古雪椿は勇者である   作:メレク

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棗さん誕生日おめでとう!この作品ではまだ一回(しかもほぼ一言)だけしか出てませんが...短編書けたんですが、誕生日にかすってもないし急造で納得いく作品でもないしということでやめました。

というわけで今回もリクエストです。ゆゆゆから。何人かから頂いた酒飲みネタですが、一番始めに頂いた方のものをベースに作りました。前話との差よ...一応これもif扱いになると思います。高校卒業までには椿もちゃんと色々決めてると思うので。


短編 宅飲み会

「じゃあ、風先輩と椿先輩のご卒業を祝って!」

『乾杯!!』

 

グラスが思い思いにぶつかる。犬吠埼家で行われたパーティーはこうして始まった。

 

「悪いな皆。こんなに準備させちゃって」

「いえいえ!お姉ちゃんと椿さんのお祝いですもん!」

「樹!!あたしは良い妹をもったわぁー!!!」

「お姉ちゃん苦しいよ...」

 

桜がもうじき咲く季節、俺と風は高校を卒業、大学には進学せず就職が決まった。俺は春信さん勤める会社の系列、風は春信さんの直属部下になるらしい。四国は狭いものだ。

 

二人とも経済面での理由と、早く社会でも勇者部部員らしいことがしたかったからだ。特に風はもう樹が歌手として活動を始めたから、尚更早くやりたかったのだろう。

 

ちなみに、中学勇者部は今も続いているらしい。俺は全然分からない子達ばかりになってしまったが、変に年上が介入することはないだろう。

 

俺達は樹が高校入学の時点で高校勇者部を立ち上げ、いつもと変わらない活動をしていた。

 

「風、兄貴のことよろしくね」

「あたしがよろしくする側じゃないでしょ。相手は普通に上司よ?」

「ある程度のフォローなら、私の名前を出せばやってくれるわ。シスコンだから」

「やーなコネの話...」

 

歯に衣着せぬ夏凜の言い草に苦笑いしてると、すっと食べ物が差し出される。

 

「つっきー、あーん」

「いや園子、自分で食べるから」

「あーん」

 

こういうときの彼女が強情なのは三年間で慣れた。抵抗も昔より低めに口を開く。

 

「...あーん」

「おー食べた!ミノさん撮った!?」

「バッチリだぞ」

「おい何やってんだ銀!?」

 

最近カメラに興味を持ち始めた銀に写真を撮られる。普通に上手いのが今回では問題だった。

 

「幸せそうな笑顔ですよあなた」

「誰があなただ。お前は俺の妻か」

「椿の妻?どっちかと言えば椿が妻じゃない...家事スキル的に」

「お前だってある程度は出来るだろ。大体家事最強は風か東郷だろうが」

「いや椿、あんたあたし達とそこまで変わらないわよ」

「え、嘘?」

 

まぁ、別に卒業したからといって俺達の関係が切れる筈もなく、今日もいつも通りあっという間に時間が過ぎた。

 

「ふぁー...そろそろ帰るかな。夏凜乗ってくか?」

「なんで私だけなのよ」

「他は二人で帰るだろ?」

「...じゃあ、お言葉に甘えるわ」

「そうしていけ」

「じゃあ東郷さん、私達も帰ろうか」

「そうね。友奈ちゃん」

「アタシ達も帰るか。園子、いくぞー」

「風、片付けは任せろって言ってたけど本当に...風?」

 

返事がなくて振り向くと、そっちの方の三人がぽけーっとしてた。樹と風と園子。

 

「おーい園子?帰るぞー?」

「ぁー...ごめんミノさん。寝てた~」

「高校でも多いなぁ...なのに成績優秀とかどうやったらなれるのか銀さんに教えてくれ」

「昨日は小説に夢中で寝不足なんだ...ごめんね~」

「それで、樹と風はどうしたのよ?園子みたく寝てるわけじゃないでしょう?」

「樹ちゃーん?」

「風ー?大丈夫かー?」

 

近づいて目の前で手を振る。反応は特になかった。

 

(どうしたんだ...!?)

 

「ぐっ!?」

「椿先輩!?」

 

突然動き出した風は俺にタックルをぶちかましてきた。腹から今さっき食べたご馳走が戻ってきそうで必死に押し返す。

 

「おい風!?」

「やだ...帰っちゃやだ!!皆今日泊まるのー!!」

「はぁ?」

「やなのー!椿はお泊まりー!!!」

「ちょ、銀助け...」

 

小学生の様な駄々をこね、体をくっつけてくる風を必死にどかしながら助けを求める。

 

「風先輩なにやってるんですか...」

「離さないで...帰らないでー!」

 

涙をぼろぼろ溢す風は俺を掴んで離さない。

 

「あー、友奈さんが三人だ~。忍者だったんですね、友奈さん!」

「い、樹ちゃん?大丈夫?」

「あはは!大丈夫ですよ~!」

 

同じく樹も様子がおかしかった。

 

(これどっかで...あ)

 

こんな風になった二人は、甘酒を飲んだときになってる気がする。今年のお参りの時もなっていた。

 

(てことは...)

 

テーブルにある料理から、アルコールっぽい成分が含まれていそうなものを探すと、あっさり見つかった。

 

(ウイスキーボンボンだろこれ...誰が買ってきたんだ)

 

いわゆるお酒の風味があるチョコだが、甘酒で酔っぱらう二人が食べれば一発なんだろう。

 

「風、将来酒癖悪くなるぞ...むぐっ!?」

 

とりあえずひっぺはがして大人しくさせようと考えた所で、口に何かを突っ込まれた。重力に従って中の液体が無理やり流される。

 

「んぐ...ん...」

 

一瞬呼吸の仕方を忘れた錯覚に陥り、慌てて液体を飲んでしまう。どんどん流し込まれるそれは一口目で分かった。

 

「まだ飲みなさい!」

 

(これ...ほんとの酒じゃねぇか!?)

 

鼻につくアルコール。笑顔で突っ込んでくる風が持ってる瓶のラベル。それだけですぐにわかった。

 

「ん...っぷはっ。だ、誰だよ本物のお酒買ってきたやつ!」

「ごめんつっきー、ぼ~っとして買ってたから間違えちゃったかも...」

「その...こっ!?」

「椿二杯目ー!動けないくらいにのませてやるんだから~」

「お姉ちゃんファイト~!」

「んんん...!!!」

 

視界が風だけになり、テレビがぶつ切りされたように景色が暗く消えた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「ー...っつー......」

 

ガンガン頭を叩くような刺激に起こされる。

 

 

(何が...俺、いつ寝てたんだ...)

 

だるい体を起こすと、頭痛がいっそう増した。

 

「昨日は...卒業式で...それから...!」

 

思い出した。確か帰り間際で風に酒を飲まされたんだ。周りをよく見ればここも樹の部屋。

 

「...皆はどこだ...」

 

リビングに人影はなく、代わりに酒の入ってただろう瓶、床を濡らす液体で足の踏み場もない。

 

(どうなってんだよこれ...)

 

他の部屋を調べるため、風の部屋を開けた。

 

 

 

 

 

この時の俺はお酒で頭がやられてて、冷静な思考が出来なかったことを先に言っておく。

 

 

 

 

 

開けると、充満した酒の臭いが鼻を刺激した。

 

そして、下着姿で寝てる六人。

 

(うっわ可愛い)

 

目に飛び込んでくる情報が処理しきれないくらいの刺激が襲ってくる。普通に可愛い。天国じゃん。

 

(......で、これどういう状況?)

 

人間の脳はオーバーヒートするとそこから逃げるようで、ひとまず閉めて、もう一度開ける。景色は何も変わらなかった。所々ついてる液体が反射していて、艶やかな肌を更に光らせる。

 

気持ち良さそうに寝てる銀や友奈の反対に、苦しそうに寝てる樹や東郷。顔は見えないもののもぞもぞ動く風と園子。

 

(......っ!?!?)

 

思考が整った時には、血液の温度が10度くらい上がったような気分だった。自分の好きな子達が淫らな姿で突然現れたら誰だってそうなる。

 

(え、ちょっと待って、え?...まさか)

 

こういうのは、裕翔が(一方的に)話してきたマンガで聞いたことがある。お酒で意識が飛んで、気づいたら隣で裸の異性が寝てて、驚く。

 

大抵その結末は________

 

(まさか...そんな)

 

俺は、彼女達と一線越えるどころか、とんでもないことをしてがしたのではないか。

 

大切に思っている相手を傷つけてしまったのではないか。

 

(そんな...そんな、俺は......)

 

「あ、あ...」

「まじまじ見てんじゃない!!!」

「んがっ!!!」

 

頭に落とされた手刀は、頭痛を一気に加速させた。

 

 

 

 

 

 

「全く...まだ片付けもしてないんだから」

 

夏凜が買ってきてくれたソルマッ○を飲むと、飲んだことの無い感覚に変な感じがした。

 

(みかんジュースの方が美味しい...お酒いらねぇ...)

 

いや、そんなことより。

 

「大丈夫?」

「あぁ...あの、夏凜」

「何?」

「その...昨日何があったか、知ってるのか?」

 

聞いたとき、手が震えていた。

 

何をすれば許されるのだろう。いや、許されることなどではない。

 

「...あんたは風にお酒飲まされた後ぶっ倒れただけよ。安心しなさい」

 

俺の震えを察したのか、夏凜はそう言ってきた。

 

「あとは東郷や園子が暴走しただけ」

「......っはー...よかったー...本当ありがとう夏凜...」

「椿は被害者だもの。しょうがないわよ...でも、今日は変な騒ぎになる前に早く帰りなさい。後の説教は私がやっとくから」

「わ、わかった...」

 

強く残るとは言えなかった。不安と安心がごちゃ混ぜになった今は考えることを放棄している。

 

逃げるように外へ出て、バイクをつける。まだまだ朝は寒い。

 

「...本当、なんもなくてよかった......」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「...っ、はぁ...」

 

大きく息を吐く。動揺してた椿に顔の火照りはバレなかったみたいだ。

 

「ふ、不慮の事故だもの...」

 

椿が倒れた時胸を掴まれたことも、肩を貸したとき首を甘噛みされたこともわざとじゃない。寝ぼけた結果だから誰かが悪いなんてことはない。

 

(椿は悪くない、椿は悪くないんだから...)

 

「...~っ!」

 

でも、だからって言えるわけないのだ。椿の顔を見ただけで体が火照ってしまうことも、それが原因でこんな時間まで起きていたことも。

 

まして、なにも覚えてない椿に話したら謝ってくるのは明白なんだから。

 

(明日までに、意識しないよう出来るかな...)

 

「んー!夏凜ちゃんおはよう!」

「友奈!!あんたとりあえず服着なさい!!なんで下着まで脱いでんの!?」

 

別のことで気を紛らわせるため、ひとまず大声でツッコミを始めた。この成果は______言うまでもないだろう。

 

それから一週間、元凶の風にはうどんを食べることを禁じさせた。

 

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