やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。(A) 

 

「うぅ……!」

「リク! 大丈夫!?」

「リクさん! しっかり!」

 

 レイデュエス戦のダメージにより一時は危篤の状態であったリクだが、星雲荘での治療によりどうにか峠を越えた。リクの意識が回復したことで、ペガや結衣たちが大きく安堵の息を吐く。

 

「みんな、ごめん……心配かけて……」

「いいの。リクが無事なら、それで……」

 

 目覚めていきなり気落ちするリクを、ライハがその手を握って励ました。しかしゆっくりしている間もなく、ゼロがリクに呼びかける。

 

「目覚めてばっかで悪いんだが、状況は未だ逼迫してるんだ。今から言うことを、心して聞いてくれ」

「そ、そうだ! あれからどうなったの!?」

 

 ダウンする前までのことを思い返して、リクがそれからの事態についてを焦りながら尋ねた。レムがまず、次のことから告げる。

 

[リクが気を失ってからのことですが、地底間弾道弾が三発、実際に地球各所に発射されました]

「ッ!! ……!」

 

 それを聞いた途端、リクの顔色がサッと青ざめ、悔やみ切った表情で聞き返す。

 

「……被害者は?」

 

 レムははっきりと答えた。

 

[ゼロ人です]

「え?」

 

 モニターに世界地図が表示され、地底ミサイルの爆撃があった箇所が赤で示し出された。

 

[アリゾナ、シベリア、中央アフリカのサバンナ。その無人地帯に各弾道弾が着弾。大規模な爆発はありましたが、巻き込まれた人間は確認されていません]

「ギリギリのところで理性は残ってたみたいだな」

 

 不幸中の幸いにゼロが肩を撫で下ろしたが、すぐに気を張り直す。

 

「だが、これでミサイルが本物だって証明されちまった訳だ。その上でレイデュエスの野郎は二度目の声明を出しやがった」

 

 その内容とは。モニターの世界地図の赤く染められた部分が切り替わり、代わりに十二箇所の土地が赤くなった。今度は、人が密集している地点。

 

[明日の10時までにハチマンを差し出さなければ、ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワ、北京……各国主要都市十一箇所に爆撃を行うとのことです]

「一度にこんな数の都市が爆破されたら、世界中が大変なことになるわ……」

 

 ライハが非常に険しい顔でつぶやく一方で、リクが尋ね返す。

 

「待って。最後の一箇所って……」

 

 日本の赤く染まっている場所は、東京ではなく、その隣の県だ。すなわち……。

 

[ここ、千葉市です]

「!!」

 

 息を呑むリク。レイデュエスはわざわざ、八幡の町を吹き飛ばそうというつもりなのだ。

 

[更に、悪いことがもう一つあります]

 

 モニターの表示が切り替わり、ユートムからの監視映像となる。場所は見慣れた総武高校。

 ここを、レイデュエス一味の宇宙人たちが占拠している。

 

「学校がッ!」

[最初の爆撃の混乱で警戒が薄れたところを突かれました。彼らはハチマンの差し出し場所を、ここに指定しています]

「とことん八幡を引きずり出そうとしてるって訳か……」

 

 八幡の生活する土地を徹底的に狙う姿勢に、ペガも重い表情。その傍らの結衣が、困惑しながら口を開いた。

 

「ねぇ……何でここまでしてハッチーにこだわるの? おかしいよ……」

「確かに、少し変だとは思っていたわ……。顔の傷の恨みだったなら、直接入れたジード本人のリクさんの方をむしろ恨みそうなものなのに……」

 

 同意する雪乃であるが、それに対する回答は誰も持ち合わせていなかった。

 

「……とにかく、もうこれ以上の凶行を許す訳にはいかない。今度こそ、この戦いを終わりにしなくちゃ……!」

 

 決心して立ち上がろうとするジードを、ゼロが呼び止めた。

 

「待て。お前だって身体がもう限界なんだろ。ここは俺とAIBに任せときな」

「ゼロ……」

「AIBも総力を結集して、最終決戦の用意をしてる。最後の切り札っていうもんもあるみたいだ。そういう訳だから、今回ばかりはお前もここで回復に専念してな」

 

 ゼロの気遣いを、リクはただじっと黙って受け止めていた……。

 

 

 

『やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。』

 

 

 

 二月三日、10時までの10分前。

 

「うぅ……」

「い、一体どうなってんだよこれぇ……」

「姫菜、大丈夫か……?」

「う、うん……何とか……」

 

 総武高校の体育館には、昨日レイデュエス一味が襲撃した際に学校に残っていた生徒や教師らが人質として拘束され、集められていた。その中には葉山グループや戸塚、川崎、平塚などの姿もある。

 

「ひぃ……何で俺らがこんなことに……」

 

 いつもは無駄なくらいに明るい戸部も今ばかりは憔悴し切っていると、彼らを見張るグループの一人のクカラッチ星人がわざわざ人質を脅しに回る。

 

『ハハハッ! 泣こうが助けを呼ぼうが、お前たちの命はあと10分で終わりだぁ! 比企谷八幡とかいうクソガキのせいでなぁッ!』

「ひぃぃッ!」

「っ! あ、あいつがどう関係あるの!?」

 

 クカラッチ星人のひと言を聞き咎めた川崎が、気を張りながら問い返した。

 

『フフフ……あの小僧は我らのボスに散々無礼を働いておいて、いざとなったら尻をまくって逃げ出したのだ! お前たちはその代わりの犠牲となる。あんな奴のために、哀れなことだなぁ』

「い、言ってることがよく分からないけど……八幡はそんな奴じゃないよッ!」

 

 勝手なことをのたまうクカラッチ星人に戸塚が反論するが、クカラッチ星人はますます調子づくだけ。

 

『事実そうなっているのだ! 奴はとんだ臆病者のクズだッ!』

「私の教え子を、何も知らない奴が馬鹿にするな!」

『いいや知ってるとも! ことある毎に人の邪魔ばかりする、生きてる方が迷惑なド底辺のゴミカスだよッ!』

 

 散々に罵るクカラッチ星人。――すると、体育館の入り口で腕を組んで仁王立ちしていたレイデュエスが、その声に振り向いた。

 

「――クカラッチ星人、こっちに来い」

『へぇ? 何用でしょうか?』

 

 不意に呼ばれたクカラッチ星人は、言われた通りにレイデュエスの元へ歩み寄っていく。

 

「手を出せ」

『えッ、もしかして何かいただけるんで? へへへ』

 

 そう言われて、薄ら笑いしながら両手を差し出すクカラッチ星人。

 その手が肘から、ゴトリと落ちた。

 

『へ――へぇぇぇええええええああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!?!?』

 

 一瞬何が起きたか分からなかったクカラッチ星人だが、レイデュエスが大鎌を握り、己の腕が断たれて血が噴き出していることで大絶叫した。

 突然の事態に周りの者たちはそろってギョッと振り向く。

 

『ななななななななな何をぉぉぉぉぉぉぉ!?』

 

 パニックになるクカラッチ星人をレイデュエスが乱雑に蹴飛ばし、倒れた彼を踏みつけて冷酷な眼で見下す。

 

「お前、何のつもりだ?」

『へッ!? 何のつもりって……』

「比企谷がド底辺のゴミクズならぁッ! それに負け続ける俺はゴミクズに劣る搾りカスと言いたいのかぁぁぁ!? あぁ!!?」

『ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!? そ、そんなつもりじゃあ……!!』

「黙れ……! その口が不快だ……今すぐに利けなくする……!」

 

 大鎌がユラリと首をもたげたので、面前に死が迫るクカラッチ星人はまさしく必死に命乞いした。

 

『待って待って待って!! 訂正します取り下げます謝りますぅぅッ! だからお願い殺さないでッ!! やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 だが言葉の途中でブツリと途切れ、首がゴロゴロ転がった。

 

「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――!!?」

 

 宇宙人とはいえ、目の前で人が殺されたのを目の当たりにした三浦たちが悲鳴を発した。が、レイデュエスに血走った眼を向けられると引きつけを起こしたように閉口する。

 

「何を見てる……。何か言いたいことでもあるのかぁッ!?」

 

 あまりのことに手下の宇宙人たちもドン引きしていたが、一喝されて慌てて視線をレイデュエスから外した。

 

『……はぁ……。殿下は何だって、たかが地球人なんかにああも執着するのだ……』

『何も殺さなくとも……』

 

 オガレスとルドレイもほとほと参っていると、その時に外から、拡声器越しの叫声が轟いた。

 

『レイデュエスに告ぐッ!』

「……!」

 

 息を荒げていたレイデュエスが顔つきを一変し、目を外へと向けた。

 

 

 × × ×

 

 

 レイデュエスたちが立てこもる体育館は、AIBが取り囲んでいた。ゼナが内部のレイデュエスに宣告する。

 

『外の者たちは既に排除した! お前たちは完全に包囲されている! これ以上は無駄な抵抗だ、人質を解放して出てくるがいい!』

 

 体育館を包囲するAIB隊員の輪の中に、材木座の姿もある。

 

「ぬふぅ……学校にテロリスト……このシチュが現実になる日が来るとは」

「冗談言ってる場合じゃねぇぜ。かなり切羽詰まった状況だ」

 

 材木座とゼロで話していると、背後から声を掛けられる。

 

「ゼロ」

 

 ゼロが振り向き、そしてあんぐりと口を開いた。

 

「リク! お前、来ちまったのかよ!」

 

 後ろから来たのは、リクとライハの二人であった。

 

「ああ。どうしてもジーッとしてられなかったから」

「あれだけ言ったってのに……。ライハも、何で止めなかったんだよ!」

「こうなったリクは止められない。分かるでしょ?」

 

 ライハは肩をすくめてため息を吐いた。彼女も苦労したようである。

 

「……しょうがねぇな。だが、無闇やたらと突出するなよ。ギリギリまで俺たちに任せるんだ」

「分かったよ。……レイデュエスは、大人しく外に出てくるかな?」

「な訳ねぇだろうよ。AIBも、奴が降参することなんか期待しちゃいないはずだ。――地底間弾道弾はまだ発見できてない。最悪でも、あれを押さえる時間は稼がなくちゃならねぇ」

 

 リクたちは緊張の面持ちで、AIBとレイデュエスの対決を見守る。

 やはり、ゼナの勧告に対してレイデュエスからの反応はない。八幡を連れてこなければ何の応答もしない腹積もりのようだ。

 

『……ならば、外に出てきたくなるような話をしてやろう』

 

 不意に、ゼナがそんなことを言い出した。

 

『レイデュエス、お前の出自を特定した』

 

 ――その途端、レイデュエスの顔色がサッと変わった。

 

『お前は一定の時期からの己の過去の痕跡を念入りに消していたな。だが完全に過去を消すなど不可能なこと。時間は掛かったが、遂に我々は突き止めたのだ』

『殿下の出自……?』

『あいつら、調べたというのか……』

 

 誰も知らないレイデュエスの出自という内容に、オガレスたちも思わずどよめく。

 一拍の間の後、ゼナがそれを口にした。

 

『ルパーツ星人デュエス――それがお前の本名だ』

 

 この言葉に、宇宙人たちにザワッと動揺が走った。

 

『ル、ルパーツ星人!? 本当か……!?』

『よりによって、あの弱小の……』

 

 ルドレイが思わずつぶやくと、レイデュエスに殺気のこもった目を向けられたので慌てて押し黙った。

 その間にもゼナは続ける。

 

『温厚で平和を愛する民族の中で、類を見ないほど凶暴で攻撃性のある性格の異端。それがお前のようだな。度を越した暴力事件を起こし、惑星外追放処分になったという――』

「――追放だと? 違うな」

 

 ゼナの言葉に刺激されたレイデュエスが、体育館の入り口から一歩外に出てきた。

 

『で、殿下!』

『危ないですよッ!』

 

 オガレスとルドレイの忠告も耳に入らないほど、レイデュエスの目は憤怒で煮えくり返っていた。

 

「こっちから出ていったんだよ、あんな星ッ! 人様の過去をほじくり返すとは陰湿な奴らめ……! 不愉快極まりないッ! よって死ねッ!!」

 

 激情のままに吐き捨てるレイデュエスが手下全員に命令する。

 

「貴様らも行けッ! あの掃き溜めどもをブチ殺せッ!!」

『人質はどうするんです!?』

「そんなものほっとけ!! 今は奴らに思い知らせる方が重要だッ!!」

 

 レイデュエスの私情丸出しの命令にさしものオガレスたちも戸惑っている間に、ゼナに陽乃がそっと耳打ちした。

 

「思った以上に上手く行きましたね」

『ああ、危険な賭けだったが……レイデュエスは冷静さを欠いた。それほどまでのコンプレックスだったようだな』

「でもここからが正念場ですね……。何としてでも、作戦を成功させないと」

『うむ……。最早失敗は絶対に許されないのだ』

 

 ゼナたちが話している内にレイデュエスの手下は統制が纏まり、人質を置いて全員が武装して外に出てくる。AIBもまた迎撃の態勢を取り、両陣営の激突が開始される!

 リクとライハ、ゼロは、最初の衝突はAIBに任せ、その間に人質の解放のために密かに体育館に回り込んでいった。

 

 

 × × ×

 

 

「始まったね……」

 

 ペガと雪乃、結衣の三名は八幡の側につきながら、戦いの様子をモニターで見守っていた。

 

「これでほんとに決着がつくかな……」

「折しも今日は節分……。鬼は外に出ていったもらいたいものだけど」

 

 雪乃がそんなことをぼやいている背後で、

 

「……うぅ……」

「八幡!?」「八幡くん!」「ハッチー!」

 

 それまでずっと昏睡状態が続いていた八幡が、遂に目を覚まして身体を起こした。

 

「ここは……あれから、どうなったんだ……?」

「八幡くん、その……」

 

 頭を振る八幡に雪乃が何を話し、何を話さずにいるべきか迷いながらも説明しようとするが、八幡はある違和感に気づいて己の懐をまさぐった。

 

「……ないッ! ライザーが! カプセルも、全部!」

 

 既に八幡の手元には、ジードライザーやウルトラカプセルの一式はなくなっている。それで八幡は何かを察し、レムを見上げた。

 

「レム! 俺が気絶してから、今の間に起きたことを全部、一つ残らず教えてくれ!」

[ですが……]

「早くッ!」

 

 ためらうレムだが、八幡の剣幕に押されて、やむなく話し出した。

 

[……分かりました]

 

 レムは全てを説明した。八幡が倒れてから、レイデュエスが最終決戦を挑んできたこと、それに八幡から分離したリクが受けたこと、しかしレイデュエスが逆上し、大量破壊兵器や総武高校を盾にして八幡の身柄を要求してきたこと、そして今まさにリクたちが全ての決着のために戦っていること……。

 

「……くそッ! そんな大事が起きてる間、ずっとぐーすか寝こけてたってのか俺は……!」

 

 自分に毒づいた八幡は、即座にベッドから飛び降りた。

 

「俺も現場に行く! すぐエレベーターを出してくれ!」

「えぇッ!? だ、駄目だよそれは!」

 

 ペガたちは大慌てで八幡を押しとどめようとする。

 

「ハッチーの身体はもう限界なんだよ! だからリクさんも、ハッチーのために離れたんだから!」

「八幡くん。もうあなたは、ウルトラマンジードではないの。戦う理由は、もうどこにもないのよ」

 

 雪乃があえて厳しめの言葉で八幡を諫めようとしたが、八幡は首を振って否定した。

 

「いいや。俺は俺自身のため……そしてあいつ――レイデュエスのために闘う! 闘わななくちゃいけねぇ!」

「えぇぇ!? ど、どういうこと!?」

「レイデュエスのため……? まだそんなことを言っているの!? あんなわがまま男、構うこともないじゃない!」

 

 言い聞かせる雪乃であるが、八幡は極めて真剣な面持ちで語り出した。

 

「……俺はウルトラマンジードになる前となってからで、随分と変わった。それは自分で自覚してる。だけどその一番の転機は、ジードになったからじゃない。レイデュエスという敵がいたからだ!」

「……!?」

「あいつにだけは負けたくない、という思いが俺を一番成長させた。俺に光を抱かせた……! あいつがいなかったら、俺はどうしようもないクズのままだったかもしれない」

「だから、それはあくまで結果で、それであの男に恩を感じるとかはおかしい……」

 

 雪乃の反論を封殺する八幡。

 

「そうじゃない! 詳しく説明してる暇はないが、あいつも俺と同じようなもんだ! 感じるんだッ!」

「え……!?」

「俺はあいつの存在で変わった。だから今度は、俺があのどうしようもないクズをぶん殴って変えてやるんだッ!」

 

 八幡が何故そこまで言うのか、ペガたちにはまるで分からなかったが、あまりの気迫に口出しすることは出来なかった。

 

「……レム、エレベーターを出してくれ」

 

 改めて頼む八幡に、レムはすぐには返答しなかった――。

 

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