古雪椿は勇者である   作:メレク

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昨日は亜耶ちゃんの誕生日でした!おめでとう!!記念短編はくめゆ組全員だしてないし(というか現状ゆゆゆ組とのわゆ組しか出してないし)、忙しいので見送らせて...来年まだ書いてたら書こう。怪しいけど。

今回は名家の(ポンコツ)お嬢様。弥勒さん回。根は真面目でひたむきなのを知ってはいるんですが、いかんせんギャグ要因としてレベル高すぎるから困る。

最近なかなか出せてないリクエスト内容も混ぜてみました。しずくとシズク回が終わったら出していきたいです。秋物のリクエストもあるし...まだ秋。大丈夫...


ゆゆゆい編 17話

「皆さんどうぞ」

 

弥勒さんが用意してくれたテーブルには、カップとティーポット、それにいくつかのお菓子が並んでいた。ポットには既に紅茶が入っていたようで、カップに特有の音をたてて注がれる。

 

「それでは、交流会を始めましょうか」

「弥勒さん、ありがとうございます。全部用意してくれて」

「とんでもございませんわ。提案したのは私(わたくし)ですもの」

 

和やかな空気で始まったこの交流会は、本人の言う通り弥勒さんの提案で始まった。

 

防人がこの世界に来て約半月。メンバーが多くなった故に全員とよく会話するとはいかず、『折角ですから、交流会をしませんか?』と言ってきた。俺としても断ることはない。

 

結果、ここには五人がテーブルを囲んでいる。メンバーは_______

 

「それにしても、珍しく感じる組み合わせね」

「勇者部って、学年ごとに~なんてあんまりないからね。中三が凄く多いから」

「それもそうだな...」

 

千景、風、棗。それに俺達を含めた高校生組である。 他も学年別でやってるんだとか。

 

「中二は小学生と合わせて六人、こっちは弥勒さん入れて五人だから、そうなるのも仕方ないだろ」

「あたし達同士が組むのも少ないしね。面倒見ちゃうから」

「素晴らしいですわね...」

「......」

 

何故だか全員紅茶を飲み、謎の沈黙が訪れる。正直、改まってする話が思いつかなかった。

 

「えぇと...そう言えば皆さん、出身は何処なんですの?私は高知なのですが、同じ方はいまして?」

「あぁ、高知なら千景がそうだな」

「よく知ってるわね」

「いや、まぁな...」

 

そりゃ、香川から高知まで千景を探すため移動した上、テレビに出るくらいド派手なことをした場所なんてなかなか忘れられないだろう。

 

この場で言うことでもないから微妙に誤魔化してると、弥勒さんは反応してきた。

 

「そういえば、古雪さんは私達と同じ時代にいた筈なのに、よく西暦の四国勇者の方々と思い出話のような話をしますわね」

「ぁー、えっと...説明が難しいんだがな。この世界に来る前に、会ったことがあるんだよ」

「まぁ」

「そうだったのか」

「棗にもちゃんと言うの初めてだったっけ」

「薄々感じてはいたが、初めて聞いた」

 

直接言うと、うっかり四国以外が壊滅状態になり、炎に飲み込まれる話にまで広がってしまうかもしれない。そう考え、あまり話題にはしてこなかった。

 

(このくらいなら平気だろうけど...)

 

「大変だったのよ?千景達が来たときは」

「わざわざ言うのか風...」

「良いじゃない。折角だしこのくらいはね」

 

風は、そのまま話を続ける________

 

 

 

 

 

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「若葉ちゃん若葉ちゃん若葉ちゃん若葉ちゃん若葉ちゃん...」

「ね、ねぇ椿、ひなた大丈夫なの...?」

「ん?別に気にする程でもないだろ」

 

神樹様から、ひなたの仲間が来ると神託があったみたいで、それを受けたひなたは朝から荒ぶっていた。普段物静かなひなたがここまで荒ぶってるのが怖くて椿に聞くも、特別気にしてない。

 

「ホントに...?」

「若葉に会えてないから禁断症状が出てるだけだから」

「つっきー先輩、若葉さんって私達のご先祖様なんですよね?」

「そうだな。乃木若葉」

「若葉ちゃんも園子ちゃん達に負けず劣らず可愛いんですよ!!勿論凛々しくカッコいいところも持ち合わせ、勇者のリーダーとして...来ました!!!」

「あ、ちょっとひなた!?」

 

部室から飛び出していったひなたを全員で追いかける。向かった先は屋上で、先についたひなたが悲鳴をあげた。

 

「若葉ちゃぁぁぁん!!!皆さんもお久しぶりです!!!」

「ひ、ひなたっ!?」

「なんだなんだ?って、さっきまでタマ達は部屋に...」

「ここは...屋上?」

 

あたし達も、その姿を見ることが出来た。ひなたが抱きついているのは、確かに園子ズに似てる女の子。それ以外にも四人。友奈と瓜二つの人がいてビックリしたけど______

 

(あれが高嶋友奈...いや、似すぎでしょ)

 

椿から話を聞いてなければ、誤解してたかもしれない。

 

「久々だな。皆」

 

そして、そんな椿はひなたの次に声をかけた。瞬間、その場が沈黙して、少しずつ椿の方に顔を向けられる。

 

「ぇ...」

「...なんで、いるの」

「嘘...」

「嘘じゃねぇよ。また会えて嬉しい」

 

椿の声も、少し掠れて涙声になっていた。

 

「...椿さん!」

「つばきぃぃぃぃぃ!!!!」

 

小柄な子が椿にタックルするように抱きしめる。椿はのけぞることなくしっかり受け止めた。

 

「ひなたにもやられたから学習はしたっての...よ、球子」

「何でだ!?何でだよぉ!!」

「ははっ...そこまで驚かれると嬉しい」

「椿君っ!!」

「椿さんっ!!!」

「なっておい、流石にそれは!?」

 

タックルに次ぐタックル。椿も耐えられなくて倒れこんだ。

 

「風っ、助けてっ」

「...勝手にやってなさい」

 

あたしが逆の立場なら、絶対しがみつく。そう思うと、引き剥がす気にもなれなかった。

 

 

 

 

 

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「...とまぁ、こんな感じでなかなか凄かったわよ。タマなんか椿の服で涙拭いて」

「落ち着くまでで放課後終わっちゃったもんな。後は弥勒さん達が来たときの説明したくらいだけどさ」

「随分古雪さんは人気者なのですね」

「もう会えないと思ってましたからね。そういうところは造反神がいて俺も感謝してます」

 

ティーポットから紅茶のおかわりを注いで、また口に含む。

 

「その時千景さんはどうでしたの?」

「っ!」

「あぁ、千景はその場で何かしてきたことはなかったけど、夜になってから電話がかかってきて」

「古雪君」

「...と思ったけど、なんでもないです。ハイ」

 

ついさっき飲んだ筈の紅茶をからからの喉が欲し、また飲んだ。頬を赤くした千景の目が『語ったら潰す』と言っていた。

 

「私は四国ですらないからな...」

「沖縄なー。棗の話してくれたこと以外は歴史でしか知らないけど、行ってみたいなとは思う」

 

暖かな気候、エメラルドグリーンの海、沖縄そばをはじめとした郷土料理。雪花の故郷である北海道もだが、是非行ってみたい所だ。

 

「千景は行ったことないの?沖縄」

「ないわね...よく台風の被害を受けてるとニュースになったのを見たり、観光地として紹介されてるのを見る程度よ」

「歴史の授業がその辺の時代だけで良いなら、皆に聞いて楽勝なんだがなぁ...」

「セコいですわね。古雪さんは学力が凄いと国土さんが言ってましたけど」

「亜耶ちゃんそんなこと言ってたのか...あぁあれか?計算行き詰まってたのを助けたからかな?」

「あたしは知らないわよ...」

「だよねー」

 

何となく目線が風の元へ行ったけど、風自身が知るはずもない。

 

「俺は自分が詰まったところだから教えられるだけで、勉強に高い目標を持ってるわけでもなければ手を抜けるなら遠慮なく抜いて楽する」

「成る程...」

「あ、そういや学校慣れたか?」

「千景と同じで防人組で受けてるものね」

「椿と風のクラスに入ったのは私だけだからな」

「学校には慣れましたわ。勉学の方も問題なく」

「私の担任、大赦の人だけど...私だけ問題変えてくることがあるわ。気をつけて」

「そんなことがあるんですのね。ご忠告感謝しますわ」

 

案外芋づる式で話題がゴロゴロ出てくると、気づけば夕方に差し掛かっていた。

 

 

 

 

 

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「そしたら銀が襲ってきたのよ」

「ぐわーっ!てね」

「芽吹先輩はどうしたんですか?」

「メブったら機敏な動きで避けきってさ!」

 

芽吹さんの部屋で、別グループだった国土さんに三人が今日の話をしている。私はその輪に入らず、外を眺めていた。

 

(...私は)

 

私の最大の目標は、没落した弥勒家を再興させること。如何なる時も優雅に振る舞い、助けを求める者に手を差し伸べる。そんな人になること。

 

そのために、今までだって努力を重ねてきた。

 

そして今日、ある意味一つの目標である勇者達とじっくり話してみて、学べたことはなんだろうか。私に足りないものはなんだろうか。探してもそれはなかなか出ない。

 

「弥勒さん元気ないね」

「雀さん...」

 

どうやら皆の前ではなかなかしないくらい熟考していたようだ。

 

「お体が悪いんですか?弥勒先輩」

「そんなことありませんわ。いつも通りでしてよ!!」

「あ、いつも通りだね...悩んでるなんてらしくないもんね」

「っ」

 

確かに、らしくなかった。私はひたすらに良くなることを信じて行動するのみ。

 

(そうですわ...私の理想に限界などない。悩んでる暇があるなら全て吸収して生かすのです)

 

「まさか雀さんに気づかされるとは」

「へ?」

「なんでもないですわ...ありがとうございます」

 

最後は小声で、感謝を口にした。雀さんにちゃんと言えば調子に乗るだろうけど、言わないのも嫌だったから________

 

「でも普段からこのくらい静かだと嬉しいなぁ」

「雀さんっ!!」

「ひょえっ!失礼しましたー!!」

「待ちなさい雀さんっ!焼き雀にしてさしあげますわっ!!!」

 

 

 

 

 

「弥勒さん...」

「お二人とも仲良しですね」

「うん...良いこと」

 


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