やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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彼らは今ここに流星の誓いを結ぶ。(A)

 

 星雲荘に材木座が運び込まれてからしばらく経過。ようやく落ち着いた材木座は部屋の中央で椅子に座らされ、金属製の円筒の装置を頭にすっぽりと被らされていた。

 すると星雲荘のモニターに、瓦礫に押し潰されて圧死するはずだった材木座を、八幡に対するジードのように彼と融合することで蘇生させたゼロの姿が大きく表示された。こうすることで、材木座の口を介さずにゼロと直接話が出来るのだ。

 

『ってな訳で、俺がウルトラマンゼロだ! 改めてよろしくな!』

 

 初対面となる八幡たちに対して快活に挨拶したゼロ。それから、新たに星雲荘に招かれたゼナと陽乃のAIBコンビの内、ゼナがゼロに向かって告げる。

 

『ウルトラマンゼロ、我々の要請に応じてくれて感謝する』

『僕からも、改めてありがとう。お陰で助かったよ』

『なぁーに、いいってことよ! 危ない時はお互いさまだぜ』

 

 ジードからのお礼にも、ゼロは気さくな調子で返した。

 

『そんでリク……いや、今はジードって呼んだ方がいいのか?』

『どっちでも構いませんよ。どっちも僕の名前です』

『んじゃあジード、また厄介な奴に絡まれてるみたいだな。けど安心しな! こっからはこの俺が力を貸す。一緒にレイデュエスとかいう奴をぶっ飛ばして、この地球に平和を取り戻そうぜ!』

『はいッ!』

 

 ウルトラマン同士で激励し合うゼロとジード。その様子をながめた結衣が、ペガにそっと尋ねかけた。

 

「ペガっち、あのゼロって人ってそんなに強いの? ゼナさんがすごい期待してたみたいだけど」

 

 聞かれたペガは大きくうなずく。

 

「うん! ペガはよく知らないけど、今までいくつもの強敵を倒したんだって。ベリアルだって、リクとゼロが協力してやっつけたんだ。前は怪我を引きずってて本調子じゃなかったみたいだけど、今は万全の状態だし、これならレイデュエスだって敵じゃないよ!」

「そうなんだ……!」

 

 納得した結衣がゼロに、熱い期待の眼差しを送る。

 

「戦いはどんどん激しくなるんだもの……。強い味方が来てくれたなら、ヒッキーもこれ以上傷つかなくていいよね」

 

 そう喜んでいる結衣だが……視線がモニターから下に向くと、途端に表情が渋くなった。

 

「……だけど、よりによって中二なんかと融合しちゃって大丈夫なの?」

 

 その独白を耳にしたゼナが、ゼロに言う。

 

『確かに、また不測の事態に見舞われたようだな。こう言っては悪いが、何の戦闘経験もない一般人に命を分け与えて、戦いに支障は出ないのか?』

 

 危惧するゼナに対して、ゼロは得意げに返答した。

 

『なぁーに、その辺はこっちに任せとけって! この俺がバシッと指導してやるからよ。頼んだぜ、義輝!』

 

 威勢よく材木座に呼びかけたゼロだが……当の材木座は椅子の上で肩身狭そうに縮こまって、周りに忙しなく目を走らせるばかりだった。

 

『っておい! 何キョロキョロしてんだ! 聞いてんだから、ひと言でも返事しろっての!』

「あ、あ、その……」

 

 ゼロが肩を落としながらもう一度声を掛けても、材木座は声を詰まらせるだけ。そんな彼に代わって八幡が口を開いた。

 

「すいません、こいつこんなナリして極度のコミュ障で……」

『こみゅしょう?』

「人見知りってことです。だから知らない人間とはまともに会話できないんで……知ってても出来る訳でもないんですけど」

 

 八幡の言葉にゼロは絶句していた。

 

『おいおい……こりゃ、予想以上にてこずりそうじゃねぇか……』

「前途多難ね……」

[戦闘に大いに支障を来たすことが、計算するまでもなく予測できます]

 

 実に頼りない様子の材木座に、ライハやレムたちは呆れ返ってしまっていた。

 八幡も脂汗ダラダラの材木座を一瞥して、はぁと深いため息を吐いたのであった。

 

 

 

『彼らは今ここに流星の誓いを結ぶ。』

 

 

 

 緊張のあまり、今にもひきつけを起こしそうであった材木座のことは八幡に任せ、他の面々は席を外すこととなった。今の材木座に対しては、いるだけでプレッシャーになりかねない。

 結衣はライハとペガとテーブルを囲んで、ある話をしていた。

 

「それで、八幡から返事はもらえたの?」

 

 結衣が八幡に行った告白。その結果をライハが尋ねた。

 

「それがですね……」

 

 結衣が答えかけるが、それに先んじてペガが若干憤慨しながら告げた。

 

「それが八幡ったらひどいんだよ! 『今はそういうこと考えてられないし、気持ちの整理もつかないから、悪いけどもうしばらく待ってくれ』なんて言って先延ばししたんだ! 結衣が覚悟を決めて告白したってのに、男らしくないよね!」

 

 と憤るペガだが、当の結衣本人が八幡を擁護する。

 

「しょうがないよ。ヒッキーが色々大変だってことを知ってて、それであたしの方がわがまま言ったんだもん。あたしは全然気にしてないよ。怒ってくれてありがと、ペガっち」

 

 その言葉通り、結衣の表情は晴れ晴れとしていた。

 

「あたし、ヒッキーが答え出してくれるのを待ってるよ。それでふられたとしても……ヒッキーから離れたりはしない。今が駄目だったとしても、それから先がどうなるかは分からないんだし! 少なくともヒッキーとはいい関係のままでいたい……だってあたしたち、『恋人』になれなくても、『友達』だもんね!」

「結衣……」

 

 朗らかな調子で語る結衣に、ペガとライハは自然と口元が綻んだ。

 

「……結衣、あなたも強くなったわね」

「え? そ、そうですか?」

「初め会った時は、もっと軽率で、それでいて臆病な感じだったもの。だけどすっかりと芯が強くなった。八幡だけじゃなくて、あなたも成長したのね」

「い、いや~、それほどでもないですよぉ」

 

 称賛されて照れ隠しにはにかむ結衣。しかしその一方で、ライハはふと虚空に視線をやって眉間に皺を寄せた。

 

「それで……雪乃の方はどうなのかしらね……」

 

 

 × × ×

 

 

 別室の雪乃のところには、陽乃が手をヒラヒラさせながら訪れていた。

 

「雪乃ちゃーん、ちょぉっとお話ししたいことがあるんだけど」

「姉さん……一体何の用?」

「あれぇ、何だか元気ないねぇ。いつもならもっととげとげしい目つきでわたしを見るのに。まぁそれはいいや」

 

 どこか弱々しい態度で振り向いたことを指摘してくる陽乃に、雪乃は一瞬肩を震わせたが、陽乃は構わずに続けた。

 

「聞いたんだけど、新しい生徒会長決まったんだってね。当選しないようにすることを依頼してきた子を説得して。それやったのは比企谷くんで、雪乃ちゃんは別の候補を立てるつもりだったんだって? ふ~ん」

「……何が言いたいの」

 

 含みのある口調と視線の陽乃に雪乃が問い返すと、陽乃は嘲るような笑みを見せた。

 

「いやぁ、雪乃ちゃん自身が立候補するんじゃないんだって思ってね。そうすると思ったのに。それとも、出来なかったの? 『誰もそう言ってくれなかった』から」

「……!」

「雪乃ちゃんはいいよね~。いつも他の誰かがやってくれて、自分からは行動を起こさない。今だって、比企谷くんが一人でフュージョンライズできるようになってからは助けてあげてないんでしょ。『求められない』から。あの由比ヶ浜ちゃんとは違って」

 

 陽乃のなじるような言葉の連続に、雪乃は思わずうつむいた。だが陽乃の勢いは緩まない。

 

「一人暮らしするようになってから何か変わったと思ったのに、結局雪乃ちゃんは昔のままなんだ。あーあ……つまんないの」

 

 捨て台詞を残して、陽乃はクルリと背を向けて部屋から出ていった。雪乃は、その背中を見つめることも出来ないでたたずんでいた。

 退室した陽乃の行き先では、ゼナが彼女を待っていた。

 

『随分と妹に辛辣な言葉を浴びせるんだな』

「立ち聞きしてたんですか、ゼナ先輩。趣味悪いですよ?」

『そんなつもりではなかったんだがな。……あんなことを言ってよかったのか? 妹の心が折れるかもしれないぞ』

 

 そう言われると、陽乃は苦笑をこぼした。雪乃に向けたのとは違う、攻撃的ではなく力のない寂しげな笑みであった。

 

「いいんですよ。雪乃ちゃんってあれですぐ人に甘えちゃうんだから、突き放すくらいがちょうどいいんです。それに……折れたなら折れたで、戦いからきっぱり手を引いてくれた方が安心ですし」

『まぁ……そうだな。本来、一般人がこの世界に関わるべきではない。お前もそうなのだが』

「わたしはいいじゃないですか~。姉が妹を守ろうとするのがおかしいことなんですか?」

 

 ゼナの付与したひと言に、陽乃は余裕を持って返した。それから、瞳の中に暗い情熱を灯す。

 

「雪乃ちゃんの世界を壊そうとする奴には……消えてもらわなきゃ」

 

 

 × × ×

 

 

 材木座は未だに肩を落として重い空気を漂わせていた。それを見ていられず、八幡があれこれ言葉を尽くして励まそうとしている。

 

「いつまでもそんな顔するなよな、材木座。俺だって初めは、ウルトラマンになって戦えなんて冗談じゃねぇ、何でこんなことにとか思ってばっかだったよ。だけどこんな俺でも、何だかんだで戦えてたんだしさ。要は勢いと慣れだ! お前には経験豊富な戦士がついてるんだし、自分で思ってるよりも何とかなるさ」

 

 と説得しながら、何で俺がこいつのためにこんなことを……これが戸塚だったらよかったのに……なんて内心で毒づく八幡。すると材木座は、彼の顔を見上げて言った。

 

「わ、我はお前とは違うぞ、八幡……」

「ん……?」

「怖い……怖いのだよ、あんな戦いをするなんて……!」

 

 材木座は震えが止まらない自分の肩を抱き寄せて縮こまる。

 

「ウルトラマンジードの戦いは、ずっと見ていた……。八幡、お前は何度も死にそうになってたではないか! あ、あんなのを我がするなんて……考えただけで震えが止まらない……!」

「おいおい……何弱気なこと言ってんだ。剣豪将軍なんだろ? 日頃から自称してるじゃねぇか。それにこないだなんか、もし学校にテロリストが来たら我が八面六臂の活躍で撃退してくれるだの何だのと寝言を……もとい決意を口にしてたろ。あの時の威勢はどこ行ったんだよ」

「八幡、お前だって分かってるだろう……。そんなのはただの妄想だ……。もし現実になったとしたら、我は足がすくむだけで何も出来ない……自分で分かってる。今と同じだ……。剣豪将軍なんて、口だけだ……」

 

 戦いが起こる前から既に怯え切っている材木座に、八幡はどうしたもんかと頭を悩ませた。

 すると彼に代わって、ジードが材木座に呼びかけた。

 

『材木座君、怖いのは僕だって同じだ』

「え……?」

『ウルトラマンだって生きた人間だ。攻撃されたら痛いし、死ぬのは怖い。だけど僕がやらなかったら、もっとたくさんの人が同じ思いをするから、僕は戦いに飛び込むんだ。恐れるのは恥ずかしいことじゃない、当たり前のことだよ。そこから一歩踏み出すだけでいいんだ。ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!』

「そ、そうか……。ジードも同じ……」

 

 己の信条を口にして説得するジード。材木座も理解はしたようだが、やはり言葉だけでは、完全に心を晴らすことは出来ないようだ。

 そこでゼロも材木座に説く。

 

『まぁいきなりの話なんだし、心の整理がつかないってのは当然だ。レイトだってそうだったしな。だが、何事もまずは一歩を踏み出してから始まるんだ! なぁに、お前にゃ俺がついてる。どんなことがあろうとも、俺はお前を裏切らねぇぜ。何たって、文字通り一心同体になったんだからな!』

「……」

 

 最後に、八幡が次の通り言い聞かせた。

 

「まぁ、何だ。とりあえずは言われた通りにやってみろよ。うだうだ悩むのはそれからでも遅くねぇぞ。むしろ早いくらいだ」

「八幡……!」

「一応はウルトラマンに憑依された先輩になるからな。全くもって不本意だが、アドバイスくらいならしてやってもいい。先達が身近にいるお前は、俺よりも恵まれた立場にあるんだぜ?」

 

 三者による説得によって、材木座も少しは前向きになったようであった。すっくと立ち上がって眼鏡を指で押さえる。

 

「ふ……ふふ。そこまで言うのだったら仕方あるまい。この真打ち、剣豪将軍材木座義輝の華々しい活躍の始まりをその目にしかと焼きつけてやろうではないか! 悪しき者どもなど全て、この我の正義と義侠の前にひれ伏せさせてくれようぞ! ハァ―――――ハハハハハァーッ!!」

『よっし! その意気だぜ義輝!』

「……前向きになったらなったでうっぜ……。変わり身早すぎだろ」

 

 誉めそやすゼロとは対照的に辟易する八幡。しかし材木座のオーバーな言動と振る舞いは、己自身を鼓舞するためでもあるのだろうなとそう感じていた。

 

 

 × × ×

 

 

 衛星軌道上に潜伏している円盤の中では、レイデュエス一味がジードの助太刀に駆けつけた、新たなる戦士ゼロについて相談し合っていた。

 

「くそ……あのウルトラヤンキー野郎が! あと少しのところだったというのにッ……!!」

 

 レイデュエスはもう少しでジードにとどめが刺せた、最大の好機を妨害されたことでひどくいら立っていた。それをなだめるようにルドレイが告げる。

 

『しかし、ウルトラマンゼロはその後、死にかかった人間を救うために融合したようです』

 

 円盤のモニターには隠し撮りした、ゼロが材木座と融合して彼を助けた場面が表示されていた。

 

『しかもこいつも、あの地球人比企谷八幡と近しい人物です』

『ですがこいつ、口ばっかりが達者なだけの小太りなガキです。調査結果にそのようにあります』

 

 八幡の身辺調査内容から材木座の項目に目を通したオガレスがせせら笑う。

 

『こんな見た目も中身もどうかしてる奴に憑依など、ウルトラマンゼロもヤキが回ったみたいですな!』

 

 と嘲笑するオガレスだったが――それをレイデュエスに一喝された。

 

「アホがッ!」

『えッ……!?』

「比企谷八幡の時もそんなこと言って、こんなことになってんだろうがッ! 学習しろッ!」

『す、すみませんでした!』

 

 オガレスは慌てて平謝り。それに目もくれず、レイデュエスはモニター上の材木座とゼロの顔写真をにらみつける。

 

「もう油断はしない。こいつらは融合したばかりでまだ足並みがそろっていないはず。排除するなら、今の内がチャンスだ……」

 

 そうつぶやいて、レイデュエスはニヤ……と邪な笑みを浮かべた。

 

 

 × × ×

 

 

 翌日の放課後、材木座はジード部によって星雲荘に連れられて、そこでトレーニングを受ける羽目となっていた。

 

「八十二……八十三……もっとペース上げなさい。こんな調子じゃ日付変わっちゃうわよ」

「ひ、ひぃ、ひぃ……」

 

 ライハに背中に乗られた状態で腕立て伏せをしている材木座。大分疲弊している様子だが、ライハは手加減など一切なかった。

 

「頑張ってね中二~。これも自分のためなんだから」

「己を鍛えておかないと、いざという時に後悔するわよ」

 

 それを見守る結衣と雪乃だが、気のせいだろうか、対応がそっけないというか淡泊というか。

 

「こ、こんなつらい目に遭うなんてぇ……やっぱりウルトラマンになんてならない方がよかったんじゃ……」

 

 昨日の今日で早くもくじけそうな材木座を励ます八幡。

 

「弱音吐いてないで、もっと頑張れよ。お前見た目の割には運動神経いいし、もっとやれるだろ? それにこういう状況好きだろ」

「い、いや、実際やってみると苦しいばっかりで、楽しむ余裕なんて……」

「無駄口叩いてないで集中しなさい。まずはそのたるんだ身体を引き締めないと、後々厳しいわよ」

「ひぃ~!」

 

 厳しい言葉を投げかけるライハに材木座が悲鳴を上げた時、それは起こった。

 ドゴォンッ!

 

「な、何!?」

 

 突然の轟音とともに、星雲荘全体が激しく揺れたのだ。結衣たちは一斉に驚く。

 

「今の地震!?」

[星雲荘は宇宙船。地震では揺れません]

 

 レムが否定し、モニターに地上の状況を映し出した。

 

[外部からの攻撃を受けています]

「攻撃!?」

 

 地上では、星雲荘が潜っている展望台前の地面に、レイデュエス一味の円盤がレーザーの砲撃を撃ち込んでいた!

 

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