やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
その翌日の放課後。奉仕部の部室に向かう途中の八幡は、後ろから追いかけてきた結衣に呼び止められた。
「ヒッキー! ちょっと待って」
「ゆ、由比ヶ浜……」
振り返った八幡は変に緊張してしまう。彼女に告白されて以来、距離感を測りかねているのだ。
結衣も少々ためらいながらも、意を決して八幡に呼びかけた。
「あ、あのね……この前は、返事いらないって言ったけど……」
「お、おう……その話か……」
二人とももじもじしながらも話を進める。結衣は周りに他の人がいないか気にしつつ、先を話した。
「その……やっぱり、返事聞かせてほしいなって……。め、迷惑だってのは分かってるけど……」
「い、いや……俺も、言わなきゃなって思ってたよ……」
大分目が泳いでいた八幡だったが、観念したかのように、正面を向いて結衣と視線を合わせた。
「えっとな……」
そして返事を口に出そうとした、その時、
[お取り込み中申し訳ありません。緊急の連絡です]
「おわぁッ!?」
急にジードライザーからレムからの通信が来たので、虚を突かれた八幡は大声を出してしまった。
「れ、レム、いきなりどうしたんだ?」
心臓をバクバクさせながらも聞き返す八幡。するとレムは、
[市内にレイデュエスが出現。ハチマン、あなたの元に向かって侵攻中です]
「!」
そのひと言で、八幡たちの顔つきが急激に変わった。
[現在AIBが交戦中ですが、防衛ラインが次々突破されています]
「分かった。知らせてくれてありがとうな」
レムに礼を言うと、八幡は踵を返して階段の方へと身体を向けた。
「由比ヶ浜、悪い。続きは後にしてくれ!」
「う、うん! もちろん!」
『八幡、どうする?』
ジードが問いかけると、八幡はすぐに返した。
「逃げてもどうせ追ってくるだろあの野郎。こっちから迎えに行ってやるに決まってるぜ」
× × ×
レムの案内の下に、八幡と結衣が現場に到着すると、そこでは二人に先んじて駆けつけていたライハがレイデュエスと戦って足止めをしていた。
「はぁぁっ!」
「ふぅあぁッ!」
腰にひねりをつけて剣を振るうライハだが、ブラッドサイズで受け止められた末に念動力をぶつけられて押し返された。
「くっ……! 強くなってる……!」
「当然のことだ」
レイデュエスに手を焼かされるライハ。彼女の側に八幡たちが駆け寄る。
「ライハさん、大丈夫ですか!」
「八幡、結衣。来たのね……」
まずライハの無事を確認してから、八幡は大鎌を下げたレイデュエスをにらんだ。
「お前……今日はまた堂々とやってきたな。いい加減ヤケになってきたか?」
嫌味をぶつける八幡だが、レイデュエスは意に介さず言い返した。
「何でも邪魔者が来るみたいじゃねぇか。その前にケリつけさせてもらおうと思ってな」
「! どうしてそのことを……」
八幡たちが一瞬動揺したその瞬間に、レイデュエスは隠し持っていた小型マイクを口元に持っていってつぶやいた。
「今だ、やれッ!」
それと同時に、ハッと何かを察知したライハが結衣に振り向いた。
結衣の左胸に赤い光点が現れている。本人は気がついていない。
「危ないっ!」
「きゃあっ!?」
咄嗟に結衣を引っ張るライハ。――直後に、飛んできた弾丸が結衣をかすめて地面を穿った。
狙撃だ!
「由比ヶ浜!?」
「あうっ……!」
仰天する八幡。結衣はライハが助けたお陰で致命傷は免れたものの、腕を弾丸がかすめたことで血が流れ出ていた。
× × ×
八幡たちの様子を一望できるビルの屋上では、オガレスがスナイパーライフルの銃口を彼らに向けていた。たった今、結衣を狙って狙撃したのである。
『ちッ、外したか……』
結衣の心臓を撃ち損ねて舌打ちするオガレスに、見張りのルドレイが呼び掛ける。
『もうAIBがここへと駆け上がってきてる! 撤収するぞ!』
『分かった。どうせあの怪我ならフュージョンライズは出来まい。目的は一応達成だ』
オガレスが応じ、ライフルを片づけて二人で屋上から飛び降りていく。
『動くなッ! 武器を捨てろ!』
ゼナたちが扉を蹴破って屋上に踏み込んだが、その時にはオガレスたちは柵を越えていた。
『間に合わなかったか……。お前たちは引き返して追いかけろ!』
悔しそうに銃を下ろしながらも部下たちに指示を飛ばすゼナ。一方で陽乃は、遠方に見えるレイデュエスの姿を見下ろした。
「……」
× × ×
腕から流血して崩れかかった結衣を八幡とライハが慌てて支える中、レイデュエスはわざとらしく肩をすくめた。
「仕留め損なったか。だがまぁこれで十分」
「テメェ……!」
八幡は更に憤慨してレイデュエスをにらみつけたが、レイデュエスはそれにむしろ意地悪く歓喜してみせた。
「ふッ、悔しかったら腕っぷしでやり返してみろ! 行くぞッ!」
挑発しながら怪獣カプセルを取り出してスイッチを入れていく。
「イッツ!」『グギャアアァァァァ――――――! ガハハハハハ……!』
「マイ!」『グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!』
「ショウタイム!!」
片腕が棍棒のようになった鬼のような怪獣と全身鋼鉄で覆われた怪獣のカプセルを装填ナックルに押し込んでブラッドライザーを起動する。
[フュージョンライズ!]
「ぬうあああぁぁぁぁッ!」
スキャンしたカプセルから現れたビジョンを吸い込んで、魔人態から融合獣へと姿を変えていく。
[ザイゴーグ! グランドキング!]
[レイデュエス! グランドザイゴーグ!!]
フランス人形とレコードプレーヤーを踏み潰して、レイデュエスが変身を遂げた鋼鉄の宇宙融合獣が八幡たちの目の前にそびえ立った!
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「ッ!」
右腕が金棒、左腕がシャベル状のクローとなった、全身が無機質な鋼鉄の鎧で覆われた大型のレイデュエス融合獣グランドザイゴーグ! その無数の黄色く光る眼球が八幡たちを見下ろす。
身構える八幡の後ろでは、ライハとペガが止血しながら結衣に肩を貸していた。
「八幡、ペガたちは結衣を星雲荘に避難させるよ!」
「この怪我じゃ、戦わせるのは危険だわ」
「頼みます……!」
「ヒッキーも、ここはお願いね……!」
痛みにあえぎながらも後を託す結衣に、八幡は大きくうなずいて応じる。
結衣たちがエレベーターに駆け込んでいく中で、八幡はグランドザイゴーグを負けじとにらみ返しながらジードライザーを握り締めた。
「ユーゴーッ!」『シェアッ!』
「アイゴーッ!」『フエアッ!』
「ヒアウィーゴーッ!!」
ウルトラマンカプセルとベリアルカプセルを装填ナックルに収めてスキャンしていく。
[フュージョンライズ!]
「ジィィィ―――――――ドッ!」
八幡は初期変身を経過して、ウルトラマンジード・プリミティブに変身していく!
[ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!]
[ウルトラマンジー]
ゴ ッ !!
飛び出していく途中で、ジードに金棒がめり込んだ。
「ウワアアアァァァァァァァァ―――――――――――――!!?」
ジードは不意打ちによって派手に殴り飛ばされた!
× × ×
星雲荘に避難してきた結衣たちは、変身途中でグランドザイゴーグに殴り飛ばされたジードの姿に一斉に驚愕した。
「ヒッキー!!」
「あぁ―――――!? それやっちゃいけないんだぞ!!」
激しく狼狽するペガの傍らで、ライハが奥歯をギリッと噛み締めた。
「あれが狙いだったのね……!」
× × ×
「ウワァッ!」
激しく地面に叩きつけられるジード。いきなり痛恨の一撃を食らってしまい、八幡も頭を抑えて必死に苦痛を耐えていた。
『「うッ、ぐぅぅ……やりやがったな、くそッ……!」』
『八幡、しっかり……!』
八幡を励ましながらも立ち上がるとするジードだが、そこにグランドザイゴーグの口から放たれたレーザーで狙い撃ちにされる。
「ウワァァァァァッ!」
連続する爆発に煽られてよろめくジード。そこにグランドザイゴーグが詰め寄ってきて、更に金棒を振り下ろしてきた。
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「ワアアァァッ!?」
ジードは金棒に叩き潰されて地面にめり込みながら倒れ込んだ。グランドザイゴーグはそこに容赦なく繰り返し金棒を叩きつけていく。
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「グッ! ウッ! ウワァァァッ!」
なす術なく一方的にやられるジード。今の彼は変身の途中を攻撃されたことで、通常の半分もない背丈で巨大化が止まってしまった。そんな半端な状態では、十分な力を発揮することが出来ないのだ。また結衣たちもともにフュージョンライズしていないので、その分のエネルギーを借りてパワーを底上げすることも出来ない。
ジードは絶体絶命の状況であった!
× × ×
「わぁぁ――――! 怪獣だぁぁぁ!」
「逃げろぉ――――!」
総武高校では、残っていた生徒たちが一斉に校舎から逃げ出していた。――その中には、材木座も混じっていた。
「うぬぅ、図書室でついうたた寝してたら怪獣が出てくるとは……! 最近多くない?」
独り言をつぶやきながら、ジードを一方的になぶるグランドザイゴーグをふと見上げてぞっと恐怖に駆られた。
「うひぃ……!? 早いとこ逃げよう……!」
× × ×
(♪ピンチのX)
グランドザイゴーグは依然ジードを容赦なく痛めつけている。
『「このままグシャグシャの挽き肉にしてやるッ!」』
レイデュエスは猛りながら攻めの手を更に激しくした。
八幡の方は、その猛攻によってまともに身動きも出来ない状態にある。
『「ぐッ、くそぉッ……! これじゃフュージョンライズも出来ねぇ……!」』
『このままじゃまずい……うわぁッ!』
追いつめられるジードであるが、逆転の糸口を掴む隙すらない。ひたすら殴られるばかりで、カラータイマーが鳴り出す始末。
グランドザイゴーグはそのタイマーを狙って、より高く金棒を振り上げた!
『「こいつでとどめだぁぁぁぁッ!!」』
カラータイマーを粉砕しようと、金棒が猛然と振り下ろされる!
――まさにその時、空にいきなり穴が開き、その中からふた振りの宇宙ブーメランが飛んできて金棒に命中。弾き返してジードを救った。
『「何……!?」』
目を見張って空を見上げるグランドザイゴーグ。その視線の先で――空の穴から、銀色の鎧を纏った巨人が勢いよく飛び出してきた!
「シェアッ!」
巨人は腕の剣でグランドザイゴーグに斬りかかる。ガードしたグランドザイゴーグだが、剣圧に押されてジードから引き離された。
代わりにジードの側に立った巨人は鎧を解除。鎧は縮小してブレスレットに変形し、巨人の左腕に収まった。
『あ、あなたは……!』
よろよろと身体を起こしたジードと八幡は、自分たちを救った巨人の姿をはっきりと目の当たりにした。青と赤と銀のボディの中央に、燦然と輝くカラータイマー。頭部には先ほど飛ばされたふた振りのブーメランが装着されてトサカとなる。目つきは鋭いが、八幡とは違って凛々しい輝きに満ち溢れている。
『へッ、待たせたな……。ギリギリ間に合ったみたいだ』
親指で下唇をぬぐう巨人のその容姿に、八幡は見覚えがあった。手持ちのカプセルの一つに、同じものが描かれている。
『「あなたは、ジードの言ってた……一緒に地球を守った仲間の……!」』
そして巨人は――ジードの窮地に駆けつけたウルトラ戦士は、高らかに名乗った。
『俺はゼロ! ウルトラマンゼロだ!!』
レイデュエスはジードをかばって立つウルトラマンゼロを見据えて怒号を発する。
『「ウルトラマンゼロ! 宇宙を超えた出しゃばりがぁッ!!」』
爆発するように殺気を飛ばすレイデュエスだが、ゼロは少しもひるまずに倒れたままのジードに呼びかける。
『ジード、立てるか?』
『もちろん! おぉぉぉ……!』
気勢とともに起き上がるジードに合わせて、八幡がカプセルを交換していく。
『「ユーゴーッ!」』『オリャアッ!』
『「アイゴーッ!」』『フエアッ!』
『ヒアウィーゴーッ!!』
オーブ・エメリウムスラッガーカプセルとベリアルカプセルをスキャンして、改めてフュージョンライズする。
[フュージョンライズ!]
『「ジィィィ―――――――ドッ!」』
ジードは姿を変えながら巨大化していき、本来の身長、ゼロと並ぶサイズとなっていく。
[ウルトラマンオーブ! ウルトラマンベリアル!]
[ウルトラマンジード! トライスラッガー!!]
変身を遂げて毅然と立ち上がったジードの姿に、ゼロは満足そうに鼻を鳴らした。
『へへッ、そう来なくっちゃな。色々と話はあるが、まずはあいつをやっつけてからだな。久しぶりに一緒に行こうぜぇッ!』
『はい!』
ゼロが駆け出すのを合図とするように、ジードが頭部のスラッガーに手を掛けた。
(♪ウルトラマンゼロ‐アクション)
『「飛ばすぜ! 光刃!!」』
「セェアッ!」
ジードの飛ばした三本のスラッガーがグランドザイゴーグに斬りかかると同時に、距離を詰めたゼロがミドルキックを仕掛けた。戦いの再開だ!
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
グランドザイゴーグは二人の攻撃に対し、スラッガーをクローで弾き、ゼロのキックを鋼鉄の肉体で受け止めてはね返した。
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「シャッ!」
ゼロに金棒を振るうグランドザイゴーグだが、ゼロはバク転で回避。直後にゼロスラッガーを投げ飛ばして、計五本のスラッガーが縦横無尽に斬りかかる。
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
だがグランドザイゴーグはスラッガーのことごとくを弾いた。そのボディには傷一つつかない。
『ちッ、かってぇな。だったらこうだ!』
舌打ちしたゼロが左腕を胸の前に置くと、嵌まっているウルティメイトブレスレットが真っ赤に輝く。
『ついてこれるか、ジード!?』
『任せてよ!』
ゼロの動きに合わせるように、八幡もナックルに新たにレオカプセルとアストラカプセルを装填した。
『ストロングコロナゼロッ!』
[リーオーバーフィスト!!]
そして真紅に変身したゼロと、リーオーバーフィストにフュージョンライズしたジードが並び、ともにグランドザイゴーグへと肉薄していく。
『おぉらッ!』
「ハァァッ!」
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
二人してグランドザイゴーグに正面から鉄拳を繰り出していく。パワー重視形態となった両者の猛攻により、流石のグランドザイゴーグも押されて後ずさった。
金棒とクローを振り回して反撃するが、ゼロとジードは叩き返してどんどん追撃する。
『うりゃッ!』
「ダァッ!」
強烈な回し蹴り、エルボーなど打撃のラッシュが見舞われ、グランドザイゴーグがノックバックした。この一瞬の隙にゼロとジードが大技を仕掛ける。
『ガルネイトバスタぁぁぁ―――――!』
「『バーニングオーバーキック!!」』
ゼロの拳から放たれた灼熱の光線と、ジードの燃え上がる飛び蹴りが同時に決まってグランドザイゴーグの装甲が炸裂!
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
持ちこたえるものの、装甲の各部にひび割れが走った。
『突破口が出来たぜ! 次はこいつだッ!』
有効打を与えて、ゼロが今度は青く輝く。八幡もカプセルを三度交換した。
『ルナミラクルゼロ!』
[ムゲンクロッサー!!]
青く染まったゼロとジード・ムゲンクロッサーはそれぞれゼロスラッガーとゼロツインソード・ネオを握り締めて駆け出す。
「セアッ!」
「トアッ!」
二人の戦士は空中を駆け回って、グランドザイゴーグの装甲の破損部分を狙って斬撃を浴びせていく。グランドザイゴーグの鈍重な身のこなしでは、二人の高速移動についていくことなど出来ない。
「グギャアアァァァァ――――――! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
装甲のひび割れを縫って叩き込まれる斬撃により、グランドザイゴーグにダメージが蓄積していく。
『「なめるなぁッ!」』
だが流石に黙ってはいない。ゼロとジードが一瞬地面に足をつけた瞬間に、レーザーを撃ち込んで二人を大爆発の中に呑み込ませる。
「ウワァァッ!」
爆炎の中に姿を消すゼロとジード。――そう思われたが、
[ウルトラマンジード! マグニフィセント!!]
炎を吹き飛ばしてジード・マグニフィセントが仁王立ちした! その傍らには通常形態に戻ったゼロが無傷で直立している。二人の風格漂うたたずまいは戦いを見守る人を圧倒させた!
『「しぶといッ!」』
それでもグランドザイゴーグはもう一度レーザー光線で攻撃しようとする。だが、
『エメリウムスラッシュ!』
「『メガエレクトリックホーン!!」』
先にゼロとジードのダブル攻撃が命中し、しびれて動きが止まった。
『「ぬぐッ!」』
『とどめだッ!』
そのわずかな間にゼロが二本のスラッガーを自身のカラータイマーにジョイント。ジードは両腕にエネルギーをたぎらせてL字に組んだ。
『ゼロツインシュートぉ!』
「『ビッグバスタウェイ!!」』
そして繰り出された、二条の極大光線! それがグランドザイゴーグに直撃!
「グギャアアァァァァ――――――!! グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
グランドザイゴーグは内側から光のエネルギーがあふれ出し、抑え切れずに爆散! 大量の鉄片を飛び散らせながら、跡形もなく消え去ったのであった。
『へへッ、やったなジード!』
『うん、ありがとうゼロ!』
見事に敵を粉砕したゼロとジードは、がっちりと手を握り合わせて再会と勝利を喜び合った。
× × ×
ゼロとジードの二大ウルトラ戦士がグランドザイゴーグを撃破した瞬間を見届けた材木座が大喜びした。
「おおッ! 謎のウルトラマンの加勢により悪は滅び去った! いやぁ安心安心。さて、荷物を取りに一旦戻るか……」
すっかり安堵し切って、総武高校に引き返そうと振り向いた彼の目に、ある光景が飛び込んできた。
「あの巨人はジードの仲間? だよね。助かってよかったぁ~」
坂道の真ん中で、材木座と同じく避難中だったいろはがジードたちの方を見上げて胸を撫で下ろしていた。が、そこに戦闘の衝撃でサイドブレーキが壊れたのであろう、無人のトラックが彼女めがけ突っ込んできているのだ! よそ見をしているいろははそのことに気づいていない!
そうと分かった瞬間、材木座は咄嗟に身体が動いていた。
「あッ! 危なぁぁ――――いッ!」
前に飛び出して彼女をかばおうとする!
――そうしようと踏み出した足が、散乱したゴミの中のバナナの皮を踏んづけて思いっきり滑った。
「おふぅッ!? とととッ!」
すっ転びかけた材木座だがけんけんしながら踏みとどまり、どうにか停止。いろはの方は、すんでのところで飛び出してきたゼナによって救われた。
「きゃっ!?」
『大丈夫か? 危なかったな』
「あ、ありがとうございます……。何で腹話術?」
いろはに怪我はなかったのだが……材木座の方は、滑った拍子に激闘の余波で壁がもろくなっている建物の側に来てしまい、更に運の悪いことに、ちょうどその瞬間に建物が崩壊を起こした。
「へ?」
そのひと言を最後に、材木座の頭上に瓦礫の雪崩が降りかかった。
× × ×
握手を交わしていたゼロとジードだが、どこからか起こった悲鳴によって振り返る。
「きゃああああっ!?」
「誰か瓦礫の下敷きになったぞ!」
八幡がジードの視界を介して、瓦礫の山からはみ出た腕を見つける。その袖は、見覚えのあるコートのものだとすぐに分かった。
『「材木座ッ!」』
『えッ!? 材木座君が下敷きに!?』
驚愕して動揺するジードたち。その様子に、ゼロがおおまかな事情を察した。
『友達が瓦礫の下敷きになったのか!』
『「友達……まぁ一応はそんなところかな。知らない仲じゃないし……」』
『やばいな、あれじゃ助からねぇぜ……』
数々の戦場を潜り抜けた戦士のゼロは、材木座が致命傷を負ったとすぐに理解した。そのひと言に、八幡も流石に青ざめる。
『「そんな、嘘だろ……。よりによって一番死ななそうな奴が……」』
『材木座君……』
あまりにあっけなく突きつけられた材木座の最期に呆然とする八幡とジード。――だが、そこでゼロがドンと胸を叩いた。
『だが任せとけ! お前らの友達を、この俺が死なせやしねぇからよ!』
『「えッ!? ……それってまさか!?」』
八幡は似たようなシチュエーションに覚えがあり、まさかと振り返った。
「シェアッ!」
彼が何か言うより早く、ゼロが飛び出していた。
× × ×
――目を覚ました材木座は、星雲荘に運び込まれてベッドの上に寝かされていた。
「知らない天井だ……。いやほんとにどこ!?」
意識がはっきりとしてガバッと飛び起きる材木座。その周囲を、八幡たち奉仕部の三人やライハたちが囲んでいた。
「おお八幡。それに奉仕部の二人も……そっちの女の人はどなた? そこの白黒なのは人間!?」
「ひゃあッ!」
いきなり大声を出した材木座にびっくりするペガ。しかし彼以上に材木座は驚くこととなる。
『ようやく目ぇ覚ましたか、材木座義輝。もう大体のとこは、そこの八幡たちから伺ったぜ』
「へ? 今、誰がしゃべったの?」
急にどこからか聞こえてきた声に材木座はきょとんとした。八幡に振り返るが、彼はブンブンと首を振る。
何故か周りは皆、微妙な苦笑を浮かべて自分を見つめていた。
「あ、あの……どうして皆さん僕に注目してるのでせう……」
『そいつはな、俺がお前と融合したからだぜ。お前の命を救うために』
「ぬはッ!? また声がした! まさかどこかおかしくなった!?」
再び聞こえた声に狼狽する材木座を落ち着かせるように、八幡がそっと呼びかけた。
「材木座、その声はな……お前の内側から聞こえてきてるんだよ。お前がおかしくなったんじゃないから安心しろ」
「は、はい? 内側……?」
と言われても何のことだか分からない材木座だが、自分の手が突然勝手に動き、自分の眼鏡を外した。
そして口から、自分のものではない『声』が言葉を紡いだ。
「俺はゼロ! さっきのウルトラマンだ。今は義輝、お前の身体と一心同体となってる。こっちにいる間はよろしくな」
材木座は眼鏡を戻すと――腹の底から絶叫を発した。
「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――――――!!?」
『ウルトラストーリーナビ!』
結衣「今回は『ウルトラマンゼロ外伝 キラーザビートスター』STAGEⅠ「鋼鉄の宇宙」だよ!」
結衣「映画『ウルトラマンゼロ』から一年後のアナザースペースで、新しい宇宙警備隊を結成したゼロは仲間たちと一緒にエメラナ姫と再会することになってたの。だけどエメラナ姫はジャンボットと一緒に謎の人工天球に捕まっちゃって、天球は違う宇宙にワープ! その先はM78ワールドで、今度はZAPのレイとヒュウガ船長が捕まっちゃう! 天球の内部は無人の世界で、色んなロボット怪獣がレイたちに襲い掛かってくる。この天球の正体と目的は……!? っていうお話しだよ」
結衣「『キラーザビートスター』は映画の『ウルトラマンゼロ』と『ウルトラマンサーガ』の間をつなぐエピソードとして作られたOVだよ。ここで前作の最後に結成されたウルティメイトフォースゼロの活躍と、『サーガ』につながる事件の一端が描かれたの」
結衣「この作品でウルティメイトフォースの五番目の仲間、ジャンナインがデビューしたんだよ。でも最初はジャンキラーって名前で、天球の黒幕ビートスターが差し向けた敵だったの……」
ジード『『キラーザビートスター』は二本立ての前後編。天球の正体やジャンキラーとゼロたちの関わりの顛末は、後編に引き継がれることとなるよ』
結衣「それじゃ、次回をよろしくね!」
材木座「いやいやいや! えぇッ!? 我が身体にさっきのウルトラマン……そして八幡がウルトラマンジード……。わ、訳が分かんないよぉ!」
ゼロ(in材木座)「だぁからぁ、何度も言ってるだろ? お前は今日から、ウルトラマンゼロとなったんだ! もっとシャキッとしな!」
材木座「そ、そんなこと勝手に決めないでよ!? いつこっちがそんなの了承したのさぁ!?」
ゼロ(in材木座)「仕方ねぇだろ、お前意識なかったんだから。俺が命を預けなきゃ、そのままお陀仏だったんだぜ」
材木座「そんなこと言われたって……! それって我も戦うってこと!? 嫌だぁそんなぁぁぁぁ!」
ゼロ(in材木座)「お前は身を挺して女の子を助けようとしたんだろ! そういうことする奴には出来ないことじゃねぇんだ!」
結衣「……何て言うか、一つの身体で言い争ってるのって……」
雪乃「ええ。すごくシュールね……」