やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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ジードの命よ!キングの奇跡!!(A)

 

 総武高校と海浜総合高校の合同によるクリスマスイベントが近づく中、八幡たちは星雲荘を訪れたゼナとある相談をしていた。

 

「更なる戦力増強……ですか?」

 

 八幡がゼナから言われた言葉をそのままに繰り返すと、ゼナはコクリとうなずいた。

 

『我々AIBは強力な助っ人としてウルトラマンゼロを招聘したが、やはりレイデュエス一味も黙ってはいなかった。対抗して、今度はフュージョンライズできる人員を増やしてきた』

「あれはとんでもなかったですね……」

 

 雪乃が、一度に三体もそろったレイデュエス融合獣の光景を思い返して険しい顔となった。結衣は恐ろしい想像をして身体を震わせる。

 

「数を増やせるんだったら、これからもっとたくさんの融合獣が出てくるようになるんじゃないかな……」

[その可能性は低いでしょう]

 

 しかしそれはレムが否定した。

 

[それが簡単に出来ることならば、もっと早くに行っているはずです。恐らくは、レイデュエスにとっても易々とは出来ない奥の手だと推測されます]

「そっかぁ」

『しかし、逆を言えば奥の手を用いるほど手段を選ばなくなっているということでもある。別の方向から戦力を増やしてくることも考えられる』

 

 ゼナはあくまで油断はしていなかった。

 

『故に、こちらもウルトラマンゼロを加えただけで終わっていてはいけない。それに、この千葉市に蓄積されているダメージのこともある。君たちも気づいていることだろう』

「!」

 

 今のひと言により、八幡たちの表情が変わった。

 レイデュエスの狙いがジード=八幡の抹殺に切り替わったことにより、彼の暮らすこの町が戦場になることが多くなってしまった。それにより、千葉市は再建が間に合わないほどの被害を受けるようになってしまっている。ジードたちの存在が人々の心の支えになっているとはいえ、それでも怪獣被害を恐れて千葉市を捨てる人は少しずつ増えてきているのだ。八幡たちも、この状況が続くのは極めて良くないことは感じていた。

 

『いつまでもレイデュエスをのさばらせていては、状況は悪くなる一方だ。以上のことから、我々はレイデュエスに完全にとどめを刺す作戦を準備中だ。それにはジード、君の力も必要となる』

「完全にとどめを刺す……って、あんなにしつこい奴にどうやるんですか?」

 

 質問するペガ。レイデュエスは致命傷を与えても平然としているほどの強力な再生能力がある。そのために何度戦っても倒し切れずに今日まで争いが続いているのだ。

 

『その答えは、これだ』

 

 ゼナがそうつぶやくと、星雲荘のモニターに明かりが灯り、別の宇宙との超量子通信がつなげられた。通信の相手は、白衣を着た女性。

 

『紹介しよう。彼女はピット星人トリィ=ティブ。リトルスター研究の第一人者だ』

『そちらの地球の皆さん、はじめまして。ゼナさん、頼まれたゼガンカプセルは出来上がってるわ。後はそっちに転送するだけです』

 

 トリィ=ティブという女性はゼナにそう告げた。

 

「ゼガン?」

 

 八幡たちが何のことかと尋ねると、レムがモニターの半分に青い怪獣の写真を表示させながら説明した。

 

[時空破壊神ゼガン。シャドー星人が作り出した生体最終兵器です。その光線には、空間をねじ曲げて異次元の扉を開く強力な効果があります]

 

 ライハとジードがゼガンのことを思い返す。

 

「ウルトラマンベリアルとの決戦時に、その能力を使ってベリアルを異次元空間に追放したんだったわね」

『そうか! それと同じことをしようという訳ですね』

 

 ゼナはおもむろにうなずいて肯定した。

 

『ゼガンのオリジナルはベリアルの攻撃によってもう修復できないほどに粉砕されてしまったが、怪獣カプセル化してライザーを用いることにより復活させられることが判明した。ゼガンカプセルはもちろん、君に使ってもらう。比企谷八幡』

「俺が……怪獣を召喚するんですか?」

 

 意外そうな顔をする八幡。これまでの怪獣カプセルは、敵が用いてこちらを脅かす悪魔の兵器であった。

 

『確かに怪獣カプセルには散々苦しめられたが、今度はこちらの味方につけるのだ。ゼガンの能力ならば、レイデュエスもひとたまりもあるまい』

「なるほど! どんなに生き返っても、別の空間に閉じ込めちゃえば意味ありませんものね!」

 

 結衣や雪乃は、邪悪なるレイデュエスを完全に倒せると聞いて喜んでいる。

 

『そういうことだ。ゼガンカプセルはこちらで保管し、作戦決行時に君に渡す。この作戦は、レイデュエスには気取られないように注意してほしい』

『分かりました!』

 

 ジードもはりきって返事したが――当の八幡はどこか、浮かない顔つきであった。

 

 

 八幡たちに作戦内容を伝達した後、ゼナはAIBの本部へと帰投した。

 

『ゼガンカプセルの転送はどうなっている?』

 

 ゼナは一番に、カプセルの受け取りを担当しているプロテ星人に尋ねかけた。傍らにペダン星人を控えさせているプロテ星人は端的に答える。

 

『受け取り成功です。今は厳重に保管しています』

『よし。万が一のことがないよう、しっかりと見張っていてくれ』

『了解しました』

 

 ゼナと受け答えしているプロテ星人からペダン星人が離れる。

 

「……ふふ……」

 

 ――そのペダン星のヘルメットに隠された顔……レイデュエスがニヤリとほくそ笑んだ。

 

 

 

『ジードの命よ!キングの奇跡!!』

 

 

 

 ゼナが帰っていった後、結衣がふとこんなことをつぶやいた。

 

「カプセルかぁ……。そういえば、最近はリトルスターが見つかってないね。もう他にはないのかな?」

 

 するとレムが、こう告げた。

 

[リトルスターのことですが、一つ判明したことがあります]

「え? 何?」

 

 何やら重要そうな話に、皆の注目がレムに集まった。その中でレムが語り出す。

 

[以前にキングカプセルのリトルスターが飛散したことは話しましたが、調査の結果、消滅した訳ではないことが確定しました]

『そうだったの!?』

 

 ジードを始めとして、皆が驚く。レムはモニターに、千葉市の地図を表示する。

 

[カプセルから弾き飛ばされたリトルスターは確かに散り散りになりましたが、消えることなくそのまま地上、千葉市を中心とした一帯に落下。その破片一つ一つが再生し、別の性質と変化したのが、この地球で発見されたリトルスターの正体です]

「えっ、そうだったんだ!!」

「だから千葉の人たちばかりが発症してたのね……」

 

 結衣やライハが驚愕。まさか消失したと思われていたキングカプセルのリトルスターが、こんな形で手元にあったとは。

 しかしここでペガが疑問を口にする。

 

「でも、リトルスターって自然に再生するものなのかな? 確か、幼年期放射ってエネルギーが必要なんでしょ?」

 

 それに回答したのは、それまで黙って話を聞いていたゼロ。

 

「キングのじいさんが何かしたんじゃねぇか?」

「え?」

「スターゲートはじいさんにつないでもらったんだろ? そん時にあのじいさんが何か細工しててもおかしくねぇぜ。陰ながら若い奴の手助けするのが趣味みたいなお人だしな」

『でも、いくらウルトラマンキングでもそんなこと出来るのかな……』

 

 流石にジードが半信半疑でいると、ゼロはきっぱりと言い切った。

 

「多分お前らが思ってる以上に、あのじいさん何でも出来るぞ」

『そうなのかな……。確かに、宇宙全部と融合して宇宙再生させるような人だけど……』

「それに、今重要なのはリトルスターの出処じゃねぇだろ。キングカプセル自体が元に戻るかどうかだ」

 

 とゼロが言い切ると、話はレムに戻る。

 

[あくまで推測ですが、四散したリトルスターの最も大きな破片はまだ見つかっていません。それが元のキングカプセルとなる可能性が高いです]

「なるほど……。そのリトルスターも、あたしたちの近くにいる誰かに宿ってるかもしれないってことだよね」

 

 リトルスターがカプセル以外では生命体の体内でしか安定しないという話を思い出しながら、結衣が思考する。

 

「誰の身体に宿ってるんだろう? すぐ見つける方法ってないのかな」

 

 それについて八幡が意見する。

 

「リトルスターを発症した奴は超能力が使えるようになるんだし、何か超常現象が起きたらそれが目印になるんだがな」

「そういえば、ウルトラマンキングのリトルスターは元々誰に宿っていたんですか?」

 

 雪乃が質問すると、ライハが小さく手を挙げた。

 

「私よ」

「そうだったんですか! じゃあライハさん、キングさんのリトルスターでどんなことが出来たのか教えて下さい! それと同じことが出来る人が宿主ですよ!」

 

 キングのリトルスターが与える超能力について、結衣たちは大なり小なり関心を寄せた。何せ、超人ウルトラマンの中でも伝説の超人と呼ばれているというウルトラマンキングの力の欠片なのだ。これまでのリトルスターとは比較にならないような、想像を絶する超能力なのだろう……と三人は予想した。

 果たして、ライハの回答は。

 

「私にリトルスターが宿ってた時は……全宇宙と一体化していたウルトラマンキングの声を聞くことが出来たわ」

「……」

「……そんな期待の目で見られても、これで終わりよ」

「……え? それだけ……?」

「ええ」

 

 違う意味で想像を超えた内容に、結衣たちは失望を隠せなかった。

 

「な、何なんですかそれ……。声が聞こえるだけなんて……」

「それだと、この宇宙だと発症しても何も起こらない……ということになるんじゃないかしら。ただ手が熱くなるだけで……」

「それはそれは、捜すの大変そうだな……」

 

 落胆し切っている八幡たちをジードが励ます。

 

『まぁ、ジーッとしててもドーにもならないよ。いつ、どこで、誰が発症するかも分からないけど、きっと必ずキングカプセルを再起動させられる時は来るはずだ。それまで行動あるのみだよ』

「まぁ、そうだな……」

 

 応じながらも、やはりやや疲れたようになったままの八幡であった。

 

 

 × × ×

 

 

 ゼガンカプセルがゼナたちの元に転送されてきた、その翌日。カプセルは保管庫に入れられ、八幡に渡される時が来るのを待つだけのはずであった。

 しかし事件は起こった!

 ドォォォォォンッ!

 

『何事だッ!』

 

 AIB本部のどこかからすさまじい爆音が響き渡り、職員たちは反射的にその場に伏した。その中でゼナはいち早く混乱をまとめ上げ、情報を集めながら現場へと急行する。

 爆発が起こったのは本部のエントランスであった。それによって壁に穴が開けられ、武装した大量の宇宙人が侵入してくる。

 

『さぁ、行け行けぃッ! 抵抗する者は構わず撃ってしまえ!』

『目的のブツを見つけ出すのだ!』

 

 指揮しているのはオガレスとルドレイ。他は集団宇宙人フック星人だ。レイデュエスが集めた兵隊のようである。

 AIB職員たちは慌てて銃を抜き、フック星人たちと銃撃戦にもつれ込む。そんな中でゼナは全体の指揮を執り、バリケードに隠れながら敵の様子を窺う。

 

『奴らは……!』

『レイデュエス一味の強襲です!』

 

 ネリル星人が焦った調子で告げた。ゼナは一味の目的を推察する。

 

『このタイミングでここを襲ってくるとは……狙いはゼガンカプセルか! しかし、何故そのことを知っているのだ……? 今度は、超量子通信が傍聴されていた痕跡はなかったのに……』

 

 一瞬訝しんだゼナは、ハッとあることに思い至った。

 

『まさか……! すまん、ここは任せた!』

 

 襲撃者たちへの応戦を現場の者たちに任せ、ゼナは急いでカプセルの保管庫へと走っていった。

 ……が、その途中、曲がり角から突き出てきた銃口が頭にピタリと向けられる。

 

『動くな』

『……!』

 

 銃を握っているのは……プロテ星人であった。

 

『考えたくなかったが……そういうことか。ウルトラマンゼロ招の情報を漏らしたのもお前なのだな』

『ふふふ……AIBにいたところでうだつは上がらない。しかしレイデュエスはウルトラマンジードを消して、不要となるウルトラカプセルは全て譲ってくれると約束してくれましたのでねぇ』

『愚か者め……!』

『何とでも言うがいい。さぁ、一番の邪魔者のあんたにも消えてもらおうか!』

 

 プロテ星人の引き金に掛けられている指に力がこもる。ゼナは銃撃をかわして反撃しようとタイミングを見計らうが、

 銃声は、全く別のところから起こった!

 

『ぐあッ!?』

 

 背後から膝の裏を撃たれ、姿勢が崩れるプロテ星人。その肩を、銃撃した陽乃が鷲掴みにして思い切り壁に叩きつけた。

 そのまま手早い動きで、銃口をプロテ星人の『眉間』に合わせる。

 

『なぁッ!?』

 

 真っ青になるプロテ星人。だが陽乃の瞳の方がはるかに冷え切っており、有無を言わさずに引き金を引いた。

 ダァンッ!

 

『ごぶッ……!』

 

 ――プロテ星人は、横から飛び込んできたゼナに殴り倒された。銃弾はすれすれで外れ、壁に弾痕を穿った。

 ギリギリのところでプロテ星人を助けたゼナは、陽乃に険しい眼差しを向ける。

 

『……そこまですることはないはずだ』

 

 非難したが、陽乃は平然と言い返した。

 

「前から思ってましたけど、ゼナ先輩って何だかんだ甘いですよね」

『……』

 

 ゼナと陽乃の視線が、真っ向からぶつかり合った。――だが、ゼナの方が先に顔をそらした。

 

『いや、今はこんなことをしている場合ではない。こいつや表の奴らは陽動だ。保管庫に急ぐぞ』

「了解です」

 

 それには従い、陽乃はゼナとともに保管庫へと走っていった。

 しかし、

 

『遅かったか……!』

 

 到着した時には既に保管庫はこじ開けられていて、カプセルは影も形もなくなっていた。

 

 

 × × ×

 

 

 その頃、八幡は総武高校でいろはと二人で話をしていた。

 

「いやー、まさかただでディスティニィーランドに行けることになるなんて思ってませんでした。いわゆる役得って奴ですねー」

 

 いろはの手に握られているのはディスティニィーランドの入場チケット。先ほど、平塚から譲ってもらったものである。

 合同クリスマスイベントを成功させるために一丸となって動き始めた奉仕部だが、現状の段階で彼らがまとめ上げた企画案と予算書を持参して平塚に相談したところ、「クリスマスの何たるかが分かっていない」という予想外の駄目出しを食らった。そして彼女から、ディスティニィーランドのクリスマスイベントを取材して勉強してくるようにと言いつけられたのである。

 いろはは結衣などは、遊園地に遊びに行けることを純粋に喜んでいたものだが……不意にいろはが、その目に不安の色を浮かべた。

 

「でも、こんな悠長なことをしてていいんでしょうかね? もうクリスマスまで一週間を切ってるのに、今の段階で取材だなんて……こんなペースで間に合うんでしょうか……?」

「やっぱ、失敗はしたくないか」

「そりゃそうですよ! 当然じゃないですか。わたし、笑われ者にはなりたくありません。それに、元々乗り気じゃなかったとはいえ、これでもやるからには責任ってものを少しは感じてますし……」

 

 遅々として進まないクリスマス企画進行について、いろはなりに真剣に心配しているようである。それを見て取った八幡は、彼女を励ますように告げた。

 

「確かに悠長な感じはある。けど今の俺たちの知識、情報じゃイベントをいまいち盛り上げられそうにないってのも確かなことだ。だからたとえ遅くとも、しっかりとしたリサーチをすべきなのは俺も同感だ。何、後悔だったら事が終わってからすりゃいいんだよ。まずは行動を起こすところから……世の中はジーッとしてても、ドーにもならないんだからな」

 

 そう語った八幡の横顔を、いろはがほけーと見上げている。

 

「……何だよ」

「ああいえ……前から思ってたんですけど、先輩のその口癖って、先輩のイメージにあんまり合ってないですよね」

 

 といろはは遠慮なく言ってきた。

 

「先輩ってむしろ、自分からは動かない感じです。だから、ちょっと意外かなって思って」

「確かに、元々はお前が言う通りだったよ。けど……この言葉をある人から教えてもらってな。色々あって、その通りに動くようにしてるんだ」

 

 苦笑を浮かべながら語る八幡。

 

「幼稚な言葉と思うかもしれないが、実際かなり大事なことだ。自ら働きかけてかなきゃ、自分の世界なんていい方向に進んでいかない。今なら、それがよく分かるぜ」

 

 八幡の語り口には、多分に実感が含まれていた。それを感じ取って、思わず八幡の顔に食い入るいろは。

 

「……先輩。先輩って……」

 

 そして何かを聞きかけるが――言い終える前に、八幡が怪訝な様子で顔を上げた。

 

「……?」

 

 この瞬間、八幡は何かの異変を感じ取っていた。

 

 

 × × ×

 

 

 AIB本部から抜け出したレイデュエスは、奪い取ったゼガンカプセルを起動していた。

 

「イッツ!」『キュウオッ! ピュアァァ――――!』

 

 装填ナックルに押し込み、二つ目のカプセルのスイッチを入れる。

 

「マイ!」『ウオォンッ、ウオォンッ……!』

 

 装填した二つのカプセルを、ブラッドライザーでスキャンしていく。

 

「ショウタイム!!」

フュージョンライズ!

 

 レイデュエスの肉体が魔人態に変貌し、ゼガンとロボット怪獣のビジョンを吸い込んでいく。

 

「ぬうあああぁぁぁぁッ!」

ゼガン! ギャラクトロン!

レイデュエス! ギャラクゼガン!!

 

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