やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
帰ってきたウルトラマンジード、しかし……。
――数万年も時間をさかのぼる、太古の地球。
後の時代に『沖縄』と呼称されることとなる諸島の一つの、海に臨む岸壁に、宇宙船が墜落していた。まだ地球人類が文明と呼べるようなものも築いていない時代だというのに。
そしてその宇宙船からよろよろとおぼつかない足取りで降りてきた女性が、辺りの様子を見渡す。
「緑……空……」
女性の瞳に映る景色は、どこまでも広がる南洋と、緑が生い茂る山々。見渡す限りの青い空。
「美しい……」
まだ人の手が全く加わっていないながらも、地球という惑星では珍しくもない景色だが、女性はいたく感動している様子であった。
――そんな時に、岸壁の陰から巨大生物が地響きを立てつつ女性の前に現れた。
「!」
獅子によく似ているが、図体は何十倍もあり、かつオレンジ色の鬣と青い肌の巨大生物。初め女性は警戒したが、この巨大生物に敵意がないのを見て取って息を抜いた。
「あなたが、この大地を守ってるの……?」
女性の問いかけに、生物は優しげでありながら芯の強い輝きを宿した瞳で彼女を見返した。
生物の様子から何かを見て取った女性が、次にこう呼びかけた。
「お願いがあるの」
『英雄たちは、願いをつなぐ。』
――現在の千葉市、総武高校。
「やっはろー!」
結衣が快活な挨拶とともに奉仕部の部室の扉を開くと、いろはがぷくーとむくれながら文句で返した。
「も~、遅いですよ由比ヶ浜先輩。もうみんな集まってますよぉ」
「あはは、ごめんごめん」
「……一色、すっかりここにいるのが当たり前って顔だな。部員でもないのに……」
いろはに突っ込んだ八幡が、次いでハァとため息を吐き出した。
「っていうか、何でわざわざ春休みに学校に来なきゃならんのか」
「仕方ないじゃない、他にみんなが集まるのに相応しい場所はないのだから。星雲荘はもうないんだし」
八幡の不満に雪乃が肩をすくめていると、結衣が遠い目で窓の外の空を見やった。
「……もうすぐ、あれから二か月も経つんだよね。だけど、何か嘘みたい。ジードんたちが帰っちゃって、もういないなんてこと」
結衣のひと言に、八幡たちは皆複雑そうな表情を浮かべた。
――レイデュエスとの最終決戦を終え、早一か月以上。今は三月の末であり、四月になれば八幡たちは進級していよいよ高校の最終学年になる。そんな時期にまでなっていた。
「あれからも、色んなことがあったよねぇ……」
ふぅと吐息を漏らす結衣が、テーブルの片隅に置かれている一冊のライトノベルの文庫を見やった。
「まさか中二が、ほんとにラノベ作家になっちゃうなんてこととか」
「それが一番の大ニュースだったよな……」
そのライトノベルは、れっきとした出版社から発行された書物で、しかも飛ぶように売れている話題作。その作者があの材木座であった。
本当なら友人として喜ぶべきことなのだろうが、しかし八幡たちには一つの懸念があった。
「だけどこれ……内容がまるっきしゼロの体験談だよな……」
「ええ……以前にゼロから聞いた、アナザースペースというところでの冒険譚そのままだわ」
「要は、ゼロさんのお話ししたことを文字に起こしただけってことですよね……」
「材木座の才能の成果じゃねぇじゃん……」
八幡たちは知らないことだが、同じようなことをした人物がサイドスペースに存在していた。
「こんなんであいつ、次回作大丈夫なのか? 他のネタはあるんだろうか……」
八幡が心配していると、再び扉が開かれて、今度は平塚が入ってきた。
「ふむ、みんなもう集まっているな。ん? 一色はどうしている?」
「わたしはたまたま先輩たちが集まるって聞いてそれで。先輩たちを呼んだのは平塚先生ですか?」
「いや。この二人だ」
平塚の後に続いて入室してきたのは、陽乃とゼナ。
「ひゃっはろー♪ みんな、お久しぶりぃ」
『諸君、決戦以来だな』
「姉さん! ゼナさんも」
二人の登場に雪乃たちは少々驚いた。
「ゼナさんたちが私たちを呼んだということは、まさか何か問題が?」
『いや、そこまで大した話ではない。だからAIB本部では腰を落ち着かせられないだろうと思い、ここを指定したのだ』
「そのお話しってのは?」
八幡が聞き返すと、陽乃から口を開いて説明を始めた。
「あのね、わたしたちはここのところ、レイデュエス一味が使ってた円盤を見つけて、その中の物品を色々と処分してたの」
『レイデュエスは様々な危険物も所有していたので、処理も慎重にならざるを得ないから時間が掛かっていたのだが、その内の一つに気がかりなものを発見した』
「そ、それって何ですか?」
結衣がゴクリと息を呑んだ。
『レイデュエスが残していた、活動日誌だ』
「日誌? あいつ、そんなもんつけてたのか……」
『それを読み解く内に、レイデュエスが何の理由もなしに偶然この星にやって来た訳ではないことが判明した』
いろはが目をパチクリさせた。
「それってどういうことですか?」
『レイデュエスはフュージョンライズの実験とともに、この星で『赤き鋼』なるものを探し求めていたようだ』
「これが日誌の一部を日本語訳したものだよ」
陽乃が差し出した文書を受け取った八幡が、声に出して読み上げる。
「『沖縄諸島中を回って探索したが、赤き鋼と思しきものはどこにもなかった。これ以上は成果を見込めないので、今日で探索を打ち切る。ジャキ星人め、ガセネタを掴ませやがって……』。赤き鋼って何ですか? 何の目的でそんなものを?」
『そこまでは記載されていなかった。それで君たちに、奴が何か話してなかったかと聞こうと思ったのだが……その反応を見る限り、何も知らないみたいだな』
八幡たちがそろってポカンとした顔をしているので、ゼナがそう判じた。陽乃は肩をすくめる。
「ゼナ先輩、この件の調査はもう打ち切りましょうよ。存在しない物を追跡したってゴールにはたどり着けませんよ?」
『そうだな……。すまないな君たち、貴重な時間をつき合わせて』
「いえ、お構いなく……」
雪乃が手を振りかけた、その時に、陽乃の持つ端末がピーッ、と警報を発した。
陽乃がすかさず端末を引っ張り出し、緊急情報をゼナに伝える。
「ゼナ先輩、ここから5キロ圏内に向けて未確認飛行物体が落下中です!」
『何! すぐ出動だ!』
「はい!」
『すまないがこれで失礼!』
突然のことに驚いた八幡たちを置いて、ゼナと陽乃は慌ただしく部室から飛び出していった。
しばし呆然としていた八幡だが、事態を理解すると、平塚に向き直って頼み込んだ。
「先生、すいませんが車出してもらえませんか!?」
「!? まさか、自分も現場に向かいたいと言うのではないだろうな?」
平塚や雪乃たち全員が、目を丸くして八幡に振り向いた。
「未確認飛行物体とか……また何かの事件かもしれません。何が起きてるのかだけでも知っときたいんです!」
真摯な顔つきの八幡に、平塚は嬉しさ反面の険しい表情を取った。
「たくましくなったものだ……。しかし、悪いが教師として生徒を危険があると思しき場所へは行かせられん」
「だけど……!」
「比企谷……お前はもう、ウルトラマンジードではないのだぞ」
と指摘され、八幡はハッと固まった。
「ハッチー、気持ちは分かるけど……ここは先生の言う通りにしよ?」
「先輩はもう無茶できる身体でもないんですし、それが一番ですよ」
「今回は姉さんたちに任せましょう」
「……」
結衣たち三人にも説得され、八幡は意見を引っ込めたが、同時に密かに悔しそうに歯噛みしていた。
警報を受けて車に乗り込み発進したゼナと陽乃は、肉眼で空から降ってくる物体を発見した。
「燃えてますね。隕石か何かでしょうか?」
『それにしては落下速度が遅い。恐らく宇宙船の不時着だ』
飛行物体は町の外れへと落下していった。それを追いかけて、ゼナと陽乃は落下地点にたどり着く。
『あそこだ!』
落下物はゼナの言う通り、宇宙船の類であった。が、落下の衝撃で既に大破し、搭乗していたと思しき男が残骸の中央でおもむろに立ち上がった。
車を降りたゼナと陽乃は、銃を片手に背を向けている男へと走っていく。
『AIBだ。抵抗すれば撃つ!』
「動かないで!」
正体の分からない男に警告する二人。その存在に気がついた男が、ゆっくりと振り返る。
スーツで身を固めながらそれに似つかわしくない刀を提げた、皮肉げに嗤う、一見すると地球人と変わりがない宇宙人……。だが纏う雰囲気は明らかにただ者ではないことがゼナたちにはすぐ見分けられた。
「ふッ……悪いがデートはまた今度だ、お嬢さん」
いきなり食えない言動の怪しい男に、陽乃たちはより警戒を深めた。
が、その頭上の空に突然巨大な魔法陣が描き出され、中央から白い龍人型のロボットが現れた!
『あれは……!』
「ロボット!? どこかで見た覚えがあるような……」
突然の出来事に目を見張るゼナと陽乃。そのロボットは右手をゼナたちに向けると、五本指から光線を乱射して攻撃してきた!
「きゃあっ!?」
『ふあッ!』
何の前兆もない攻撃に悲鳴を発した陽乃の一方で、最初の男は刀を抜きながら魔人に変身し、ロボットの光線を切り払った。
突然空から現れた白いロボットが、地上に攻撃をしたのは総武高校にいる八幡たちの目にも見えた。
「何事!? 姉さん……!」
「急にどうなったんですか!? あのロボットは……!?」
「何か、どこかで見た覚えがあるような……」
それぞれに動揺が走る雪乃たち。八幡は、攻撃を行った怪ロボットをにらんで冷や汗を垂らした。
「こんな時……あいつがいれば……」
「ん? また何か来たぞ!」
不意に平塚が天を指した。その指の先を見上げると――空の彼方から、赤い球体のようなものがぐんぐんと飛んできて、暴れるロボットへと接近していく。
「ハァッ!」
赤い球体が破れると――その中から赤黒い姿の、八幡たちには最も馴染みがあるウルトラ戦士が飛び出してきた!
「あれはっ! ジードだわ……!」
「ジードん! どうしてこっちに来てるの!?」
雪乃たちが驚きと疑問を声に出す中、八幡はジードの横顔を見つめて、震える声でひと言つぶやいた。
「ウルトラマンジードが……帰ってきた……!」
『行くぞッ!』
着地したジードはすかさず、龍人が甲冑を纏っているようなロボットに飛び膝蹴りを仕掛けていった。それを見上げて魔人がひと言つぶやく。
『久しぶりだな、ウルトラマンジード』
相手の懐に飛び込んで格闘戦に挑むジードだが、パンチは呆気なく止められ、ロボットの腕に備えつけられている刃で胸を切り裂かれる。
「ウワッ!」
ひるんで後ずさったジードに、ロボットは十本の指から照射される光線で追撃。
「ウワァァァァァッ!」
威力はすさまじく、ジードが簡単に倒れた。これを見ている八幡たちが息を呑む。
『せいぜい頑張りな』
魔人の方は、途中で見切りをつけてどこかへと退散していく。
『待てッ!』
「待ちなさいっ!」
ゼナと陽乃がすぐに追いかけていくが、ロボットの方もそちらに振り向くと、頭上に魔法陣を出してその中に消えていく。
ジードが起き上がった時には、ロボットは完全にこの場から去っていた。
「何だったんだ、一体……?」
一部始終を見届けた八幡が、ポツリと発した。
× × ×
――八幡たちの宇宙とは別の宇宙に存在する、ある生命溢れる惑星の衛星上で、五人の戦士が龍人型のロボットの軍団と激しく戦っていた。その戦士を纏めるのは、誰であろう、あのウルトラマンゼロ!
彼らはゼロが率いる宇宙警備隊、ウルティメイトフォースゼロだ!
『はッ!』
『ふッ!』
『おぉッ!』
『ファイヤぁぁ―――!』
『ワイドゼロショットぉ!』
ジャンバスター、ミラーナイフ、ジャンミサイル、火炎放射といった各戦士の得意技でロボットを各個撃破していき、ゼロの光線によって最後の一体が爆破された。
『いっちょあがり!』
『掃討終了』
敵が全ていなくなったことを確認すると、ミラーナイトが息を吐いた。
『何とか、ハルケギニアをギルバリスから守れましたね』
自分たちが守り抜いた星を見下ろして安堵するウルティメイトフォースゼロだが、一方でグレンファイヤーが頬杖を突きながら、今しがた撃破したロボット兵器――ギャラクトロンについて言及した。
『あーあ。しっかしよぉ、ギャラクトロンってのはどんだけいるんだ!? キリがねぇなぁ!』
『ゼロ、お前がいた宇宙は大丈夫なのか?』
ジャンボットが案じて尋ねかけると、ゼロは思案しながら返答した。
『ああ、心配ねぇとは思うが……。あいつが、ジードがいるからな』
× × ×
「うわー! 久しぶりの星雲荘だぁ~! 全然変わってな~い」
「この変なヒーローのポスターとかも相変わらずですね~」
「変なヒーローなんてやめてよ! ドンシャインは僕のお手本なんだ!」
ジードの戦闘があった後、八幡たちはジードとともにこの地球に舞い戻ってきた星雲荘へと移動していた。結衣が感激する一方でいろはがドンシャインのポスターを指して笑うので、リクがムキになった。
それを尻目に、雪乃がレムに尋ねかける。
「でも、どうしてまたこっちに?」
[こちらに危機が迫っているとの匿名の情報があったのです。一応確認をしてみたら、確かに高エネルギー体がこの地球に空間移動している反応があったため、救援に駆けつけました]
「リクたちがここに戻ってきたのはいいとして……何でお前らまでいるんだよ」
八幡の視線はリク、ライハ、レム、ペガから――葉山たちの顔へと移った。
「すっげー! マジモンの秘密基地じゃんかー! 小っさい時こーゆーのに憧れたわー!」
「あはは、タコのぬいぐるみなんかある! ウケる~」
「爆裂戦記ドンシャインかぁ……どんなカップリングがあるんだろ」
初めて訪れた星雲荘にはしゃぎ気味の戸部、三浦、海老名は置いて、葉山が苦笑しながら八幡に答えた。
「あれだけの騒ぎになれば、嫌でも気になるさ」
葉山のひと言で、戸部と三浦がリクの方に振り向いた。
「そーそー! あんたがジードなんだっけ? さっきの戦闘大丈夫だったんすか!? どっか怪我とかしてない? 何かやられてたけど」
「あのロボット、急に退散してラッキーだったじゃん」
二人にそう言われたリクはムッとしてがなり立てた。
「あそこから逆転する作戦だったんだよ!」
「わッ!?」
「リク。大人げない」
「二人も今のは失礼だよ」
大声を出すリクに、それに驚いた戸部たちの両者とも、ライハと海老名にたしなめられた。
それをよそに、三浦のひと言でペガが首をひねる。
「でも、あのロボット、本当に何で消えたんだろう?」
「急にお腹でも痛くなったんじゃないですか?」
「ロボットよ」
適当なことを言ういろはに、雪乃が簡潔にツッコんだ。
葉山はロボットのことを気に掛けて腕組みする。
「でも、またあれが出てきたらまずいよな。相当な強さみたいだから」
「今はゼロもいないし、リク、一人で大丈夫?」
「一人だからこそ頑張るんだよ!」
案じたライハに、リクは気難しい顔で言い返した。
「そうだ、やっとのことで守り抜いた星なんだ。どんな敵が相手だって、何が何でも負けたりしないぞ……!」
ぐっと拳を握って己に言い聞かすリクの様子に、平塚が不安げに八幡に囁きかけた。
「何やら朝倉くんは随分肩肘張っているな……」
「まぁ、今はウルトラマンが自分だけってこともありますし……責任を感じてるんでしょう」
八幡も今のリクの様子に、一抹の不安を覚える。謎のロボットのことと言い、再会を喜んでいる暇もないようだ。
そうしていると星雲荘のモニターが現れて、AIB本部のゼナと陽乃との通信がつながった。
『やっほー、雪乃ちゃん』
「姉さん、何か分かった?」
手を振る陽乃に雪乃が尋ねたが、陽乃は次に首を振った。
『遭遇した宇宙人は捜索を続けてるけど、まだ何も』
『ロボットの方は、以前伏井出ケイが操っていたものと、エネルギーの反応が酷似しているとの分析結果が出た』
ゼナの言葉に、雪乃がハッと思い返した。
「そういえば、レイデュエスも二回ほどあれに似た融合獣にフュージョンライズしていたわね」
「今度はカプセルじゃない、本物のお出ましか。どこから来たロボットなんだ……」
八幡が疑問を呈すると、意外なところから回答が来た――。
「そいつの名はギャラクトロンだ」
星雲荘と通信するゼナと陽乃の背後から、例のスーツの男が前触れなく現れてロボットの名を教えた。ゼナたちは反射的に銃を抜いて振り返る。
男はおどけた態度で手を上げながら続けて言った。
「さっきお前らが戦ったのはその新型、ギャラクトロンMK2だ。……セキュリティが甘いなぁ。そんなだからレイデュエスなんて坊主にも潜り込まれるんだよ。記録見たぞ」
何でもないことのように言ってのける男に、さしもの陽乃も戦慄。
「誰にも気づかれることなく堂々と、この司令室にまで入ってくるなんて……」
『何者だ』
ゼナが名を問うと、星雲荘の方から声が上がった。
『あー! どっかで見覚えあるなって思ったらあの人、あの時のじゃない!? ほら、765プロっていうとこの人たちが来た時の……』
『そうだな、言われてみりゃ。あの時に一番に俺たちに警告してきた……』
男と直接の面識がある結衣や八幡たちがうなずき合っていた。
『名前は確か……じゃぐじゃぐ? みたいな』
『ジャグラスジャグラーね』
『そうそれ!』
雪乃の訂正に乗っかる結衣。
「その通り、俺はジャグラスジャグラー。怪しい者じゃ……いや、怪しいか」
自嘲した男、ジャグラスジャグラーは向けられる銃口を手でどかし、ゼナたちに呼びかける。
「今のところは敵ではない。手を貸せ、AIB。……ジード、お前も。そのために呼んだんだ」
指名されたリクが虚を突かれた顔をした。
『えッ?』
『ペガも?』
× × ×
ジャグラスジャグラーという男は、ゼナたちとともに星雲荘へと移ってきた。そして皆の前で語り出す。
「巨大人工頭脳ギルバリス。そいつがギャラクトロンを造った親玉だ。正体は謎。こいつは、全宇宙の知的生命体を抹殺しようと既に数え切れないほどの星々を破壊している」
「そんな奴、僕が行ってやっつけてやる!」
リクが勇んで宣言したが、ジャグラーに鼻で笑われた。
「ベリアルとレイデュエスを倒したお前でも、そいつは無理だ」
「何でですか!」
リクの苛立ち気味の問い返しに、ジャグラーが根拠を述べる。
「ギルバリスにはウルトラマンの光線が効かない。先日も765プロの奴らが追いつめてたが、あいつらが全力を尽くしても本体には傷一つ入れられなかった。おまけに、本拠地である惑星ごとデジタル化し、どっかへ消えちまう」
「どうやってもとどめを刺せないってことだな……」
「そういうこと。お前の方が理解がいいな」
八幡のつぶやきで、ジャグラーが当てこすり気味にそう言ったので、リクは悔しそうにうなった。
「それに、ギルバリスは破壊するだけじゃなくあるものを探している」
「あるもの?」
「『赤き鋼』だ」
八幡たちが思わず顔を見合わせた。先ほど、ゼナたちの話の中に出てきたものだ。
「俺は運良く奴らが実体化するのに遭遇した。そこでこのことを知り、口封じに狙われてたって訳だ」
「何で本拠地に?」
「ちょいと野暮用があってな」
ライハの質問をはぐらかしたジャグラーが、皆に向かって尋ねかける。
「こっちの地球に太平風土記はあるか?」
「ありますけど……」
「たいへー、ふどき?」
結衣や戸部らが首をひねると、レムが詳細を教える。
[地球各地の様々な伝説、伝承が記載された古文書です]
「と世間では思われてるが、その正体は未来予知の能力者が見た、世界に起こる重大事件を書き記した予言書だ」
ジャグラーの補足に、雪乃が胡乱な表情となった。
「予言書? そんな眉唾な……」
「雪乃ちゃん、それは本当みたい。太平風土記には、ジードと思しき仁王が鎌を持った鬼と戦う絵が載ってるの。偶然だと思ってたけど……あっ、このページ!」
陽乃が太平風土記の画像を検索し、モニターに大きく表示させた。仁王が赤い棍棒を手に、鉄の亀を抑えつけている絵である。
「鉄の悪魔を打ち負かす、赤き鋼……。その力は人の手には負えず、大地の守護神が封印した……」
もう一枚、狛犬のような獅子が赤い棍棒をくわえている絵が映し出される。
「なるほど。ギルバリスめ、とうとう当たりを引いたって訳だ」
ジャグラーが肩をすくめる一方で、ゼナが納得していた。
『全知的生命体の抹殺を図るギルバリスは、レイデュエスにとっても敵。それに備えるために、赤き鋼を探していたのだな。では何故奴がこのことを知っていたのか、という疑問があるが……』
「赤き鋼は、どこにあるの?」
リクの問いかけに、太平風土記を読み進めた陽乃がこう答える。
「沖縄って書いてます」
八幡が雪乃、結衣らと目を合わせる。
「沖縄って、もう探し尽くされたんじゃ……」
「見落としでもあったんじゃないかな?」
「そんなヘマするか?」
「でも、他に手掛かりはないわよ」
情報が出尽くしたところで、リクが全体の音頭を取った。
「ジーッとしてても、ドーにもなんない。行こう、沖縄に!」