あと新キャラ出ます(唐突)
それから、この度この作品20万UA突破しました!凄い数だぁ...(震え声)本当にありがとうございます!
「椿と仲良くなりたい?」
「うん...」
三つ目のハンバーガーが彼の胃の中に消える頃、ようやく話が進んだ。
「うーん...風に臆することなく会話が出来れば、すぐ仲良くなれると思うけど」
「そ、その...なんだか私、避けられてるような気がして」
「椿に?」
「うん...」
古雪椿君。クラスの中心、というと少し違うけど、凄く人気のある人。
「椿がなにもなしに人を避けるとは思えないなぁ...まぁ、最近はスマホ見てるの多いけど」
中学からの付き合いだという彼、倉橋裕翔君は、そういってセットのポテトを食べていく。
「にしても、また椿か...どんだけハーレム作るつもりだよ」
「?」
「あぁいやなんでもない。そうだなぁ...そういや、目下にこんなイベントありますね?」
バックから取り出したのは、修学旅行のしおりだった。
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「食べるか?」
「ありがと」
「王様だーれだ!!」
「うっしゃぁぁぁぁ!!!」
「ここで革命」
「うにゃぁぁぁぁ!!!」
「うるせぇな...」
「まぁまぁ」
前は王様ゲーム、後ろで大富豪を行ってるなかなか騒がしい空間で、俺は隣に座る風のお菓子を食べていた。
「混ざればいいじゃんか」
「何故かハブられた」
「ぁー...そりゃ、お前と風のイチャラブを気にしないための空元気だしなぁ」
「なんて?」
「なんでもないっす」
久々に乗ったバスは俺達を丸亀城まで運んでいく。
高一のお楽しみイベント、修学旅行。開催そのものが危ぶまれたそれは、無事開催される運びとなった。
神樹様がなき今、車を不必要に使うことは避けられている。たかが高校生の一泊二日にバスを使うなど無いだろうと思っていた。
(歩きで旅行も悪くはないかな)
しかし予想は外れ、こうしてバスを乗ることが出来た。『子供達の大切な思い出作りに金を使わない親がいるか』と、保護者会で言った方がいたそうだ。
そうしたことへの感謝の気持ちを持ちつつ、久しぶりにバスに乗った興奮で騒がしい周りに対し、呆れ半分、幸せを享受できる嬉しさ半分だった。
あと、少しの戸惑い______
(うーむ...やっぱり、見られてる気がする)
席順としては大体班でまとまるようにということで、俺の班は隣にいる風、通路挟んだ反対席にいる男女二人の四人。
そのうちの一人(女子)から、妙な視線を感じるのだ。
なんとなく、理由も分かるのだが。
(落ち着かない...)
「またスマホ弄って。没収よ」
「あーわかったわかった。もうやらないから」
70枚目となるメモリーカードは、恐らく高校生になった彼女達の旅行の写真が載っていた。ちなみに25枚目までは若葉単品だった。
文章にすると大赦の検閲対象のようだったし、こうして残されたメモリーカードだけでも楽しそうな様子が分かって嬉しい。
事情を知ってる風も最初の頃こそ見逃してくれてたが、この動作がいつまでたっても終わる見込みがないので注意したり没収したりするようになった。
「枚数が多すぎるのよ枚数が」
「心を読むなよ心を」
「折角の修学旅行なのよ?写真見るんじゃなくて、写真撮りなさいよ」
「...じゃあ風を一枚」
「ちょ、突然撮るな!」
まぁ、それぞれの過ごし方でバスは進んでいく__________
「城だー!」
「大きい...」
讃州から丸亀はそれなりに距離があって、案外城を見に来る機会は少ない。
だからこうして丸亀城を見上げたり中に入れば、男子は目を輝かせるし、女子は_____分からんけど。
そして俺は、懐かしむような目で見ていた。
俺の時間軸的には、半月前までここに通ってたんだから。
「丸亀城は昔、居住区として使われていたという説もあるそうです。今回は特別に部屋の中まで入れさせてくださるそうですよ」
「学校の教室みたいだなー」
「ここで寝泊まりとかしてたのかな」
クラスメイトの声は頭に入らず、俺は目元を抑えるので必死だった。
(あぁ...懐かしいなぁ)
七人が過ごした教室は、机の配置もそのままだった。
「椿、大丈夫?」
「あぁ...ありがとう、風」
「いいのよ。体調悪くなったら言いなさい?」
風の気遣いに感謝しながら、俺自身の手でも写真に収める。
窓にとまった青い鳥は、見事にこちらを向いていた。
(...わかってるよ。やっぱり、そうだよな)
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「火の見張りだけ頼む」
「あーいよ」
そう言うと、古雪君は料理番組に出てきそうな速さで野菜を切っていった。
「あんた、腕上げたわね...」
「あっちでもそれなりにやってたからな。一応勉強してレシピ無しでもステーキとか焼けるようになった」
「いやーうちは椿に風がいるから安泰ですな」
夕飯となる野外カレー作り。班ごとの作業はほとんど古雪君と犬吠埼さんがやっていた。ちなみに班対抗戦で、先生判断の元、勝者は泊まる部屋が一番豪華な所になる。
だからというのもあるけど、あの流れるような二人の作業を邪魔しちゃいけないと思う。
「古雪君!私にも教えて!」
「風ちゃん今のどうやったの?」
(私、必要ないなぁ...)
料理も出来ないし、かといって少ししつこいあの人達を古雪君達から引っ張っていくことも出来ない。
(どうしたら...)
「ちょいちょい」
「はい?」
いつの間にか火の見張りから離れてた倉橋君は、後ろに立っていた。
「ごにょごにょ...」
「ぇ、そんなことで?」
「まぁなんとかなるでしょ。いってらっしゃい」
助言を受けた私は、古雪君に近づいていった。
「ふ、古雪君!犬吠埼さん!私にも手伝えることってないかな?」
「ん?ぁー...もうじゃがいもしか残ってないか。これ頼めるか?」
「じゃ、じゃがいも...芽があるんだよね?」
「切り方は教えるから」
「じゃあ古雪君!私にも教えて!」
「んー...『同じ班じゃないのに教えたら真似されて負けるかもしれんし、家庭科の授業の時にでもな』」
『椿にこう言えば、どうにかこうにかあのギャラリーを戻すと思うぜ』
古雪君はその一言で、実際に周りにいた人達を元の場所に戻してみせた。
「ふぅ...助かったよ」
「え、そ、そんな」
「そんなでもないわよ?実際会話をちゃんと返しながら包丁使うのって慣れてても危ないし」
「あぁ」
「...よかった。それじゃあ私は......」
「折角だし切るの手伝ってくれよ。あ、嫌じゃなければだけど」
「!」
「あいつは火の見張りだけで満足出来るだろうけど、よくよく考えたら俺達だけで料理してるのもな。しっかり教えるしさ」
「...じゃあ、お願いします」
「おう、任せろ」
出来上がったのは大きさがバラバラのじゃがいもが目立つカレーで、でも、美味しかった。
「さて、次はメインイベントだ...」
(こ、こここれはっ)
心音が漏れてないか不安になりながら、少しずつ隣を見る。
「結構雰囲気あるなー、外灯がないだけでこんなに暗くなるもんか」
くじ引きで決まった男女ペアによる肝試し。私の隣は古雪君。
『今回は全力でお膳立てするよ。仲良くなってきて』
(運営側でもないのに、くじ引きをどうやって弄ったんだろう...)
「じゃあ次の組、お願いします」
「はーい」
手を握る決まりを守って進んでいく。
(会話、会話...仲良くなるための会話!)
「あ、あの古雪く...」
「うらめしやー!」
「きゃあぁ!?」
「おっと...大丈夫か?」
一泊置いて、自分がどんな状況なのか理解する。怖かったからとはいえ、抱きついて________
「ひゃっ!?ごめんなさい!!」
「気にするな。びっくりしたら仕方ないだろ」
(...あれ?)
「はい」
「ぁ...ぅん」
差し出してくれた手を握り直して、また歩く。足元もあまり見えなくて、葉っぱを踏んだ音が反響した。
「怖くないんだ...?」
「大体の人の場所が気配で分かるんだよなぁ...まさか鍛えた結果こんなところで楽しめなくなるとは......」
「す、凄いね...」
なかなかに常人離れした話を聞いたからか、次の言葉はするりと出た。
「ねぇ、古雪君。私、なにかしたかな...?」
「え?」
「なんだか、避けられてるかなーっ...みたいな」
「ぁー...」
(それに、なんだろう...今日の午後辺りから、そんな感じが消えて...って!)
意識して避けてるかもしれない相手に直接言うことじゃない。でも、口から出てしまった言葉を撤回出来るはずもなかった。
「ご、ごめん!変なこと言って!!」
「いや......俺の方こそ謝らなきゃな。悪気があったわけじゃないんだ」
「ぇ...じゃあ」
「昨日までは避けてた...というより、あんまり視界に入れないようにしてたのは確かだよ」
「...私、なにかしてましたか」
「敬語にならんでくれ。寧ろ俺が悪いんだ」
古雪君は、ぽしょりと呟いた。
「似ててな」
「?」
「俺の知り合いと似てて、変に意識しないようにしてた...それが、かえって違和感になったんだと思う」
「そうなんだ...でも、昨日までなの?」
「あぁ。正確にはさっきなんだがな...どれだけ似てようと人は違って、そういうことで重ねたりするのはダメだって...思い出した。一度やったことなのに情けない話だ」
「はぁ...」
「いきなり言われたって知るかよって話だよな」
「...ううん、なんていうか...そういう思いを大切にするの、なんだろう...かっこいいと思う」
「かっこいい、か...ありがとう」
すぐ隣の古雪君の顔は、暗くてもよく見えた。
「それじゃ...今さらなところがあるかも知れないけど、これからもよろしく、郡(こおり)」
「こ、こちらこそ仲良くしてくださ」
「うぉぉぉぉぉ!!!」
「いぃぃぃぃ!?」
「脅かすタイミング悪くね!?」
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「はい、ゴールです!お疲れさまでした...って、古雪か」
「運営お疲れさん」
意外とコースが長くて、郡と繋いでいた手から手汗が出てないか少し気になった。
「この後どうすんだっけ?」
「部屋に戻って風呂の準備だとさ」
「了解、確か間は二組くらいだったし、どうせならあいつら待つか...郡はどうする?」
「私も待つよ」
数分して、予想通り一組の男女が戻ってきた。
「って、どした?」
裕翔とペアだったはずの風はおらず、代わりに知らない女子があいつの肩に寄っ掛かっている。
「お化け役やってた子なんだけどさ、あそこ暗いじゃん?待ち伏せの間になにかで切ったみたいで...」
「わ、私先生呼んでくる!」
「ありがと郡さん」
「...なぁ裕翔、風は?」
「この子の代わりにお化け役やってる」
「優しいね犬吠埼さん、『あたしが変わりに脅かすから、早く怪我見てもらいなさい!』って」
「...はぁぁ......」
運営係からしおりをかりて、肝試しのマップを開く。
「君がやってたの、どの辺?」
「え、こ、ここで...」
「ありがと」
「おい椿?」
「耳貸せ」
真面目な話をするとき、大体こいつは俺に合わせてくれる。
(普段からこのくらい察しよくておちゃらけてなければ、彼女も出来るだろうに...)
『風こういうの苦手なんだよ。探してくる』
『...成る程。わかった』
変わってもらった彼女が自分を責めないよう必要な会話だけ耳打ちして、「あとよろしく」と来た道を駆け出した。
「大体の場所は分かるが、頼むぜ若葉(ナビゲーター)」
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(......)
待機場所は凄く暗くて、何も見えない。脅かす前に位置がバレてもつまらないからこうするのは当たり前なんだけど。
今まで襲った三組はあたしの恐るべき女子力(演技)を前に驚いてくれた。
(...ちょ、ちょっと冷えてきたかしらね)
でも、通行する組の間の待ち時間、一人でずっと待機してる時間は本当に怖い。暗いし、ちょっと肌寒いし、本当のお化けでも出てきそうで________
(っ!?今首が!?)
寒気が走って後ろを向いても、誰もいない。
(私から変わろっかって聞いたんだもの...ちゃんとやらなきゃ)
受けた依頼はなるべく諦めない。実際皆楽しんでくれてる。
(......でも、怖いよ...)
出てくるのは、あいつの顔。
(椿...)
「みーつけた」
「うひゃう!?」
その顔は、現実に現れた。
「つ、椿...?」
「お化けとか怖がるくせによく変わったよお前...ほら、帰るぞ」
「ぇ、でもここ...」
「一ヶ所くらい平気だから。怪我での欠員だから誰も文句言わねぇよ」
「大丈夫よ、あたしがいるんだから!」
「...ほら立つ!」
いつになく強引な椿は、あたしをおぶる。体を揺らして抵抗してもやめてくれない。
「離して!」
「うるせぇ。黙ってろ」
「な!?」
「...そんな涙目でいられたら、心配するに決まってるだろうが」
「っ!!」
「勇者部六箇条一つ。無理せず?」
「...自分も幸せであること」
「はい。じゃあ戻りますからねー」
「...」
来てほしいと思ったときに来てくれて、ごねるあたしを説き伏せて。
(...もう、登場の仕方もう少しカッコ悪くならないの?)
胸の高鳴りが凄い。バレたくないと思ってても、体は椿を抱きしめていた。前より大きくなった気がする、男の子の背中。
「...ありがと」
「どういたしまして」
「修学旅行の夜が...班ごとだから、女子が同じ部屋にいた夜が...気絶してる間に終わってしまった」
「お前が風と郡のバッグを漁り出さそうとしなけりゃ、気絶なんてさせなかったんだがな」
「なんでそんなこと出来るの?寧ろなぜお前我慢できる?」
「...襖越しどころか隣で寝たこともあるからねぇ」
「へ?」
「なんでもねぇ永眠しろ」
「ぐへぇ!?」
バスの中は行きと同じくらい騒がしかった。隣の椿が大仕事を終えた後のようにどかっと座る。
「ふぁーあ...」
「寝不足?」
「ん、あぁ...ちょっと考え事してたら、夜遅くなって」
「...彩夏(さやか)のこと?」
「彩夏?」
「っ!」
「郡さんのことよ」
「成る程」
椿は窓側のあたしと話してるから気づかなかったけど、奥の方で彩夏が震えた。
「ま、それも含めた諸々かなぁ...皆と話すなら俺窓側になるけど?」
「寝るつもり満々ね...」
「思ったより持ちそうになくて」
「...良いわよ。このままで」
「了解。おやすみ」
「はいおやすみ」
数分で、椿はあっという間に夢の世界に行ってしまった。
「んにゃ...」
(幸せそうと言うか、間抜けと言うか...)
指でつついても、ちょっと唸るだけだった。
『...うが』
前______椿が西暦に行ってきて、それを私達が聞くまでの数日、授業で寝ていた椿は苦しそうにしていて、涙を流していた。
対して、今はただむにゃむにゃ寝てるだけ。ちょっと樹に似てる。
(...よくわからないけど、乗りきったのかな)
はじめはとてもじゃないが過去に行ったなんて信じられなかったけど、椿が見せてきた『乃木家に保管されていたメモリーカードに入ってた写真』だったり、なにより椿の顔が、大切な思い出を語ってる真剣な顔だった。
でも、それだけ大切な______もしかしたら勇者部より大切だと考えているかもしれない人達と会えない悲しさからか、ちょっと変だった。高校で知り合った彩夏を変に避けたり。理由を聞いたら、『俺、あの子が四月からクラスメイトだって記憶ないんだよね...』と。
前よりさらに大人びた雰囲気になって、ちょっぴり遠くなった気がして。
(...あたしの隣にいて。なんてね)
椿の左手とあたしの右手を絡ませる。丁度二人の席の間でしてるから、周りからは見られない。
ちょっぴり大きくなった、木刀を振ってできたマメが固くて、少しごつごつした手。
(でも、変なところ行かないように離さないでおかないと)
そのまま形を変えて_____いわゆる恋人繋ぎにする。やられてる本人は気づかない。
「...ふふっ」
心がぽかぽかして、そのまま頭も椿の肩に乗っけた。
(椿、元気になってよかった...)
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「すー、すー...」
「......」
起きたら、なぜか左手が握られてて、すぐ近くに風の顔があった。
(...心臓に悪いからやめてくれ)
ちらりと見ると、楽しい夢でも見てるのか、幸せそうな感じだった。
(...でも)
周りを見渡せば、はしゃぎ過ぎたのか起きてる人は少なかった。
(もう少しだけ)
甘い誘惑にひっかけられたように、俺は目を閉じた。
隣にいる風をより感じられるように。
俺が、この一年半で本当の大切さを知れた温もりを。
倉橋 裕翔(くらはし ゆうと)
過去に何度か出てきて、やっと名前を与えられた椿と風のクラスメイト。自称椿の一番の親友。ムードメーカーでクラスの潤滑油として働いているが、ふざけすぎで少し残念な所もある。
郡 彩夏(こおり さやか)
歴史改変により突然クラスに現れた(と椿だけ認識している)少女。名字は同じ、容姿は限りなく千景に近い。性格は大人しめの少女。
でもメインはふうつば。ふうつばいいよね。