古雪椿は勇者である   作:メレク

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この作品もアニメでいう五話!早いなぁ


十二話 決戦

「...多くね?」

 

樹海化した世界でスマホを使い敵の数を確認すると、残る七体全てのバーテックスが確認できた。

 

「目標視認!」

「数で攻めてきたわね...」

「なんですぐ攻めてこないんだろう...」

「決戦ね。皆準備して」

 

友奈の疑問には誰も答えられない。風をはじめとしてひとまず勇者の装束に身を包む。

 

「よっと...」

「椿先輩なんですかそれ!?」

「ん?大赦にちょっと頼んでな」

 

俺の装束は、元は銀も使っていたという赤を基調としたものの各所に、新しく白い布がつけられている。風に靡くくらいのため重さは全くない。

 

「いいなー...」

「これでもお前達の勇者システムの方が強いんだからな」

 

あくまで追加はバリアを強化するものでしかない。俺以外の精霊システム付きの勇者の能力を10とすれば、俺は勇者服で8、追加分で1でしかない。

 

「無理しないでよ」

「簡単に終われば無理しないわな」

「......」

「樹ちゃん、緊張しなくても大丈夫!皆いるんだから」

 

着替えた面々は改めてバーテックスを見る。まだ進行する気はないのか、さっきから動いていない。

 

「あれを殲滅すれば戦いは終わったようなもんでしょ?」

「七体全部いるしな...普通のやつ六、大型一...」

「よし、ここはあれ、いっときましょう!」

 

風が近くにいた友奈と東郷を捕まえる。

 

「あれって...円陣?」

「それ必要?」

「夏凜ちゃん、ほら早く」

「し、しょうがないわねぇ」

「古雪先輩も」

「いや、女子の間に入るのは...」

『じゃあアタシやるー!』

『あ、ちょ銀!』

 

素早く銀に乗っ取られた体は円陣の中にするりと入る。しかも組んだ瞬間に体を明け渡してきた。

 

「あんたたち!勝ったら好きなの奢るから絶対死ぬんじゃないわよ!」

「やったー!うどん食べたいなー...」

「言われなくても殲滅してやるわ」

「私も...叶えたい夢があるから」

「頑張って皆を...国を守りましょう!」

「...ここにいる誰一人欠けることなく終わらせよう!」

『アタシ達はやられない!』

「よぉーし、勇者部ファイトー!」

『おー!!』

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

特に陣形なんかは決まっていない。遠距離射撃の東郷が全体の流れを見て指示を伝え、俺達は前線で片っ端から暴れるだけだ。

 

「一番槍ー!」

 

先頭を務めるバーテックスと夏凜が衝突する。夏凜の刀はバーテックスの頭に相当しそうな部分を切りつけた。

 

「じゃあ二番槍だ!」

 

それにならって俺も刀を突き立てる。夏凜のより大きめな刀はバーテックスに深く刺さった。

 

『変わりな!』

 

すぐさま意識を切り替え、銀が二つの斧を虚空から呼び出し乱舞する。

 

(こりゃ便利だ)

 

俺は扱いやすい武器で近寄り隙ができる一撃を叩き込むまでを担当し、銀は威力の高い斧で火力を担当する。常に全力で動きながら精神的にはクールタイムを設けつつ、周りも確認することができる。これは銀がいるからこその戦いだ。

 

「樹!友奈!封印の儀を!」

「「はい!」」

 

傷ついたバーテックスは封印の儀を施され、いやがる素振りを見せつつ御霊を出した。夏凜が回転し始める御霊に迷うことなく突っ込む。

 

「夏凜!」

「大人しくしろ!」

 

刀を突き刺すと動きは直ぐに止まり、光を放ち砂のように消えた。

 

「一体目終了!」

「ナイス連携だよ!」

「夏凜気を付けろよ。なにやって来るか分からないからな」

「わ、わかってるわ」

 

あっさり一体目が終わり、喜び反面疑問が残る。

 

(あんな数がいて特攻染みた行為のどこに意味が...)

 

思考に入りきる直前、気味悪い音が鳴り響く。

 

「う...な、なんだ...?」

 

耳を塞ぎながら見上げた先には、鐘のような物を鳴らすバーテックス。

 

『うるさーい!椿止めてくれ!』

「他の二体もきてる...このままじゃ」

「音は...皆を幸せにするもの。こんな音はぁー!!」

 

樹の糸がバーテックスの鐘を拘束する。途端に体が楽になった。

 

「「ナイス樹!」」

 

風と俺の声がハモる。風は巨大化させた大剣を振るって迫る二体を凪ぎ払い、俺は鐘を刀で貫いた。離脱したところで東郷の狙撃も入る。

 

「っ...再生スピードが早い!」

 

今までとは明らかに違う速度で奴等の傷は消えた。再び攻撃に備えて__________

 

「撤退してる!?」

「違うわ!これは...」

 

出てきた三体が後退し、一番後ろを陣取っていた大型バーテックスと融合する。

 

「合体したぁ!?」

「四体だろうと纏めて封印すればいいのよ!」

 

合体し終わったバーテックスの行動は早かった。

 

「っ!!!!」

「えっ?」

 

咄嗟に隣にいた友奈を蹴る。加減出来なかったのは許してほしい。

 

一瞬光ったバーテックスを見た直後、鋭い衝撃が走った。

 

「ーーーっ...」

『椿?椿!!!』

「...大丈夫だ...まだバリアはあるから」

 

レーザー、というのが一番例えやすい。何十メートルも吹き飛ばされてもまだ無事だったが、バリアの限界は近いだろう。

 

「椿!」

「椿先輩!」

「...お前ら!前!」

 

バーテックスが吐き出した炎の弾が、俺の方を向く夏凜と樹にぶつかっていく。

 

「きゃっ」

「この」

『二人とも!』

 

(やめろ...)

 

「これで...効いてない!?」

 

東郷の狙撃はバーテックスに当たっても怯むことすらなく、逆にレーザーが東郷の狙撃ポイントを焼き払う。

 

『須美!!』

 

(やめろ...)

 

立ち上がろうとするも力が上手く入らない。

 

「皆ー!」

 

叫ぶ友奈に炎が群がる。一つ一つ潰していたが迫る数は留まることをしらず、爆発が起きた。

 

「やめろ...やめてくれ...」

 

盾を顕現させ地面に突き立てて立ち上がる。爆発の煙が晴れて見渡せば、風以外の皆が瀕死だった。精霊の力で無事ではあるだろうが、端から見たら死んだようにしか見えない。

 

(いや、もう...死んでいるのか?)

 

視界がふっと暗く________

 

『椿!』

「...思い込んでる場合じゃ、ねぇよなぁ!!」

 

(気合いを入れろ!まだ動ける!俺が生きてるうちは死人なんて出させるか!)

 

「銀が守った世界...これ以上荒らすんじゃねぇよ!化け物風情が!!」

 

心の中で叫ぶ幼なじみのようには誰もさせない。だから俺は__________

 

「あたしが巻き込んだんだ...誰一人、

死なせるもんか...みんなで帰るんだ!」

「風ー!!」

 

叫ぶ風とバーテックスの間に割り込んで。

 

「少しは前見ろよ?」

 

構えた盾の向こうから光が見えて__________

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「少しは前見ろよ?」

あたしの目の前で、そう言って。

 

次の瞬間には激震が走っていた。

 

「ぐっ...」

 

樹海にぶつかってもさほど痛みはなくて、直ぐに立ち上がる。

 

「あ...」

 

でも、遠くまで飛んでいく椿が見えて、世界が暗くなった。

 

ついこの間手に入れてた盾を離すことなく地面と激突する。

 

「あたしを庇って...?冗談じゃないわよ...」

 

初めて戦った時も、人が変わったように暴れて、今もあたしの為に傷ついた。

 

「あたしのせいじゃないの...」

 

呆然としてると後ろから衝撃を受ける。

 

(息が...!)

 

バーテックスの放った水球に閉じ込められてしまった。手元の剣を振っても水を切ることは出来ない。

 

上空に昇っていく水球からは、倒れてる皆が見えた。

 

(だめ...樹を置いて、椿を巻き込ん...皆を巻き込んでくたばれるわけ、ないでしょ!!)

 

声にならない叫びが届いたのか、バーテックスの攻撃が更に来たのか。私の視界は光で白く染まった。

 

答えは_____前者だった。

 

光が晴れた時には水中にいた苦しみもなく、寧ろ力がみなぎってくる。両手を眺めるといつもとは格好も違った。

 

「これならいける...そぉぉぉい!!」

 

迫る合体バーテックスに体当たりすると、それだけでバーテックスが吹っ飛んだ。

 

頭が意識しなくても教えてくれる。

 

「これが、勇者の切り札...満開!」

 

 

 

 

 

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「風先輩...」

 

敵の攻撃で一瞬意識が遠のき、気づいた時には風先輩が大きな花の光を咲かせていた。

 

「あれが満開...」

 

なすすべもなくやられていたバーテックスをいとも簡単に倒していく様は、満開がどれだけの力を秘めているのかが理解できる。

 

「私も...っ!」

 

奮起したところで、地面から別のバーテックスが現れた。もう目と鼻の先。

 

(合体してなかった敵の一つ!?地下に潜っていたの!?)

 

「間に合わ...」

 

バーテックスが腕のような物を伸ばして、盛大な音が響いた。金属とぶつかる様な音で________私自身に痛みも衝撃もない。

 

「え?」

思わず閉じた目を開けると、そこには赤と白の服を身に纏い、盾を構えた古雪先輩が。

 

「なんとか間に合った!」

 

にこやかな笑顔でそう言った。

 

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