考察云々は置いといて、今後日常が綴られることを期待します。具体的に言うとどの時系列でもいいから日常ネタで三期ください。
こっちも佳境!
「なんとか間に合った!」
風先輩への攻撃を庇ってから、椿の意識は消えてしまった。一方中で待っていたアタシは衝撃を受けることなく意識を保っていられた。
風先輩が以前話にあった満開をして、合体バーテックスと戦っているのを眺めていたら、視界の端に地面を這いずり回るバーテックスを見つけた。狙いは間違いなく東郷さん。
手元に握っていた盾を構えて突撃する。ここ一年でぐっと身長が伸びた椿の体も、今では思うがままに操れる。傷もアタシの最後に比べれば痛くない。
バーテックスがぶつかる前に、東郷さんとの間に割り込んで盾を地面に突き立てた。激しく当たってもアタシはびくともしない。
「あっちいけ!」
呼び出した一本の斧を投げ当て、少しだけ後退させた。
「古雪先輩!?」
「...許してくれ。椿」
(今くらい、都合の良い解釈してもいいよな?)
「須美。ここは任せて」
「え...」
二年前、アタシの最後で守れたか分からない親友ととてもよく似ている人の頭を撫でる。須美はこれが好きだったみたいだから_______
「またね」
それは、前にも言った別れの言葉。
本当は一時の別れにしたかったのに、永遠の別れになってしまった言葉。
でも、今度こそ、今度こそ。
(前は出来なかったからね...)
とるべき道はたった一つ。
「......いくよ」
私は尚向かってくるバーテックスに突進する。
(椿...体、貸してね!)
「満開!!!」
今なら出来るという確信があった。守るべきものが背中にあって、倒すべき敵が目の前にいるんだから。
地面の方から白い枝の様な物がアタシを取り囲む。花開いた時には、アタシの背中に機械染みた羽がついていた。
「カッコいいね!アタシ好みだ!」
同時に二回り大きくなった斧を握りしめると、炎が舞い散る。
合体バーテックスが出すのなんかよりはるかに明るく、触れるもの全てを焼き尽くす切り札。
「いっくぞぉぉぉぉ!!」
羽を広げ、目の前のバーテックスめがけて両手を降り下ろす。斧の先まで伸びた炎はバーテックスより大きくなり、バーテックスを丸ごと溶かしていった。
「御霊ごとぉ!」
封印することなく出てきた御霊も炎に飲まれ消えていく。たった一振りで今まで苦戦してきたバーテックスは消し炭になった。
「これが、満開の力!それから!」
勢いそのままに合体バーテックスに接近する。普段出来ない空を駆けることで真上をとった。
「椿!?」
「人間の根性だぁぁぁ!!」
急降下、そして今まで以上の乱舞をお見舞いする。斬っても斬っても再生されるが、そこに新たな切り口をつけ炎を染み込ませる。
「皆を...守るんだぁー!!」
理性を捨て、本能だけでただひたすらに攻撃を当てていった。
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「お姉ちゃん...椿先輩...」
二人が満開して一番大きなバーテックスを相手していた頃。私はようやく傷に慣れて立ち上がれた。その矢先にスマホのアラームが鳴る。
「今...!?」
映し出されていたのは、バーテックスの一体がここより遥か先、既に神樹様の近くにいるということを示している。
辺りを見れば________最初に倒した一体、古雪先輩が倒した一体、合体した四体。
「数が合わない...お姉ちゃん!!」
咄嗟に声をかけても、お姉ちゃんも古雪先輩も合体バーテックスと戦っていて動けそうにない。でも、今神樹様に向けて移動するバーテックスはとても早い。
「...私達の日常を壊させない!」
私に、光が溢れた。
「満開!」
勇者としてレベルアップした満開。その使い方が頭に流れ込んでくる。
「そっちにいくなぁー!!」
一声上げ、無数の糸がバーテックスの元まで飛んでいく。絡めとったバーテックスを手元まで引き寄せて、
「おしおき!」
そのまま糸で引きちぎった。小さな御霊も糸が細切れにする。
「やった...お姉ちゃん!」
まだ戦いは終わってない。お姉ちゃんの加勢をするため、私はバーテックスの方へ飛んだ。
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「封印開始ぃ!」
どこからかそんな声がして下を向くと、夏凜さんが剣を地面に突き立てていた。
「あんたたち封印くらいしなさいよ!そんだけ弱らせれば大丈夫でしょ!」
(封印忘れてた。やったことないからなーアタシ)
もう合体バーテックスに勢いはなく、始めこそレーザーや炎の弾をだしてたけど、全て斧で潰すと一気に弱くなっていった。
「よぉし!勇者部一同!封印開始!」
風先輩とアタシも夏凜さんの横につき、封印を進めていく。大型だからか時間はかかるけど、確実に封印は出来ていると感じた。
「遅れました!」
「友奈!」
「お姉ちゃん!」
「樹!」
「その姿...」
「私も満開出来ました!」
倒れていた友奈さんと、気づかぬうちに満開していた樹さんも封印に参加する。やがてバーテックスは御霊を________
「...は?」
御霊は出た。
「...」
皆の息を飲む音と、封印の音だけが耳に入る。
「あんなでかいの、どうしろって...」
思わず呟いてしまうくらいには、大きかった。おまけに御霊が出た場所は空高く。
「大丈夫!」
毅然として言ったのは友奈さん。
「御霊なんだから、今までと同じようにすればいいんだよ」
「友奈ちゃん行こう。今の私なら、友奈ちゃんを運べると思う」
光と一緒に東郷さんがそう言ってくる。大輪が咲いて、昔の戦艦みたいなのが出てきた。
(須美が言ってた奴みたいだ...)
突然のことに頭がそんなことしか考えられてないけど、時間がない。
「じゃあアタシも!」
「早く殲滅してきなさいよ!」
「よろしく!友奈、東郷、椿...」
「っ!風!!」
「お姉ちゃん!!」
「風先輩!」
風先輩が椿の名前を呟いたのを最後に、地面に倒れる。
「二人とも、行って。俺はここに残って時間を稼ぐ」
「でも」
「風は無事。多分満開の時間が切れただけだから。早めによろしく!」
風先輩がただ気絶しただけなのを確認して、二人に告げる。東郷さんの戦艦は友奈さんを乗せて空高く飛んでいった。
「よし...樹!夏凜!時間を稼ぐよ!!」
「はい!」
「言われなくても!」
風先輩が封印に参加できなくなった分、拘束時間が短くなっている。
(ホントは行きたかったけど、こっちやんなきゃ皆終わるよね...)
封印の儀からバーテックスが抜け出せば、世界は終わる。前に椿と勇者アプリで確認したことだ。
「勇者は、気合いと根性ー!!!」
だからアタシは少しでも力を入れて、拘束時間を延ばした。
(椿も起きれば時間延びるのかな?早く起きろー!)
残り二分を切ったところで、空が明るく光り、花が咲いた。
「友奈も満開したの!?」
「よし、もうちょい!勇者ファイトー!」
自分を、周りを鼓舞するため声を張り上げる。
そして、そう時間は経たずに__________御霊は消えた。封印をしていた目の前のバーテックスも砂になって消える。
「やった!」
「友奈さん!東郷先輩!」
「......よかった」
(これ、走馬灯だっけ...)
ちらちらと、頭に思い出が浮かんでは消えていく。前に三体のバーテックスと戦ってた時はこんなことなかった。
「ははは...本当、よかった」
なんとなく自分に起こる事が分かる。きっとアタシは__________
(椿...ごめん。また置いてっちゃう)
でも、これがアタシでよかった。
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「東郷ー!友奈ー!!」
空から落ちてきた二人を樹が受け止めてくれて、安否を確認しにいく。私以外の皆は満開し、その代償の様に倒れている。
「友奈、東郷!?」
二人とも、互いの手を握りあって目を閉じていた。
「そんな...」
視界が潤んでいく。みんな死んで__________
「大丈夫...」
「!!!」
掠れた声で、友奈が目を開けてくれた。
「私も...」
「友奈!東郷!!」
「はい...なんとか、生きてます」
「こほっ...」
風と樹も意識がある。無事だ。
「よかった...椿?」
唯一反応のない椿の元に向かう。
「椿、椿...起きなさいよ」
揺すっても、目を覚ますことはない。
「椿、椿!?あとあんただけなの!起きなさいよ!!」
いつの間にか樹海化が解け、讃州中学の屋上に戻っていた。急いでスマホを取りだし、大赦に連絡を入れる。
「バーテックスと交戦、負傷者四名、意識不明者一名。至急霊的医療班の手配をお願いします!」
矢継ぎ早に言いたいことだけいって、椿を見つめる。
「死んでたらただじゃおかないわよ!!」
椿(銀)の満開で出る羽は、個人的にデスティニーガンダムを想像しています。
わすゆ組の二人は満開時に乗り物に乗っているので合わせようかと思ったのですが、最前線に立つ者がそんなのいるかなってことでこうしました。