ハーメルンで他の方のゆゆゆ小説読むのもそうですが、他の方の意見なんかを見るのは参考になるし楽しいですね。少しでもこの作品がより良くなるようにしたい。
そして、この作品の他の方の意見、頂いてきた感想が1000件を越えました!自分にこんなにも多く直接応援を伝えて下さり本当にありがとうございます!!
最近では、この作品見て自分も書き出しました。というものや、一気見しました。といった感想もあり、感無量です。これからもどうぞよろしくお願いします。
長々失礼しました。今回もリクエスト 音操 さんからです!ありがとうございます!
(ここがゲームコーナー...!!)
まさに理想郷。所狭しと棚に並んでいるゲームのタイトルを全て知らないなんてことを体験する日が来るとは思わなかった。焦る心を抑えながら、パッケージを手に取っていく。
(時間はゆっくりあるわ。全て見ていってあげる...!!!)
私達が神世紀という不思議な場所に飛ばされてから数日。大体の事が分かってきて、身の回りのことにも慣れてきた。
西暦の時代が終わり、神世紀という時代が訪れること。私達が神樹様の内部抗争に巻き込まれ、私達の時代から約300年後に召喚されたこと。
元々寮生活、丸亀城という特別な学校で生活してきた身としては、引っ越しが決まったくらいの感覚でしかなかった。
『久々だな。皆』
なにより、もう会えないと思って約半年。私達が用意したサファイアの宝石を着けて出迎えてくれた彼と会えたことが、元の世界に戻ったときこの世界の記憶がなくなる可能性が高いと言われても嬉しかった。土居さんなんかは彼に飛びついていた。
そんな数日が過ぎた土曜日。やっと娯楽品に手を出せる時が来た。乃木さんは先にこの世界に来ていた上里さんと出かけるようだし、土居さんと伊予島さんはそれぞれアウトドア店と図書館へ。私は彼に教えてもらったゲームのあるお店へ。
高嶋さんはあえて誘わなかった。流石にゲームするわけでもなくパッケージを吟味するだけの行為に彼女を付き合わせたくない。
(流石に楽しくないだろうしね...)
話を盗み聞いた限り誰かと出かけるようだし、平気だろう。そっくりな結城さんとも話は合いそうだし、勇者部の人達もかなりフレンドリーだった。
「ふぅ...」
約七割を見たところで喉が渇き、近くのフードコートへ向かう。紹介されたここ『イネス』は、ゲームを取り扱う店だけじゃなくゲームセンターもあるらしい。
(随分広い所なのね...ぁ、あった)
見えたのは、果物をその場でミキサーにかけて販売するジュース屋さんだった。
『あそこのみかんジュースはバカみたいに美味しい』と言っていた彼の顔が頭に浮かぶ。
(折角だし...!?)
お店の看板から目を下げた私に見えた景色を理解した途端、目が勝手に開いた。
そこには、古雪君と高嶋さんが二人で並んでいた。
「ほらよ」
「ありがとう椿君」
笑顔を浮かべる高嶋さんがこちらを向いて、目があった。
「あ、ぐんちゃん!!ぐんちゃーん!!!」
「高嶋さん!?」
ガバッと抱きしめられてあたふたしてると、古雪君もこっちに来た。
「千景?どうしたんだ?用事があるんじゃ」
「...ゲームを見てたのよ」
「あーなんだ。目的は一緒だったのか」
「?」
「俺達もゲーム見てたんだよ」
「ぐんちゃん一人で出かけるって樹ちゃんに話してたから特別な用事かと思って声かけなかったんだけど...」
「そ、そうだったの...?」
部室でそんな話をしてしまった過去の私の失態を後悔しつつ、二人に話しかける。
「二人はどうしてゲームを?」
「ぐんちゃんが帰ってきたら一緒に遊べるよう買いに来たんだ!ぐんちゃんの好きそうなゲームを選べるよう椿君にも協力してもらってね!」
「高嶋さん...」
「でも、折角なら一緒に選ぼうよ!」
「...えぇ!」
高嶋さんが言ってくれているのに、『私、今日は吟味しようと思ってて...』なんて不粋なことを言う筈がない。
なにより、彼女と一緒ならどんなゲームも楽しいだろう。
「...そうだ。先に聞いておくわ。高嶋さんも古雪君も、自分が行きたいところはない?」
気を使いやすい二人には、思いついた瞬間聞いた方が良い。ゲームを買った後だと『それよりゲームやろう!』なんて言われかねない。
「そうだな...俺は元々案内役のつもりだったけど、そう言うなら少しだけ本屋に」
「高嶋さんは?」
「私は...あのね?」
「どうかな...?」
「似合ってるわ。とても」
「千景良いの選ぶな」
「そっかぁ...似合ってるかぁ...えへへ」
高嶋さんの好みを考慮した上で選んだ服は正解だったようで、少し恥ずかしそうに、とても嬉しそうにしていた。
『流石千景だな。そのうちイネスのゲーセン記録が全部塗り替えられそうだ...』
『あ、この本私達の時代にもあったね!』
ゲームを買って、ゲームセンターにも行って遊んで、本屋さんにもよって。次に来たのは服屋さん。高嶋さんがお願いしてきた場所だった。
周りを気遣い過ぎるくらいの高嶋さんが自分のことを主張してくれたのも嬉しいし、以前の自分のことばかり気にして彼女の優しさを受けとるだけだった私だと気づけなかっただろうと思うことが嬉しい。
バーテックスが襲ってこなくなってからこの異世界に飛ばされるまで約半年。大赦となった大社が忙しかったりしたけど、私はそれが逆に嬉しかった。気づくのが遅かったことを見直し、考える時間があったから。
(私を変えてくれた人...)
それは、目の前の二人であり、一緒に戦ってきた皆であり。
「ぐんちゃんも服買おうよ!」
「私も?」
「絶対似合うの選んでみせる!!」
「...じゃあ、お願いするわ。高嶋さん」
「任せて!!」
ちょっと涙目になったので、彼女が服を戻すのに試着室の扉を閉めた隙に目を擦った。
「大丈夫か?そんな強く擦って」
「平気よ。ありがとう」
「ぐんちゃんこっちね!」
「え、えぇ...」
服の入った袋を高嶋さんが掴んで離さず、おまけに私は場所を指定された。
(私だけ手ぶらなの、申し訳ないのに...)
古雪君はゲームの入った袋を持っている。
「ユウ?」
「ぐんちゃん、ぎゅー!」
右手が高嶋さんの左手に捕まって、指を絡められた。肩もぴったり寄り添って服越しに温かさが伝わってくる。
「たっ、高嶋さん!?」
「ほらほら、椿君も!!」
「俺も?え、それ?」
「早く早く!」
「え、えーと...いいのか?千景」
「...いいわよ」
「わかった...じゃあ失礼します」
遠慮がちに古雪君の右手が私の左手を掴む。少し時間を置いてから、指が一本ずつ交互になっていった。
(あっ...)
両方から違う温度を感じる。傷つけ、避けてきた他人の温度。
二人とも冷たいけど、心がぽかぽかして。
(こんなの...こんなの知っちゃって、私......)
「千景の手凄く温かいな。眠くなる」
「そ、そう...?」
「うん!ぐんちゃんぽかぽかだよ!」
お店の外に出ると、ちょっと夕焼けの光が強かった。
「ぁ...」
「良い夕焼けだな」
「そうね」
移動を始めれば、夕焼けは建物に隠れたり出たり。眩しいけど、嫌ではない。
「...ぐんちゃん」
「どうかした?高嶋さん?」
「またこうして夕焼け、見れたね」
「...そうね」
前にも服を見て、こうして歩いた。人生全体で見れば少し前のことだけど、私にとって高嶋さんとの思い出はかけがえのないもので大きい。
「...また、見ましょうね」
「うん!!」
「......古雪君も、ね」
「存在忘れられてんじゃないかと思ったぜ...」
(そんなわけないでしょ...)
「まぁ、こんな美人さんからデートのお誘いとあれば、参加しないとな」
「...バカ」
笑顔を浮かべる二人を見て、目を閉じた。大切な人のことを記憶に刻む為に。
少し、ほんの少しだけ、両手を自分の体に寄せて。
ぐんちゃんをちゃんと幸せに出来たかな...ちなみに、二人が『また』と言っていたのがどのシーンかというと、のわゆ編の31話です。
最近はゆゆゆいをメインで書いてますが、他にも色々書きたい...アフターシリーズとか。月末にはあの子の誕生日もありますし。