古雪椿は勇者である   作:メレク

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ビルドダイバーズ最終回の余韻に浸って投稿忘れるところだった。危ない。

今回はひなたです。ある作品と似てる...かもしれない。とりあえず出します。

それからここ数日大量の誤字報告をしてくださった方がいました。ありがとうございます。感謝しかないです!


アフターストーリー ひなた

「これで...お、わ、り!」

 

事務処理の終了時点で日付は変わっている。椅子から立つと腰が痛かった。

 

「っはー!終わったー!終わったぞー!」

 

嬉しくて謎のテンションを保ちながら、家へこれから帰りますとメールを_______

 

 

 

 

 

『結婚記念日に帰ってこないとは何事ですか』

 

______打つ前に、冷や汗がだらだら垂れてきた。

 

(...そう言えば朝、今日は早めに帰ってきてくださいとか言ってたような......)

 

大赦トップが休むなんて珍しいな~程度だったのだが、俺が何も知らないバカだったらしい。お仕事だったから仕方ないなんてことも言えない。

 

俺の仕事は直属上司である彼女に全て筒抜けなのだから。実は仕事の調子が良くて明日明後日の分もやっていることも分かっているのだろう。

 

「...」

 

『ごめんなさい。愛してる。今から帰ります』とだけ打ち込んで、俺は戦衣を着こんで窓ガラスを蹴破った。

 

 

 

 

 

俺は西暦に残る選択肢と神世紀へ帰る選択肢が出された。詳しい説明は省くが、神様のお力添えということだ。

 

俺は前者を選び、高校生活をしていく。卒業段階で大社から大赦に変わっていたそこに就職。自分の正体を精霊と認識されている以上、互いにこの方が良かった。

 

勇者ともバーテックスと戦ってきた半年だけでは出来なかったイベントもして、よかったよかった______となったのだが、事件はそんな時に起きた。

 

若葉達の代が高校卒業となった時の卒業式後。二次会として開かれたカラオケで俺は熟睡。

 

そして、気づいたら______何も着てない状態で、知らないベッドの上だった。

 

『椿さんが悪いんです。ずっと待ってるのになにもしないで...』

 

その言葉は、今でもたまに夢に出る。

 

『好きなのに。こんなに愛しているのに。分かってないように周りと遊んで』

『んっ!?』

『私のこの感情は大きくなるばかり。体のうずきが止まらなくて、気持ちよくて...』

 

次の瞬間俺の口に何かが合わさる。生き物のようにうねる何かが俺の唇をこじ開け、何かを渡してきた。

 

『そうしたら...もう、こちらから行くしかないじゃないですか』

 

妖艶に微笑む彼女の正体は、俺と同じく何も着ていない上里ひなただった。知覚した瞬間分かるくらい体温が上がり、彼女の舌が唇を舐めるのを見て心臓が跳ねる。

 

『年齢もカラダも大人になりました...そして、やっと高校生でも無くなりました。もうイィですよね...?』

 

耳元から流し込まれる濃密な毒。 体の自由が彼女の手足によって奪われ、思考力も剥ぎ取られる。

 

『ひな...たぁっ!!』

『椿さん...つばきさん!!』

 

俺は、ただ屈することしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「うぅ、さっむ...」

 

思い出しただけで身震いし、少しだけ火照るあの出来事。後から聞いた話だが、カラオケでは睡眠薬、用意したベッド(というかホテル)では媚薬と麻痺薬を俺にぶちこんでいたらしい。

 

まぁ、暴走の理由が俺への思いを爆発させてしまったからと言われれば、怒るに怒れなかった。相手が好きな人なら尚更。

 

ひなたを好きになったのは高校になってからだった。大社の報道で悪評が立っていた俺は一時期いじめのようなものにあい(それ自体は気にしてもなかったのだが)、その時献身的に支えてもらった。大切な仲間から別の意識に変わったのはやはりそこだろう。

 

とはいえひなたは若葉にぞっこんだし______と考えていた俺は、その前提から違っていたらしい。

 

『パパー!』

 

思い残すことがあるとしたら、三歳になる娘の日菜がひなたの行動力を見習わないよう願うだけである。

 

「到着っ...と」

 

戦衣で屋根づたいに渡ればあっという間に家につく。真っ暗な玄関を開ける手が一瞬震えた。

 

「...悪いのは俺だし。開幕土下座するし。この身を差し出す覚悟だし......」

 

誰に言うわけでもなく呟いて、扉を開ける。しかし、見えるはずのリビングの光すら確認出来なかった。

 

(もしかして、日菜と寝ちゃった?)

 

罪悪感七割、安堵三割と言ったところで______天地がひっくり返るような感覚に襲われる。

 

「おわっ!?」

「お帰りなさい椿さん...お風呂よりご飯より私ですね。ベッドは綺麗にしてありますよ。あ、日菜ちゃんはもう熟睡していますから」

 

玄関の何処で俺を待ち構えていたのか、背後にいたひなたが俺を押し倒してマウントをとる。とてもベッドまで行く雰囲気じゃない。

 

「この身を差し出す覚悟なんですよね?」

「...」

 

じっと俺を見つめてくるひなた。暗いものの、その目はしっかりみてとれた。思うことは_______可愛いなということ。

 

(...はぁ)

 

まぁ、愛する人なのだから。恋は盲目とは良く言ったものである。

 

「椿さん?答えましょうよ?」

 

だから俺は、本能的に感じる恐怖を堪えて答えるのだった。

 

「...優しくしてください」

 

この言葉を言う側になりたくなかったと感じながら。

 

「嫌です♪椿さんの全てを私に混ぜるんですから」

 

服越しに熱い体を擦り付けてくるひなた。

 

(...あぁもう、おかしくなる......)

 

「だから椿さんも...私にください」

「...安心しろよ。壊れるまでやってやる」

「あぁ♪その目っ、良いですよぉ!」

 

ひなたは大切な人。だからこそ俺の本能がずっと抑えられる筈もない。

 

「覚悟しろよ」

「はいっ!よろしくお願いします♪」

 


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