好奇心に突き動かされた狂人   作:ナナシ名無し

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学習の悪用

 狩りを1時間ほどした後、街に戻った私達は、互いに情報交換を行うことになった。

 だがアヴェスタのスキルについて不透明な部分が多く、実際にどのようなスキルなのかを検証しようという流れになった。

「《叡智、人のみが望む》対象:【槍士】クルル・ナイト・ルルセット」

『リソース量グリーン。80%の確率で劣化無しで取得可能だ』

「ではお願いします」

『・・・《槍術》Lv1を取得。《姿勢制御》スキルは失敗した』

「おーすごいねぇ」

「これはかなり強力なスキルでは?」

『・・・魔術師が槍を使う機会なんてそう無いだろう』

「そういえばそうでしたね。まあ私の場合ある程度使うでしょうが」

「けどさー、これって大分やばくない?幾らでもスキル取れるってことでしょ」

「その変わりステータス補正が皆無かつ取得経験値の多くを持ってかれてますが。確かに第一形態で覚えるには些か強過ぎる気がします」

『・・・強力なスキルを取得する場合は劣化が大きいだろうがな。それもプレイヤーレベルの向上や俺の進化で減っていくだろうが』

 これは《本能、獣のみが秀でる》の方も期待出来そうですね。一度試しましょうか。

『《本能、獣のみが秀でる》は無理だ。今のスキル使用でリソースのほとんどを使ってしまった』

「ふむ?ということはこの二つのスキルは共通のリソースを用いているのですか。それでこの消費量、・・・乱発は出来ない仕様ですね」

「まあ当然っちゃ当然だね。制限でも掛けないと強すぎるもん」

「ですね。これでも十分強力です。《火炎放射》みたいなモンスター特有のスキルはどの様に改造されるのでしょう?」

『恐らくは手などから火を噴射するスキルに変わるだろうな。他のスキルでも同様に、お前に合わせて劣化・変化したものに成るだろう』

「では、こちらの方が格上になった場合はどうなります?元のスキルの上位互換になるのか、それとも同等のスキルが手に入るのか」

『・・・まだ第一形態だから俺にも分からんが、俺の方向性的に上位互換が得られるようになるだろうな」

「なるほど。では、そろそろアヴェスタ君のスキルについての検証は終わりましょうか」

「じゃあ、私はログアウトするから。また明日ー」

「今日はありがとうございました。また明日」

 去っていく背中を見送りながら勘定を済まし店を出る。

 

 

 これで邪魔物はいなくなりましたね。では、

「実験を始めようかねぇ」

 スイッチを再び入れる。

『何をするんだ?』

「乱発」

『ああ、そういう』

 アヴェスタ君は私の考えをすぐに理解してくれて実に助かる。

「ドロップアイテムの換金をして、ポーション類を買い漁ったら、先程の草原に行こうかねぇ」

『・・・・・・』

「さあて何人分、ーーいや、何匹分(・・・)手に入るかねぇ」

 悪辣な笑みを浮かべながら私はゆっくりと歩いていった。何匹もの〈エンブリオ〉が待つ草原を目指して。

 

「さて、まずは効果範囲からだね」

 十数メートル先の〈マスター〉に《解析鏡》を使うと、問題無くステータスは暴かれていく。だが、“ガードナー”持ちではない。

 次に数十メートル先の〈マスター〉を解析する。

【呪術師】か。

「アヴェスタ君、今見ている相手のスキルを取得したい」

『・・・リソースは底をついているから確率は数%しかないぞ』

「別に取れなくても構わないさ」

『了解、《叡智、人のみが望む》。ーー失敗』

「取れるまで繰り返すことは出来る?」

『不可能だ。制限が掛かっていて効果対象に出来ない』

「ふむふむ、じゃあ本来の目的に戻ろうか。ガードナー(・・・・・)のスキルは《本能、獣のみが秀でる》で取れるかい?」

『分からん。試してみないとな』

「では実験開始だ。リソースを集めに行こう」

 近場にいた蛇を使役している〈マスター〉に声を掛けレベル上げを手伝って欲しいという名目でパーティーを組んだ。

 互いの〈エンブリオ〉を紹介する時間を取り、“蛇”がガードナーであるという確証を得た私は、レベル上げを行いながら《解析鏡》で蛇の情報を調べ続けた。

 そして、何度目かの戦闘を終えた時、相手からパーティー解散の申し出をされた。どうやら、そろそろログアウトしたいらしい。別れを終え小さくなっていくその背中を見ながら私はアヴェスタに指示を出した。

「《本能、獣のみが秀でる》」

『・・・リソース量グリーン。だが確率は1%にも満たないぞ』

「十分過ぎる結果だなぁ!発動だ」

『・・・失敗』

 取得に失敗した時の私の顔は、失望など微塵も感じさせない晴れやかな笑顔で、これからの展望を思い描いていた。

「フハハハッ!さあ行くぞアヴェスタ君。今日中に一つでも手に入れば儲けものだ!」

『ああ、そうだな』

「ノリが悪いぞアヴェスタ君」

『うるせえよ』

 

 

「それにしても馬鹿ばかりだなぁ。ラーニングの方に気を取られる者ばかりだ。《解析鏡》の強力さに気付かないとは」

『・・・ああ』

「まあ私としては好都合だ。一応一つは手に入ったしな」

『これからどうするんだ?』

「決まっている。普通にレベルを上げて力を付け、上級職に就く。そしてーー」

『そして?』

「“下級職に就いている〈マスター〉を支援する”という体でパーティーを組み、スキルを学ばせてもらうのだ。その〈エンブリオ〉の物も含めてな」

『なるほど。それで?まだ戻さないのか?』

「そうだった、戻すのを忘れていたよ。ーーでは行きましょうかアヴェスタ君。まだ見ぬ者達に会いに。そして、彼らを“識る”為に」

『ああ。これからもよろしく頼むよ。〈マスター〉?」

 アヴェスタ君に頷きながら、次なる獲物を求め歩き出した。

 ーーー全知への道は始まったばかりである。

 

 To be continued.




序章終了。1月は更新出来ないかもです。
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