古雪椿は勇者である   作:メレク

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今日は香川の方でゆゆゆオンリー会があったようですね。香川遠いから行けないよ...いいなぁ。いつか行きたい。

今回は防人最後のしずく&シズク回です。参入したゆゆゆい編13話から結構経った気分だ。


ゆゆゆい編 18話

「......」

 

もう、かれこれ15分くらい経つ。初めて入った男の子(先輩だから男の人?)の部屋は、漫画より小説が多いのが個人的に意外だった。その先輩のことを考えると意外ではないんだけど、男の人へのイメージで。

 

他だと、ゲームが置いてあって、机に本や勉強道具がすぐ手を伸ばせる場所にあってと、よくありそうな部屋。

 

「お待たせ」

「押し掛けたのは、私」

「まぁそうなんだけどさ」

 

コップを持ってきた先輩______古雪椿さんは、床に座って丁度いい高さの折り畳み式テーブルを用意して、それを置いた。よく人がくるのだと思う。動作が手慣れていた。

 

「備蓄分のみかんジュースしか無かったんだが、嫌いだったりした?」

「大丈夫...」

 

テーブルに、三つのコップが置かれている。今この部屋にいるのは二人。

 

「...私に二つ?」

「二つじゃなくて良いのか?」

 

そう言われて、この人の意図が分かった。

 

(私と...『俺』の分か)

 

俺達は五感を共有していない。俺はしずくの心を守るために生まれた防御人格なのだから、そうでなければ俺の生まれた意味がない。突然変わっても対応できるようにか、会話や記憶は必要なことが分かる便利な体。

 

だが、二つの人格があることを知ってからこうした対応をしてくるのが早すぎて驚いた。

 

(そりゃ俺になるわ...いや、聞くのも俺に任せるってことか)

 

人格変更の主導権はしずくにある。精神での会話も出来なくはないが、それも俺に決定権はない。

 

(ま、いいか)

 

ここに来た理由は俺も聞きたかったし、構わない。遠慮なくコップの一つを取り、口に入れた。

 

「気が利くなぁ。流石上級生様だぜ」

「...シズクの方か。突然口調が変わるとビックリするわ」

「わりぃな」

「謝らなくても良いけど...それで、俺の家でなんの話をしに来たんだ?」

「...単刀直入に言うが」

 

俺は目の前の男がどんな反応するのか気にしながら、言葉を続けた。

 

「何であいつが...三ノ輪銀が生きている?」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「何であいつが...三ノ輪銀が生きている?」

 

家に来た山伏しずく______いや、しずくではなくシズクが聞いてきた質問に、俺はすぐ答えなかった。

 

シズクはそのまま話していく。

 

「今は乃木銀って言ってるが、あれは三ノ輪銀だろ?先代勇者で、今この世界にいる小学生の未来の姿。だがおかしいんだよ。あいつは勇者の活動で死んだはずだ」

「......」

「俺はあいつの葬式に出たんだ。なのに...どういうことか答えてもらおうか」

「...っ」

 

はじめの質問だけだと理解しきれなかったが、続きを話されて腑に落ちた。

 

確か元の世界では、生き返った銀とシズクが会ったことはなかったと思う。バイクで四国外にいくのは俺と後一人だが、銀は定期的に身体検査を受けるためまだ一緒に行ったことはない。

 

俺はしずくと話したことはあっても、銀の話になったことはない。

 

だから、驚いたのだろう。異世界に来てみれば、死んだはずの人間が生きているのだから。

 

(何回か、銀を睨んでると思ってたけど...そういうことか)

 

俺は考えて、スマホを取った。

 

「別に話してもいい。二つ条件があるけど」

「言ってみろ」

「これは俺じゃなくて銀の話だ。断られることはないと思うけど、あいつに話していいか聞いて、ダメだったら話さない」

「もう一つは?」

「銀ちゃんに...小学生の三ノ輪銀に、話さないこと」

 

ここでの記憶が残っても残らなくても、未来が変わっても変わらなくても、少なからずそれを告げるのは俺達ではない。

 

「つまり、他言無用ってことか」

「あぁ」

「いいぜ。それで話してくれんなら俺は条件を飲む」

「分かった」

 

頷いてから、用意していた電話番号をコールする。メールで事情を話すのは嫌だった。

 

『もしもし』

「案外すぐ繋がったな。今ちょっといいか?」

『え?うん...園子、ちょっとごめん』

 

移動が終わったのか、息をつく音が電話越しに俺の耳を打つ。

 

『お待たせ...それで?』

「今山伏さんが家に来てるんだが、お前のことを詳しく聞きたいんだって。話していいか?」

『あー...だから変な視線受けてたのね。全然良いよ。ちっちゃい頃のアタシに言わなきゃ』

「了解」

『アタシも行こうか?』

「好きにしてくれ。来るとしても終わってると思うけど」

『そしたらゲームするからよし!じゃ!』

 

勢い良く切れた電話を最後に、スマホの画面を消してベッドに放った。

 

「許可、取れたよ」

「じゃあ頼むわ。気になって夜しか寝れねぇんだよ」

「それはたいへ...いや、別にそうでもないわな。いやそのツッコミもどうでもよくて...どっから話すか」

 

銀が今生きている理由であれば、天の神との話を語れば良い。頭の中で構想を立て、その通り言葉を紡ぐ。

 

秋の終わりから春にかけて起こった天の神との戦い。互いに他人事ではない人類滅亡の危機を、勇者の視点でどうなったか。その途中で現れた人型バーテックスの正体はなんなのか。

 

感情が込もって少し声が掠れる所もあったが、バーテックスの______銀が何故生きてるかの話は終わった。

 

「そんなことがあったのか...」

「これが俺達の結末さ。防人も戦ってたって聞いたけど」

「まぁな。俺はその前の調査で気絶した時の方が辛かったけど」

 

互いにこうした世間話が出来るのは、今でこそだ。当時は死にかけたわけで、笑ってこんな話をするやつがいたら殴っていただろう。

 

(...この子も、普通じゃない経験をしたんだろうしな)

 

それは防人の役目についてじゃない。ある意味、俺だから目につきやすいこと。

 

銀と同じ体に入っていたことに落ち着いてきた中ニの俺は、人格に関して調べたこともある。

 

二重人格______具体的に解離性同一性障害と呼ばれるものは、解離性の症状の中でも重い。

 

自分の力、精神だけでは耐えられない傷から逃げるために感情や記憶を切り離し、それが別の人格として現れる現象。人間の防衛本能そのものだが________少なくとも、山伏しずくという人物が体と心のバランスを崩すくらい良くない思いをしたことがあるのは間違いない。

 

多重人格についてある程度理解しているからこそ、その辛い出来事を触るだろうシズクについて詳しく聞くつもりもないし、シズクの俺に対する口調も、特に言うつもりはない。しずくを守るためのシズクは誰に対しても強くあった方がきっと良い。

 

(...もしかしたら、完全にそっち側だったかもしれないしな)

 

俺も、銀のことを俺の耐えられなくなった心が生み出した人格なのかと疑ったことがある。不安になったと言うべきか。結果として違うとなったのだが、思い至った時はぞっとした。

 

基本、多重人格は複数の人格が宿るのではなく、一つの人格が分裂して出来るものだという。つまり、あくまで自分の体験したことしか知らないわけで、『バーテックス』『樹海化』『須美、園子』とした非現実な出来事と大切な友達の話を、『俺が知らない思い出』を語る銀は俺から生まれた人格ではないとなる。

 

「おい、聞いてんのか?」

「あ、あぁ...悪い。なんか言ったか?」

「大したことは言ってないけどよ。あの三ノ輪が幽霊じゃないって分かっただけ良かったわ」

「怖いことを言うな...泣くぞ」

 

主に風が。気絶した上、しばらく銀に近づかない所まで想像できる。

 

「泣く...ねぇ」

「?」

「なんでもねぇよ。じゃ、俺はそろそろ消えるから...後よろしくな」

 

一瞬寝たのかと思えば、すぐに顔をあげた。片目が見えないくらいに髪が下がり、少し威圧的なオーラが消える。

 

「...頂きます」

「ど、どうぞ......」

 

(二人に完全に慣れるには、もう少しかかりそうだな...)

 

もう一つのコップに入ってるみかんジュースを飲む彼女にそう思いながら、俺もジュースを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

あれは雨の日。どしゃ降りじゃない。頑張れば傘がなくても家まで帰れるだろうという日。

 

別に傘も持ってたし、学校にいるわけじゃないから家までの経路も分かりにくい。

 

三ノ輪銀という隣のクラスの子が、凄く大きなお役目をしていた子が亡くなった。

 

あっちは私のことを知らないだろう。というくらいの関係だろうと、一緒の小学校に通っていた同級生が命を落としたとなれば、思うこともある。

 

花を添える、同じお役目をしていた二人。突然消えて驚いたけど、またお役目だという。

 

お役目がどんなものか知らなくても、友達が亡くなったことは心にくる。二人は悲しみ、悔やんで、お役目をしている。

 

神樹館小学校から来た私達は、勿論家族用のスペースに行くこともなく、暗くなる前に帰りましょうとなる。

 

 

 

 

 

たまたま、駐車場の近くを通った時。

 

『ふっざけんな!!お役目やらせてる奴を殺すんじゃねぇよ!!神樹がぁぁぁ!!!』

 

一人の男の子が、雨に打たれながら、雨にかき消されない声で叫んでいた。

 

『あいつを...銀を返せよ!!!返してくれよぉ!!うぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

声変わりしてる途中に思える、高いとも低いとも捉えられる声。

 

その声は、私の心を痛めた。

 

(...せめて)

 

声をかける勇気なんてない。雨は止められない。彼にプラスになることなんて、私には何も出来ない。

 

だからせめて、願った。彼に良いことがあるように_______私のように、拒絶して、『自分』に守って貰うような人にならないように。

 

 

 

 

 

あれから変わった。防人の活動を通して、私達を受け入れてくれる人も増えた。私も自分のことを受け入れ、頼るだけじゃなくなった。

 

どちらも私、互いに出来ることをやる。きっと皆は受け入れてくれると信じて_______実際、心配することはなかったし。

「そうだ、折角ならゲームでもやってかないか?わざわざ話だけして解散ってのも味気ないだろ」

 

そして、目の前で笑う彼も。あの時とは違う。周りが変えてくれて、自分で変わろうと決意したからこその今。

 

「...良かったね」

「ん?どうした?」

「なんでもない」

 

ぽそっと呟いて、微笑んだ。

 

「それにしても、二人きりで自分の部屋にもっと居ようぜと言う男の先輩...」

「その言い方悪意があると思うんだが」

「...変態?」

「直球だな!?」

「やめてー。襲わないでー」

「いやいやいや!?やめてくれよ!第一もうすぐあいつも来るだろうから二人ってわけじゃ」

「ほう...あいつってのはアタシのことか」

「窓から来るなよお前!?」

「お前、部屋で真面目な話してるかと思えば...覚悟しろ!!椿ぃぃぃ!!!」

「やめろぉぉぉぉぉ!!」

「いぇーい!園子も来たんだぜ!!そして始まりましたぁつっきーバーサスミノさん!!いきなり手刀を白羽取りしているぅ!!!」

 

(...なぁ、ちょっとやり過ぎたんじゃね?このカオスどうすんの?)

 

攻撃的な性格の俺でさえ引き気味の質問に、私の答えは。

 

(...頑張れ)

 

最高に無責任だった。

 

せめて、今度みかんジュースを献上しようと密かに誓った。

 

 

 

 

 




椿が叫ぶシーン、十五話で叫んでいるのとほとんど同じなことに書き上げてから気づきました。当時の椿もこれを思い出して叫んでたわけで、今こうして平和な話しとして書けてよかった。
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