンライズできない以上は、プリミティブのまま戦うか。しかしそれだと勝ちの目は薄い。もし負けてしまったら、自分の命は……。そのことを想像すると、八幡はどうしても二の足を踏んでしまう。
そう立ちすくんでいると、
「比企谷くんっ! こんなところで何をやってるの!」
「おわッ!?」
背後から雪乃がこちらへ駆け寄りながら呼びかけてきた。どうやら自分がついてきていないことに気づいて、引き返してきたようだ。
「捜したわよ。一体こんなところで何を油売っているの。一番に逃げることを口にした人間が立ち止まってるなんてどういうことかしら?」
「ゆ、雪ノ下! お前、どうしてわざわざ俺なんかを……」
「一応、一応よ。あなたは奉仕部の部員であり、私は部長なのだから、あなたの安全を図るのは私に課せられた義務なのよ。不本意なことなのだけれどね」
わざわざ毒を吐く雪乃だが、その表情は極めて真剣であり、本心から八幡の心配をしているのが見て取れた。八幡は雪乃の予想外の反応に驚いている。
「いや、でも俺は……」
何と言えばいいかと言いよどんでいると、外でクラッシャーゴンが大きく足踏みをして、それで発生した地響きが総武高校の校舎を襲った。
「わわッ!」
「きゃっ!」
八幡と雪乃は足元が揺れたことで転倒しそうになり、八幡は咄嗟に雪乃の手を取って彼女を支える。
「!? うわっちぃぃッ!?」
ところが雪乃の手の平が異様に熱かったので、思わず叫んで手を放してしまった。
「な、何するのよ! 失礼ね!」
「わ、悪い……。けど雪ノ下、お前名前に反して体温高いんだな……」
「こ、これはその……」
八幡が唖然と聞き返すと、雪乃は何故か言葉を濁す。
一方で、ジードは何かを考え込んでいた。
『手の平が熱い……昨日の机を折る腕力……まさか……!』
そんなことは露知らず、雪乃はふと足元に目をやった。先ほど八幡が手を放した際に落としたセブンカプセルが、彼女の足元に転がったのだ。
「あら? 比企谷くん、何か落としたわよ。何これ?」
雪乃がそれを拾うと……。
「きゃっ!?」
カプセルが青く発光し始めたのだ! 驚く雪乃だが、八幡も目を見張っている。
「こ、これは……!?」
咄嗟に装填ナックルに触る八幡。これに触れると、レムと通信できるのだ。
[カプセルのリトルスターが彼女に反応しています]
『そうか……よしッ!』
レムの回答で、ジードは決心した。
『雪ノ下さん! そのカプセルのスイッチを入れるんだ!』
「ジ、ジード!?」
慌てる八幡。ジードが雪乃にも聞こえる声でしゃべったからだ。
「え? 今のは誰が……」
『早くッ!』
当然呆気にとられる雪乃であったが、ジードに急かされて反射的にスイッチをスライドする。
『ユーゴー!』
『ダーッ!』
瞬間、カプセルからウルトラセブンのビジョンが現れて腕を振り上げた!
「な、何なのこれ!?」
『八幡!』
仰天する雪乃を置いて八幡は彼女からカプセルを取り、ナックルに収めた。そして自分が二つ目となる、レオカプセルのスイッチを入れる。
『アイゴー!』
『イヤァッ!』
セブンカプセルと反応してレオカプセルも起動。レオのビジョンが腕を振り上げる。
『ヒアウィーゴー!!』
ナックルに装填したカプセルをジードライザーでスキャンし、準備完了! 八幡がトリガーを握り、フュージョンライズを発動した!
[フュージョンライズ!]
『ジィィィ―――――――ドッ!』
二人の超人のビジョンが――雪乃も巻き込んで――八幡と重なる!
[ウルトラセブン! ウルトラマンレオ!]
[ウルトラマンジード! ソリッドバーニング!!]
螺旋を描く火花と青い炎が弾け、赤い炎と緑の光の螺旋の中から、プリミティブとは姿の違うジードが飛び出していく!
「ドォッ!」
「ギィィィィ……!」
再び出現したクラッシャーゴンは、逃げ惑う人々を蹴散らすように、鋼鉄の巨体で町を蹂躙していく。
だがその面前に、空から炎の塊が落下してきた!
「あ、あれは!?」
思わず立ち止まって振り返る人々。彼らの視線の先で炎が弾け、熱気で大気を歪ませながら、ウルトラマンジードが立ち上がる。
「ウルトラマンジード……!?」
「何か鎧着てね!?」
葉山や戸部が驚愕している。今のジードは真紅の身体に、可変のプロテクターを全身に装着しているのだ。頭部にはセブンのトサカとレオの羽状の突起が生えている。そしてぐっと両腕を振り上げると、背面や腕のスラスターからブシューッ! と蒸気が噴出した。
これがウルトラマンジードの第二の姿、攻勢と防御両方に優れたソリッドバーニングだ!
『「な、何なのこれは!? 一体どうなっているの!?」』
そしてジードの内部では、雪乃が普段の冷静沈着な様子が見る影もないほど狼狽していた。流石の彼女も、現在自分が置かれている状況は受け入れられないようだ。
ソリッドバーニングへのフュージョンライズに、雪乃がセブンカプセルを起動した関係上、彼女もジードの中に入り込んだのであった。
『「比企谷くん、ここってまさかジードの体内……!?」』
理解してきた雪乃が八幡に尋ねるが、八幡はクラッシャーゴンから目を離さないままだった。
『「悪い雪ノ下。少し集中させてくれ! 敵は目の前なんだ!」』
と言われて、雪乃は思わず口をつぐんで大人しくなった。彼女と入れ替わる形でジードが八幡に呼びかける。
『遂にフュージョンライズできた。だけどここからが正念場だよ、八幡!』
『「ああ、分かってる……! こうなったからにはやってやるぜ……!」』
戦意を新たにした八幡が、己に勢いをつけるために宣言した。
『「燃やすぜ……勇気!」』
(♪ウルトラマンジードソリッドバーニング)
「ドォッ!」
クラッシャーゴンへとまっすぐに向かっていくジード。クラッシャーゴンは巨大なハサミを振り回して迎え撃ってくるが、それをジードは手の甲で弾き返した。
そして右腕を後ろに大きく引き絞ると、腕のスラスターから紅蓮の炎が噴き出してブーストとなる。
「ドゥオォッ!」
加速された拳がクラッシャーゴンに入り、その重量感あふれる巨体が後ずさった。ジードの攻撃力が上回ったのだ!
『「思い切り殴っても手が痛まない! これならいける!」』
そしてジードの手に、鋼鉄を全力で殴ってもダメージがないことに八幡は感激していた。これで戦いは同じ土俵になったと言えよう。
「ギィィィィ……!」
クラッシャーゴンは接近戦を捨て、胸部の七つの発光体にエネルギーを集めた。光線を撃とうという合図だ。
「フオオオオ……!」
対して、ジードも胸のプロテクターに光エネルギーを充填させた。両者の光線が同時に放たれる。
『ソーラーブースト!』
ジードの光線とクラッシャーゴンの光線が正面衝突し、しばし押し合いとなったが、ジードがエネルギーを高めたことで押し切る。
「ハァァァァッ!」
「ギィィィィ……!」
光線を食らったクラッシャーゴンの発光体が潰れ、光線を撃てなくなった。それで脚部のスプリングを軋ませ、ジャンプ攻撃に転じようとする。
しかしそれを黙って見ているジードではない。頭部の刃物状のトサカ――ジードスラッガーを手に取って脚のスラスターに接続し、飛び蹴りを繰り出す。
『ブーストスラッガーキック!』
スラッガーを得たキックはスプリングを切り裂き、クラッシャーゴンはバランスを崩して片膝を突いた。
「ギィィィィ……!」
機動力を失ってもクラッシャーゴンは立ち上がろうとする。そのためジードはいよいよとどめの攻撃に入った。
『これで最後だ! 二人とも、意識を集中させて!』
『「ああ!」』
『「え、ええ……!」』
ジードの右手首が十字型に開き、緑色の光が溢れた。光と炎に包まれた腕を、クラッシャーゴンを殴り飛ばすかのように前に突き出す。
「『ストライクブースト!!」』
握り拳を作った右腕から炎を纏った光線が発射され、クラッシャーゴンに直撃!
「ギィィィィ……!!」
一瞬火だるまとなったクラッシャーゴンは、ダメージに耐え切れずに爆散を起こした。
「やったぁ!」
ジードの勝利に結衣が短く歓声を上げて喜んでいたが、落ち着きが戻ったところで呆気にとられた。
「あれ? ゆきのんとヒッキーは?」
結衣が八幡たちを訝しんでいるとは知らず、ジードはそのまま大空へと飛び上がってどこかへと去っていったのだった。
「シュワァッチ!」
クラッシャーゴンが爆発した現場では、レイデュエスの足元にバキバキにひび割れたクレージーゴンとガメロットのカプセルが転がっていた。
レイデュエスはそれを拾おうともせず、ジードの飛び去っていった方向をじっと見上げていた。
「なるほど……少しはやるみたいだな」
× × ×
[……というのが、ウルトラマンジードを取り巻くおおまかな現状です]
その後の星雲荘では、ここに案内された雪乃がレムから説明を受けていた。カプセルを使用してジードに力を貸した以上は、放置しておく訳にはいかないからだ。
「なるほど……大体のところは理解したわ」
レムの説明にひと言つぶやいてうなずいた雪乃を、ペガが感心したように見つめていた。
「飲み込みが早いね、雪乃は。八幡なんか、なかなか信じようとはしなかったのに」
その言葉に、雪乃はさも当然かのように返した。
「ここまでの状況を目にして、作り物か何かで片づけようとするなんて、その方が非合理的だわ。それにジードの足を引っ張った挙句に私がいなかったら状況を打破できなかったなんて……全くろくでなしくんは比企谷くんね。間違えたわ、比企谷くんは比企谷くんね」
「おい二重にボケるな。人の名前を何の代名詞にするつもりだよ」
納得して安心したのか毒舌が戻ってきた雪乃に、ペガやライハは苦笑いを浮かべていた。
しかし雪乃は不意に八幡から顔をそらしたかと思うと、おずおずと恥ずかしそうにしながらこう告げる。
「でも……三日前からずっと、比企谷くんが助けてくれていたのね。そのことは……ありがとう」
と結んだ瞬間、雪乃の慎ましやかな胸元からほのかな赤い光が生じた。
「えっ!?」
雪乃のみならず全員が驚く。そんな中で光は雪乃から離れ、八幡の腰のカプセルケースに移った。
八幡がケースから光が宿ったカプセルを取り出すと、白紙だった表面に赤い戦士の絵柄が浮かび上がる。
『タァーッ!』
[リトルスターの譲渡を確認。アストラカプセル、起動しました]
『やっぱり……雪乃はリトルスターを発症してたんだ』
レムが淡々と告げ、ジードが納得した。それとは対照的にペガは驚愕している。
「リトルスター!? どうしてこの世界にリトルスターが……!?」
「確かに。リトルスターは自然に発生するものじゃなかったはずよ」
ライハも尋ねかけるが、レムは次のように回答する。
[不明です。調査の必要があります]
「どうやら、謎はまだまだ多そうね……」
八幡は今一つ話についていけずに呆然としているが、そこに雪乃が呼びかけた。
「比企谷くん、これからは私もジードに協力するわよ。でもあなたに力を貸す訳ではないから。変な勘違いをしないでちょうだい」
「わざわざ注釈してくれなくていいっつぅの……ってお前、それ本気か!?」
「当然じゃない。比企谷くんだけではジードが迷惑するのでしょう? 見ていられないから助けてあげるのよ。感謝の気持ちを二千字以内に書き記して明日までに提出すること」
「何で宿題になるんだよ……」
奉仕部だけじゃなく、この星雲荘でもこいつの顔を見なきゃならんのか……とげっそりする八幡だったが、不思議と悪い気分ではなかった。
『ウルトラストーリーナビ!』
雪乃「今回は『ウルトラセブン』第三十八話「勇気ある戦い」よ」
雪乃「モロボシ・ダンは心臓手術に恐怖を抱いているオサム少年を励ますために、手術に立ち会う約束をしたのだけれど、同時期に渋滞を起こしていた車両が何十台も消失するという事件が発生。犯人は鉄資源の強奪を狙うバンダ星人。約束の手術までにバンダ星人のたくらみをくじいたように見えたのだけど、円盤を爆破した際の衝撃で車両回収用のロボットが暴走してしまう……という内容よ」
雪乃「話の筋としては、手術を恐れる子供に主人公が勇気を示すという、よくある類のものね。だけど奇をてらわない王道のストーリーは、やはり確かな魅力があるものだわ」
雪乃「ロボット怪獣クレージーゴンの名前は劇中では一切言及されないわ。反対に、バンダ星人は最後まで姿が不明のままで終わるの」
リク『セブンでは姿が分からない宇宙人も結構多かったね。挙句には名前も不明なのもいるんだよ』
雪乃「それでは次回でお会いしましょう」
「ゆきのん、ヒッキー……この間は二人でどこに行ってたの?」
『関東圏上空に、宇宙から鳥型の怪獣が飛来しました!』
「もしかして、あのザンドリアス?」
[ライハとペガでは、そもそもハチマンとの波長が合いません]
「由比ヶ浜がいると、何かとやりづらいよな……」
「世間がもっと盛り上がるようにこの俺が演出してやろうというんだ」
[アクロスマッシャーの浄化能力が必要です]
『やろう、八幡!』
『「見せるぜ……衝撃!」』