選んだ理由としては、椿の花の時期であることと、ネットで検索した誕生日占いで良い結果が出てたからですね。
というのも、11月10日、銀の誕生日と相性がトップクラスに良く(ソウルメイトとのこと)、書かれていた性格もかなり当てはまっていたので...結構びっくりした。
そんなわけで、今回もリクエストになります。大人気?壁ドン回のリクエストもとんでもない数になってきてるので書きはじめはしたんですが...教えてくれ五飛。俺はあと何回経験したことない壁ドンを書けばいい?(意訳。ネタが思いつかない)状態なので、気長に待ってください...
「おはようさん椿!ってどうした?やけに暗い顔してるけど」
「裕翔か...おはよう」
教室に入ると、いつものように挨拶してくる裕翔の顔が少しひきつった。
「いやおはようじゃないわ。大丈夫か?」
「別になにも無いんだけど、大丈夫ではなさそう」
「どういうことだよ...」
呆れられるも、説明がしにくかった。なんとかかいつまんで説明しようと口を開く。
今日は朝から嫌な感じがした。悪夢でも見たのか寝汗は酷いし目覚めも悪く、家から出れば電線に見たことないレベルのカラスの大群。道を歩くと黒猫の家族が大移動。
明らかに不吉なことが起こりそうな上、変な寒気もするのだが、まだ何も俺の身に起きてない。それが嵐の前の静けさのようで、逆に怖い。
「とりあえず俺が倒れたら病院連れてってくれ」
「ホントにどうしたんだよ!?」
しっかり纏めてから言った一言に、裕翔は引き気味だった。
授業終了のチャイムが鳴る。 今日はSHRもなく解散になる。
「椿、先いくわね」
「また後で」
「はいよ。おれも掃除終わったら行くわ」
「椿ー、脅したくせに何もないじゃんか」
「いや...寧ろこれからだ」
「あぁ勇者部ね」
勇者部の方がごだごたの騒動は巻き込まれやすい。言い様のない不安感は増している。
「帰ったら?一日くらい」
「別に本当に体調が悪い訳じゃないから...不味くなったら帰るよ。心配かけて悪いな」
「俺まで攻略するなよ」
「なに言ってんだ...」
いつも通りバイクを動かし、讃州中学の駐車スペースに置く。今更だが毎日のように来てる高校生を快く迎えてくれる中学校に感謝しながら、家庭科準備室へ_______
「「おりゃー!!」」
「ぐふっ」
突撃娘の突撃を良いところに貰った。
「な、なんだお前ら...」
「椿確保ー!」
腰にくっついてる銀ズを放って部室を見渡せば、ユウと球子も手を広げていた。
(なんか、どっかで見たような...)
よくよく見ると、ユウの手には三角形でテーブルに置くタイプのカレンダーが握られている。表示されてるのは何故か八月。
「...なんで八月?」
「椿!昔高嶋達にハグの日って言ってハグしまくってたそうだな!」
「俺そんな嬉々としてやってましたっけ...」
俺が来る前にそんな話が広がったのか、記憶を思い返す前に腰元が叫んだ。
「アタシ達にもやれ!」
「皆待ってますよ!」
「銀!私は別に待ってなんて」
「わっしー遠慮はいらないんだぜ~」
「そうだよリトルわっしー。つっきーならやってくれるから...」
「......はぁ」
どうせ俺に拒否権は無いのだろう。
(それに、これくらいなら...)
「「んっ!」」
「はい。これでいいか?」
銀達の背中に手を回し抱きしめる。温もりが心地よい。
「良いですね...」
「...よく考えたらアタシはよくやってた」
「おいデカイの」
「でもこれはこれであり!」
十秒くらい続けていると、二人がモゾモゾしだして離してやる。
「ありがとうございました!椿さん!」
「ありがと椿」
「はいはい。で、次は?」
両手を広げて次を待つ。今度はあっち側が驚いた。
「...なに、あの余裕」
「なんというか...古雪さんらしくないのでは?」
「防人組でも分かるって相当だぞ...」
(全部聞こえてますけど)
確かに前回は逃げて(結局捕まって)やったが、今は______というか今週一杯くらいは問題にならない。
二週間くらい前にあったひなたと東郷の夢______夢だったのかは今もよく分からないが______のせいかお陰か、抱きしめるくらい大したことに思えないのだ。大怪我をすると指のささくれが気にならないのと同じ。
効果が続くのはあの刺激を鮮明に思い出せてしまう間だけだろうが、今においては頼りになってしまう。
「じゃ、じゃあ椿さん!私にも!歌詞のイメージを膨らませたいんです!」
「いいぜ。おいで樹」
「は、はい...えいっ!」
銀達に比べれば威力も弱いし可愛げがある。
「嫌だったら言っていいからな」
「あっ...」
ついでに頭を優しく撫でると、猫なで声が漏れる。
「い、妹が懐柔されてる...!!」
「なんか椿さん強くなってません?」
「椿君!次私!!」
「はいはい。順番な」
そこからはユウに球子に杏に友奈に風に棗に須美ちゃんに園子ズに________言ってきた人をとりあえず抱きしめていく。
(というか、それぞれでやればいいのに...)
芽吹が真っ赤になって亜耶ちゃんに抱きしめられているのを見て、まぁいいかと園子を撫で回す。柔らかさと甘い香りがするが、なるべく意識しない。そう思うだけで今は大体冷静にできる。
「つっきー...ちょっと待って」
「どうした?」
「い、今そんなにやられたら...私、耐えられないよ......」
「そんなに良いか?これ」
「だって、大事にされてるって伝わってきちゃ...あっ、あぁ!」
「大切だからな」
「園子があそこまで骨抜きに...!」
俺は幸せ者だ。こんなに可愛い子達が一緒にいてくれるんだから。抱きついてきてくれるんだから。
「も、もうダメェ...」
「そのっち!」
「他は誰かいるか?」
気分は無双仕切った転生主人公。倒れたり息を荒くしてる皆を見て、普段感じることのない充足感が俺を満たした。
「椿先輩...いつもと全然...っ!」
「数日すれば元に戻るよ」
肩を抱く友奈に理由を話せるわけもなく、適当に誤魔化す。
「椿さん」
「ひなたもやるか?」
ひなたと東郷相手には少し緊張するが、大丈夫。
(やっぱり夢だったんかなぁ...)
数日俺の態度が変わってしまっても、彼女達の方が変わることはなかったように感じる。俺の観察力がどこまで普段通りにできたのかは分からないけど。現実だと確認するのも怖くて裕翔にセーターの確認もしていない。
「はい。私もお願いします」
そんなひなたは笑顔で言ってきた。手に服を持って。
「これを着て♪」
「調子のってすいませんっしたぁぁぁ!!!」
部室の外まで体感光の速さで飛び出して、走り出した。
「ひなた、それは?」
「忘れましたか若葉ちゃん?ハグの日としてやったあの日は、同時に椿さんが女装してくださった日ですよ?このワンピースを着てもらう良い機会に!」
「椿先輩が!?」
「女装!?」
「それは...」
「者共出陣じゃー!!椿を捕らえろぉぉ!!」
「行くわよみーちゃん!捕らえて撮って脅して蕎麦派にするの!!」
「これだから勇者部は飽きないにゃー」
部室から次々放たれる捕獲部隊を尻目に、俺は叫んだ。
「またこういう展開かよぉぉぉぉ!!!!」
----------------
「ぜぇ...ぜぇ...」
(嫌な予感完全に的中してたじゃねぇか!!)
「っはー...帰れば良かった」
もし帰れば明日にこれがあるだけと気づいて憂鬱になりながら、乾いた喉を唾で潤す。
既に俺の家、バイク、イネスなんかは監視対象だろう。猛獣の檻に自分から行くつもりはない。夕方まではとりあえず来てしまったこの森で耐えるしかない。
「流石に追跡はないか...」
「見ぃーつけ」
「勘弁してくださいあのフリフリだけは!!」
「た...」
「お前らが着るぶんには可愛いと思うけど俺は似合わないから!耐えられないから!!!」
「えっと...」
「...あれ??」
後ろからの気配に土下座で言い訳をするが、いつまでたっても捕獲されない。少しずつ顔をあげると、そこにはキョトンとした赤嶺がいた。
「って、なんだ赤嶺かー...良かったー」
「なんだかまた面白そうなのやってるね?フリフリ?」
「なんでもないから。お願いだから話題変えて」
「んー...いいよ」
「ありがとうございます...」
一応敵に情けをかけて貰ったわけだが、正直今は他の勇者の方が怖いのでよしとする。
「そういや今日はどうしたんだ?誘拐?戦闘?」
「一応危機感ありそうな案ばかり出てくるのに、余裕そうだね」
「赤嶺の口から聞きたくないから自分から言ってるだけ」
そんな余裕がないというのもあるが、 赤嶺と戦いたくないというのも本心だった。彼女が敵意を持ってくる時は樹海化した時、というのもあるし。
それを見越され、油断を誘われている可能性もあるが。
「なんだか大変そうだね」
「お前みたく突然現れそうだしな...」
ここに来るかはもう天に任せるしかない。
「そっかー...ねぇ。良かったらこっち来ない?」
「お前の本拠地に行ったらそれこそ誘拐成功じゃねぇか」
「そうじゃなくて」
「?」
「はい、どうぞ」
「なんか広いな...何なんだよここ?お前の秘密基地?」
森の中にあった大きめの岩、そこに赤嶺が手を触れると横にずれ、大きな洞窟の入り口になった。
「ここは対人を想定して作られた訓練場だよ。私達の時代に精霊を使って特訓してた赤嶺家の所有地。今は大赦に処理されて、ただの洞穴になってるけどね」
「精霊を?」
「昔には、そうした精霊がいたんだよ」
「へー...」
確かに訓練するための場所というなら、一般人が入らないような森林にあることも、普段入口が隠されていることも、中が広いのも納得できる。
「ここなら休めるんじゃない?」
「あぁ、助かったぜ...」
「...疑わないんだね」
「へ?」
「だって、今君は敵である私に勧められた場所で二人きりなんだよ。おまけに応援は期待できない。罠かもしれないのに」
「...俺を倒すつもりなら、こんな回りくどいことしなくても最初で不意をついて終了だろ」
俺を攻撃するタイミングなら、今日だけでいくらでもあった。
「初対面ならともかく、赤嶺なら平気だろ」
「...なんだかなぁ」
洞窟の壁を背に座り込んだ俺の目の前に、赤嶺が仁王立ちする。
「ムカつく」
「へ?」
彼女の顔は『私、イライラしてます』と書いてあった。
「変に信用されてるのが...相手にならないって思われてる感じがしてムカつく」
「はぁ?」
「余裕そうにしてるのがムカつく」
伸ばしていた足に彼女が腰を降ろす。彼女の足がしっかり地面についているため痛いとは思わないが、近い。
「そんな余裕は崩しとくに限るよね」
「別にそんなつもりは...これじゃ休まらないんですが」
「困っちゃえ」
「っ!」
細い指がつつっーと俺の胸を撫でる。そのまま肌が出ている首もとへ、顎へ、頬へ。
「......」
「あれ、反応薄いね」
「...今日なら、まだ、なぁ...」
「え?」
散々ハグしまくった後である。くすぐったくてもそれまでだ。
「えい」
「ふひゃっ!?」
「やられたことはしっかりやり返さないとな」
彼女の脇腹を両手で抑えると、一瞬震えた。
「お、お前の弱点はここか?」
「別に弱点じゃ...あはははは!!!ないってはは!!」
「ほら、どうだい?」
「はー...誰だってくすぐられたら笑うでしょ!」
「そうかい」
「ひゃはは!!や、やめっ!あははは!!」
余裕がないのか、ぐりぐり俺の足に体重がかけられていく。目の前で笑い転げる赤嶺が珍しくて、もう少し見たいと手が進む。
「こちょこちょ」
「あははははは!!!」
5分くらいはくすぐり続けたからか、俺の腕はなかなか疲れており、赤嶺本人もぐったりした様子で俺の肩にもたれかかっていた。
「はーっ...はーっ...」
(...正直、楽しかった)
笑い続ける彼女が面白くてちょっかいをかけるのは、好きな子にいたずらしちゃう男子みたいな。
(でも、やらかしたかな...)
彼女から伝わる熱は最初よりずっと強く、距離も密着して震えが直に伝わってくる。
「あ、赤嶺...ごめんな?やり過ぎたわ」
「...ない」
「?」
「許さないっ!」
俺は彼女に首を絞められ______ることはなく、あげられた手は俺の背中に回される。肩に乗っていた顔は少しだけ上へあげられた。
「赤嶺、お前!?」
「ここは、苦手だったよね?」
「ううっ...」
耳元に息をかけられ、動揺を隠せなくなる。
抱きつかれるのはともかく、耳はダメなのだ。あの時の状況が思いだし過ぎてしまうから。ただでさえ得意ではない場所を今やられれば_______
「そうそう。こういうのを待ってたんだよ...あむっ」
「あふ!?」
躊躇うことなく耳をくわえられ、変な声が出た。
「いふぃふぉ...(良いよぉ...)」
「離れろお前!」
頭を少し強引に掴んで引き剥がそうとしても、体勢の不利が事を進ませない。
「ふ、ざけんな...よ!」
「ふぁふ!?」
「うぉ...」
脇腹を掴むも、それは彼女の口に刺激を与え、俺に返ってくる。
「さっ...さ、とっ...離せ!」
「やら...」
「くっ」
笑って拘束を解いて欲しいが、くすぐるほど赤嶺の口の中が温かく、湿る。それに比例して俺の耳も濡れてくる。びちゃびちゃという音が耳の奥深くまで入り込んでくる。
「あぁもう!」
「んっ...じゅぶっ...ずずっ......」
赤嶺が体をより寄って、少しずつ揺れる。服の擦れる音は聞き取れない。
「赤嶺...いい加減にっ!」
「きみも、そろそろ...」
互いに動きを止めさせるため、俺達は新たな手を_______
瞬間、入口が爆発した。
「「!?」」
「あ、あぁ...!!!」
入口を塞いでいた岩が木っ端微塵になり、真っ赤な顔で矢を構えた須美ちゃんがいる。
「古雪さんから離れなさい。赤嶺友奈」
「小学生には刺激が強すぎた...か、な」
赤嶺の言葉は、矢が真横を通ったせい詰まった。というか俺の真横も通って壁に突き刺さっている。
「...え」
本気で射ていた。須美ちゃんをよく見れば、見開いている目に光がない。
「次は当てます」
次いで、背筋が凍るような声。
「...じゃあね」
「おい赤嶺ぇ!?」
バッと離れて奥へ逃げる赤嶺を追いかけようとするも、俺の顔の真横にもう一本矢が通る。
「古雪さん。貴方も逃げてこんなところで捕まって...皆さんも来てるので、動かないでくださいね」
「す、須美ちゃん...?怖いよ?」
赤嶺はもう追えないだろう。別の出入口があるのかもしれない。というかもうそっちはどうでもよかった。
今は見たことない須美ちゃんが怖い。
「てか、どうしてここが」
「東郷さんのGPSを使用してスマホの位置を特定しました。一番近かったのが私というだけです」
「あいつの仕業か...!」
「そんなことはいいんです。あんな風に優しく抱きしめておいて、気づいたら逃げて、赤嶺さんとは、は、破廉恥な...許しません!!」
「ひっ!」
「須美ちゃん来たわよ!」
小学生に怯える高校生の図が完璧に出来上がり、援軍も見えてくる。
「覚悟してください」
「...お、お手柔らかに、お願いします」
俺は、そう言う他なかった。
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「恨むからな赤嶺ぇぇぇぇ!!!」
遠くから叫ぶ彼の声が反響してきて、身を潜めた場所でそれを聞く。
(私も恨んでるんだけど...)
やがて物音がしなくなってから、一つ息を吐いた。
この場所に出入口は破壊された一ヶ所しかない。咄嗟に逃げ場のない場所へ駆け込んだけど、助かったみたいだ。
(むー...)
確かにこの場所を紹介したのは善意だけど、敵にそれを素直に受け入れられるのも癪だし、脇腹をずっとくすぐられたのも気に入らない。
荒くて熱い息を目の前で当てられ続けたのも。
そんな彼の片耳は、きっと今も雨で濡れたようにびちゃびちゃで________
(...っ!!)
気づいたら、右手で舌を触っていた。少しだけざらついた舌が、汗っぽい人差し指を触れている。無意識に_______彼の悶えてる顔を思い出して、興奮、している。
(...やっぱり、許さないんだから!!)
顔が熱いのを分かっていながら、その熱を彼のせいにして、私は指を一度だけ舐めた。
「...んっ」