やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。(D) 

 

「うぅ……」

 

 ジードとゼロが二人がかりでジェンドロンを抑え込もうとしている間、失神していた陽乃が頭を振りながら目を覚ました。

 

『気がついたか、陽乃』

「ゼナ先輩……わたし……」

 

 陽乃が、自分がどうなったかを思い返すと、ゼナが彼女を咎める。

 

『あそこは無理をせずに退くべきだった。感情が極端なのがお前の短所だ』

「……すみません」

 

 今回ばかりは陽乃も反省する。

 そこにペダン星人が近づいてきてゼナに報告した。

 

『別働班が地底間弾道弾を発見したとの連絡がありました!』

『遅すぎる……別働班は鍛え直しだな』

 

 嘆息したゼナは、クイと上を見上げる。

 

『もっとも……明日も地球が残っていればの話だが』

 

 ジェンドロンの異常なほどの破壊力に逆に押されるジードとゼロの姿に、ペダン星人が冷や汗を垂らした。

 

『……ウルトラマンは勝てるでしょうか……』

『もう祈るしかないな。我々に出来ることは』

 

 ゼナはそう答えるのが精一杯であった。

 

「ヒキタニくん! 頼むぜぇ~! 勝ってくれ~!」

「比企谷……」

 

 手をこすり合わせる戸部や、葉山、三浦、海老名も祈る。

 

「まさか、ジードそっくりの姿になるなんて……」

「あれが奴の願望だったのかもしれんな……」

「先輩……明日を、頼みます……!」

 

 ライハも、平塚も、いろはも、

 

「リクぅ……」

「ハッチー……!」

「八幡くん……」

[リク、みんな……]

 

 ペガも、結衣も、雪乃も、レムも、

 この世界のあらゆる人が、ジードたちの勝利を祈っていた。

 

「ガアアアアァァァァァァァァァッ!」

「ウワアァァッ!」

「グアァァッ!」

 

 だがジェンドロンは恐ろしく強く、ジードとゼロは腕のひと振りで呆気なく吹き飛ばされた。カラータイマーも両者とも赤く点滅して、エネルギーが残りわずかしかないことを示している。

 肩で息をする八幡は、戦う毎に傷つきもがき苦しむジェンドロンをにらみつけ、吐き捨てた。

 

『「とことんまで大馬鹿野郎が……宿命が何だっていうんだよ! 何で自分の未来を大事に出来ねぇんだ!?」』

 

 歯噛みする八幡に、不意にジードが告げた。

 

『……僕にそっくりなのは、姿だけじゃないかもしれない』

『「え?」』

『僕も生まれた時から、親に利用されるだけの運命を課せられてた。僕はそれを覆してここにいるけれど……もしも自分の運命に負けていたら、あんな感じになってたかもしれない。あれはきっと、僕のありえたかもしれない姿だ』

『「……そうか。俺のもう一つの姿だけじゃないってことか」』

 

 沈んだ声でつぶやいたジードは、口調に一気に力を入れる。

 

『だから、負ける訳にはいかない! 闇に堕ちた僕には、僕たちには! 絶対に!!』

 

 ジードの宣言に力強くうなずく八幡。

 

『「当然だ! 奴の破滅なんかじゃ、俺たちの明日は壊せない!」』

『僕たちは……明日に向かって進み続ける!!!』

 

 ジードが力の限り叫んだ、その時、

 八幡の眼前に淡い光が発生し、それが一本のカプセルの形に変わった。

 

『「!? これは……?」』

 

 思わずカプセルを手に取る八幡。これはもしや、新しいウルトラカプセルだろうか? しかし、リトルスターはもう残っていないはず。そもそも、これはどこから出てきた?

 絵柄のウルトラ戦士も、見たことのない姿……。

 

『「……いや。これってまさか……!」』

 

 首を振る八幡。見覚えのあるポイントが、一つだけ。カラータイマーの形状が、とても馴染みのある縦に細長い、カプセル型のものであった。

 そう、これはジードのカラータイマー! となると、この姿はまさか、フュージョンライズする際の一瞬だけ変身する……。

 

『「本来の、ジードの姿のカプセル……!?」』

 

 そしてカプセルの出現と同時に、ゼロがハッと空の彼方、いや時空の彼方の一点を見上げた。時空に干渉する能力を秘める彼だけが感じ取れるものを感知したのだ。

 

『何かがジードの波長と呼応してる……未来の時間の先で光る何かが!』

 

 と言い放ったゼロはビヨンドを解除し、ウルティメイトブレスレットを輝かせた。

 

『あの光に賭けるぜ! 起こってくれよぉ! とびっきりの奇跡ッ!』

 

 ブレスレットとともに、ゼロの全身がまばゆく光り輝く!

 

「ハァァッ!」

 

 そうしてゼロは変化する。全身が銀と金に煌めくその姿……ウルティメイトブレスレットの光と完全に融合することで変身できる、時空を操作するゼロの奇跡の形態。その名もシャイニングウルトラマンゼロ!

 

「セェェェアッ!」

 

 シャイニングウルトラマンゼロの能力で現在と未来の時間の一部をつなぎ、ジードと反応している「何か」を今の時間に呼び寄せることに成功した!

 八幡の手の中にパシッと収まったのは、両端に赤と黒の楕円形の穂がある棍棒のようなもの。謎のアイテムの出現に一瞬驚いた八幡だが、アイテムを握る手からその使い方が、直感で伝わってきた。

 

『「……ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」』

 

 ジェンドロンはジード側の動きを警戒する。

 

『「何をシテヤがる……!? だガ、何をしヨウとモッ! 俺ノ宿命を破レハ……!」』

「『宿命を塗り替えることが使命!!」』

 

 レイデュエスの言葉をさえぎってジードとともに宣言し、八幡がカプセルのスイッチを入れた。

 

『シェアッ!』

 

 カプセルから現れたジード初期変身体のビジョンが八幡と重なり、八幡はカプセルを棍の下部のスロットに装填。それをジードライザーでスキャンした。

 

[アルティメットエボリューション!!]

 

 ライザーがフュージョンライズとは違う音声を発し、八幡は棍のスイッチを押して上部の穂の中央のレバーをスライドさせた。穂からジードの両眼のような形の羽がせり出す。

 

「『ジィードッ!」』

 

 八幡とジードが重なり合い、更にジードの身体が全く新しいものに変身! 幾何学模様の光の中から棍を握り締めて飛び出していく!

 

[ウルトラマンジード!! ウルティメイトファイナル!!!]

「シャアアアアッ!」

 

 全身に赤と金の曲線が走る、ジードの新たなる姿に、それを目にした皆が驚愕した。

 

「レム、あれは何のフュージョンライズなの?」

 

 雪乃が問いかけたが、レムすらも答えを持ち合わせていなかった。

 

[データにありません。フュージョンライズとは異なる、前例のない未知の形態です]

 

 ――シャイニングウルトラマンゼロの能力によってエネルギーを使い果たし、材木座の状態に戻ったゼロは、彼と対照的にカラータイマーが再び青く輝いたジードを見上げて苦笑した。

 

「どうやら成功みたいだな。後は頼んだぜ、ウルトラマンジード!」

 

 ゼロは今のジードの形態に、現在の状況を打破し得る可能性を感じ取っていた。あれこそは、他ならぬジード自身から発生したエボリューションカプセルと、未来の時間から飛んできた必勝激聖棍ギガファイナライザーの力によって誕生した、真の意味での新しいジード、その名もウルティメイトファイナルだ!

 

(♪ウルティメイトファイナル)

 

「ヌッ……ヌオオオォォォォォ――――――!」

 

 ジェンドロンは野性的本能でウルティメイトファイナルがただものではないことを見抜いたが、それでも遮二無二飛びかかっていった。対するジードは、

 

「ハァッ!」

 

 ジェンドロンを上回る速度でこちらから接近し、ギガファイナライザーの一撃を相手の腹部に叩き込んだ!

 

「ヌグオオォォォォォォッ!?」

 

 その一発によって、ジェンドロンがくの字に折れ曲がって弾き飛ばされた!

 

「つ……強いッ!」

 

 星雲荘でペガたちが目を見張った。ウルティメイトファイナルの能力は、ジードの既存形態を全てにおいて超越している!

 

「ウッガアアアァァァァァァァッ!!」

 

 だがジェンドロンもそうそう容易くはやられない。ブラッドサイズを取り出すと、それを武器にしてギガファイナライザーに対抗し、鎌と棍をぶつけ合う。

 

「ヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」

「フゥッ!」

 

 間近でジェンドロンとにらみ合うジードは、八幡の意識をジェンドロンの暗黒空間、レイデュエスの元へと飛ばした!

 

 

 ……物心がついた時から既に、俺は『周りと違う』ということには気がついてた。

 みんなは穏やかで、争いを好まない。対して俺は、俺だけが、気性が荒く喧嘩っ早い。俺と同じような性格の奴は、ルパーツ星のどこを探しても他に一人もいなかった。俺だけが、違う……。

 当然、周囲には全く馴染めなかった。友達なんか一人も出来ず、何をしても孤独感がつき纏う。気持ちはますます荒れて、問題ばかり起こすようになり、遂には星から追い出される羽目になっちまった。

 それでも構わない。元より、ここは俺のいるべき世界じゃなかったんだ! そう考えて、宇宙に新天地を求めたが……。

 

『仲間になりたいだと? 生意気を抜かすなッ! 弱小種族如きが!』

『ルパーツ星人なんかを近くに置いてたら、それだけで格が下がるというもんだ』

『こんな程度の力しか持たん種族が我らと肩を並べたいなど、片腹痛いわ!』

 

 ガッツ星人、ヒッポリト星人、テンペラー星人……俺に近い気質の星人からも、その全てから除け者にされるだけだった。そうじゃない星では、結局ルパーツ星と同じ末路……。俺は延々と宇宙をさまよい続けるだけだった……。

 ……何故だッ!? 何故どこも俺一人を受け入れようとしない!? 普通とは違う、ただそれだけのことがそんなにも悪いことなのか!? ふざけるな! ふざけるなよ……!

 ……この広い宇宙に――俺の居場所がないッ……!

 

 ――憎いか?

 

 ……宇宙の暗闇の中に独りだった俺に囁きかけたのは、『父親』だった。

 

 ――この世界が憎いのだろう。お前の存在を認めない世界が。ならば壊すしかない。全てを破壊し、お前の世界を作るのだ! そのために導いてやろう……!

 

 ……そもそも俺という存在を作り出した元凶。だが、俺にはもう他にすがるものがなかった……。

 

『――なるほど。貴様も、レイブラッドの遺伝子を受け継ぐ者か』

 

 惑星ヨミで、俺は自分以外のレイオニクスと会わされた。

 

『いいだろう。貴様にこの亡霊魔導師レイバトスの闇の魔術の力と姿を授けよう! ルパーツ星人などという過去は捨ててしまえ! 今からお前の名は、レイデュエスだ!!』

 

 こうして俺は、暗黒魔術と怪獣使いレイオニクスの暴力を元手に宇宙人たちを平伏させ、宇宙制覇に乗り出すための組織を築いた。

 魔導師暴君レイデュエスの誕生だった――。

 

 

『「――だぁぁッ!」』

『「ぬがぁぁぁッ!」』

 

 雨が降りしきる暗闇の異空間の中、八幡はレイデュエスとひたすらに殴り合っていた。

 

『「確かに見たぜ、お前の過去……! お前に何があったのかを……!」』

 

 レイデュエスの頬を殴りつけながら呼びかける八幡。ここはレイデュエスの心象世界。そこに突入する際に、レイデュエスの記憶を垣間見たのだ。

 

『「何が魔導師暴君だよ! 悲しかっただけだろ! その悲しさを、他人にぶつけてるだけだろ! そんなことはやめろッ! お前自身が、何一つ救われねぇぞ!」』

 

 レイデュエスは憎々しげに八幡をにらみ返して、殴り返す。

 

『「黙れぇぇッ! 分かったようなことを抜かすなぁッ! 今更、分かってもらいたくなんかねぇんだよぉッ!!」』

 

 血走った眼で息を荒げるレイデュエス。

 

『「ぶっ壊してやる……! 俺をつまはじきにする世界を全部ぶっ壊してやるッ! それが俺の運命……!」』

『「馬鹿野郎ォォッ!」』

 

 八幡がギガファイナライザーのレバーを一回スライドし、それに合わせて羽が開閉した。

 

『「お前が壊すべきなのは、お前を縛る運命だろうがッ!!」』

 

 叫びながら、柄の部分のスイッチを押す。

 

 

「『ギガスラスト!!」』

 

 ジェンドロンに向かって突き出したギガファイナライザーの穂先から、螺旋状の光線が放たれた!

 

「ウオオォォォォォォォッ!」

 

 ジェンドロンはブラッドサイズで防御したが受け止め切れずにノックバックし、更に鎌の柄が真っ二つにへし折れる。

 

「グッ!? オオオォォッ!」

 

 破砕された武器を投げ捨てたジェンドロンは、大きく両腕を振るって暗黒光刃を飛ばした。

 

『「カタストロフリッパーッ!」』

 

 それに対して、八幡はレバーを今度は二回スライドさせてスイッチを押した。

 

「『ライザーレイビーム!!」』

 

 ギガファイナライザーの羽から、その形状の光線が発射される。光線はカタストロフリッパーを打ち破り、ジェンドロンにも命中した。

 

「グアアアァァァァァァァァ―――――――――――――――!!」

 

 ライザーレイビームの直撃を受けたジェンドロンが、天高くに弾き飛ばされた。

 

 

 ジードの力に押されていくレイデュエスだが、全身が砕け散りそうにダメージを負ってもなお戦いをやめようとしない。

 

『「黙れ……黙れ、黙れぇぇぇ……! 俺は、魔導師暴君だ……! レイブラッドの遺伝子と遺志を受け継ぐレイオニクスだ……!!」』

 ――そうだ! それこそがお前の運命なのだ! それ以外にお前という存在の価値などありはしない! 貴様は、このレイブラッドの生贄――

『「うるせぇよ」』

 

 レイデュエスに覆いかぶさる幽声を、八幡がさえぎった。

 

『「今はコイツと話してるんだッ!」』

 

 そして彼の拳がレイデュエスの腹に食い込む!

 

『「がッ……!?」』

 ――ぬああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?

 

 その衝撃によって、レイデュエスの身体からレイブラッド星人の幻影が剥がれ、レイブラッド星人は暗黒の中に消えていった。

 崩れかけるレイデュエスを、八幡が固く抱きしめた。

 

『「もういいんだ……!」』

 

 レイデュエスを胸の内に受け入れた八幡が、告げる。

 

『「もう、ひとりぼっちじゃないんだ!」』

 

 涙雨が止み、レイデュエスがゆっくりと、静かに、顔を上げる。

 その顔からは醜い傷跡がなくなり、瞳は澄んだ紅玉色に潤んでいた。

 

『「ひ、比企谷……俺を……!」』

 

 レイデュエス――いや、ルパーツ星人デュエスが八幡に、託す――。

 

 

『「黙レェェェェェエェエエエエエエエエエエエ―――――――――――!!」』

 

 ジェンドロンが空中から、地球全てを爆破する威力のカタストロフバーストを放った。

 破滅の光線が迫るが、八幡は微塵も慌てず、ジェンドロンを見上げた。

 

『「……受けるぜ、デュエス。お前からの依頼!」』

 

 ジードが迫り来る光線に向けて地を蹴って飛んでいく。その中で八幡はギガファイナライザーをジードライザーでスキャンした。

 

[目覚めよ!! 最強の遺伝子!!!]

 

 レバーを三回スライドすると、ギガファイナライザーの穂に全エネルギーが集中。巨大な刃と化す。

 

「オオオオオォォォォォォッ!」

 

 ギガファイナライザーがカタストロフバーストを切り裂きながら、ジードがジェンドロンにぐんぐん近づいていく!

 

「ナァッ!?」

 

 間合いを詰め、ギガファイナライザーを一閃!

 

「『クレセントファイナルジード!!」』

 

 ジードの運命をも断ち切る刃が、ジェンドロンを両断した!

 

「ガッ……アッ……アアアアァァァァァァ―――――――――――――――!!!」

 

 苦悶の断末魔を残して、ジェンドロンは爆発四散。

 

「やったぁぁぁぁぁぁ――――――――――!!」

 

 ペガたち地上の人々が一斉に歓声を上げる一方で、ジードと八幡はジェンドロンの消滅跡を見つめていた。

 

『「……じゃあな、デュエス」』

 

 

 × × ×

 

 

 レイデュエスは、今度こそ、完全に死亡した。地球を襲った長きに亘る戦いは、本当に終焉を迎えたのである。

 

「みんな、今まで本当にありがとう!」

「お世話になったわ」

「今までとっても楽しかったよ!」

 

 夕焼けに染まる天文台で、ネオ・ブリタニア号とウルトラマンゼロを背にするリクとライハ、ペガ、ユートム越しのレムが、見送りのため集まった八幡たちに別れの挨拶を告げていた。彼らはこれから、自分たちの宇宙に帰還するのだ。

 

「もう帰っちゃうなんて……ずっとお兄ちゃんの身体だったってもあるし、もうちょっとゆっくりしてけばいいですのに」

 

 小町が唇を尖らすと、リクが苦笑いした。

 

「もう随分と長いことこっちにいるからね。モアやみんなが心配してるだろうから」

「また遊びに来て下さいね!」

「助けられたのはこっちの方だ。礼なら私たちが言わなくてはいかんだろうさ」

「ふふ。みんな、元気でね」

「きっとまた来るからね!」

 

 いろは、平塚、ライハ、ペガらが笑顔と握手を交わし合う。ゼロは材木座に向かって指を差した。

 

『義輝、俺がいなくてもちゃんと自分の小説を完成させるんだぜ? 途中で投げ出したりしやがったら承知しねぇからな!』

「ぬ、ぬふぅ……男と男の約束だ!」

 

 釘を刺された材木座が冷や汗を垂らしながらもそう誓った。

 ゼナは八幡たちの方に立って、リクに告げる。

 

『レイデュエスの脅威は去ったが、奴の残した爪痕は大きい。事後処理がひと段落するまでは、私はこちら側に残るつもりだ』

「ゼナさん、いつもお疲れさまです」

『いや。何のかんのとこっちが助けられてばかりだ。その上で悪いが、モアの奴をよろしく頼む。またドジをやってないか心配なのだ』

「あはは……どうぞ任せて下さい」

 

 愛想笑いを浮かべながらも、リクは快活に応じた。

 一方でゼナの傍らで、陽乃が小首を傾げた。

 

「それにしても、ジードさんの使ってた赤い棍棒みたいなのは何だったんでしょうね。あれだけが不明のままですよ」

 

 ジードにウルティメイトファイナルの力を与えたギガファイナライザーは、戦闘後にすぐにジードの手を離れ、消え去ってしまっていた。エボリューションカプセルも絵柄が消え、まっさらのカプセルになってしまっている。

 

[全くもって分かりません。解析不能でした]

 

 レムが報告する一方で、ゼロが顎に手をやった。

 

『あれは未来から来たってのが唯一確かなことだ。その内、ちゃんとした形で俺たちの前に現れるだろう。今は本来時期尚早だったってことだろうな』

「赤い武器か……。本当はどこにあるものなんだろうね」

 

 ペガが気に掛けたが、その答えは現在誰も持ち合わせていなかった。

 

[そろそろ出発の時刻です]

 

 レムの報告で、リクは最後に八幡、雪乃、結衣の三人に言葉を掛ける。

 

「八幡、雪乃、結衣。今まで何度も力を貸してくれてありがとう。戦いを終わらせられたのは、君たちがいなかったらきっと無理だったよ」

「こちらこそ……だけど、八幡くんがここにいてジードとお別れなのは、やっぱり変な感じです」

「だよね。ずぅっとハッチーと一心同体だったもんね」

 

 つぶやく雪乃に同意する結衣の二人に、八幡が言った。

 

「いや、これがあるべき形だよ。一つの身体に二人の心ってのがそもそも不自然なんだ。どんな絆で結ばれてても、別人は別人。全く同じ人生は生きられねぇって。――やはり、俺がウルトラマンジードなのはまちがっているんだよ」

 

 自嘲気味に述べた八幡に、リクは微笑を見せた。

 

「いいや。まちがいなんかじゃないよ、この数か月間は」

「……へへッ」

 

 見つめ合ったリクと八幡は、何だかおかしくなって笑い合った。

 

「それじゃあみんな――さようなら!」

『へへッ、そんじゃあな!』

 

 リクたちがネオ・ブリタニア号に乗り込み、宇宙船がゼロとともに離陸。高度を上げて地表を離れていく。

 

「さよーならー!!」

 

 八幡たちが大きく手を振って見送る中、宇宙船がどんどん小さくなって、やがて夕焼け空の星となって消えていった。

 

「……行っちゃったね」

「はい……」

 

 結衣といろはのつぶやきを合図とするように、八幡たちは彼らの町へと踵を返す。

 その時に八幡が平塚に呼びかけた。

 

「ところで先生、俺の進路なんですけど……」

「ん? どうした、こんな場所で」

「あら、八幡くんの進路希望は専業主夫という建前の引きこもりのヒモでしょう? 何の脈絡もなく恥を晒すこともないでしょうに」

「引きこもりは流石に余計だっつぅに」

 

 からかう雪乃をあしらいつつ、八幡は少し照れながらも述べた。

 

「実は、リクたちからまたこっちに来てもらうんじゃなくて、今度は俺の方からあいつらの町に行きたいかなって……。それが出来るような仕事じゃ駄目でしょうか?」

「別にちゃんとした仕事なら、どんな希望を持ってもらっても構わないが……彼らの住むところへ行けるようなものと言うと……」

 

 思わず空を見上げる平塚。小町といろはは思わず噴き出した。

 

「お兄ちゃん、それって宇宙飛行士ってこと~?」

「ぷぷっ、先輩小学生みた~い」

「ばッ、笑うなそこッ! っていうか宇宙飛行士でも別の宇宙行くってのは無理だろ!」

 

 赤面する八幡にゼナが呼び掛ける。

 

『ならば、AIBに入職してみないか? 君ならば歓迎しよう』

「え~!? ゼナ先輩、わたしの時はあんなに反対したのに! えこひいきじゃないですか~!?」

『それはお前だったからだ』

「あっ! いくら何でもそれひどいですよ! パワハラで訴えてやる~!」

 

 冗談めかして騒ぐ陽乃にやれやれと肩をすくめるゼナだった。

 

『それで、どうかな? これでも本気で言っている』

「えッ! いや、流石にいきなりそう言われても……」

「あら、願ってもないことじゃない、八幡くん。まさか先方からお誘いしていただけるなんて、世の職に困窮する人が聞いたら羨ましがられるわよ」

 

 八幡が戸惑うのに、雪乃はクスクスと愉快そうに微笑んだ。

 

「それなら私もAIBに入ろうかしら? 時代はグローバルを超えてユニバーサルになるかもしれないし、将来性は抜群ね。八幡くんの隣のデスクになれるかもしれないし」

「えっ、いいなぁ! そ、それならあたしだってAIB入るし!」

「先輩たちが行くならわたしも~!」

「だったら小町も~」

「こらこらお前たち、進路はノリで決めるものじゃないぞ」

『AIBとて、そこまで大人数の募集はしないぞ』

「あっ、比企谷くんがほんとに入職する気なら、お姉さんが色々教えてあげちゃうぞ♪ 手取り、足取りぃ……♪」

「ちょっ!? 姉さんっ!」

「あはは♪ 雪乃ちゃんは何を想像しちゃったのかな~? うりうり、言ってみ?」

「……もうっ!」

 

 八幡のひと言を発端として、別れの余韻もどこへやらとはしゃぐ一同。その光景に苦笑しながら、八幡は振り返ってリクたちが去った空を見上げた。

 

「リク……ウルトラマンジード。また会おうぜ!」

 

 

 

 

 

やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――時空と時空の狭間に存在する、肉体を失った魂が行き着く空間。俗に言う、『あの世』と言うべき世界。

 

『――ぬぅッ!』

 

 ここに叩き落とされた『魔人レイデュエス』が、首を振って悪態を吐いていた。

 

『おのれ、まさかこんなことになろうとは、この我が……。だがこのままで済ませてなるものか!』

 

 わなわなと手を震わせながら、野望を口に出す。

 

『今度は生まれつき力を持つ奴に取り憑いて新たな傀儡としてやる! そして奴らに復讐し、今度こそ宇宙の全てを支配するのだ……! そうだ、まだ我は終わりでは……』

『いいや。終わりだよ、お前は』

 

 いきなり第三者の声が台詞をさえぎったので、魔人は驚愕して顔を上げた。

 

『なッ! 貴様は……!?』

 

 目の前に現れたのは、胸にカラータイマーを持つ紛うことなきウルトラマン。だがその全身は漆黒であり、目はひどく吊り上がっている。その特徴は、恨み重なるウルトラマンジードと同じ……。

 

『ベリアル……ウルトラマンベリアル!!』

 

 ジードのオリジナルである、彼をこの世に生み出した張本人たるベリアルが、魔人に向けて吐き捨てる。

 

『他人の力を借りることしか出来ん貴様が、進化し続ける我が息子に勝とうというのが無理な話だったのだ。奴の言葉で言うのなら、二万年早いといったところだな』

『うッ、ぐッ……ぬおおおおおぉぉぉぉぉッ!』

 

 ベリアルのプレッシャーに気圧された魔人は、自棄を起こしてベリアルに飛びかかっていく。

 

『フンッ!』

 

 しかし即座に放たれたデスシウム光線の直撃を食らう結果となった。

 

『ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――!!!』

 

 魔人はデスシウム光線によって魂を引き裂かれ、木端微塵となってこの次元の狭間の塵となった。

 ベリアルは何事もなかったかのように、八幡たちの宇宙と、リクたちが帰ったサイドスペースに向かって空間の彼方を見やった。

 

『息子よ、お前たちは一つの戦いの終結を迎えたが、この宇宙に争いの火種は尽きん。新たな戦いはまたすぐに襲い掛かってくるぞ』

 

 ベリアルはクックッとほくそ笑む。

 

『父親の俺を超えた男だ。如何なる敵にも勝ってみせろ! ウルトラマンジード!!』

 

 黄色く輝く双眸の見つめる空間の先では、光の届かぬ宇宙を鋼鉄の惑星がどこかへと突き進んでいた――。

 




 




[私はギルバリス]

[不要な知的生命体は、全て抹殺します]






全宇宙が消滅する

最悪の兵器によって


全ての命を守るため――

皆の願いを

つなげ



「ジーッとしてても」『ドーにもならねぇ!』





次回、特別編



『英雄たちは、願いをつなぐ。』





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