やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
雷雲よりの悪魔の手が、始まりをいざなう。
――サイドスペース。ここはかつて全宇宙を震撼させた最凶最悪のウルトラマン、ベリアルによって爆破され、ウルトラマンキングの力によって再生したという異色の経緯がある次元宇宙。そして、ベリアルの息子であるウルトラマンジードが生まれ、守護している世界である。ベリアルの模造品として作り出されたジードこと朝倉リクは、己に降りかかる暗黒の運命に打ち克ち、オリジナルを超えて本当のウルトラ戦士の一人となったのだ。
そして彼が生活している秘密基地、星雲荘がその地下にある天文台の前で、満点の星空の下――リクはとある人物と面と向かっていた。
「やぁ。久しぶりだね――八幡」
「ああ。また会ったな――リク」
AIBの制服を着用している、変身したリクにも劣らぬほど目が吊り上がっている青年は、比企谷八幡。
別の宇宙で起こったある大事件にリクが立ち向かった際、命を落とした彼を救うために同化して命を共有。そして力を合わせ、彼の宇宙を二度も一緒に救った、今となっては忘れ得ぬ大事な仲間の一人だ。
「久しぶり、八幡! 今日はどうしてこっちに?」
「いや、大した用事じゃないんだ。ゼナさんが遂にこっちの地球に戻ることになったんで、研修がてらの鞄持ちとして同行してな。ついでだし、ここに寄っただけだ」
リクの相棒、ペガッサ星人のペガも影から顔を出して、八幡に快活に挨拶した。
そしてリクは、この場にいる四人目の男にも顔を向ける。
「そっちも久しぶりだね――デュエス」
「ああ……」
少し離れたところで、遠慮がちに石段に腰を落としている紅玉色の瞳の、サンダルを履いた男は、ルパーツ星人デュエス。
――何を隠そう、ある意味ではリクと八幡の運命の出逢いを作ったと言える大事件の首謀者がこの男だ。当時はレイデュエスと名乗り、リクと八幡と何度も命をやり取りをした仇敵であった――それが今では、彼らと断金の仲となったのは、運命の悪戯が成せる業と言う他はない。
「……おい、何をそんなに離れてるんだよ。お前、まだ引け目感じてるのか?」
自分らと微妙に距離があるデュエスに、八幡は肩をすくめる。仕方ないなという表情の八幡に対して、デュエスはため息。
「……あんだけ滅茶苦茶やった俺を救った上に、友達にまで受け入れてくれたんだ。比企谷たちには感謝しかねぇ。……だが、俺のせいで今も苦しんでる人は多いんだ。それなのに、今更楽しい思いしようなんざ虫が良すぎるって、思わずにゃいられねぇさ」
デュエスの言を、八幡はフフッと笑い飛ばす。
「辛気臭せぇな。そんな風に思うことこそ、心は変わった証明だろ?」
「まぁ、以前だったら欠片も思わなかったが……」
「いくら反省しようが、やったことだけは変わらない。世の連中は声をそろえて人は平等であるべきって言うし、お前も過去は過去、未来は未来で割り切って考えろって。少なくとも、その気持ちがあるだけで、罪悪感もないその辺の奴よりお前はずっとマシさ」
「……そう言ってくれると助かる」
デュエスを慰める八幡に、リクとペガは微笑を浮かべた。
「ほんとに優しいよね、八幡は。君がいなかったら、デュエスとこうしてる今は絶対になかった」
「ははッ……そんな俺を作ったのはお前たちだよ。リクたちがいなきゃ、俺はどこまで行ってもひねくれ切ってる男だった。実際、進路志望に一番に主夫なんて書く大ボケが、AIBの見習いになってるんだからな」
八幡の自虐に、当時を思い出して噴き出すリクたち。今となっては、あの頃の激闘もいい思い出である。
「……本当、何か一つ違うだけでも人生って様変わりするもんだな。運命なんて安い言葉、大嫌いだったが……お前たちとの出逢いにだけは、運命を感じざるを得ねぇや」
八幡がしみじみと語ると、リクがふとデュエスに顔を向けた。
「そういえば、デュエスが言ってた、ウルトラマンの兄弟はどうしてるんだ? 彼らは大丈夫なの?」
「ああ、それなら問題ねぇ。全ての決着は綺麗さっぱり着いたみてぇだ」
「ん、何の話だ?」
聞き返した八幡に、デュエスが説明。
「ある次元宇宙の地球にな、昔戦死したウルトラマンたちの力を受け継いだ兄妹がいるのさ。そいつらは先代がやり残した因縁も受け継いじまって……周りが敵だらけなんで心配してた」
「もしもの時には、僕に助けに行ってほしいって頼まれててね」
「そうだったのか……けど、もう解決したんだな」
先ほどの台詞から、そう判断する。
「ああ。かなり不安な奴らだったが、一端のウルトラマンになれたみてぇだ」
「へぇ……。にしても、こうしてる今でも時々信じられなくなるぜ。並行世界が実在して、ウルトラマンが守る地球もいくつもあるってこと」
「うん。世界の広さには、僕も参る時があるよ。どんなすごい力を持ったヒーローも、宇宙に比べたらちっぽけな存在なんだって」
「ペガだって、マルチバースのことを調べたら、想像を優に超えてて圧倒されるよ」
八幡たちは、三者三葉に世界の広さの感想を語った。デュエスも次のように述べる。
「俺らが知ってる宇宙なんて、マルチバース全体のほんのひと欠片でしかねぇのさ。マルチバースがどこまで広がってるのか、知る奴は一人もいない。宇宙は数え切れない数あって、ウルトラマンも同じだ」
「僕たちが知らないウルトラマンも、世界にはまだまだいるのかな」
リクはまだ見ぬ同族に、些かの期待を抱いていた。
「そりゃあな。ウルトラマンはよく無敵の超人って言われるが、中にはさっき話した兄妹の先代のように、道半ばに散った奴もいる。これからもそういうのは出るだろう。もちろんお前らは違げぇだろうがな」
「ウルトラマンにも、無念の末路を迎える人がいるんだ……」
ペガには今一つ実感がなかった。彼が見てきたウルトラマンは誰もが、最後まであきらめず、不可能を可能にする勇者たちだからだ。
八幡が腕を組んで嘆息した。
「まぁ、何でもかんでも上手く行くなんて出来た話もねぇだろ」
「ああ。宇宙はバランスで成り立ってると言うが、それはつまりウルトラマンに匹敵する闇の存在も宇宙のどこかにいるってことだ。俺はよく知ってる」
若干うんざりしたように息を吐くデュエス。
「俺らが知らねぇウルトラマンがいるように、宇宙にはまだまだいるんだろうな。闇に隠れて、地球みてぇな星を狙う
そう、四人で話している時に――。
近い場所から、カンッカンッ! と、いきなり拍子木が打ち鳴らされる甲高い音がした。
「ん?」
八幡たちが反射的に音の方向に首を向けた。
「さぁ~良い子のみんな! 楽しいウルトラマンの紙芝居が始まるよ~!」
視線の先では、見慣れない老人が紙芝居のセットとともにたたずんでいた。
「……紙芝居屋さん? 初めて見るな……」
「時代錯誤な……」
「って言うか、こんな時間に?」
「どこから現れた……?」
リク、八幡、ペガ、デュエスと、不自然な紙芝居屋の登場に怪訝な顔をする。
紙芝居屋の老人は四人の反応など関係ないように、朗々とした声とともに表紙をめくった。
「今日はウルトラマンジードのお話しだぁ~!」
「……!」
八幡たち三人が、思わずリクの顔を一瞥した。リクも自分の話が始まったことに、わずかに動揺している。
「悪~いウルトラマン、ベリアルと恐ろし~い怪獣たちの待の手が伸びた地球を、力の限り守ったのが我らがジード! みんなもよく知ってるねぇ! だけどジードの活躍はそれだけじゃない! もう一つの地球で、レイデュエスって悪者もやっつけたんだぞぉ!」
「……おい、あの紙芝居屋、おかしいぞ……」
「何で俺のことまで把握してやがる……」
不可解な進行をする紙芝居に、警戒心が強まっていく八幡たち。だが老人は一切気にする様子もなくページをめくる。
「そしてある晩、戦いの中で出会った仲間と再会をした!」
「!!」
話が今の状況にまで至ったので、四人は思わず老人から距離を取った。あの男は、明らかに怪しい。
「その時ッ! 大変なことが起こるぞ~! 空に渦巻く雷雲から、巨大な手が伸びてくるではないかぁ~!」
「何だって!?」
バッと顔を天に向けると――その通り、空に渦巻く怪しい雷雲から、巨大な青い腕がリクたちに向かって降ってきた!
リクは咄嗟にジードライザーを取り出したが、間に合わなかった。
「わぁッ!?」
巨大な青い腕は、リク、ペガ、そして八幡の三人をむんずと掴み、捕らえてしまう!
「お前らッ! うおぉッ!?」
デュエスは蒼い腕が起こした突風に飛ばされる。その間に、腕はそのまま雷雲の中へ戻っていく。
「捕まってしまったジードたちは、一体どこへ行き、どうなってしまうのか! 次回はウルトラマンロッソとブルのお話しだよぉ! 乞うご期待~!!」
紙芝居屋の老人は最後にそう言い残して、闇の中に消えていく。
「待て……!」
一人取り残されたデュエスは一瞬追いかけようとしたが、青い腕が雷雲の中へ――次元の歪みを通って、別の宇宙へ移動していくので、そちらを優先した。
「何てこった……! 緊急事態だ……!」
全速力で雑木林の中へ駆け込んでいき、数分後に、ルパーツ星の円盤が離陸して次元ワープを行った。追跡目標は当然、突如リクたちをさらっていった謎の青い腕だ。
まさしく風雲急を告げる、奇々怪々な出来事。そして物語の舞台は、異なる宇宙の地球へと移っていく――。
Next――
ウルトラブライルーブ!サンシャイン!! 特別編
『Select!! Rainbow Crystal!!!』