古雪椿は勇者である   作:メレク

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本編が過去一二を争うレベルで難産なので予定変更。リクエストです。

実際出すならこのタイミングじゃないと後は完結まで出しにくい予定ですから...


30.5話 ダブルブッキング

Cシャドウが特大の火力コンボを作り上げ、ツッキーを爆破する。

 

「あー!」

「私の勝ちね」

「あれは回避出来た筈なんだがなぁ...」

 

隣で勝ち誇った顔をしてる千景と、うなだれる俺の手元にはゲームのコントローラーが握られている。

 

早い話が対戦ゲームで倒されたのだ。Cシャドウ(千景)はやっぱり強かった。

 

「はぁ...約束は約束だ」

 

既に数時間プレイしてきた俺達は、この試合で負けた方が勝った方の命令を聞くという賭けをしていた。事前のプレイで実力差は明白だったのでハンデも貰ったが、結果は負けだった。

 

「わんこうどんに挑戦とか小説のネタにするとかは思わないけど、何やらせるつもりだ?」

「...」

「千景?」

「え、えぇ...そうね」

 

少し考えたような千景は、一本指を立てた。

 

「明後日買いたい物があるから、それに付き合ってくれるかしら...ふ、二人で」

「そんなことでいいのか?」

「いいのよ!」

「ぉ、おう...分かったよ。明後日な」

 

区切りも良いのでゲームを切り上げそのまま自室まで。

 

「あ...まぁいいか」

「何が『まぁいいか』なんです?」

「それ、俺の真似なら似てないと思うぞ」

 

部屋に入る直前にかけられた声の主はひなたで、隣に杏がいた。持ってる袋からして買い物帰りだろう。

 

「モノマネは難しいですね...それで?」

「いや、明後日千景と買い物に行く予定になったんだが、ユウとも遊ぶ約束してたなって」

「別々で約束したんですか?」

「忘れててさ...まぁ三人で遊べば解決だろ」

 

俺の発言を聞いて、二人が顔を見合わせる。

 

「...椿さん。友奈さんが何と言って約束したか正確に覚えてますか?」

「え?えーと...確か『今度の日曜日、二人で遊べないかな...?』だったかな」

「似てない...」

「今のは似せようとしてねぇよ」

「それで、千景さんは?」

「『明後日買いたい物があるから、それに付き合ってくれるかしら...ふ、二人で』だそうだ」

「杏さん、これは...」

「はい、ひなたさん...」

 

謎のアイコンタクトを済ませた二人は、ずいと俺に寄ってきた。

 

「いいですか椿さん_______」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「...」

 

現在十時。場所は後のイネスと言われても不思議ではない大型ショッピングセンター。

 

中にある噴水前で、俺は一人立っていた。

 

『いいですか?明日のお出掛けは友奈さんと二人で過ごし、また千景さんとも二人で過ごすんです』

 

昨日杏とひなたから呼び出されて言われたことを思い出す。

 

『なんでだよ?』

『恐らく椿さんに詳しく言っても無駄なので省きますが、そうしてください』

『なんだそりゃ...』

『とにかく!お二人にバレないよう上手くやってください!私達もサポートしますから!』

 

左耳に刺さってるインカムは、寮にいる二人と繋がっている。

 

日にちをずらそうと提案したが、『それはどっちかを優先しているととられちゃいます!』と言われた。そうなると二つも約束を何も考えずしてしまった俺に非があるので、反対できなかった。

 

(別にいいだろうに...)

 

二人が俺のことを大好きで、二人きりの時間を取られたくない。なんて思考の持ち主だったらありえる話だが、そんなことはあり得ないだろう。特にユウの方は。

 

恋愛感情に興味がないわけじゃないし、想像だってする。だか、あんな美少女達がそんな思考には至らないだろう。

 

「椿くーん!ごめん!遅れちゃった!?」

「別にそんな待ってない。それより大丈夫か?」

 

『そこは今来たところだ。と言う所ですよ!』

 

(えー...)

 

走ってきたユウが普段より少し身長が高く見えるのはヒールを履いてるからだろう。慣れない物は足を痛めやすいという。

 

俺の目線で気づいたユウが胸を張った。

 

「大丈夫!こんなに動けるよ!」

「あ、バカっ」

 

足をあげる彼女を抑え、そのまま足を戻す。

 

「自分の服装くらい把握しろ...」

「ぁ...ごめん...」

 

短めのスカートの裾を抑えてもじもじしてた彼女は、顔を赤くしながら口を開いた。

 

「椿君...ど、どうかな?似合ってる...かな?」

「...似合ってると思うよ」

「!!」

 

『椿さんならこう言うだろうって分かっててもドキッとしますよね...』

『確かに...とりあえず椿さん!一時間後の千景さんとの集合時間まで友奈さんと遊んでください!』

 

(なんだこの状況...)

 

慣れない状況は自分も痛めやすいのかもしれない。

 

確か以前読んだライトノベルでも似たような状況があったような気がする。

 

(あれだと確か...)

 

「俺達の戦争(デート)を始めよう...ってか」

「デ、デート!?」

「ユウ?」

「う、ううん!なんでもない!」

「あぁ...」

 

 

 

 

 

ユウと一時間近く一緒にボウリングを楽しんで、腹痛を訴えて退席した。罪悪感が俺を潰そうとする中、千景と合流する。

 

「すまん!遅れた!」

「集合時間ぴったりよ。遅れてないわ」

「そ、そうか...それで、買いたいものってのは?」

「ここにあるお店限定の特典付き小説を買いたいの」

「成程。でも荷物持ちいるか?」

「...別に、荷物持ちのつもりで呼んでないわ」

 

最後の方はぼそぼそ言ってて聞き取れなかったが、聞き返すと顔を赤くして行ってしまった。

 

『椿さん、そう時間置かずに友奈さんの所へ戻ってくださいね!』

「えぇ...」

「どうかした?」

「いや、何でもない」

 

目的の物はあっさり見つかったらしく、千景はすぐに買っていた。そのまま昼ご飯のスペースへ向かう。

 

「ちょっと早めだけどお昼にしないかしら?」

「いいぞ。人も多いしな」

 

俺はうどん、彼女は蕎麦を注文した。

 

「珍しいな」

「蕎麦には蕎麦の良さがあるわ。うどんの方が好きだけど、たまに食べたくなるのよね...」

「寮だとうどんばっかだもんな」

 

栄養バランス的に、あれは平気なのだろうか。

 

男女の差が顕著に現れ、俺が先に食べ終わった。

 

「ちょっとお手洗い」

「いってらっしゃい」

 

彼女の死角になる位置まで来てからダッシュ。うどんが胃のなかで暴れてるのを抑え、急いでユウの元へ。

 

「ごめん!遅くなった!」

「椿君大丈夫!?」

「あ、あぁ...お腹の調子が悪くてさ」

 

(なんなら現在進行形で悪いんですけど)

 

「そんなに...無理しない方がいいよ。今日は帰ろっか?」

「いや、気にしなくて大丈夫だよ。さ、どこいく?」

 

即帰宅は魅力的だが、事前に『帰宅なんかしたら悲しんじゃいます!折角のお出かけなのに!』とか、『二人のために頑張ってください!』とか言われてれば、無理もしなければならないだろう。

 

「どこでもいいぞ?」

「...じゃあ、そろそろお昼にしよっか」

 

冷や汗が一筋たれた。

 

 

 

 

 

「随分混みだしたな...」

「待ってる時間も楽しいよ!」

「...そっか」

 

ユウの希望でラーメン屋に並んでた俺達は、少ししてから席についてメニューを覗く。

 

(量が多いのばっかだな...いけるか?)

 

「椿君はなに頼む?」

「くっ」

「くっ?えーと...わかった!すいませーん!『くっ殺せ!爆盛りラーメン』ください!」

「お腹が...待って、ユウ。なに頼んだ?」

「え?椿君の注文通りだよ?でもお腹痛いって言ってたのに食べれる?無理しなくていいからね?」

 

メニューを見ると、くっ殺せのやつは、でかでかと『当店ナンバーワンの量!』と書かれていた。

 

(流石ユウ。すぐ頼んでくれるとか...死ねる)

 

「す、すいませんさっきの...」

「へいおまち!くっ殺ラーメンとラーメン小!!」

 

早い、多い、旨いが特徴の店。今日ほどこうした店を恨んだことはない。

 

油の膜が広がり、ぶっとい麺が見えないくらいに盛られたもやし。

 

(...うっぷ)

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「けふっ...」

 

腹の中でまだ暴れてるラーメンとうどんに苦しめられながら、俺はベッドをのたうち回った。

 

「大丈夫ですか?」

「完食なんてしちゃうからですよ」

「それな...!」

 

残すのは勿体ないと思った俺は大バカものだった。全部食べたらホントにトイレ直行である。

 

「破裂する...」

「破裂しませんよ。お疲れさまでした。結局お二人にバレず上手く行きましたしね」

「なー、いい加減教えてくれよ。なんで今日二人きりで行動しろなんて言ったんだ?お前らわざわざサポートまでするとか言ってきて」

 

実際、双方に電話をして気を紛らわせたりしてくれたらしい。

 

「遊ぶなら三人でも、なんならお前ら混ざってもよかっただろうに」

「...混ざれるものなら、混ざりたかったですよ」

「へ?」

「椿さん!何故お二人が椿さんと二人きりでお出かけしたかったのか、本当に分からないんですか!?」

「えー...いや、思いつくには思つくけどさ」

 

俺の言葉に食いつく二人。小動物みたいに目を丸くしてる姿が、なんだか微笑ましかった。

 

「二人とも俺のこと好きとかな。でもあんだけ美少女なあいつらが特にイケメンでもない俺にぞっこんとかないでしょ。漫画じゃあるまいし」

「「......」」

「え、なにその無言」

「「...はぁ」」

「シンクロため息!?」

 

勝手にあっちで話が進んでいき、気づけば帰ろうとしていた。

 

「あぁ二人とも、とりあえず今日はありがとう」

「感謝はするんですね。意味も分からないのに」

「それでも俺の為に時間割いてくれたのは事実だろ?」

「っ...おやすみなさい!」

 

ドアを開けた先に人がいたらしい。玄関で高い声が四つに増える。

 

「あ、ひなちゃんアンちゃん」

「二人とも、この部屋に古雪君いる?」

「お、お二人ともどうしたのですか...?」

「め、目が......」

「いやぁ」

「ちょっと」

「「話がしたくて」」

 

足音を立てず、静かに窓を開ける。ひなたと杏がいる間に逃げれば十分隙が______

 

「「捕まえた」」

「ひっ!?」

 

玄関にいたはずの二人は、俺の肩を掴んでいた。どんな腕力をしてるのか動こうとしてもピクリともしない。

 

「さっきぐんちゃんから聞いたんだけどね。今日ぐんちゃんとお出かけしてたんだって?」

「さっき高嶋さんから聞いたのだけど、貴方、今日高嶋さんも出掛けてたらしいわね」

「は、話せば分かる。だから落ち着いて...」

「「どういうこと?」」

「ごめんなさい!悪かったから許して!!」

「謝罪が聞きたいんじゃないの。説明が聞きたいのよ」

「ぐんちゃんの言う通りだよ」

「ひなた、杏、助け...」

「「椿(古雪)君?」」

 

その夜、寮に男の悲鳴が聞こえたとか聞こえてないとか。俺は記憶にない。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「こ、怖かった~...でもお出かけかぁ......」

「杏さんもしたかったですか?」

「わ、私は別に...って、その言い方もしかしてひなたさんも!?」

「ふふふ...さて、どうでしょう?」

 




千景→効率を高めて結果を楽しむタイプ
友奈→どんな状況でも過程を楽しむタイプ

書いててなんとなくこう感じました。
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