やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
八幡は歪められた空間の中を、レムのナビゲートの下に駆け回る。
[10メートル先を右に曲がって下さい]
「右だな!」
虚空に飛び込むと、肉眼では感知できない空間の歪みを通って別の位相に移動する。これを繰り返すことで姿を消した葉山に近づきつつあった八幡だが、その足をレムが止めた。
[止まって下さい。捜索対象が、向こうから接近しつつあります]
「え?」
その言葉の通りに、八幡の視線の先から、空間の歪みを抜けて葉山がおもむろに歩いて出てきた。
「葉山! お前、無事だったか。えぇっと、これはだな……」
ほっと息を吐いた葉山が、この事態をどう説明したものかと頭をひねったが……それを無視するように葉山は表情に影を差しながら口を開いた。
「比企谷、さっきの話の続きだ」
「え?」
こんな状況にまるで取り乱していない葉山に一瞬虚を突かれた八幡に構わず、葉山は淡々と続ける。
「俺は君が嫌いだ。君に劣っていると感じる、そのことがたまらなく嫌だ。だから――君を打ち負かさなければいけないんだ」
「……ん……?」
後半の言葉に、八幡は妙な違和感を覚えた。何か、葉山がおかしなことを口走っているような……。
そんな八幡の態度に構わず、葉山は堰を切ったようにまくし立てていく。
「そうだ、俺は君に勝たなくてはいけないんだ。絶対的に、徹底的に――君という存在を認めない。俺の上を行くことを許さない。俺の方が、比企谷、お前なんかよりもずっと上なんだ」
「お、おい? 何言って……」
『気をつけて! 何だか様子がおかしいよ!』
思わず手を伸ばしかけた八幡を、葉山の様子を警戒したペガが制した。
そして葉山はひとしきり語ると――あるものを取り出した。
「証明してやる。俺は優れた人間だ、強いんだ――強くなければいけないんだ」
「ッ!!?」
それは見間違えするはずもない、青黒いライザー――レイデュエスのブラッドライザーだ!
これをひと目見た八幡は、葉山の身に起こったこと、そして葉山がこれから何を『させられる』のかを理解した。
「やめろ葉山ッ……!」
だが止めるには遅かった。
「比企谷……」
[ギャオオオオオオオオ!]
「この手で……」
『ピッギャ――ゴオオオオウ!』
「消してやるッ!!」
葉山は怪獣型ロボットと黄色い蛇腹状の皮膚の怪獣のカプセルを装填ナックルにねじ込み、ライザーでスキャンしてしまう。
[フュージョンライズ!]
「おおおおおおッ!」
闇に覆われた葉山の肉体がレイデュエス魔人態のものに変化し、怪獣たちのビジョンを吸い込んで更にレイデュエス融合獣のものに変わっていった!
[メカゴモラ! レッドキング!]
[レイデュエス! メカスカルゴモラ!!]
半身を鈍色の鋼鉄で機械化された、巨大な二本角の怪獣が八幡の目の前にそそり立ち、金属がこすり合わされるような咆哮を発した。
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
それと同時に空間の歪曲が解除され、露わとなった半ロボット怪獣の威容に、総武高校の生徒たちは各所で一斉に悲鳴を発した。
葉山のフュージョンライズによってペガがダークゾーンから顔を飛び出して絶叫した。
「た、大変だ! 葉山君が!!」
「くッ……やりやがったな、あの野郎ッ……!」
『八幡ッ!』
奥歯をギリッときしませた八幡に、焦りながら呼びかけるジード。八幡は重くうなずいてジードライザーを握り締めた。
「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ……!」
八幡はすぐにウルトラカプセルを起動していき、フュージョンライズの構えを取った。
「ユーゴーッ!」『シェアッ!』
「アイゴーッ!」『フエアッ!』
「ヒアウィーゴーッ!!」
[フュージョンライズ!]
ウルトラマンとベリアルのカプセルを用いて、ウルトラマンジード・プリミティブにフュージョンライズする。
[ウルトラマンジード! プリミティブ!!]
「シュアッ!」
変身を遂げ、土砂を巻き上げながら荒々しく着地したジードが、葉山の変身したメカスカルゴモラと対峙した。
× × ×
マラソン大会の最中に出現したメカスカルゴモラとジードの姿は、材木座も当然だが目の当たりにしていた。
「ぬ、ぬふぅ! また敵か!」
『義輝、すぐ加勢に行くぜ!』
「しかし、我は今結構バテバテ……」
『んなふぬけたこと言ってる場合かっての! ほれ早くしな!』
汗だくの材木座の尻を叩いてウルトラゼロアイNEOを取り出させるゼロ。
だがそれを、ライザー越しにレムが制止した。
[待って下さい。あの融合獣はレイデュエスが変身したものではありません]
「ぬ?」
『おい、それってどういうことだ!?』
嫌な予感を抱いたゼロが聞き返し、レムからの返答に材木座が目を飛び出させることとなった。
「な、何とぉぉぉッ!?」
男子から三十分遅れてスタートしていた女子たちはほとんどがルートを逆走してメカスカルゴモラから逃げ出していたが、雪乃、結衣、いろはは合流してジードの背を見上げていた。
だが彼女たちの元にもレムからの連絡が入り、その内容に愕然となっていた。
「嘘でしょ!? 隼人くんが……!?」
「まさか……あれが、葉山先輩……!?」
「……!」
結衣も、いろはも、雪乃でさえも、レイデュエス融合獣の正体が葉山と知らされ、絶句してメカスカルゴモラに視線を移していた。
レムからの報告はゼナの元にも届いていた。
『それが目的か……! だが、まさか一般人を融合獣に変えるなどという手に出るとは……』
レイデュエスのなりふり構わなさにうなるゼナの一方で、陽乃はメカスカルゴモラに『された』葉山を見つめると――奥歯が砕けそうになるほどに食いしばった。
× × ×
メカスカルゴモラとにらみ合うジードに、レムが葉山の分析結果を伝える。
[ハヤマハヤトから強力なマイナスエネルギーを検出。レイデュエスに精神操作をされたものと思われます。――解析が遅くなって申し訳ありません]
『いいんだ。これはレムのせいなんかじゃないよ』
謝罪するレムを慰めるジード。だが同時にメカスカルゴモラにどう立ち向かえばいいものかとひどい焦燥を抱いていた。
『これはまずい……葉山君を人質にされたようなものだ。今までのように倒そうとすれば、葉山君がどうなってしまうか分かったもんじゃない……!』
『「だが戦わない訳にもいかねぇぞ……何とかしてあいつを止める手段を見つけ出さねぇと……!」』
そう告げる八幡だが、だからと言って迂闊に攻撃する訳にもいかない。攻めあぐねていると、メカスカルゴモラの方からこちらに襲い掛かってきた。
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
「ウッ……!」
猛然とこちらに突進してくるメカスカルゴモラを、ためらいつつもその身で食い止めようとするジード。だがメカスカルゴモラのすさまじいパワーの前に、易々と弾き飛ばされてしまう。
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
「ウワァッ!」
下手な攻撃は出来ないので、とにかく抑えつけようと試み続けるジードであるが、圧倒的なパワーの差によって叩き伏せられるばかり。
近くにはまだ逃げ切れていない総武高校の生徒たちがいるので、メカスカルゴモラを暴れさせる訳にはいかない。だが相手は普通の人間である葉山。もしダメージを与えようものなら、彼にどんな悪影響があるか分かったものではない。
背にしている人たちを守らなければならないが、葉山を傷つけることも出来ない。この二律背反によってジードは崖っぷちに立たされていた。
× × ×
メカスカルゴモラを相手に思うように戦えないジードの様子に、円盤から監視しているレイデュエスが意地悪く嗤っていた。
「ハハハハッ! 思った通りの展開だ。比企谷の奴は既に追いつめられている。さぁ、この状況をどうする……!?」
行儀悪くデスクに両足を乗っけて高みの見物をしているレイデュエスに、オガレスとルドレイが問いかける。
『しかし殿下……わざわざ地球人をジードにぶつけさせるのに、殿下の命を分け与えるまでする必要はあったのでしょうか?』
『もっと別の、安全な手段があったのでは……』
するとレイデュエスは、歪んだ笑みを更に深めた。
「確かにぶつけさせるだけなら、他の方法があったさ。だが……今回の仕掛けは勝負がついてからが本番なのさ」
『え?』
オガレスとルドレイには、レイデュエスの語ることの意味がよく分からなかった。
× × ×
雪乃たちはジードの苦闘を目の当たりにして、どんどん焦燥の色を深めていた。
「このままではまずいわ……!」
「でも、ハッチーたちが隼人くんを倒してしまえるはずないよ!」
「何とか倒すことなく、葉山先輩を止める手はないんでしょうか……!?」
「それには、どうにかして正気に戻させないと……」
と相談する三人の元に、後ろから三浦が血相を抱えながら走ってきた。
「結衣! こんなとこで何立ち止まってんの!?」
「優美子!? え、えっと……優美子こそどうしたの!? こんなとこ来て!」
返答に窮した結衣が聞き返すと、三浦は真っ青な顔で告げた。
「隼人がどこにもいないの! 結衣たち見なかった!?」
「えっ……! そ、それは……」
三浦は葉山を捜しに来たのだ。だが見つかるはずがない。今の葉山はあのレイデュエス融合獣なのだから。
しかしそれを説明できる訳もない。結衣たちが言葉に詰まっていると、ジードを押し込むメカスカルゴモラが彼女たちに接近してきた。
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
「わぁーっ!! こっち来ましたよ!」
「と、とにかく今は逃げよう! 危ないし!」
「無理! 隼人がどっかにいるはずなの! 隼人を置いてくなんて……!」
「いいからっ!」
下がろうとしない三浦を、雪乃たちは三人がかりで引っ張っていった。
× × ×
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
メカスカルゴモラが腹部から歯車状の光輪を発射して攻撃してくる。
「『レッキングリッパー!!」』
ジードはそれをレッキングリッパーで相殺したが、直後にメガスカル超振動波が飛んできてもろに食らってしまう。
「ウワアアアアアァァァァァッ!」
大きく吹っ飛ばされるジード。ダメージが積み重なったことでカラータイマーが点滅し出した。もうあまり長く戦っていることは出来ない。
『「ぐッ……レム、葉山の奴に正気を取り戻させる方法はねぇのか……?」』
苦痛にあえぐ八幡が尋ねると、レムは次のように答えた。
[ハヤマハヤトは闇のエネルギーで意識を操られています。これと相反する強力な光のエネルギーを照射すれば、彼の意識を解放できるでしょう。が、力ずくで行おうとすればハヤマハヤトに重大な後遺症が残る危険があります]
『「力ずくでってことは、そうじゃないやり方があるってことだよな?」』
[ハヤマハヤト自身が、己に掛けられた精神操作に抗えば危険性はなくなります]
逆転の糸口は掴めたが、それを実現するにはどうすればいいか。少なくとも、今の葉山自身の意識はまるで見られず、完全に意識を乗っ取られている。
『何か、葉山君の心に強く訴えかけられるものがあれば……!』
『「あいつの心に訴えかけるものか……!」』
メカスカルゴモラの猛攻をどうにか防御しつつ、思考を巡らせる八幡。その時、ジードの背後で三浦を引きずっていく結衣たちが、戦いの衝撃で反射的に悲鳴を発した。
「きゃあっ!」
『いけない! 雪乃たちが後ろに!』
振り返った八幡は、三人に引っ張られる三浦の存在に気づいた。
『「三浦じゃねぇか……! 葉山を捜しに来たのか……そこまで真剣に……」』
三浦の想像以上の想いの強さに思わず感服する八幡だったが、これにより彼の脳裏に電流が走った。
『「おい葉山ッ! 俺の後ろにいるのが見えるか!?」』
聞こえているかどうかも分からないが、とにかく八幡は葉山に向かって大声で呼びかける。
『「三浦だ! お前、さっき俺が三浦は女避けに都合よかったかって言ったら怒ったよな? ってことは、お前は三浦のことはどうでもいいなんて思っちゃいないってことだろ!」』
そう叫ぶと、メカスカルゴモラの攻撃の手がピタリと止まった。
手応えを感じて、八幡が語調を強める。
『「そうだよな。修学旅行の時だって、お前は今の関係が続くような立ち回りをしてた。それだけお前にとっては、三浦や周りの人間のことが大事なんだろ。それを、今のお前は壊そうとしてるんだぞ! それでいいのか!? 何もかも壊しちまってまで、俺を殺したいってのかよお前は!?」』
そこまで呼びかけると――フュージョンライズしてから一切の声を発していなかった葉山が、初めて言葉を紡いだ。
[「ゆ、優美子……お、俺は……!?」]
『! 今だッ!!』
『「おうよ!」』
八幡は素早くキングカプセルを取り出す。
『「ユーゴーッ!」』『フエアッ!』
『「アイゴーッ!」』『ダァッ!』
『「ヒアウィーゴーッ!!」』
[ウルトラマンベリアル! ウルトラマンキング! 我、王の名の下に!!]
ジードライザーからキングソードを召喚し、キングカプセルを装填してフュージョンライズ!
[ウルトラマンジード! ロイヤルメガマスター!!]
変身を遂げたジードは、すぐさまキングソードにゾフィーカプセルを装填した。
[ゾフィー!]
『タァーッ!』
ゾフィーの力を充填させたキングソードをメカスカルゴモラに向ける。
「『87フラッシャー!!」』
そして放たれた膨大な光エネルギーが、メカスカルゴモラに直撃した!
[ピッギャ――ゴオオオオウ!! ギャオオオオオオオオ!!]
ガクガクと首が揺れたメカスカルゴモラは、光線の照射が終わるとだらりと腕を垂らした。
『「……どうだ?」』
『威力は抑えたけれど……』
レムの言う通りにはしたが、実際どうなるかは不明だ。固唾を呑んで葉山の反応を待つ八幡とジード。
やがて、
[「……うッ……ひ、比企谷……」]
葉山が声を上げた。それから操られていた時の鬼気迫る気配がなくなっているので、八幡たちはどっと安堵した。
『「よっし……!」』
[「……おおよそのことは分かってる。俺は……何てことを……」]
自省の念の駆られる葉山に、八幡は皮肉げに微笑んだ。
『「お互いこんな姿じゃ、落ち着いて話も出来やしねぇだろ。元に戻ろうぜ? 出来るか?」』
既に安心し切っている八幡であったが、葉山は――。
[「いや――まだ終わりじゃないんだ」]
『「え?」』
[「落ち着いてよく聞いてくれ。今の俺には――」]
葉山から告げられた内容に――八幡たちは、絶句した。
× × ×
レイデュエスから打ち明けられたことに、オガレスとルドレイは思わず息を呑んだ。
『何と……あの地球人自身を、爆弾に……!?』
レイデュエスはクックッと含み笑いしながらうなずいた。
「そうだ。俺の命の一部に時限装置を仕込んで植えつけたのさ。だから今の奴の命そのものが爆弾って訳さ。洗脳が解けたら、一分後には爆発するようになってる。切り離すことはもう俺にも出来ない」
『ですが、それだけではジードを始末できるとは限らないのでは……』
異を唱えるルドレイに、レイデュエスは鼻を鳴らす。
「誰が始末するためと言った?」
『は?』
「その爆弾は、あの地球人を木端微塵にするためのものさ」
レイデュエスの言葉に、オガレスたちは二の句をなくした。
「比企谷は目の前で隣人を失うって訳さ。どうしようもなく、救うことが出来なかった。ああいうタイプには相当な心の傷になるはずだぜぇ。この傷以上の苦しみと屈辱を、奴に刻みつけてやる! ハッハハハハハハッ!!」
狂ったように高笑いするレイデュエスの一方で、八幡を精神的に苦しめるためだけにここまでのことをする彼にオガレスとルドレイはドン引きしていた。
× × ×
[「……そういうことだ。もう時間がない。俺はもう助からない」]
これから爆死するというのに達観している葉山から爆弾のことを知らされ、八幡は立ち尽くしていた。
『「……」』
[「だから比企谷、せめて俺の自爆が他の人たちを巻き込まないようにしてくれ。……俺のことは気に病むことはない。他人につけ込まれるような弱さがあったから、こんなことになったんだからな。全て、俺のせいさ」]
自嘲気味につぶやいた葉山が急かす。
[「比企谷、早くするんだ! もう爆発まで時間がない!」]
それに対して、無言であった八幡が――不意に告げた。
『「葉山、俺のことが嫌いだって言ったな?」』
[「え? こんな時に何を……」]
『「俺だってな、お前のこと好きじゃないぜ。だから」』
八幡は有無を言わさずに言い切った。
『「お前の言う通りになんかしてやらないのさ」』
そして二つのカプセルを取り出しながら、ジードが駆け出す。
『「ユーゴーッ!」』『シェアッ!』
『「アイゴーッ!」』『セェアッ!』
『「ヒアウィーゴーッ!!」』
ウルトラマンカプセルとシャイニングウルトラマンゼロカプセルを装填し、フュージョンライズ!
[ウルトラマン! シャイニングウルトラマンゼロ!]
[ウルトラマンジード! シャイニングミスティック!!]
『「目指すぜ! 天辺!!」』
シャイニングミスティックとなったジードは光速でメカスカルゴモラの背後に回り込んで羽交い絞めにした。
[「比企谷!? 何を……!」]
『「おおおおおおおおおッ!!」』
そのままジードが全エネルギーを解放! ジードとメカスカルゴモラが、神々しい光に覆われて見えなくなる!
そしてそのままジードたちは縮小していった。
「あっ! ジードんが……!」
「どうなったんですか!?」
「行きましょう!」
「あっ、ちょっと……!」
それまで三浦を連れて避難していた雪乃たちだったが、ジードのただならぬ様子に思わず彼らの消えた地点へと駆け出した。置いていかれる三浦だが、つい三人を追いかけていく。
そしてその先で――八幡と葉山が互いに支え合って歩いてくるところに出くわした。
「隼人くんっ!」
「葉山先輩! 無事だったんですね……!」
「……」
感極まる結衣たち。ジードたちはシャイニングミスティックの時間逆行能力を駆使して、葉山の肉体の時間を巻き戻し、彼の命に植えつけられていた爆弾を分離して処理することで葉山を救い出したのであった。
「全く……何て無茶を……こんなフラフラになってまで……」
「はは……正義の味方なんてなるもんじゃないってこったよ……」
呆れ返る葉山に、八幡は軽口で返した。葉山はふぅとため息を吐く。
「君には負けるよ……。誰よりも負けたくない相手なのにな」
「俺だって、お前が特別な存在なんだってずっと自分に言い聞かせてた。まぁそんなもんだろ人生って」
冗談めかす八幡から力が抜けて、崩れ落ちかけたのを雪乃たちが慌てて支えた。
「八幡くん! しっかり!」
その一方で、三浦が一連の光景を唖然とした顔で遠巻きにながめていた。
「隼人とヒキオが、ジードのいたところから……ってことは、まさかヒキオが……?」
× × ×
――戦いが終わり、結局葉山の命が救われる結果となったことにルドレイとオガレスは憤りを見せていた。
『ウルトラマンジードめ……とことん殿下の思惑をくじいてくる……!』
『どこまでも腹立たしい奴らだ! ねぇ殿下』
しかしレイデュエス当人は、何故か真顔で、雪乃たちに助けられる八幡を頭上から隠し撮りした映像をじっと見つめていた。
× × ×
シャイニングミスティックの能力を使用して力を使い果たした八幡は、星雲荘でライハとレムによる手当てを受けた。
「これでよし。もう大丈夫よ」
「よかったぁ~」
「全く、無茶するわよね、本当に」
ずっと心配していた結衣と雪乃は、ライハのひと言に胸を撫で下ろした。
葉山の方は手当てを受けず、その足で三浦といろはとともに他の生徒たちのところへ行き、二人を命からがら救助したという風を装って「二人が無事でよかった」と宣言した。これにより皆は葉山が誰にでも優しいと改めて認識し、雪乃と一緒にいたのはたまたまで、交際している訳ではないと思いなおす結果となった。あらぬ噂もこれで収束することだろう。これは八幡たちに迷惑を掛けたことへの、葉山なりの最大限の罪滅ぼしであった。
それはいいとして、雪乃が眉間に皺を刻んでつぶやく。
「それにしても、レイデュエスの悪行は酷くなる一方だわ」
「それだよね! 今度は隼人くんまで犠牲にしようとして、ほんと許せないし!」
「何度も言うけど、このままにはしておけない……。何とか奴にとどめを刺すことは出来ないかしら」
レイデュエスを完全に倒すことを考えるライハたちであったが、ベッドの上に横たえられている八幡は、ポツリとつぶやいた。
「……倒して終わりで、それでいいんだろうか」
「え?」
「八幡、それってどういう意味?」
ペガが聞き返すと、八幡は確固たる意志をにじませながら答えた。
「今回みたいに葉山を倒さずに戦いを終えたみたいに、あいつのこともとどめを刺す以外の方法で終わらせられないかって、前から思ってるんだ」
「ち、ちょっとハッチー!? それ本気で言ってるの!?」
「一体何を言ってるの……? あんな極悪人を、改心なんてさせられるとでも?」
結衣と雪乃は八幡の告白に困惑するが、ライハは八幡に尋ね返した。
「そんなことを言える根拠が、あるのかしら」
「はい。初めにこう思うようになったのは、京都の時です」
思い返す八幡。京都で復活したレイデュエスと対面した時――レイデュエスは「いい仲間を持ってる」なんてことを口にした。それが皮肉や嫌味の類ではないことも感じられた。
つまり、完全なる邪悪のように思えるレイデュエスの心にも、人間の美徳を賛美するような良心がどこかにあるということだ。
「そもそも、思えば俺たちはあいつがどこの誰なのか、過去に何があって地球侵略なんかしてるのかとか、そんなことを全然知らないんだ。きっと、あいつ自身のことを『知る』ことが、この戦いを終わらせる道になる……。何の確証もないけど、俺はそんな風に感じてる」
「……確かに、私たちはあの男のことを、何も知らないと言えるけど……」
それでも納得はし切れない雪乃と結衣とは別に、八幡は確信を覚えていた。
「とにかく……俺は、奴の行いの『理由』を知りたい。あの異常な執念には、きっと何か根っこがあるはずなんだ。薄っぺらい欲望じゃない、何かが……」
『ウルトラストーリーナビ!』
葉山「今回は『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』第十一話「ウルトラマン」だ」
葉山「キングジョーブラックからの襲撃からどうにか逃れたZAPクルーは、惑星ボリスの生き残りが身を寄せるヴィンセント島で、その島が怪獣に襲われなかった理由を発見する。それは何と石化したウルトラマン! 怪獣惑星となってしまったボリスに飛来したウルトラマンはレイブラッド星人に封印されるも、バリアを張って生存者を守っていた。惑星からの脱出を促すウルトラマンだがそこにケイトが現れ、最強の怪獣ゼットンを出してレイに勝負を挑んでくる……という話だ」
葉山「『大怪獣バトル』は当時展開していたカードゲームのメディアミックス作品で、ウルトラマンじゃなく正真正銘怪獣がドラマの主役だ。主人公も、怪獣使いレイオニクスのレイと設定されてる」
葉山「ドラマも各話のつながりが強い連作仕立てで、怪獣の跋扈する惑星からの生きての脱出を懸けたサバイバル色が強い。次回作の『NEO』はそこにレイオニクス同士の勝負というバトルロイヤル要素も追加されてるな」
ジード『あのウルトラマンゼロもベリアルも大怪獣バトルの映画作品が初登場だから、現在のシリーズの重要なターニングポイントでもあるね』
葉山「それでは、次回もよろしく」
三浦「にしても、まさかあのヒキオがウルトラマンジードだったなんてねぇ……。っていうか結衣まで味方してたなんて」
葉山「まぁ、二人が俺たちに秘密で何かやってるみたいだというのは薄々気づいてはいたけどさ」
三浦「それだけじゃなく、姫菜まで知ってただけじゃなく色々あったみたいだし。何で相談してくれなかったの?」
海老名「ごめんね。だけどあんまり言いふらしたら結衣たちに迷惑掛かっちゃうし、何より……知られちゃいけない人が身近にいるし」
葉山「……戸部か」
三浦「ああ……戸部の奴は絶対口滑らすね」
戸部「何なにー? 俺がどうかしたべー?」
葉山三浦海老名「「「……何でもない」」」