やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
12月28日、午後2時。千葉県千葉市――。
「――ぬッ、ぬふぅッ!」
崩壊したビルの瓦礫で出来た山の間からよろよろと出てきたのは、材木座。彼は自分の身体をペタペタ触って、今ここにあることを確認してどっと息を吐いた。
「い、生きてる……我生きてる……。もう死んだかと思った……」
『馬鹿なこと言うんじゃねぇよ。俺がついてて滅多なことにはならねぇ。……もっとも、こんなことになっちまった訳だがな……』
残念そうにつぶやくゼロ。彼らの周囲にあるはずだった町並みは、崩壊して元の姿をすっかり失ってしまっていた。
「ああ、町が……」
『だが落ち込んでもいられねぇぜ。ジードたちはどこ行ったんだ……探さねぇと』
「う、うむ……!」
ゼロの指示で立ち上がり、歩き出そうとする材木座。そこに、彼の近くに星雲荘のエレベーターが出現して中から結衣といろはが飛び出してきた。
「ハッチー! ゆきのん! 大丈夫!?」
「先輩たち! ご無事ですか!?」
息せき切りながら出てきた二人だが、材木座の顔を確かめると、一拍の後に大きくため息を吐いた。
「何だ、中二か……」
「あぁッ!? 何その反応! 我も命がけの戦いしたんですけどー!? 身体のダメージ以上に傷ついた今のッ!」
あからさまにがっかりされて、流石の材木座も声を荒げた。
その直後に、近くの瓦礫の陰から八幡と雪乃がふらつきながら姿を見せた。
「俺たちならここだ……」
「ハッチー! よかった、無事だったんだね!」
「生きててよかったです!」
クルリと踵を返してわっと喜ぶ結衣といろは。後ろで材木座がいじけるがもう眼中になかった。
「まぁ命は拾ったが、無事かと言われると……」
[早くエレベーターへ退避を。そこにいては危険です]
身体を支えるので精いっぱいな八幡の返しの直後に、ユートム越しにレムが警告してきた。すると背景から、怪獣の咆哮が轟いてくる。
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
「やばい……! 確かに退いた方がいいな……!」
危険を感じた八幡がつぶやき、彼らは急いでエレベーターの中へ避難していく。しかし雪乃だけはその場にたたずみ、怪獣を仰いでいる。
「ゆきのん、早くっ!」
「ええ……」
結衣に急かされて足を動かす雪乃だが、ギリギリまでひどく悔しそうに怪獣をにらみ続けていた。
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
エレベーターが地下へ消えていく中、直角の刀状の両翼を生やした恐竜型の怪獣――レイデュエス融合獣が炎を吐いて大暴れを続けていた。
12月27日、午後2時。衛星軌道上の円盤。
「ちぃッ……! どうすれば比企谷の奴らを倒せるか、ちっとも思いつかん……!」
レイデュエスが非常にいら立った様子でいるので、手下の宇宙人たちは内心ビクビクしながら見張りをしていた。レイデュエスの面前のボードには、「変身アイテムを奪う」「時間停止光線」「幻覚タバコ」などの作戦案がいくつも書き出されているが全てに×がつけられていた。
レイデュエスはウルトラマンジードたちを打倒するための次の作戦が思いつかずにフラストレーションを溜めているのだった。
「ルドレイッ! たまには何か案を出せッ! いい考えはないのか!?」
『え、えぇッ!?』
そしてそのいら立ちをルドレイにぶつけ出した。突然聞かれたルドレイは慌てふためく。
『い、いやぁ、そのぉ~……そう言われましても、私程度の頭では殿下のお考えには到底及びませんし……』
目を泳がせながら必死に言葉を選ぶルドレイだが、その煮え切らない態度が余計にレイデュエスをいらつかせる。
「この役立たずがッ!」
『のわッ!?』
その末にルドレイを力の限りに突き飛ばした。ルドレイはドアまで飛ばされる。
『遅めの昼飯~……』
ちょうどそのドアから、出来立てのカップ麺を持ったオガレスが現れ、二人は衝突!
『ぎゃッ!?』
いきなりのことにオガレスの手からカップ麺が吹っ飛び、カップ麺は空中で逆さとなって……。
バシャッ!
――熱々の中身がレイデュエスに頭から降りかかった。
『――!?』
途端、宇宙人たちは全員絶句。特にオガレスは真っ青になった。
「……オガレス」
微動だにしないままレイデュエスに名を呼ばれたオガレスは、バッとその場に土下座した。
『ひぃぃぃぃッ! すみませんすみません! わざとではないんですぅッ!』
超必死にペコペコ謝るオガレス。レイデュエスも、それを凍りついた目で見下ろしていたものの、自分が原因なのもあってかこれ以上咎めなかった。
「ちッ……気をつけろッ!」
そう吐き捨てるとフック星人の持ってきたタオルで麺をぬぐい取り、負った軽い火傷は再生能力で治す。
「……!」
だがその瞬間、レイデュエスはハッと息を呑んで治したばかりの己の腕に目を落とした。
『殿下……?』
ルドレイたちが何事かと呆気にとられているのも構わず、次いで床に転がったカップ麺の容器に視線を移した。
その後、急に天を仰いで高笑いし出す。
「ハッハハハハハハハッ! そうかこの手があったッ! 何でこんな簡単なことに気づかなかったんだろうなぁ! アハハハハハハ! ハハハハハハハハハハッ!!」
レイデュエスが突然大笑いし出したので、周りの宇宙人たちはそろって呆然としていた。
『い、一体どうなさったのだ、殿下は……』
『とうとうストレスが限界になったのだろうか……』
オガレスとルドレイは、こっそりとそんなことを話していた。
× × ×
12月28日、午後1時57分。千葉市。
町に単身潜入したレイデュエスは、おもむろに怪獣カプセルを取り出して起動し始める。
「イッツ!」『バオオオオオオオオ!』
「マイ!」『キャッキ――――イ!』
「ショウタイム!!」
恐竜型と鳥型の怪獣のカプセルを装填ナックルに収め、ブラッドライザーでスキャンしていく。
[フュージョンライズ!]
「ぬうあああぁぁぁぁッ!」
カプセルから現れた怪獣たちのビジョンを魔人態が吸い込み、融合獣へと変化する。
[サラマンドラ! ギエロン星獣!]
[レイデュエス! サラマギエロン!!]
そうして完成したのが、サラマンドラのボディにギエロン星獣の刃状の翼や耳を生やしたレイデュエス融合獣サラマギエロン。町の中に着地すると、早速鼻から高熱火炎を吹いて攻撃を始める。
「うわあああぁぁぁぁぁぁッ!」
「きゃあああああ――――――――っ!」
いきなり焼き払われていく町の各所から悲鳴が沸き上がり、辺りは大パニック。だがこんな蛮行を許さない戦士たちがいる。
[ウルトラマンジード! ソリッドバーニング!!]
「ドォッ!」
『俺はゼロ! ウルトラマンゼロだ!』
そう、ウルトラマンジードとウルトラマンゼロの二大ウルトラ戦士だ。颯爽と駆けつけた両巨人の大きな背中を見上げ、町の人々は一斉に安堵に包まれた。
「あッ、ジードとゼロだぁ!」
「がんばれぇー! ウルトラマーン!」
人々からの声援を背に受けつつ、ジードとゼロはサラマギエロンと対峙。ジード内の八幡が指を突きつけた。
『「また性懲りもなくぶっ飛ばされに来たのか。つくづく暇な奴だな、人生もっと有意義に使えねぇのか?」』
あからさまに挑発する八幡だが、レイデュエスはほくそ笑みながら言い返した。
『「ククク……三分しかない変身時間で、そんな悠々としてていいのか?」』
『「何?」』
『「気をつけて……何だか様子がいつもと違うわ」』
『今日は一人だけのようだしな。こいつは何かあるぜ』
レイデュエスの態度に警戒する雪乃とゼロ。彼女らの警告を受け、ジードたちは戦闘態勢を取って戦いを開始した。
『早くやっつけよう! はぁッ!』
ジードが先手を取り、スラッガーを手に握るとスラスターから発する蒸気で飛び出しながらサラマギエロンに飛びかかる。
「ダァッ!」
更にゼロも両手にスラッガーを握り締め、ジードと同じようにサラマギエロンへ突撃した。
「シャッ!」
二人のスラッガーが閃き、サラマギエロンに三筋の裂傷が深々と刻まれる!
『「はんッ、てんで遅いじゃねぇか」』
鼻を鳴らす八幡だが、そこに雪乃が声を荒げた。
『「違うわ! 今のは、よけようともしなかった……!」』
直後に、驚くべきことが起こる。
サラマギエロンに与えた傷が、時間を巻き戻すかの如く消えていったのだ!
『「なッ!?」』
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
完全に無傷となった肉体を見せつけるかのように咆哮するサラマギエロン。ゼロは大きく舌打ちする。
『そういう融合獣か……。半端な攻撃は意味なさそうだぜ、ジード!』
『ああ! 力を合わせよう、ゼロ!』
示し合ったジードとゼロがもう一度サラマギエロンに飛びかかり、ジードが相手の打撃を防御している隙にゼロがサラマギエロンの頭上を跳び越えて反対側に回り込んだ。
そして同時に必殺光線を繰り出す!
『ワイドゼロショット!』
「「『ストライクブースト!!!」」』
二方向からの光線を食らい、サラマギエロンはたちまちに粉々になって吹き飛んだ。
『どうだッ!』
勝ち誇るジードであったが……。
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
巻き上がった黒煙の中から、サラマギエロンが何事もなかったかのように脱け出てくる。
『何ッ!?』
『「マジか……!?」』
ジードたち全員が愕然と固まった。
再生怪獣サラマンドラとギエロン星獣の融合獣であるサラマギエロン。二体の特性を組み合わせることにより、攻撃を受けた瞬間に肉体が完治するほどの驚異的な再生スピードを実現させているのだ!
(♪地球最大の危機(M13))
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
サラマギエロンは両翼を重ね合わせてリング状の光線を撃ち、ジードたちに反撃してくる。それをかわしながら次の手に打って出るジード。
[ブレイブチャレンジャー!!]
「シュアッ!」
ソリッドバーニングからブレイブチャレンジャーにチェンジして、巨大光輪を作り出して武装。
「「『メビュームギガ光輪!!!」」』
光輪を装備した腕を縦横無尽に振るうことで、サラマギエロンを再生が追いつかないほどの速さで粉微塵にしていく。
『ジードクロー!』
更にジードクローを召喚して、トリガーを二回引いてスイッチを押す。
「「『コークスクリュージャミング!!!」」』
きりもみ回転しながら突貫し、サラマギエロンの胴体を貫通して跡形もなく消し飛ばす!
……が、飛散したサラマギエロンの肉片はすぐに全て集合して完全に復元してしまう。
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
『うッ……!』
『今度は俺たちの番だぜ、義輝!』
猛攻撃が全く通用せずにひるむジードだが、代わってゼロがサラマギエロンに挑む。
[ウルトラマンゼロビヨンド!!]
ゼロビヨンドにタイプチェンジすると、四本のスラッガーを頭上に浮遊させる。
『ああいうのは、再生が出来なくなるまで攻撃し続ければいいもんだ』
そう言い切って四本のスラッガーを一気にサラマギエロンへと繰り出す。
『クアトロスラッガー!』
スラッガーが四方八方からサラマギエロンを切断、貫通して再生する端から切り刻んでいく。
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
『ワイドビヨンドショット!』
とどめにワイドビヨンドショットでサラマギエロンを塵も残さずに消し飛ばす。
だが、やはりサラマギエロンは瞬時に再生して元通りになってしまう。
『まだ駄目か……だがここからだ!』
ゼロとジードは決してあきらめずに攻撃を続けようとしたが……。
その時にカラータイマーが赤く点滅し出した!
『!?』
動揺した二人の姿にレイデュエスが大きく嘲笑する。
『「お前ら、自分たちのルールを忘れたのか? もう二分経過してるぞ! 時計はまめに確認しておくんだなぁ!」』
現在時刻は1時59分。フュージョンライズのタイムリミットまで、残り一分を切っていた!
『しまった……! これが狙いかッ!』
激しく焦るジード。ウルトラ戦士は人智を超越した超能力を無数に持っているが、その代わりにエネルギー消費が激しい。特にフュージョンライズは三分間の時間制限を伸ばすことが出来ない。これまでは優れた攻撃性能と豊富な形態の使い分けで、時間が過ぎる前に決着をつけられていたが……。
レイデュエスは単純であるからこそ見逃されがちなこの欠点を突き、やられる端から復活する超再生力を武器にひたすら持久戦にもつれ込ませることを目的としていたのだ!
『「比企谷ぁ、今日こそお前らの最期にしてくれるッ!」』
サラマギエロンはここで攻勢に転じてきて、口から猛烈な火炎を吐き出してジードとゼロを同時に攻撃してくる。
『うわぁッ!』
『ぐッ……!』
前半の猛攻によってエネルギーを大幅に消耗しているジードたちは火炎に苦しめられる。しかしもう残された時間も少ないのだ。立ち止まってなどはいられない。
『ジード、こうなったら残った力を全て使って奴を倒し切るぞ!』
『分かった!』
ゼロの呼びかけに応じ、八幡と雪乃がカプセルを交換する。
[マグニフィセント!!]
ジード・マグニフィセントとなって強固なボディで火炎を弾き返すと、ゼロとともに全力の光線攻撃の構えを取る。
『バルキーコーラス!』
「「『ビッグバスタウェイ!!!」」』
ゼロとジードから放たれた怒涛の光線が、サラマギエロンに突き刺さる!
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
赤熱化して爆散しても二人は光線を止めず、怪獣細胞を一つ残らず焼き尽くすまで撃ち続けた。
そうしてサラマギエロンが本当に、言葉通りに塵一つ残さずに消滅したところで攻撃の手を止める。その時には、二人のエネルギーはほぼ空っぽになっていた。
『はぁ……はぁ……これなら……』
流石に疲労がすさまじく、肩で息をするジードたちだが、その甲斐はあって残されたのは立ち昇る黒い煙だけ。
――そう、思われたのだが。
「――キャッキ――――イ!」
何と煙の粒子が凝り固まって実体化していき、サラマギエロンは完全な姿でよみがえってきた!
『なぁッ……!?』
『……駄目だ! 細胞を焼いても、煙から復活する!』
さしものジードとゼロも息を詰まらせた。もう残り時間もなく、エネルギーすら残されていない。完全に手詰まりの状態である。
『「ハハハハハハハァ――――――! これで終わりだぁぁぁぁぁッ!」』
サラマギエロンが火球を連発して爆撃してくる。ジードたちはそれに抗う力も残っていない!
『うわああぁぁぁぁぁ――――――!』
『ジードッ! くッ……!』
相当なダメージを食らうジード。それを見たゼロは、彼の前に回り込むと本当に最後の力を振り絞ってバリアを張った。
「シェアッ!」
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
そのバリアも、サラマギエロンの連続攻撃によってすぐに破られてしまったが……。
バリアを破壊した爆発が収まると、ジードとゼロの姿は忽然と消えていた。
「ああ……!?」
「そ、そんな……!」
二人のウルトラマンが消えてしまったことに、町の人たちは絶望に襲われる。
しかしレイデュエスは、ジードたちが倒れたのではなく、ギリギリのところで爆発に紛れて撤退したのだということを見抜いた。
『「……どこへ逃げた」』
立ち尽くすサラマギエロンの中で、あと一歩のところで逃げられたレイデュエスがポツリと吐き捨てる。
『「……どこだぁぁぁぁッ! 比企谷ぁぁぁぁああああああッ!!」』
激昂したサラマギエロンが、当たり散らすように見境なく火炎を吐き出す!
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
「わあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!」
午後2時。救世主を失った人間たちに出来ることは、暴虐を振るう怪獣から必死に逃げることのみであった……。
ジードたちは粒子レベルにまで破壊しても倒すことの出来ないサラマギエロンに、痛恨の敗走をする結果となった。果たして、どれだけ攻撃しても無限に復活する融合獣を倒すことは出来るのであろうか。