古雪椿は勇者である   作:メレク

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新年明けましておめでとうございます!!

...いや、忙しかったとはいえまさか新年一発目が高嶋さんの誕生日になると思わなかった。申し訳ない。代わりと言うのも変ですが、明日も(短いですけど)投稿予定です。






誕生日記念短編 ワガママのカケラ

「よっこらしょ...」

「すみません椿先輩。私達の荷物なのに、持っていただいて...」

「気にするな。今日のメインは亜耶ちゃん達だから」

 

めでたく新年を向かえた最初のイベント、初詣を済ませると、次に待っているのは戦争だった。

 

弱き者、力なき者は淘汰され、勝者だけが権利を得る世界の縮図。またの名を『福袋争奪戦』と言う_________

 

という、とてつもなくどうでもいい話は置いておき、俺は亜耶ちゃんに言い続ける。

 

「それより行ってきな。売り切れるぞ...」

「はっ!!」

「...最も、亜耶ちゃんの分も取ってきてくれたみたいだけどな」

 

戦場(イネスの中に入っている洋服屋の一つ)から二つの袋を持って出てきた芽吹は、亜耶ちゃんに向けて微笑んだ。

 

「亜耶ちゃん。あなたのぶんも手にいれてきたわ」

「芽吹先輩...!お怪我はありませんか?」

「えぇ」

「そうですか...!よかった!」

 

こうした多少の荒事には亜耶ちゃんは向いてないだろう。サイズは事前に聞いていたらしい。

 

「死ぬー...人に潰されて死んじゃうよー...」

「雀、脆い」

「私(わたくし)は高級品質の服がいくつもあるので本来いらないのですが...仕方ないですわね」

 

続いて出てきたのは、加賀城さん、弥勒さん、そして山伏さん。今回は防人組である。他のメンバーは今頃年始のテレビでも見ているだろう。

 

去年の後半にこの世界を訪れた彼女達は、衣類の用意なんかもあまり出来ていなかった。

 

最低限の替えは即揃えたわけだが、どうせ正月の福袋セールが近いのならそこで纏め買いすればいいと風が言ったのだ。

 

店の売れ残りが入ることが多い福袋だが、そのぶん格安で手に入り、数を揃えるには適している。店を選べば質の良い物がゴロゴロ入ってることもあるし、完全な外れというのも出しにくい。

 

というわけで、防人組は洋服の調達、俺は荷物持ちである。俺が現地に突っ込んでも良いのだが、この後下着関係のも行くとなるときついのではじめから荷物持ちの役割に徹している。

 

(別の目的もあるしな...)

 

「じゃあ、すみませんがお願いします...」

「任せタマえ」

 

球子のセリフをパクって芽吹達から袋を受けとる。肩にかなりの負荷がくる量だが、値段はまだ諭吉様一枚程度。これが普段なら三枚は下らないだろう。

 

(さて、俺は俺で...)

 

数日間悩んでいたことは急に解決しない。それはこの場に来ても同じこと。俺は未だ、来週に迫った彼女の誕生日を祝う準備が出来ていなかった。

 

高嶋友奈。俺がユウと呼ぶ少女はもうすぐ誕生日。しかし、彼女はかなりの気遣い屋のため物をねだったりわがままを言うことは滅多にない。

 

寧ろ周りに合わせる協調性の高さは勇者部の中でもトップクラス。それを良いことばかりだとは言わないが、自分の心情を吐露してくれる時もあるし、嬉しく思う。

 

しかし、そんな彼女だからこそプレゼントは選びにくい。特別好きなものと言えばうどんと千景。うどんはプレゼントとしては扱い難いし、千景は俺がプレゼント出来る権利など持ってない。間違いなく鎌で殺される。

 

去年は逆に、皆が自分達の好きなものを送ろうということで纏まった。凄く喜んでくれたが、今年もというわけにはいかない。彼女本人に聞いても遠慮されて話が上手く進むか分からない。

 

何か策を。という時にはお正月を迎えてしまったため、福袋に何かないか目を配っているわけだ。

 

(むー...)

 

女性用のお店だと服だけじゃなく、ネックレスなんかのアクセサリー、雑貨屋だと生活に必要そうな小物、他は変わり種とか、何が入ってるか分からない闇鍋福袋。

 

(プレゼントという形なら、ネックレスなんかが一番ではあるが...)

 

ユウに合ったアクセサリーというならもっとセンスのある勇者部員がいるわけだし、何より千景が候補にあげていた。被りは避けたい。

 

「椿先輩?どうかされました?」

「亜耶ちゃん、日頃の感謝ってどう伝える?」

 

頭の中をごちゃごちゃにして考えていたからか、出てきたのはなかなか突飛な質問。

 

「日頃の感謝、ですか...神樹様には毎日祈りを捧げていますし、芽吹先輩達には感謝を直接口にしています」

 

それでも亜耶ちゃんはしっかり答えてくれた。出来た子である。

 

「思ったことは口にしないと伝わりませんから」

「口に...か。ありがとな」

「んにゅ...くすぐったいです」

「あぁごめん」

 

自然に頭を撫でてしまって慌てて離す。こう、無性に守りたくなる愛らしさがこの子からは溢れ出てる。

 

「亜耶ちゃんの頭を...」

「ひっ!」

「あぁあメブのスイッチが入っちゃってるぅぅぅ!!」

 

そう感じるのは、芽吹もらしい。彼女のオーラをひしひしと感じながら、俺はそう思った。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「...」

『はーい、どちら様でしょう?』

「ユウ、いいか?」

『椿君!?ちょちょちょっと待って!!!』

 

一週間ちょっとが過ぎて、誕生日前日。俺は朝から勇者の住む寮にあるユウの部屋まで来ていた。叩き起こしたりしないよう事前に知っていた普段彼女が起きてる時間に訪れたのだが、答えた彼女は慌ただしそうにインターホンを切った。

 

「お待たせ!いらっしゃいませ!!」

「全然待ってないけど...というか、そんなバタバタしなくても...迷惑だったか?」

「そんなことないよ!!さ、あがってあがって」

 

「あがらなくてもいいんだが」とは言えず、彼女の部屋に入る。一応、サプライズ訪問は成功したと見ていいだろう。

 

(明らかに今纏めた衣類が棚の上に置いてあるが...みなまで言うまい)

 

「それで、どうしたの?」

「...一日早いが、誕生日おめでとう」

「!」

 

今回はサプライズじゃないから言ったところで問題はない。俺としては寧ろここからだ。

 

「それで、今日来た理由なんだが...誕生日プレゼント、何が欲しいか聞きたくて」

「私が欲しいもの?」

「そうだ」

 

突然来たのは時間を与え万一のらりくらりと避けられるチャンスを与えないため。とはいえこのままだとユウはいつも通り配慮してしまうかもしれない。

 

(...思ったことは口に)

 

悩んだら相談。自分の気持ちは言葉にしなければ相手に全部伝わらない。

 

だから、俺達には言葉を紡ぐ口がある。

 

「年明けからずっとお前のことばかり考えてた。何をあげれば喜んでくれるかな。喜んでくれた時の笑顔を見たいなって。でも、考えれば考える程分からなくなった」

「!?」

「だから、お前の欲しいものを遠慮なく言って欲しい。俺の出来ることなら何でもする。それで、俺はもっとお前のことを理解したい...頼む、ユウ」

 

頭を下げると、何故だか彼女は慌てて俺の肩を掴んだ。

 

「つ、つつ椿君!!!一回外で待っててくれる!?」

「へ?」

「お願い!!」

「あ、あぁ...?」

 

戸惑いながらユウに押されて外に出て、扉がしまる。雲一つない寒空にポツンと俺が一人。

 

「...あれー?」

 

思っていた事態とはまるで違う状況に、俺は今年始まって一番間抜けな声を出した。

 

 

 

 

 

「ご、ごめんね...?もういいよ」

「なんか悪かったな」

「椿君が悪いことなんて全然!!」

 

一、二分してまたユウの部屋に案内された。さっきと比べるとユウの顔が赤いのと、綺麗になってたかけ布団が荒れている。

 

「ユウ?目も赤いけど...大丈夫か?」

「え!?嘘!?あわわ...目薬さす!!」

 

慌ただしいままさらに数分。ベッドに座るユウと、椅子に座る俺。

 

「......」

「......」

「...あのね」

「ん?」

「椿君の気持ちは凄く嬉しい...でも、一つだけ先に言っとくね。私は皆にちっとも遠慮してないよ。確かに言わないことはあるけど...それは遠慮とかじゃなくて...全然上手く言えないんだけど、それだけは伝えたくて」

「...わかった」

 

ユウの言い方は本気だ。俺も彼女の言いたい主旨はなんとなく理解できたから、良いだろう。

 

「それで、それで...それでも椿君が何かくれるなら」

 

胸の前で両手を合わせ、潤んだ瞳を向けてくる。

 

「私を、抱きしめて欲しいな」

「...それがユウの望むことなら良いけど?そんなんで良いのか?」

「そんなんじゃないよ!私が良いって言うまでずっとだから大変だし、頭も撫でてもらうし、やってる間に追加注文するし...!」

「それでいいなら...」

 

恥ずかしさはあっても、してあげたいという気持ちの方が圧倒的に強い。というか俺も得しかない。

 

「良いぞ。やってやる」

「取り消しは出来ないよ?」

「二言はない」

「分かった...じゃあ立って」

 

立つと、ベッドに座っていた彼女も立ち上がり、俺の背中に手を這わせ、そして______完全にくっつく。

 

「頭撫でて。ゆっくり」

「仰せのままに」

 

こうして、彼女のお願いは始まった。俺はここにいるユウを確かめるようにしっかり抱きしめていく。

 

下を向けば、彼女の艶やかな赤髪が目に映る。離れないようにひたすら抱きしめる。

 

「椿君」

「なんだ?」

「覚えてる?私達の時代にいた時、椿君が初めて銀ちゃんの力を使った時のこと」

「忘れられるわけないだろ。一度腹に穴開けられてるんだからな」

 

即死確実のダメージを杏と球子の力を奪い取って治し、銀(未来)の力を顕現させて敵を殲滅させたことの方が記憶として強いが、その直前、西暦勇者達への本当の思いに気づけたことの方が大切だ。

 

「私、酒呑童子の力を使って大きなエビ...サソリか。一匹倒すだけでボロボロで。そんなのが二匹もいて、立とうとしても出来なくて、守りたくても守れなくて、死んじゃいそうだった...ちょっと、諦めてた」

「ユウ...」

「椿君は、そんな私を、守りたかった皆を助けてくれた。あの時から、貴方からはもう沢山の物を貰ってるんだよ...それにね!」

 

顔をあげ、下から俺を見上げてくる。

 

「椿君が私のために一生懸命悩んでくれただけで、私は十分嬉しいから!!だから...ありがとう!!!」

「...ぁー」

 

裏表のない彼女の屈託のない笑顔を直視して、俺は恥ずかしさで頭をかくしかない。

 

「なんだ、その...どういたしまして」

「うん!!」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「ユウ...」

「...うーん...あれ?」

「くぅー...」

 

起きたら、目の前に椿君の顔があった。

 

「...!?!?」

 

バッと離れて咄嗟に体を見る。服はちゃんと着てる。場所はベッドの上。時間は窓の外の光から多分夕方。

 

「あ、あぁ...」

 

徐々に思い出してきた。誕生日プレゼントをしたいと言って来た椿君に抱きしめて貰って、身長で顔がちょっと離れてたのと、ずっと立って抱きしめてるのが辛いからベッドで横になって抱きしめて貰い続けて_________

 

(ね、寝ちゃったんだ...)

 

二人して数時間寝てたみたいだ。

 

「ユウ...」

「!」

 

(なんだ、寝言か...)

 

目の前に大好きな人がいる。横になってるから背伸びしなくても顔を間近に寄せられる。

 

「...ありがとう。椿君」

 

寝てる彼の頭を胸に寄せて、やられたように頭を撫でる。こうすると年下みたい。

 

『ずっとお前のことばかり考えてた。何をあげれば喜んでくれるかな。喜んでくれた時の笑顔を見たいなって』

『俺はもっとお前のことを理解したい』

 

(...もうちょっとだけ、良いよね?)

 

もう少しだけ、私だけの椿君でいてほしい。ほんのちょっとだけ私に出来たワガママを貫き通す。

 

「ユウ...」

 

彼だけが呼ぶ、私のあだ名。

 

私は、私自身聞き取れないくらいの声で呟いた。

 

 

 

 

 

「椿君...これからも、ずっと一緒にいてね」

 

 

 

 




あと、以前から話していたツイッターアカウント、ここに乗せときます。個人的にはハーメルンで感想頂いた方が残りやすいので嬉しいんですが、ツイッターの方が気楽という意見も頂いたので。ここまでずっと見てきてくれている方々なら話も合うでしょう...気軽にどうぞ。

https://twitter.com/mereku817

それでは、本年もよろしくお願いします!
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