古雪椿は勇者である   作:メレク

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今回はゆゆゆい編。この話入れる前提で質問に答えちゃったから入れるしかねぇ。というより、やっとこの二人出せたよ...

一応リクエストなんですけど、リクエストされなくても書く予定だったものってどう言えば良いんだろう...物によっては言い忘れたりするかもしれませんが、お許し頂ければ。ユーザー名okの場合はいれるようにしてますので。


ゆゆゆい編 11話

「歌野ー、切り離したかぼちゃはどうする?」

「風通しの良い所で一日放置するから、ひとまずこっちに持ってきてくれますか?」

「了解...っと!」

 

丸々育ったかぼちゃはそこまで重たくないものの、なんとなく掛け声と共に持ち上げた。

 

「やっぱり男手があると違うわね。センキュー。助かってます」

「全部終わった後言ってくれればいい。かぼちゃ持ち上げる度に言うつもりか?」

「それもそうね。じゃあビシバシ指導していきます!」

 

こちらに話ながらも歌野の手は休むことなく、正確かつ高速で作業が進んでいる。農業王Tシャツを着込んでいる奴は本気度が違う。

 

「...お手柔らかに」

 

せめていない方がよかったと言われないよう、俺は作業を再開した。

 

 

 

 

 

『白鳥歌野です!よろしくお願いします!』

『ふ、藤森水都です...よろしくお願います』

 

歌野と水都が西暦からこの世界に来た日。俺は別件があったので自己紹介のタイミングが夜になった。二人の寮は初日から機能できるようで、様子を見に来た俺とばったり会ったのだ。

 

快活な声と控えめな声、反対に近い二人の声が俺の鼓膜を刺激する。

 

『...古雪椿。二人の一つ上だ。よろしくな』

 

正直タイミングとしては悪かった。若葉達と一緒ならある程度誤魔化せただろうに。

 

俺は彼女達の本来の未来を知っている。無惨な姿になった諏訪を訪れ、遺書になるものも受け取っている。

 

後にこの世界に来る雪花や棗もそうなのだが、行ったこともない土地の人間と行ったことのある土地の人間では差が出るのも仕方ない。

 

(この子達が...)

六人で苦戦する相手をたった一人で相手にし、終わりのない戦いを続けた勇者。

 

大社という庇護がない状態で力に目覚め、勇者のサポートを続けた巫女。

 

四国の防衛が出来るまで時間を稼いでくれた二人。

 

失礼と分かっていても、同情に似た思いが俺を巡る。

 

『どうかしましたか?』

『いや...慣れない土地だろうけど、可能な限りサポートする。俺より若葉達の方が話しやすいとは思うが...出来ることがあれば言ってくれ』

 

事前にひなたから聞いたが、二人とも一つ年をとっているらしい。若葉達に合わせるためなのか、それとも________

 

『あ、それなら一つお願いしたいことが』

『ん?』

『畑として使える土地ってありますか?』

 

 

 

 

 

「終わったー!!」

「お疲れ様です。うたのんもお疲れ様。はいこれ」

「ありがとうみーちゃん!」

 

畑の端で俺と歌野が達成感に溢れた顔をして、水都は飲み物を歌野に差し出していた。

 

大赦に用意して貰った畑は歌野の手で改造され、素人目に見ても良くなっている。踏まずとも違いが分かるふかふかの土は生き生きしている。

 

「古雪さんもどうぞ」

「あ、いいの?ありがと」

 

貰った飲み物を口に入れれば、勢いよく喉を通り冷たさが刺激してきた。

 

「美味しいなこの麦茶。どこの?」

「市販のパックで売られてるのを使ってます」

「でも作り方は独特でみーちゃんお手製!私はこれを飲んで作物を育てる!最高ね!!」

「うたのん大袈裟だよ...」

 

二人を見てると、強く信頼しあってるのが伝わってきて微笑ましかった。

 

「椿さんどうかしました?」

「いや、なんでもない」

「そうですか...あ!折角ですしこのままお昼食べに行きましょうよ!」

「別にいいけど、どこにする?」

「それは勿論...!!」

 

連れてこられたのは『うどん』屋さんだった。

 

「おろし醤油うどん一つ。そっちは?」

「ざる『そば』と天ぷら『そば』で!」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

丁寧にオーダーをとった店員さんが戻っていくのをなんとなく見て、前を向いた。ちなみに席はテーブル挟んで反対側に二人が座っている。

 

「しかし、あの広さの畑を普段は一人で管理してるんだろ?凄いな」

「いいえ。元の世界ではもっとワイドにやってましたから。人も多かったですけど、私一人で倍はやれます」

「倍って...ヤバイな」

 

単純な言葉しか出なかった。倍は純粋にヤバい。

 

「なんでそこまで畑好きになったんだ?」

「そうですね...物心がつく前から畑をイジるのが好きだったんですよ。畑を耕すほど良い土ができる。愛情込めて作った分だけ野菜が良く育つ。それを続けてるうちに楽しくなっちゃって」

 

歌野はそこで一度区切り、置かれていたお茶を飲む。

 

「バーテックスの進行があってからは...そこに、畑を耕すっていう『日常』を大切にしたいと思いを加えながらやってました。生きていれば活路がある。どんな苦難にあっても立ち上がれる。けれど日常が変わるのは、苦難に屈したような気分で...」

「......」

 

俺は聞くのを後悔した。その告白は、俺の心を酷く揺らす。

 

でも、同時に__________

 

「...尊敬する」

 

俺は心の底から、本心を口にした。一つ年下の女の子は強すぎる位の心を持っていた。勇ましい者という名に相応しい精神。

 

「ありがとうございます。でも、私にはみーちゃんがいてくれたのでこのくらい!」

「うっ、うたのん!?」

 

がばっと水都を抱きしめる歌野。しんみりした空気は一瞬にして消えた。

 

(...ほんと、すげぇや)

 

「俺も仲間がいたからこそ戦えたからな。気持ちは分かるわ」

「あら、でもみーちゃんは渡しませんよ?」

「誰も取らねぇよ」

「元々うたのんのじゃないから!」

「お待たせしました」

 

水都が歌野のじゃれている間に昼御飯が届く。

 

「それじゃあ頂きますか」

「...ジー」

「......なんだよ」

 

割り箸を折ってうどんを挟んだ俺は、異様な視線に反応する。歌野はともかく水都までこっちを見ていた。

 

「...椿さんってみかんにはこだわってますけどうどんはそうでもないですよね。香川県民なのに」

「まぁ、風とか若葉よりはな」

「......椿さんを蕎麦派に変えさせれば、蕎麦勢力は拡大する?」

「げっ」

 

勇者部で突発的に起こるうどん蕎麦、というより麺類戦争。色んな所から勇者が来ているので当然だが、香川であるがゆえに大派閥のうどん派に、蕎麦派、ラーメン派、沖縄そば派と混在している。

 

「そりゃうどんだけじゃなく蕎麦もラーメンも食べるけどさ...」

 

正直この戦争に巻き込まれてもろくなことがない。厄介な所に目をつけられてしまった。

 

「椿さん!!蕎麦ってどう思いますか!?」

「...美味しいと思うよ。気分によって食べる」

「ではこの際、がっつり蕎麦派に変わりましょう!!椿さんが変われば他の人がついてくる可能性ありますし!!」

「別にお前らみたく蕎麦だうどんだって偏る気は...」

「ノンノン!それは蕎麦の魅力を知らないだけ!今ここで変えて見せます!」

 

歌野はそう言って自分の割り箸を勢いよく割る。

 

「ここ、うたのんと私が四国で一番気に入ってる蕎麦なんですよ。うどん屋さんですけど」

「はい椿さん!あーん!!」

「「なっ」」

 

屈託のない笑顔で蕎麦を向けてくれる歌野。完全にあーんの状態だ。

 

「いや、麺とかつゆが落ちるから...」

「椿さんがこういうことに弱いのは知ってますよ。さぁ!さぁ!」

 

多分、歌野は『俺があーんされて戸惑う』という結果は知っていて、『皆にやられるから恥ずかしくなって戸惑っている』という理由を知らない。

 

(平然とやってくんじゃねぇ...!)

 

隣の水都も目を丸くしている。ともあれこの状態を乗りきるには__________

 

「あぁもう貸せ!」

 

俺は蕎麦つゆを奪い、中に入ってた蕎麦を食べた。普通に美味しい。

 

「...美味しかったよ。でも次やられたら蕎麦派には絶対ならないからな」

「え...制限をつけられてしまったわ。ちょっと強引にやり過ぎたかしら」

 

目の前でぼそぼそ喋られ内容は聞き取れなかったが、歌野はすぐに表情を変える。

 

「では今度はみーちゃんからやって貰うので!」

「水都に迷惑かけるなよ。水都もなんか言ってやれ」

「あ、あはは...でも古雪さん、ごめんなさい。こういううたのんも好きなので...」

「みーちゃん!!!私もラブよ!!」

 

目の前で再び始まるイチャイチャを見て、俺はうどんをすすった。

 

(こいつらは...まったく、今日も平和だな)

 

本来知るはずもない二人が笑っている。信頼しきってる二人が見れる。そのことが急に頭をよぎり、嬉しくなった。

 

「う、うたのんどこさわって...ひゃっ!やめて~!!!」

 

(...平和だ。うん)

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