やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
12月28日、午後三時。星雲荘にジードの仲間たちが緊急に集い、ある話し合いを行うこととなった。内容はもちろん、難敵サラマギエロンの攻略方法についてだ。
「うぅ……かなり大きい被害になっちゃったね……」
ペガがモニターに映し出された、被害を受けた千葉市の光景を目にして顔を曇らせた。サラマギエロンはジードとゼロが敗走した後もフュージョンライズの自然解除まで手当たり次第に暴れ回り、その結果一帯は完全に焼け野原と化した。被害者数はのべ数万人単位と、この数か月で最も深刻な被害結果となってしまったのであった。
「我がいながらこんなことになるとは……悔しい悔しいぃ~!」
材木座が地団駄を踏むと、眼鏡を取り外してゼロが表に出てくる。
「最悪、町はシャイニングの能力で元には戻せるが、問題はそういうことじゃねぇ。次でサラマギエロンを倒さないことには、ウルトラマンの名折れだ」
ゼロの言葉に、雪乃が険しい面持ちでうなずいた。
「この次もまた負けるなんてことは絶対にあってはならないわ。何としてでも、あの融合獣を倒し切る手段を見つけ出さないと」
そのために今星雲荘には、ジード部のメンバーやAIB、更にはいろはや小町、平塚までも集まって知恵を出し合おうとしているところだった。この状況をザッと見渡した八幡がボソッとつぶやく。
「最初の日と比べたら、大分人口密度が高くなったな……」
「今は感慨に耽っている場合ではないわ、八幡くん。次のフュージョンライズまで十九時間、それまでに万全の態勢でいなければいけないのよ」
人一倍負けず嫌いな雪乃は誰よりも再戦に向けて燃えていた。彼女の音頭により、話し合いが開始される。
「まず必要なのは、怪獣に対する情報よ。一見完璧に見えるものだって、どこかに欠点があるはず。あの不死身に思える再生力も封じる方法があるはずよ」
「レム、お願い」
ライハに乞われ、レムがサラマギエロンの分析結果を告げる。
[あの融合獣はサラマンドラ、ギエロン星獣の生体情報を組み合わせられています。両者とも全身を粉々にされても時間経過で完全に再生する能力を有しており、この融合によって規格外の再生速度を実現させたものと思われます]
「ギエロン星獣なら俺たちも戦ったな」
ゼロのつぶやきに同意するジード。
『うん。ギエロン星獣は何度倒しても、二十四時間で復活してしまう厄介な相手だった……。あの時は気がおかしくなりそうだったよ』
「それは最終的にどうやって倒したのかしら?」
雪乃がすかさず質問すると、ジードはこう答えた。
『ギエロン星獣の細胞は冷凍すれば再生しなくなる。それに気づいて、一度粉々に爆破してから全ての破片を冷やした状態で二度と復活しないようにしたんだ』
更にレムが追加で解説する。
[サラマンドラにも低温に対する抵抗力は確認されていません。サラマギエロンも、低温下で再生能力を失う可能性は十分にあります]
「なーんだ、それなら簡単じゃないですか!」
いろはがパッと明るい声を発した。
「それと同じように、一度粉々にしてから破片を全部冷凍しちゃえばいいんじゃないですか!」
「それだ! 思ったよりずっと早く解決だね!」
結衣も乗っかるが、八幡はあきれ顔で突っ込んだ。
「いや、そりゃ無理だろ……」
「え、何で?」
思い切り分かっていない二人に、ため息交じりに説明する八幡。
「あれの再生速度見ただろ? 攻撃した端から元に戻るんだぞ。とても冷凍してる暇なんかねぇよ」
「あ、そっか……」
言われてようやく気づいた結衣といろはに、雪乃も吐息を漏らした。
「活発なのがあなたたちのいいところだとは思うけれど、もう少し考えてから行動した方がよりいいと思うわ」
「あうぅ……」
「すいません……」
駄目出しされてしょんぼり肩を落とす結衣たち。それは置いて、陽乃が話を戻す。
「でも、凍らせるってのは間違いじゃないと思うよ。てかそれ以外に方法ないだろうしね」
「ですけど、あんなでっかい怪獣を丸ごと凍らせちゃうなんて出来っこないですよ」
そうつぶやく小町だが、それに平塚が首を横に振った。
「そうでもないだろう」
「え?」
「ジードに大量の冷却ガスを噴射する形態があっただろう。それなら可能だと思うぞ」
平塚のひと言に雪乃が得心した顔となった。
「ファイヤーリーダーですね。確かにあれの能力だったら……」
「すごい先生! そこにすぐ気づくなんて! あたしたちより詳しいんじゃないですか?」
結衣が驚いていると、平塚は得意げに腕を組んだ。
「ふふふ……君たちウルトラマンの活躍シーンは、ニュースとかで流れてるのを一つ一つ録画保存しているからな」
「そんなことしてたのか……」
まぁ、平塚先生明らかに好きそうだからな……こないだの変身もかなりノリノリだったし……と内心でつぶやく八幡であった。
平塚の出した案で決まりかと思われたが、しかし陽乃が異を挟む。
「悪くないかもだけど、だけど流石に一瞬で氷漬けって訳にはいかないでしょ。それまでに抵抗されちゃうんじゃないかな」
「む……それもそうだな……」
『何より厄介なのは、融合獣には知能があるということだ。レイデュエスがその点の用意をしていないとは思えない。完全凍結までに時間が掛かるようでは、成功率は恐らく著しく低くなるだろうな』
ゼナもそう発した。しかしどんなダメージを与えようとも瞬時に再生する怪獣を一瞬で全身凍らせる方法をなかなか思いつけず、皆頭をひねらせる。
そんな時に、八幡が口を開いた。
「だったら、こういうのはどうだ?」
そうして八幡が語った作戦の内容に、全員が思わず目を見開いた。
「……それだぁっ! それならきっと成功間違いなしだよ!」
一番に褒めたたえたのは結衣。それからいろはと雪乃もにっこり微笑んだ。
「さっすが先輩! 相手が嫌がりそうなことを目敏く見抜きますね!」
「人の弱みを的確に発見する眼力、ますます磨きが掛かっているわね」
「……お前らには発言に毒を挟まないといけないノルマでもあるのか?」
小町はほけー……と呆気にとられたような顔で八幡を見つめる。
「ちょっと意外かも……。お兄ちゃんが自分からそういうこと提案するなんて」
「ふふ……本当に人とは案外変わるものだな」
平塚はどこか感慨深げであった。
ゼナは結論が纏まったと見て、おもむろにうなずいた。
『決定だな。しかしこの作戦は事前の準備が鍵を握る。根回しに関しては我々が引き受けよう』
「裏方は任せといてー! 比企谷くんたちは、絶対成功するように準備しておいてね!」
「分かりました」
八幡が返答すると、ゼナと陽乃は早速エレベーターへ駆け込んで地上へと上がっていった。
× × ×
地上に出ると、陽乃はゼナに振り返って呼び掛ける。
「ゼナ先輩、早いところ全ての用意を整えましょう! あと19時間で間に合わせないといけませんよ!」
ゼナは自分の前を行く陽乃を見つめながら、問いで返した。
『随分と張り切っているな、陽乃。確かに我々の役目は重要だが、そんなに張り切ることか?』
「そんなの当然じゃないですかぁ。わたしたちのこの手に世界の命運が懸かってるなんてシチュエーションで、燃えなきゃ人としてダメですってぇ」
冗談めかして答えた陽乃の、直後の顔に、かすかに影が差した。
「それに……雪乃ちゃんたちの暮らす町を蹂躙するなんてこと、絶対に許しておけないですし」
『……』
ぼそりとつぶやく陽乃の顔をじっと見つめながら、ゼナは思う。
(陽乃、お前には才能がありふれている。今までに色んな星の、様々な人間を見てきたが、その中でもトップクラスだ。……だが、お前はやはりAIBの組織にいるべき人間ではないのだ。私の考えは、今も変わることはない)
心の中で独白しながら、ゼナは回想した。――陽乃のAIB入隊が決定した日の出来事、いや事件を。
――陽乃はレイデュエス融合獣に襲われ、ウルトラマンジードに救われた時より、突然地球を襲うようになった融合獣の正体を独自に調査するようになった。そしてその中で、融合獣を追うAIBの存在を知り、密かにコンタクトを取ってきた。――自分の入隊を迫るように。その内容には、拒否するならば入手したAIBの情報を世界に発信して存在を暴露するという脅迫まで含まれていた。が、ゼナは彼女の入隊を認めなかった。一個の秘密組織を任された身として、民間人の脅しに屈するようなことする気はなかった。
すると陽乃は、AIBの誰もが度肝を抜かれた行動に打って出た。――AIB地球支部拠点に侵入し、隊員一人の銃を奪って人質にし、更に動力室に立てこもったのだ。そして自分の要求が通らない場合は、基地の動力を破壊するとまで言ってきたのだ。
こんな常識外の行いに走った陽乃に、ゼナは問うた。何故ここまでするのかと、その動機は何なのかと。それに、陽乃は答えた。
『簡単です。怪獣が壊して回ってる町には、わたしの大事な妹が生活してるんですよ。姉として、妹の生きる世界を守ってあげたい。――それじゃ駄目ですか?』
――ゼナはこの事態について上層部に判断を仰ぎ、そして上層部は、陽乃の一民間人とは思えない情報収集力、行動力、度胸、そして異常な能力の高さを評価し、彼女のAIB入隊を認可した。
それでも、ゼナは最後まで反対の立場を貫いたのであったが――。
(お前のような人間が、血の流れる戦いの世界にいることは、自らの命を失うようなことになってしまう事態を起こりやすくする)
かつての教え子の顔を思い返すゼナ。自分がまだ母星の軍人であった頃、『戦いの子』として鍛え上げ、そのために戦いと星の名誉に執着してしまい、最終的に天の星となった男の顔を。
たった一人の人間、たった一つのことに命を張れる、命を張れてしまう陽乃の姿は、その男の最期を思い返させる。
(陽乃、お前は本来地球の民間人であるべきだ。私のように、引き返すことの出来ない人間ではない。お前はこんな世界にいるべきではないのだ)
先を歩く陽乃の背中を見やりながら、ゼナは己の想いを反芻していた。
× × ×
12月29日、午前十時。
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
ジードたちのフュージョンライズが可能となる時刻を待ち構えて、サラマギエロンが再び千葉市に出現した。
『「出てこぉい比企谷! 今度こそテメェの最期だぁッ!」』
サラマギエロンの中からレイデュエスが八幡を呼ぶ。それに応じるように、八幡と雪乃、結衣、材木座の四人が現場に到着する。
「出やがったな……」
「この勝負は、絶対に負けられないわよ……」
「もっちろん! 絶対成功させるんだから……!」
四人は決意を固め、変身を敢行する!
「ユーゴーっ!」『タァーッ!』
「アイゴーっ!」『セェアッ!』
「ヒアウィーゴーッ!!」[ウルトラマンジード! ムゲンクロッサー!!]
「デュワッ!」
今にも町に火を放ちそうなサラマギエロンの正面に、ウルトラマンジード・ムゲンクロッサーとウルトラマンゼロが登場! 恐るべき再生融合獣に立ちはだかった!
『「出てきたな! 今度という今度こそ息の根を止めてやる!」』
「ハァッ!」
「デヤッ!」
サラマギエロンが攻撃してくるより早く、ジードとゼロはゼロツインソード・ネオとゼロツインソードの二刀による縦横無尽の斬撃を浴びせる。
『こいつに何もさせるなッ!』
瞬く間に全身を細切れにされていくサラマギエロン。だがレイデュエスは余裕綽々だ。
『「ふん、再生する間もなく粉微塵にすれば復活できないとでも考えたか? 甘すぎるなぁッ!」』
ジードとゼロが斬る箇所の残らないほどにサラマギエロンを切り裂いたが、それでもサラマギエロンはどうとでもないことのように細胞同士がつながって修復していく。やはり、超再生力を持つサラマギエロンを倒し切る手段はないのだろうか?
『今だッ!』
しかしその時、ゼロが地を蹴った!
[ネオ・フュージョンライズ!]『俺に限界はねぇッ!』
宙に飛び上がりながらウルトラマンゼロビヨンドに二段変身すると、スラッガーを頭部から切り離してふた振りのゼロツインソードを作り出す。
「シェアッ!」
(♪勝利に導く4人のヒーロー達)
そしてそれを、再生中のサラマギエロンに投げつけた!
『「な、何ッ!?」』
二つのゼロツインソードはサラマギエロンごと地面に突き刺さり、その結果――。
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
サラマギエロンは二本のソードを巻き込む形で肉体を再生してしまい、その場から身動きが取れなくなってしまった。
『「よぉしッ! 第一段階成功だぞ! さっすが我!」』
『俺たちの成果だろ』
敵の動きを封じ込むことに成功し、自画自賛した材木座に水を差したゼロが、バリアを張りながらジードに呼びかける。
『次はお前たちだ!』
『ああ!』
ジードの中で八幡たちがカプセルを交換していく。
『「ユーゴーっ!」』[セアッ!]
『「アイゴーっ!」』[タァーッ!]
『「ヒアウィーゴーッ!!」』
[ウルトラマンメビウス! ゾフィー!]
[ウルトラマンジード! ファイヤーリーダー!]
サラマギエロンが強引に拘束を脱け出す前に、ジードはファイヤーリーダーへとフュージョンライズ。
『「示すぜ! 未来!!」』
左腕を前に伸ばすと、手の平から膨大な冷却ガスを噴射してサラマギエロンに食らわせる!
「バオオオオオオオオ! キャッキ――――イ!」
行動の一切を封じられているサラマギエロンは冷却ガスをまともに浴び、全身がみるみる凍りついていく。
『「がッ、しまった! 初めからこいつが狙いか……!」』
焦ったレイデュエスが、身体を引き裂いてでも脱出しようとしたが、最早遅い。サラマギエロンはほどなく全身が凍りついて、氷像のようになった。と同時に、ゼロのバリアが地区一帯を覆い込む。
『「よしッ! 作戦通りだ!」』
『「――それじゃ最後はわたしたちの番ですね、先輩!」』
ここに来て八幡の背後からひょこっといろはが顔を出したので、八幡たち三人はギョッと目を見張った。
『「い、いろはちゃん!? 何でこんなところにいるの!?」』
『「えっへへ。わたしも先輩のお力になりたくって、ついてきてたんです。大成功っ!」』
八幡の背中に張りつくようにしながらVサインするいろは。実は変身の瞬間、こっそりと八幡の背中に手をつけて一緒にジードのインナースペースに来ていたのであった。
『「一色さん! これは遊びではないのよ!?」』
『「そうは言いましても、もうここにいますしぃ。一人より二人、二人より三人、三人より四人の方がいいじゃないですか?」』
『「そういうものじゃ……!」』
『「生憎くっちゃべってる暇ねぇぞ! あの野郎氷を溶かし出してる!」』
勝手についてきたいろはを叱ろうとする雪乃、結衣だったが、サラマギエロンは己の高熱で自身を解凍しようとしていた。ここを逃したら、もう勝ちの目はない。
『「ほら先輩、早く早く!」』
『「……終わったら小一時間ほど説教だからな」』
勝手にキングカプセルを用意するいろはにげんなりしつつも、八幡がベリアルカプセルを手にした。
『「ユーゴーッ!」』『フエアッ!』
『「アイゴーっ!」』『ダァッ!』
八幡がベリアルカプセル、いろはがキングカプセルをナックルに装填し、ジードライザーでリード。
『「ヒアウィーゴーッ!!」』
[ウルトラマンベリアル! ウルトラマンキング! 我、王の名の下に!!]
闇と光の力をリードしたジードライザーからキングソードが召喚され、八幡が剣を手にするといろはがキングカプセルを柄に差し込んだ。
[トワッ!]
『「ジィィィ―――――――ドッ!」』
キングの力によって、ジードが金色の最強形態へと変身!
[ウルトラマンジード! ロイヤルメガマスター!!]
『「変えるぜ! 運命!!」』
ばさっとマントを翻すジード。八幡はすかさずキングソードにセブンカプセルを装填した。
[ウルトラセブン!]
『ダーッ!』
セブンの力を充填させた剣をジードが正眼に構え、横一文字に振るう!
「「「「『スラッガースパーク!!!!!」」」」』
放たれた巨大アイスラッガーがサラマギエロンに突き刺さり、何百何千もの破片にまで砕いて吹っ飛ばした!
「――ぬわあぁぁぁぁぁッ!!」
粉砕されたサラマギエロンの肉体からレイデュエスが弾き出され、地面をゴロゴロと転がった。
「……くそぉッ! 今度こそはと思ったのにッ!」
頭を振りながら起き上がったレイデュエスは、悔しさのあまりひどく歯ぎしりしながら、闇の中に消えてすごすごと退却していった。
一方の砕かれたサラマギエロンの肉体は、ゼロの展開したバリアによって千葉市の一区画より遠くへは飛び散らなかった。ここでAIBの出番となる。
『――千葉市民の皆さん、飛散した怪獣の欠片の収集にご協力お願いします。凍った欠片は解けてしまいますと、元の怪獣に戻ってしまいます。その前に350ミリリットル以下の容器に入れて、冷凍保存して下さい。皆さんのご協力が必要です。なお、ご協力いただいた皆さんの冷蔵庫は、無償で交換致します……』
事前の根回しによって市の自治体に働きかけ、千葉市民による人海戦術で全ての破片を収集、永久に封印するのだ。
「隼人くーん、誰が一番集められるか競走だべー! はは、怪獣も欠片になっちまえばかわいいもんだなぁ」
「戸部、遊びじゃないぞ。もう怪獣なんてこりごりだ」
こうして無事に全ての破片が収集、永久凍結され、ジードたちを散々追い詰めたサラマギエロンは二度と復活しないようにされたのであった。
× × ×
「……はぁ~。今回は後始末含めてめちゃくちゃハードだったな……」
「お疲れさま、八幡」
全てが終わって、星雲荘の椅子にどっかと腰を落として長い息を吐き出した八幡の労をペガがねぎらった。雪乃たちは平塚とともに、危ないことをしたいろはに説教をしている。
「見事に決まったね、フォーメーション・GEED! いや、フォーメーション・ハチマンだったっけ?」
「やめろよそのこっぱずかしい名前。一色たちめ、作戦名なんか別につけなくたっていいだろうに……」
人の名前を使って作戦名にこだわったいろはや小町らの顔を思い返してげんなりし、差し出されたMAXコーヒーをゴクッと飲み干した八幡だが、ふとこんなことをつぶやく。
「……だけど、レイデュエスはまた別の手を練って攻撃してくるだろうな。まだまだあきらめるような奴じゃねぇだろう」
『……だろうね。今度は、一体どんな手を使って僕たちを苦しめようとするのか。考えたくもないけどね……』
八幡のひと言で、ジードもペガも気分を重くした。
「こんな戦いが、いつまで続くんだろうね。融合獣だけじゃなくて、レイデュエス自体倒しても倒しても復活するし、この戦いを終わらせるにはどうしたらいいんだろう……」
目を伏せるペガの言葉に、八幡がふと手を止めた。
「……戦い、か……」
『八幡、どうしたんだい?』
「……いや、何でもない」
何かについて考えた風の八幡にジードが問いかけたが、八幡は何も答えずに首を振るだけだった。
『ウルトラストーリーナビ!』
いろは「今回は『ウルトラマン80』第十三話「必殺!フォーメーション・ヤマト」です!」
いろは「ある日、街に怪獣サラマンドラが出現! 応戦するUGMですがサラマンドラの弱点はのどだけで苦戦、すると矢的隊員がサラマンドラに上を向かせる即興の戦法で撃破しました。けどこれは事件の始まりにしか過ぎなくて、黒幕のゴルゴン星人がオオヤマキャップを罠に嵌めて殺人犯に仕立て上げてしまいました。どうにかキャップの無実を証明しようとする矢的隊員たち。そして再び現れるサラマンドラに、オオヤマキャップがフォーメーション・ヤマトと名づけた作戦で挑みます!」
いろは「80といえばウルトラマン先生というのが有名ですけど、学園編は前回の十二話で急遽おしまい。この話から何の前触れもなく、矢的隊員の先生設定は消滅してしまいました。これは特撮ドラマと学園ドラマの両立に無理が生じたからだそうです」
いろは「その後の矢的隊員は最終回まで今まで通りの設定の防衛隊隊員でしたが、終盤は先生時代を彷彿とさせるような子供を相手にした教育的ドラマが数多く見られたんですよ」
ジード『学園編の設定は結局『80』内で顧みられなかったけど、二十六年後の『メビウス』で遂に学園編の決着がつけられたんだ。ファン感涙の出来として有名だよ』
いろは「それじゃ、次回お楽しみにお願いします!」
戸部「うはー! どーにか怪獣が復活する前に欠片を集め切れたみたいだなー! 俺たち世界を救っちゃったよ~! 何か興奮するべ!」
葉山「大袈裟な奴だな。ほとんどのことは、ウルトラマンジードたちがやったじゃないか」
三浦「何でもいいけど、結衣どこ行ったか知らない? ずっといないんだけど」
戸部「奉仕部の方で欠片集めてたんじゃね? 結衣の奴、ヒキタニくんたちと結構楽しくやってるみたいだしさー。なぁ姫菜?」
海老名「えっ……う、うん。そうみたいだね……」
三浦「……まぁいいけど。でも結衣があんなよく分かんない部活にのめり込むなんて、最初は思ってもみなかったし」
戸部「だよなー。それもあのヒキタニくんのいるようなとこなのにな。マジ世の中何があるか分かんなくね?」
葉山「……比企谷」
戸部「ん? 隼人くん、何か言った?」
葉山「何でもない。……何でもな」