古雪椿は勇者である   作:メレク

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最近自分の作品を見直すことが多くなったのですが、もっと彼女達の思いを、決意を上手く書きたいと感じました。特にかっこいいシーン。

リメイクする暇なんかないし、これ以上意識しても詰まって書けなくなるだけだわってノリツッコミもあるんですけど(笑)

というわけで今回はほんわか回です(唐突)


29話 マッサージとゲーム

「椿君にしてほしいこと?」

「無理にとは言わんが、なにかあれば」

 

若葉と壁の外に出て、ひなたと約束した(身も心も溶かされた)翌日、俺はユウの元へ向かった。

 

「そうだなー...あ、そうだ!」

 

 

 

 

 

「で、またこれ?」

 

俺は何故かユウの部屋に招待され、ベッドに寝転がっていた。布団から変に甘い香りがして落ち着かない。

 

(似てるようで、意外と似てない所もあるんだよな...)

 

もう半年近く前になったものと比べながら、口を開く。

 

「これでいいのか?」

「うん。じゃあ始めるね!」

 

マッサージをさせて欲しいと頼まれたのに、そこまで驚きはしなかった。間違いなくひなたのせい。

 

(そういえば、友奈も得意だったっけ...)

 

以前風と夏凜が餌食になり、悲鳴をあげていたのを覚えている。俺はその時断ったが、やけに寂しげな顔をしていた。

 

「椿君絶対体固くなってると思うんだ。最近忙しかったし」

「そんなこと言ったらユウもじゃないか?」

「じゃあやってくれる?」

「...わかった。やるよ」

「やったー!」

 

マッサージ目的とはいえどこか恥ずかしいのはある。

 

(年頃の男子なんてそんなもんだ...そうだよね?俺だけヤバいわけじゃないよね?)

 

脳内で戯言を重ねているのを纏めて放棄する。

 

「いくよー...」

 

(まぁ、ただのマッサージだし、ユウが友奈みたくうまいわけじゃ...)

 

「えい!」

「んわっ!?」

 

結論だけ言おう。舐めててごめんなさい。

 

 

 

 

 

「......」

「どうだった?気持ちよかった?」

「...ハイ。トテモ」

「よかったー...今度ぐんちゃんにもやってあげよう!」

 

(南無。千景)

 

浜に打ち上げられた魚のようにピクピクしてるだろう俺を見て、ユウが満足げな声をあげた。

 

その両手にどんな力を宿してるのか、はたまた相手の健康状態を触るだけでわかるのか。全身揉まれた結果体が羽のように軽くなった。

 

腕回しても腰を捻っても痛いところが全くない。関節も柔らかくなっている。

 

「いや、本当凄いな...」

「じゃあ、今度は椿君の番だね!お願いします!」

「......ここまでやれる自信はないけど、精一杯やらせてもらいます」

 

ベッドに寝そべるユウに手を伸ばす。両親にやったことがある程度だが、やれることはやろう。

 

ユウの攻撃(マッサージ)を受けてそこまで呆けてないのもひなたのせい(お陰)だろう。

 

「まずは肩から...」

「んっ...んん~」

 

ユウは武術が好きで、実際戦うのも体全体を使っての殴る蹴るのスタイル。細いながらもついてる筋肉がはっきりわかるし、酷使されてるそれらが固くなってるのもよくわかる。

 

ユウの体が休まるよう手に力を込めた。

 

「いいねぇ~」

「ならよかった」

 

 

 

 

 

始めこそ、ある意味一番距離を置きたかった相手だった。容姿も性格も似てる彼女を思い出したくなくて、視界にも入れないよう心がけていた。

 

勿論今だって似てるところは多いと思う。今日もよく比較してるし______明るい所とか、どこか天然な所とか、いざというときの芯の強さとか_________

 

だから、二人の違いを見つけられると嬉しくなる。それだけ二人のことをよく理解してきてる証になるから。

 

今だって、気持ち良さそうにしている彼女は彼女と別だ。

 

似てて似てない二人の友奈。

 

「...ユウ」

「どうしたの?」

「......いや、呼びたくなっただけ」

 

目の前にいる高嶋友奈。彼女との少ない思い出を増やすため、もっと________

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「はぁー...気持ちよかった~」

 

じんわり温かさが残ってる肩を回すと、普段よりよく回せる気がする。

 

「ありがとう、椿君」

「このくらいのことならいつでも...いや、毎日頼まれたら困るけどさ」

「分かってるよー」

 

同じベッドの隣で座る椿君は、照れくさそうに頬をかいた。

 

「でも、慣れてる感じあったね?」

「え?そう?両親とかにしかやったことないぞ...あと銀もやったか」

「銀ちゃん?」

 

お花見の時に話してくれた、椿君の幼なじみ。

 

「あぁ。小学校の時に何度かやらされた。それのお陰かもな」

 

「懐かしいなぁ...」と呟く椿君の目を見る。

 

自分の記憶を振り返ってるその目は、優しくて、キラキラしてて、どこかほっとする。

 

思い返してる思い出が、心の底から大切にしている宝物なんだと分かる。

 

「...ん?どうかしたか?」

「大好きなんだねって思って」

「......面と向かって言われると恥ずかしいな...二度、会えない場所にいっちゃったからな。もう絶対離したくない」

 

椿君がこの時代に来て、こんなに大切に思ってる銀ちゃんや、勇者部の皆と離れた時のショックは大きかった。自分を見失ってしまうくらい。

 

中途半端にしか分かってなかった私は、彼のことを理解できなかった。

 

「...私も戦うから。椿君が無事に未来に帰れるように」

「ユウ...大丈夫。皆無事に帰るんだからな」

「うん!」

 

大事な日常を、ぐんちゃんと、若葉ちゃんと、ひなちゃんと、あんちゃんと、タマちゃんと過ごす。

 

そこに、私と椿君もいる。

 

(その為に、私は戦う。)

 

臆病でも、勇気を振り絞って__________

 

「ユウ?」

「うん?」

「いや、手...」

 

椿君の目線の先を見たら、私の左手と椿君の右手が繋がっていた。

 

「わ、ごめん...」

 

慌てて離そうとしても、私の手は離れようとしない。

 

(...そっか。そうだよね)

 

「ねぇ椿君。もう少し...このままでもいい?」

「別にいいけど?」

「やたっ♪」

 

曖昧に繋いだ手をちゃんと繋ぎ直して、私は微笑んだ。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

「はぇー...すっげ」

 

マシンガンでぶっぱなされる弾は相手の弱点を正確に撃ち抜く。そのくせ防御のタイミングに狂いはない。

 

「何見てるの?早く復帰しなさい」

「いや、俺やる意味ある?」

「なによ...折角二人で来たんだし、いいでしょ」

「...確かにな」

 

コインを投下して受け取った追加ライフと共に、俺は備え付けのマシンガンを構えた。

 

俺と千景が来ていたのは大型ショッピングセンターに備え付けられたゲームセンター。家庭用ゲームの補充がしたかった彼女に、『一緒についてきてくれる?』と言われ、買い物に来ていた。

 

で、どうせならゲーセンも楽しんでいこうということになり。はじめは画面に映る敵をマシンガンで打ち倒すシューティングゲーに手を出した。

 

正直隣の少女が凄まじいプレイヤースキルを発揮し注目を集めており、俺は若干落ち着かなかった。

 

千景と出掛けるのは全然良いし、楽しいが______多くの取材等にこそ応じてないものの勇者の一人である彼女と、勇者とみなされながら未だ悪評が流れている俺。帽子を被ってるお陰でまだ誰も気づいていないようだが、このまま目立ち続ければバレるだろう。

 

(寧ろ、球子や若葉と出掛けたときバレなかったのが運が良すぎってレベルなんだが...)

 

「左を」

「了解」

 

ホントに楽しいだけに、悔やまれる。

 

「ボスか?」

「頭を狙って。首を振ったらガード」

「そんな咄嗟に出来るかね...っと!」

 

完璧な形でガードに成功し、ボスに隙ができる。

 

「そこ!」

 

そこに千景が弱点の中心を当て続け、俺達に向け全クリを祝福するファンファーレが流れた。

 

 

 

 

 

「千景ってどんなゲームも出来るのか?」

「強いて言うならリズムゲームが苦手かしら」

「強いてなんだ...あんだけやったのに」

 

格ゲー、レーシングゲー、リズムゲーと新スコアを叩き出した彼女は少し息をついた。

 

「対戦はボコられたしな...」

「でも上手な方よ。乃木さんにも色んなゲーム貸したけど、それよりは」

「初心者に勝てなきゃ不味いと言うべきか、学習能力高そうな若葉に勝ててることを喜ぶべきか...」

 

パーティーゲームでもしようものなら、千景以外vs千景でも勝てる未来が見えない。

 

「皆で遊ぶのには丁度いいんじゃない?私は手加減苦手だから...」

「あれだな。ユウのくすぐりを受けながら対戦だな。それなら勝てる」

 

盤外戦術を脳内で広げ、すぐしまった。

 

「んでどうする?まだなんかやる?」

「......あれ」

「...ぁー」

 

千景が指差したのは、杏とも撮ったプリクラだった。

 

「い、嫌よね」

「寧ろ俺が聞きたいんだが...いいのか?」

「ぇ...い、い良いわよ」

 

おっかなびっくり入る彼女に続くと、いつかの声が別のセリフ(だった気がする)で響いた。

 

『じゃあ、いっくよー?』

「古雪君、これ、どこ向けば...」

「そこだよ」

 

フラッシュと過激になっていく音声ガイドに抵抗を持ちつつも、なされるままに写真を撮っていった。

 

『じゃあ撮るよー?最後はキスしちゃおう!』

「...」

「...?」

 

撮った写真を加工することなくプリントアウトする。手に入ったのは、顔を真っ赤にしながら目をそらす千景と、少し間抜けな表情の俺。

 

「はい、しまって」

「千景これ...」

「いいから、しまって。早く」

「は、はい...」

「......誰かに見せたら、ただじゃ済まさないから」

「サー、イエッサー...」

 

キスなんて勿論してるわけなく、でも俺達の手は、遠慮がちに繋がっていた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「今日はそれなの?」

「これが一番良かった。コンビニに売ってるようなのは粗方飲んでな」

「早いのね...」

「意識しだすと体が定期的に欲するんだよ」

 

高嶋さんが私に光を見せてくれた人と言うならば、勇者の皆と上里さんはその光を大きくしてくれた人達だろう。

 

「はいどうぞ」

「私に?」

「他に誰がいるんだよ?前美味しいの見つけたら飲ませろっていってたろ?」

 

そしてこの人は、その光輝く場所までの道を示してくれた人。動けなかった私を励ましてくれた人。

 

「......美味しい」

「未来にも同等のがあるが、このみかんジュースはそれより安い上にコンビニで売られてる。300年間絶やさぬ為今のうちに売上に貢献しなければ...」

「そんな微々たるもので効くわけないでしょう」

「気持ちの問題だ」

 

違う時を生きて、違う環境で過ごした皆が、勇者という名の元に集まっている。安っぽい言葉で語るなら『奇跡』なんだろう。

 

でも、私にはその『奇跡』が心に響いて、とても幸せになれる。

 

(...あぁ、これが幸せなのね)

 

蔑まれて、生きた心地のしなかった過去の私が、問いかけてくる。

 

『こんなものはまやかしよ。貴女はずっと一人なの。ここまでも、これからも』

 

「ねぇ」

 

『信じた人には裏切られる』

 

「古雪君」

 

『いや、まず貴女は人を信じられないでしょう?』

 

だから私は答えた。過去の自分に手をさしのべて。

 

「ありがとう」

「なんのことだ?」

「...なんでもないわ」

 

『この人達なら信じられる。貴女も私もよ...ね?』

 




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