「ごろごろー。ごろごろー」
わざわざ口にしてまでごろごろする彼女が可愛すぎて悶えながら、その空間に入り込む。
「俺もやる」
「いいよ~」
神世紀7年。世界は決して平和じゃないし、俺も大赦役員としての仕事がある。
だが、今はそんなものどうだってよかった。
「はぁ...なんでそんな可愛いんだよユウ~」
「可愛い?えへ...嬉しいなぁ」
ひたすら愛する彼女と一緒にいたい。同棲を始めてすぐにそう感じだした。というか、彼女にずぶずぶのめり込んでいった。
何の偶然かこの世界に残り、ユウに告白された俺は、紆余曲折あり悩んだ末にオーケーの返事をした。美少女相手に悩めるのも贅沢な話だ。
ただまぁ、彼女の本性_____というか強みは、同棲を始めてから発覚した。なんというか、異常なまでに吸い寄せられるのだ。庇護欲をそそられると言えば良いのか。
形容しがたい何かが働いているように感じるが、彼女を目の前にするとそれすらどうでもよくなる。
ひたすら彼女を可愛がりたい。彼女とイチャイチャしたい。そうして俺は平日アホみたくに働き、休日は壊れたように彼女と過ごすのがルーティーンになってきた。
「ほっぺも柔らかいしなー」
「ふはきくんっ、くすくっふぁい」
「うーりうーり」
ほっぺたを伸ばされてだらけた笑顔を浮かべるユウ。微笑ましさが脳を犯していく。満たされるというかなんというか。
「今日はやることないし、だらけるか~」
「イェーイ!」
(ま、つっても昼にはやめるだろうしな...今日こそは大丈夫だろ)
やってることといえばゴロゴロして愛を囁くだけ。そのまま四時間。お昼の時間だった。
「お腹すいたし、ご飯にするか」
「椿君、行っちゃうの...?」
「行かない。ずっとユウを感じてる」
「わーい!」
あっさり折れた。
お昼から六時間。
「つっばきくーん。つっばきくーん」
「はいはい。俺はここにいますよー」
彼女の呆けた声に反応する。抱きしめあって、基礎体温まで同じになるんじゃないかと思うくらいずっと一緒にいる。
「......はっ!?」
気づいたらリビングから見えていた日の光は消え、夜になっていた。電気をつけた覚えはないが、なぜかついている。
(ま、また...またやってしまった...!)
俺は戦慄した。これこそユウの魔力。気づいたら休日が終わっている。
ここ最近は出かけることもなく、ずっと一緒にいるだけだった。
________ずっと一緒にいることに異論はないし、俺も喜んでいるし何も問題ない気がするのだが、帰ってきた理性が『流石にちょっとヤバくね』と告げてきていた。
「つばきくん...むにゃ...」
俺だと思い込んでるのか、手元にあったクッションを甘噛みし始める彼女を抱きしめたい衝動を抑え、俺は外に出た。
夏に近づく時期だが、夜は冷え込んでいる。
「ふぅ...」
思い詰めたように息をつく俺ではあるが、内心は嬉しかった。というかこれもただの休憩である。ふわふわした感情が俺の正常な思考を常に刈り取っていた。
ユウは小さい頃から誰かに合わせることを優先してきたと言う。勿論それを悪いことだと否定することはないし、寧ろ彼女の長所、心の優しさの表れだ。
そんな彼女が、欲望全開で俺を必要だと言ってくれることが嬉しかった。
例えそれが、端から見ればイチャイチャラブラブするだけのバカップルでも。
『なんだか...蜂蜜と練乳を同時に飲んでる気分になります』と、偶然これを見てしまったひなたが言おうと。
(...俺にとっては嬉しいことだけだしな!!)
結局落ち着くのは『好きだからいいじゃない』である。
だっていいじゃん。好きなんだから。
だから俺は、今日も今日とて危険信号に蓋をする。ぬるま湯に溺れる。
「...さて」
リビングに戻って彼女を抱えた。次は寝落ちしても良いようにベッドにいるのが得策だろう。
「つばきくん...?」
「おはよう。でもさ、そんな潤んだ目で見ないでくれる?ベッドまで運ぶ気もなくなるじゃん」
「いいんじゃないかな...?」
数年前の俺なら多分『体に悪い』とか言ってたと思う。
でも、彼女の魅力を知ってしまった俺は違った。
「...そうか」
「ダーメ。これはこのままが良い」
お姫様抱っこをやめようとしたら、それは止められた。俺のお姫様はこのまま抱きついてるのが良いらしい。
「仰せのままに」
俺は俺で体をよりくっつける。ユウは腕を首まで回し、顔を寄せてキスしてきた。幸せ過ぎて脳が処理しきれない感情となるそれは、ずっと続く。
「大好き。椿君」
「...俺の方が好きだもんね」
「ん!言ったね...私の方が好きだもん!」
「俺だ!」
「私だよ!!」
「いーや俺だね!!」
子供のように言い争って、身を寄せて。
幸せに笑って。
こうして俺達の一日はまた過ぎた。