あと、照井さんが実況しているゆゆゆPCゲーム見ました。あれ見たあとこの作品を作り出してたら、また違ったものがあったんだろうな...と。ネタバレ防止のためこのくらいで。
他の作品でもいくらか上がってるでしょうし、一緒に楽しんで頂ければ。ボキャ貧の自分はあとどれだけ過去話と丸っきり同じ文を回避できるのか(知らないだけでやってるかもしれない)。下から本文です。
「おはよー」
「ん、おはようさん」
下駄箱前で風に声をかけられいつものように返す。
「今日もよろしくね」
「別に言われなくたって大丈夫だって。そのためにバイクで来てんだし」
樹を送り届けるためのバイクは自転車置き場で待機中だ。登校するのにこんなものを使う生徒は過去にもいなかったようで、置場所をどうすれば良いか聞いた教師が一瞬黙ってたのは記憶に残っている。
「バイク登校、先輩なんかにも広まってるらしいわよ」
「尾びれ背びれがついてないことを祈るばかりだ...」
「金持ちってイメージは避けられないでしょうねー...あら?」
風が自分の下駄箱を開けると、ひらりと何かが落ちた。俺の足元まで来たので拾ったそれは、ハートのシールで止められている便箋________
(犬吠埼風さんへ...?)
「...これって」
「なになに?もしかして依頼?」
高校に勇者部の依頼書を出すやつなんていないだろとツッコミを入れる暇もなかった。
普段そういった話をする癖にこういうときだけ疎い彼女は、俺の手元から手紙をひったくり読み始める。
「えー、『犬吠埼風さんへ。どうしても気持ちを伝えたくて手紙を送らせて頂きました。今日の放課後、屋上で待っています』...?」
「いや、それラブレターだろ」
「...ラブレター!?」
自分と風の言葉が、少し冷たかった気がした。
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あたしがラブレターを貰った。ちゃんと宛先人の名前は間違えてなかったし、手元にある。送り主は分からない。
「今日はこの辺にしとくから。これ、次回までの宿題ねー」
チャイムと先生の終了の声と号令を習慣だけで乗りきり、隣の席に座る彼に話す。
「ねぇ椿。これ、あたしだけに見える手紙とかじゃないわよね?」
「...あぁ。俺にもちゃんと見えるぞ」
「あたしに春が?青い春が来たというの!?」
「あいつと言ってることが一緒だぞ...」
指差した先で(いつものように)騒いでる男子を見て、口を閉じた。
「うぅ...ホントにあたし?」
「名前書いてあるもんな」
「...女子からか!?」
「筆跡からして男だろうな」
「...」
「よかったじゃん。普段から言ってたんだし」
いつも通り______いや、いつもより少しだけ違和感のある椿の顔は、あたしが見つめても変わることはなくて。
「...本当にそう思ってる?」
「え?」
あたしは、椿がラブレターを貰った時、凄く不安だった。知らない人の元へ行ってしまう。椿は誰の物でもないのにそんな発想が出てくるくらいには、あたしは『嫉妬』していた。
「あたしがラブレター貰って...良かったと思ってる?」
(心のどこかで期待してたんだ。あたしは)
椿もあたしと同じくらい『嫉妬』してくれてないかなって_____
そしたら嬉しい。胸が熱くなる。
でも、それは現実としてなかった。
「...お前がいつも言ってたんだし、よかったんじゃないか?なんか嫌な理由でもあったのかよ」
普段よりちょっとトゲがあるような言葉に、私はやるせない思いを胸にしまった。
別に、あたしがそうなって欲しいなと思ってるだけなんだから。
「...そう。そうよね」
なのに。どうしてこんなに胸が痛むんだろう。
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「......」
バイクを走らせる。日が長くなる日々が続き、この時間ならまだ眩しい西日に悩まされることもない。最も、事故になりそうな辺りを走る車なんて見かけないけど。
図らずも風を学校に置いていくことができた。ここは良好だろう。
(...そう、思ってるはずなんだがな)
心のどこかがずっと逆撫でられてるようにゾワゾワするのは、何故だろうか。
「椿さーん!!」
「お待たせ」
讃州中学前に佇む樹お嬢様を迎え、荷物入れ場に忍ばせておいたヘルメットをつけさせる。
「んっ...」
「そろそろ自分でやってくれ」
「それはまたの機会で♪」
どこか上機嫌な彼女を見て落ち着いたのか、さっきより余裕のある運転が出来た。
「お姉ちゃんはうまく足止めできましたか?」
「偶然あいつにラブレターを渡してくれた奴がいてな。俺からなにかすることはなかったよ」
「...ラブレター!?」
「うぉっと!?」
流石姉妹と言うべきか、朝受けたリアクションとほぼ同じ返し。ただ今は運転中なので勘弁してほしいところだ。俺はともかく樹お嬢様に怪我などさせたら女王に処される。
「す、すいません!」
「いや...まぁ、元から園子と銀の部屋でやる予定だし、風が早帰りしても問題はないだろ?」
他の皆は二人のアパートに直行してるはずだ。今頃どったんばったんやっているのだろう。
「...こんなタイミングでくるとは思わなかったけどな」
「...椿さん?」
「さ、つきましたよ」
バイクを事務所の入り口で止める。どこか自分の動作が普段と違うんじゃないかと気になりながら。
「後は任せろ」
「あの、椿さん」
自分からヘルメットを取った樹は、とても年下とは思えない真剣な顔をしていた。
「お姉ちゃんのこと、心配なんですか?」
「...べ、別に」
しかし、少しの沈黙と噛んだことでバレバレ。彼女がずいと迫ってくる。
「私の目を見てください」
「っ...」
「......ちゃんと時間があれば、タロット占いをしたんですけど」
「なんだよ急に」
「素直な気持ち。よく考えて、お姉ちゃんに伝えてあげてください」
この子は今の動作でどこまで俺のことを読んだのだろう。端から見たらただ見つめあっただけに見えるはず。
「じゃあ行ってきますね!」
「...行ってらっしゃい」
しっかり見送って、バイクのエンジンをかけ直す。振動は俺の心そのものを表しているようだった。
(...俺の、素直な気持ちを......)
風がラブレターを貰ってから、落ち着かなかった。授業も集中出来てない。
どこか重くて、暗い感情。
『...本当にそう思ってる?』
もし、この思いに名前をつけるなら_________
「......」
普段なら絶対入らないお店の駐車場にバイクを止める。
「すいません、これの引き換えを」
「はい。少々お待ちください」
「...あの、追加も、いいですか...?」
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事務所の中に入ってから電話をつける。高校の授業が終わってからまだそこまで時間はかかってないはず。
すぐに電話は繋がった。
『もしもし』
「あ、お姉ちゃん?」
『樹?どうしたの?何かあった?』
「何かあったのはお姉ちゃんでしょ。椿さんから聞いたよ」
『...椿に口止めするの忘れてたわ。せっかく出来た青春話をあたしの口からしたかったのにー!』
いつもとちょっと違うお姉ちゃんの声に、爆弾を投げ込んだ。
「受けるの?」
『......』
「悩んでるんだよね?」
悩んでるから今告白されてないし、電話にもすぐに出てくれた。
(...今回だけだからね)
互いの気持ちを知ってるから。
「お姉ちゃん。ちゃんと自分の気持ちを言わなきゃわからないよ?まして椿さんでしょ?」
『うぅ...』
思いなんて決まってるだろうに。それは変わらないだろうに。それでも揺れてる。
でも、揺れてる理由はラブレターを貰ったからなんかじゃなくて、椿さんの心が読めないから。
だから私は背中をそっと押してあげる。それだけでいい。
(...もしこれで決まっちゃったら、諦めないとなー)
「頑張ってね」
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「...っ」
バイクを止めて20分程度経とうとしている。真冬でないことに感謝しながら、少し肌寒い風を体で感じた。
「...椿?」
そして、彼女は来た。
(いや、当たり前なんだけどな。風の家の前なんだから)
「どうしたの?用事?」
「用事と言えば用事なんだが...その」
迷惑になるだろう。何様だと思われるだろう。
『素直な気持ち。よく考えて、お姉ちゃんに伝えてあげてください』
(...俺の......)
俺は覚悟を決め、口を開いた。
「今さらなんだが、今日の告白断ってほしいんだ」
「...え?」
「...風が誰かと付き合うんだと思ったとき、胸が苦しかった」
彼女は俺と不釣り合いなくらい良い女の子だ。
それでも_______やだなと、『嫉妬』していた。彼女と付き合いたいのは俺だと思った。
風が相手だから尚更素直になれなくて。銀の次に関係の長くて、いつもからかいあっている彼女だから。いつの間にか出来た気持ちに気づかなかった。
あまりにも身勝手なお願い。でも、分かっていても止められない。
(だって...お前のこと、好きなんだ)
「だから...って、ごめんな。こんなこといって。もう受けてきたのに意味ないよな...」
「......ぷっ」
耐えられないと言う風に笑う彼女に傷つく。
(...やっぱりな)
「あはははっ!!」
「...そこまで笑わんでもいいだろ」
「んーん!!」
「うおっ!?」
そっぽを向いてたら、ひしと抱きしめられた。彼女の暖かさと背中に触れる腕の感触にどぎまぎする。
「ふ、風!?」
「あたし、告白断ってきたから心配要らないわよ!」
「ぇ...なんで」
「...なんでだと思う?」
「......うどん好きじゃなかった?」
「違うわよ」
「ですよねー」
「...まぁいいわ」
「ちょ、風...」
彼女の顔が目の前まで迫る。くっつくというところで進路が変わり、耳元までいった。
「...正解は、今度ね」
「っ!?」
普段と違いすぎる声音に胸が苦しくなり_______ちょっと、ほっこりした。
同時に、ここしかないと。
「さーて、じゃあご飯作らなきゃいけないから。うちで食べる?...椿?」
離れそうになった風を今度は俺から抱きしめる。
「...その答え合わせの前に、俺から言いたいことがあるんだ」
「...なに?」
「好きです。付き合ってください」
「......はい」
ごく自然な動作で、一度体を遠ざける。
「答え合わせの意味、なくなっちゃったわね」
「別に、話題なんていくらでもあるだろ?」
「えぇ」
それから俺達の影は、また一つになった。
「到着っと」
「二人の家?どしたの?」
「今日は何日だ?」
「えーと...あ!?」
「ホントはバレなきゃ隠し通せって命令なんだが...」
「言われなきゃバレなかったわよ。自分で言うのもあれだけど」
「...あいつらの前じゃ、こんなの恥ずかしくて渡せないからな」
丁寧に包まれているのは、エメラルドが嵌め込まれたパーツが真ん中にあるネックレス。
「誕生日おめでとう。風」
「...つけてもいい?」
「お好きなように」
「ん...嬉しい」
「よかった」
本当は、アクセサリー店で頼んでおいたのはエメラルドのパーツ部分だけだった。ネックレスになるよう急遽変更したのは________
(エメラルドは愛の意味を持つ宝石...ネックレスは、彼女は俺の物だって証明、永遠に繋がっていたいと願う希望......だなんて。言えるわけないわな)
墓場まで持っていこうと決めたが、五年後酔った拍子に喋り、数日弄られたのはまた別の話。
「ありがとう!椿!」
彼女の笑顔は、何にも変えられない大切なものだった。