やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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あの闇に約束の炎を灯せ。(A)

 

 地球の衛星軌道上に潜伏するレイデュエス一味の円盤。その中央ルームの玉座にレイデュエスが腰掛け、壁際には兵士のフック星人たちが整列する。その中で、オガレスとルドレイがレイデュエスにある人物を紹介していた。

 

『殿下、内通者のプロテ星人はAIBから追放されてしまいました』

『ですが新たな協力者が見つかりました! ご紹介します』

 

 左右に分かれた二人の後ろから前に出てきたのは、顔の半分ほども皮膚のヒダが占めている宇宙人。

 

「ほぉ、ゼラン星人か。本当にAIBを裏切るつもりなのか?」

『もちろんです。元より、機を見て他の星を出し抜くつもりで所属してましたので』

 

 ゼラン星人は薄ら笑いを浮かべながらそう答えた。

 

『ウルトラカプセルを全ていただけるというのなら、いくらでもお力添えしますとも。AIBのお人好しどもも、裏切り者が見つかってすぐに寝返りが起こるなどと思いもしまい』

「ハハハハッ! 何ともひどい奴だ。全くゼラン星人は嘘吐きだな」

 

 カカッと笑い飛ばしたレイデュエスは、不意に立ち上がってゼラン星人にゆっくり近づいていく。

 

『?』

「全く、本当に……」

 

 呆気にとられたゼラン星人の正面に立ったレイデュエスは――いきなりその耳に手を伸ばし、耳孔に仕込まれていた盗聴機カメラを奪い取った!

 

『あッ!?』

「ゼラン星人は嘘吐きだなぁッ!!」

 

 全員が驚愕する中、ただ一人レイデュエスは凶悪な笑みを取り上げたカメラのレンズに向けた。

 

 

『いかんッ!』

 

 AIB本部で、ゼラン星人のカメラから送信される映像を監視していたゼナたちは、モニターにいっぱいとなったレイデュエスの顔に激しく動揺した。

 陽乃は思わずマイクに飛びつき、ゼラン星人に向けて叫ぶ。

 

「逃げてっ!!」

『陽乃、離れろッ!』

 

 咄嗟に彼女をマイクから引き離すゼナ。直後に、電波に乗せられてきたレイデュエスの魔力によって機材が火を噴き始める。

 ゼナたちは全速力で脱出。直後にモニタールームは大爆発を起こした。

 

 

 ――円盤の中央ルームの床に、首と切り離されたゼラン星人の身体が横たわった。一部始終を目の当たりにしたオガレスとルドレイはしばし唖然としていたが、我に返ると冷や汗をかきながらレイデュエスにおべっかを使い出す。

 

『さ、流石は殿下! 正体を一瞬で見破られるとは!』

『そのご慧眼、まことに天晴れ……』

 

 レイデュエスは途端に目を怒らせ、二人をどつき倒した。

 

『あだッ!』

「のこのことスパイ連れてきやがってッ! このウスノロどもがッ! 俺の手を焼かせてばかりいるんじゃねぇよッ!!」

『も、申し訳ありませんッ!!』

 

 床に額をこすりつけて必死に謝罪するオガレスたち。それを冷え切った目で見下ろしたレイデュエスは、フンッと吐き捨てて踵を返した。

 

「ここは見つかった。すぐに座標を移すぞ。それからそいつを片づけておけッ!」

『ははぁッ!』

 

 深々と頭を下げるオガレスとルドレイを一顧だにせず、奥の部屋に下がっていこうとするレイデュエス。だが周りのフック星人たちが冷や汗混じりにこちらを見ているのに気がついて、不機嫌そうに歯ぎしりした。

 

「何を見てる……。お前らも役に立たないようなら、そいつみたいにして宇宙に放り捨てるからなッ! 肝に銘じとけッ!!」

 

 恐喝されたフック星人たちは慌てて敬礼。そしてレイデュエスが奥の部屋に移って姿が見えなくなってから、オガレスとルドレイは恐る恐る立ち上がった。

 

『ヒヤヒヤした……。最近の殿下はいら立たれてばかりだ』

『無理もあるまい……。ずっと負けが込んでるのだからな』

『一体いつまでこんな状態が続くのだろうか……』

『分かるもんか……』

 

 二人はどっと疲れた様子で、閉め切られた扉を見つめた。

 

 

 AIB本部で、ダンッ! と激しい音が鳴り響いた。

 力いっぱいにテーブルを握り拳で叩いた陽乃に、ゼナがいさめるように呼び掛ける。

 

『あまり荒れるな、陽乃。気持ちは分かるが……あいつも危険な任務であることは承知していた。感情を乱せば、いざという時に自分の命を危うくするぞ』

「大丈夫ですよ、ゼナ先輩……」

 

 うつむいていた陽乃が、ゆっくりと顔を上げる。

 

「感情を乱してなんかいません。冷静でいますよ……」

 

 その言葉の通り、陽乃の瞳は熱くなってはいなかった。――反対に、極寒の氷原のように静かに冷え切っていた。

 

 

 

『あの闇に約束の炎を灯せ。』

 

 

 

 総武高校の二学期の終業式。その二日後が、いよいよ海浜高校生徒会との合同クリスマスイベントである。八幡らは終業式後から明日に掛けて、イベントの大詰めを行う手筈となっている。

 イベントを開催するコミュニティセンターに向かう直前、八幡は平塚に呼び止められた。

 

「おお、比企谷」

「先生。何か用ですか?」

「いや、別に用というほどではないが、例のクリスマスイベントの進捗はどうなってるか少し気になったんでね。その後、順調か?」

「ええ、はい。どうにか当日には間に合いそうです」

 

 延々と進まない会議を繰り返すばかりであった総武・海浜の生徒会であったが、ディスティニィーランドの取材後、会議に臨む姿勢を入れ替えたいろはを中心として奉仕部が強い働きかけをしたことにより、ようやく会議は回り出した。そして今までの遅れを取り戻す勢いで準備が進められ、イベントは急ピッチで形になってきているのであった。

 それを聞いた平塚はほっと安心したような表情となる。

 

「そうか、成功しそうならそれで何よりだ。……しかし」

 

 平塚が不意に自分の顔をジロジロ観察してきたので、八幡はややたじろいだ。

 

「な、何ですか? 今更、俺の顔が変とか言うつもりじゃないでしょうね」

「いいや。変と言うよりは……大分マシな面構えになったなぁ、と感じたんだ」

「マシな?」

 

 きょとんとする八幡に、平塚は苦笑交じりに告げる。

 

「何しろ奉仕部に入れる前の君と来たら、それはもう腐った目をしていたからな。このままではこいつの将来はかなりまずいと、本気で心配したからこそ奉仕部に入れた訳だ。作文などきっかけに過ぎん」

「そ、そうだったんですか」

「しかし今は、目つきの悪さは相変わらずとはいえ、よどんだ雰囲気がなくなった。奉仕部での日々を通して、私が予想した以上に内面に大きな変化を起こしたみたいだな。もう私が世話を焼く必要がないというほどに……それはそれで少し寂しい気もするがな」

「はぁ……そうでしょうか」

 

 気の抜けたような返事をした八幡を、平塚はじっと見つめた。

 

「ただ……それは、『奉仕部』という場所だけが要因ではないみたいだが」

「へ!?」

 

 八幡は一瞬ドキリとして平塚に振り向き直る。

 

「君のひねくれ度合いは筋金入りだった。雪ノ下や由比ヶ浜だけに、ここまで君を変えることが出来たとは少し考えにくい。他に、私が知らないような人との関わりがあったのではないか?」

「えッ、い、いや~、何のことですか? ちょっと何言ってるかさっぱり……」

 

 核心を突いた質問をしてくる平塚に内心動揺しまくりの八幡であったが、平塚の方が笑い飛ばしてクルリと背を向けた。

 

「何てな。別に私は君の保護者ではない。どこの誰との関係があったとしても、いちいち関与しようなんて思わないさ。そんなことより、イベントの準備を頑張ってくれ」

「あッ、はい……」

 

 呆気にとられる八幡をその場に置いて、平塚は立ち去っていった。その後にペガがにゅっと顔を出す。

 

「ふぅ~、ちょっとヒヤヒヤしたよ。平塚先生、ペガたちのことに気づいたのかと思った」

『僕もドキッとしたよ。でも、他の人から見ても八幡って明るくなったように見えるのかな』

「毎日顔を見てるペガたちにはよく分からないけど、あんなことを言うからにはそうなんじゃないかな」

『そうなら、先生の言ったように、それは僕たちのお陰でもあるよね!』

 

 と得意げになるジードであるが――当の八幡は、何やら神妙な面持ちで何か考えに耽っていた。

 

 

 × × ×

 

 

 その日の準備の終了後、八幡たちは帰宅前に一度星雲荘に集合していた。

 

「ふぅ~……今日も一日疲れましたねぇ。イベントで何やるか決まったのはいいですけど、体力的にしんどいのはむしろそこからでしたね」

 

 どっと息を吐いてテーブルにもたれかかったのは……いろはであった。八幡は彼女に冷めた視線を向ける。

 

「……どうしてお前が当たり前かのようにいついてんだよ」

「えー? いいじゃないですかぁわたしにも秘密基地使わせて下さいよ~。仲間外れなんてしたら、先輩たちのことネットに晒しちゃいますよぉ?」

 

 さらっと脅してくるいろはに、八幡たち一同ははぁとため息を吐いた。

 ギャラクゼガンとの戦闘時、いろはは八幡がジードに変身するところを目撃していた。いろははそのことを秘密にしてくれることを約束したが、代わりに自分もジード部の仲間に入れることを要求してきたのだった。曰く、『バラしてもわたしに得はありませんし、それより地球を守る仲間になった方がずっとやり甲斐あるじゃないですか~!』とのこと。

 雪乃と結衣はじとっと八幡に目を向ける。

 

「駄目じゃないの、八幡くん。ちゃんと周りには気をつけないと」

「こんなこと繰り返してたら、いつかホントに秘密ばれちゃうよ、ハッチー!」

「いや、あん時は一刻を争う事態だったし……!」

「何だか八幡、良くないところもリクに似てきたわね。リクも不注意だったし……」

『そ、そのお陰でライハはここにいるんじゃないか!』

 

 八幡とジードが言い訳をしていると、ズイッといろはが話に割り込んできた。

 

「そんなことよりっ! 先輩たち、何さらっと下の名前で呼び合ってるんですかぁ!? 準備中は全然そんな素振りなかったのにぃ!」

「いえ、それは八幡くんが表だと嫌がるからで……」

「嫌がるって……はっ! 先輩、まさか隠れて二人と同時につき合ってると……!」

「そういうことじゃねぇよッ! そんな勘繰りされるから嫌なんだよ!」

「そういうの意識しすぎるのが良くないんじゃないかなぁハッチー」

 

 やいのやいの騒ぐ八幡に、雪乃が真顔になって忠告を向ける。

 

「でも真面目な話、八幡くんは本当に人の目には注意した方がいいわ。誰しもが口を閉ざしてくれるとは限らないのだから。秘密を守るには、知っている人数が少ないに越したことは……」

「お兄ちゃぁ―――んっ!!」

 

 言いかけている途中でいきなり虚空に穴が開き、中から八幡が毎日目にしている顔が飛び出してきた!

 

「おわぁ小町ッ!!?」

「勉強苦しいよぉ~! これ以上英単語詰め込んだら小町パンクしちゃうよ~! ふえぇん……!」

 

 皆が仰天する中、小町は八幡に抱き着いてすすり泣いた。

 

「いや、お前今どっから……っていうかこれって……!」

「……あれ? ここどこ? 何か白いのいるしっ!」

 

 冷静になった小町は星雲荘の内装や、ペガの姿に吃驚していた。

 

 

 × × ×

 

 

[――以上が、今日までの私たちの経緯となります]

 

 どこからともなく星雲荘に入り込んできた小町は、レムからおおまかな事情を聞いていた。

 

「はー、ふ~ん、そうだったんだぁ。お兄ちゃん何か小町に隠れてやってるな~って思ってたけど、そういうことだったんだ。あっ、皆さんどうも兄がお世話になってます!」

「いえいえ」

 

 納得した小町はライハたちにガバッとお辞儀した。その一方で、雪乃は八幡に厳しい視線を向ける。

 

「言った傍から……」

「今のは不可抗力だろッ! どう防げってんだよ! っていうか小町!」

 

 言い返した八幡が小町に振り向く。

 

「今の何だったんだ!? お前、どこから出てきたんだよ!」

「えー? うーん……小町にも分かんないけど、さっきまで家にいたはずだよ。でも勉強に詰まって、それでいっぱいいっぱいになっちゃって……気がついたらここに」

 

 小町は中学三年の受験生なので、この時期は追い込み中である。そのストレスで感情が昂ったのだろうが……そのせいで何が起こったのかは本人で理解していなかった。

 代わりに、レムが記録した映像から、急遽呼ばれた材木座の目を通してゼロが分析した。

 

「この空間の穴、マユの時と同じものだな。つまり、俺の力と同じってことだ」

[間違いなく、リトルスターの超能力によるものですね]

「お兄ちゃん、何か中二さん雰囲気違くない? 眼鏡なんか外しちゃって」

「今のあいつは二重人格みたいなことになってるからな」

 

 八幡が小町に答えている傍ら、雪乃は結衣と顔を合わせる。

 

「まさか、小町さんもリトルスターを発症するなんて……」

「リトルスターってまだ残ってたんだね。しかも小町ちゃんがなんて……」

 

 ペガはレムに質問を投げかける。

 

「でも、宇宙が違うとはいえ同じタイプのリトルスターの発症なんて初めてのことだよ。この場合、カプセルに移すことは出来るの?」

[リトルスターとカプセルの関連については私にも不明な部分はありますが、対応するカプセルならば存在します。譲渡の成功確率は99%です]

「それならいいんだが……」

 

 とつぶやく八幡。雪乃と結衣も密かに小町の心配をしていた。

 

「ええ。譲渡が出来なければ、小町さんの身が危ないままだものね、八幡くん」

「っていうかこうしちゃいられないよハッチー! 今まさに小町ちゃんが危ないよ!」

「ああ。俺もそれを考えてたとこ……」

 

 うなずきかけた八幡だが、そこに小町が首を突っ込んでくる。

 

「んん!? 雪乃さんに結衣さん、お兄ちゃんへの呼び方が……。お、お兄ちゃんっ! いつの間にお二人との仲をこんなに縮めて……もぉ~小町に言ってよぉ水臭いな~!」

「だぁからぁ! すぐそっち方向に話持ってこうとすんなって!」

 

 いろはに引き続きで、思わず声を荒げる八幡であった。が、小町の興奮は止まらない。

 

「でもでも! 聞いた限りじゃ、お二人と何度も協力して危機を乗り越えたんでしょ!? それってもうチェックメイト同然じゃ~ん! ねぇねぇ、結局どっちを選ぶの?」

「ちょっとは落ち着けってコラ!」

「い、今はわたしも仲間ですよっ!」

「今お前は何に張り合うつもりなんだ!?」

 

 いろはまで混ざってきてツッコミが忙しい八幡。雪乃と結衣の方は小町の言葉に照れてもじもじしている。

 これらをあきれ顔でながめていたゼロは、場を取り仕切るように八幡たちに呼びかけた。

 

「はしゃぐのはその辺にしな。そろそろ真面目になんなきゃ、騒いでなんかいられねぇ事態になるぜ」

『ああそうだ。きっとあの男は、これ以上のリトルスターを許そうとしないはずだ! 気を引き締めないと……!』

「それって、先輩たちの言った敵……!」

 

 ジードの言葉に、いろはがハッと息を呑んだ。

 

 

 × × ×

 

 

 ゼロたちの言う通り、レイデュエス一味は星雲荘から地表を貫いて昇るリトルスターの光を目ざとく見つけてもう行動に移っていた。

 

「既にリトルスター発症者は比企谷どもに接触してるか。だがこれ以上のウルトラカプセルなど許さんッ!」

 

 レイデュエスは八幡たちへの憎悪を駆り立てながらブラッドライザーを握り締めた。

 

「イッツ!」『ウオオォォ――――――――ン……!』

「マイ!」『グイイイイイィィィィィ……!』

「ショウタイム!!」

フュージョンライズ!

 

 レイデュエス魔人態が漆黒の鎧と武骨なロボットのビジョンを吸い込んで、レイデュエス融合獣に変身していく。

 

アーマードダークネス! インペライザー!

レイデュエス! インペリオダークネス!!

 

 鈍色と黒の入り混じった鋼鉄に、肩部に三連ガトリング砲、腕部に大剣とドリルで武装した鎧の怪物となる。闇黒の支配者の手によって生み出された悪夢の兵器同士を合成させた戦慄と絶望の融合獣、インペリオダークネスである!

 

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