古雪椿は勇者である   作:メレク

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ツイッター見てくださってる方はもうご存知だと思いますが、ゆゆゆい原作の誕生日ストーリーにやられて書きたくなったのが二日前。書き出したのが半日前。なんで投稿出来んの?暇なの?

というわけで、今日は彼女達の誕生日記念短編です!


誕生日記念短編 一人で二人

「大丈夫か?」

「ん、平気」

 

囁くような声で彼女は答えるが、顔が少しだけ赤い。俺を気遣っての発言なのは分かっているのだが、残念ながら俺には原因を解消出来ない。

 

(これなら、バイクの方がマシだったかもな...)

 

今更後悔しても仕方ないことを思いながら、俺達は揺られていく。

 

『ちょっと付き合ってほしい』

 

しずくとシズクの誕生日である二月四日は、王道なパーティーをすることに決まった。俺は予想していた料理担当になることはなく、しずくと一緒に出かけることになった。

 

パーティーは夕方行う予定だし、用意の間しずくを一人にさせるのもどうかと思っていたが______まさか、俺を指名してくるとは考えてもなかったのだ。

 

(てっきり芽吹辺りを誘うもんだと...)

 

まぁ、本人の希望に従わない理由もない。当日になって駅で合流した俺達は、電車で移動する。

 

問題は、電車内だった。

 

(くそっ...ちょっと辛くなってきた)

 

乗っている最中に、お祭りがあったらしい駅から大量の人が流れ込んできたのだ。御高齢の夫婦に席を譲ったものの、滅多にないくらいぎゅうぎゅうにされ。

 

せめてしずくが苦しく感じないよう、俺が腕を彼女の両隣に立たせて空間を作る。

 

しかし、彼女は扉である壁を背に立っているため、いつぞや沢山やらされた壁ドンのような構図で意識してしまった。なんとか圧迫されないよう努力しているが、気恥ずかしさと後ろからの圧で無性に体が熱い。

 

バイクならこんな思いをすることなかったんだが、あっちはあっちで密着するし、目的地がそれなりに遠い徳島である以上、事故を起こさないよう集中力が保つのがまだ難しいと判断した結果なので、一概にあっちが良かったとも言えなかった。

 

「そっちこそ、大丈夫?」

「平気.......ではないが、今日の主賓を守らないとな」

 

外が寒いぶん電車内は高めに温度設定されてるのも相まって、じんわり汗が出てくる。それでも、ちゃんと彼女を守らなければ__________

 

「...えい」

「うえっ?」

 

突然しずくが肘の内側をチョップしてきて、俺は間抜けな声と共に体勢を崩す。そのチャンスを後ろが逃すことなく詰めてきて、 しずくに倒れかかる形になった。

 

「や、山伏さん!?なにやってんだ...!」

「苦しそうだったから」

 

電車の中で大声を出すわけにもいかないので小声で聞くと、俺のことを配慮した返事が来た。

 

「あと、しずくでいい。シズクを呼ぶときも便利だし」

「あ、あぁ...じゃなくて、そう言われてもだな......」

 

二人だけなら襲っていると勘違いされても文句は言えないような密着状態。刺激が強すぎる。

 

「年上の人に配慮するのは年下として当然」

「だったら俺は女子を気遣う男子として、今日の主役を気遣う付き人として当然ことをしてるだけだっての」

「......それ以上言うなら、考えがある」

「え?」

「皆にこの状況をあることないこと混ぜて言う」

「...分かりました。黙ります。すみませんでした」

 

しずくの一言に、俺は完全に屈した。いや、咄嗟に『しずくにそんなことしたんですか......へぇ』と言って銃剣を構える芽吹が浮かび上がり、普通に怖かった。

 

結局何駅か密着したまま過ごすことになり、やたらドキドキして。なんとか降りた頃には、夕方のパーティーまで体力が残っている自信がなかった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「そういや、何で俺だったんだ?」

「??」

「嫌とかじゃないし、寧ろ嬉しいけど...前は加賀城さんと来ようとしたんだろ?」

 

電車で訪れたのはとあるラーメン店。今回の目的は彼女の好物である徳島ラーメンを昼食として食べることだった。

 

ここには以前加賀城さんと訪れたらしいが、残念ながら定休日だったらしく、開いている店を見た瞬間彼女のアホ毛っぽいのがピョコピョコしていた。

 

「聞いてなかったなって思って」

「それは、俺が頼んだんだよ」

「シズクの方が?」

 

突然人格が変わるのはある程度慣れたお陰で、すんなり会話を進ませられる。

 

「お前結構忙しいからな。いや、忙しいというより周りにいつも誰かいやがる。しかも女ばっか」

「いや、しょうがないだろ......勇者部は俺以外皆女子なんだから。高校ならちゃんと男友達いるぞ」

「はいはい。それも怪しい所だが...そんなわけで、お前と二人で話せるのは、こうして指名でもしない限り難しいから。ってのが理由だな」

「別に普段から言ってくれてもいいけど」

「そういうわけにもいかないんだよ......周りがな」

「ん?」

「いや。お前に言っても意味ないことだ」

 

シズクはコップに入った水を豪快に飲む。

 

「っはー!」

「水でお腹一杯になるなよ」

「分かってるって」

 

ピッチャーを持ってコップに水を注いで返すと、シズクは言葉を続かせた。

 

「俺は結構お前のこと気に入ってんだぜ?こうして気が利くし、それがしずくだけじゃなく俺にもだし。そんなやつ少ないからな」

「そうか?少なくとも防人の皆がいるじゃん」

「いやいや、案外少ないぜ?先にいた勇者部部員を除けば楠と国土くらいだな。弥勒のやつは何かとうるさかったし、加賀城の奴は未だにぴーちくぱーちくうるせぇし。他の防人はまず俺個人としてつるむ機会が少なかったからな」

 

「んで」と、テーブルに肘をつけた彼女が俺を指差す。

 

「勇者部は良い奴らばっかで、中でも評価が高めなのがお前とおっきい銀だ。自由に出来る」

「ならよかった」

 

心地よい環境でくつろげてるなら俺としても嬉しい。

 

「しずくも結構良さそうだしな」

「そうなのか?」

「さっきのこと思い出してみろ?あいつ、お前が頑張りすぎないよう自分からチョップしただろ?」

「あー...」

 

電車内の光景が_______俺の体が触れる距離で顔を赤くもじもじしてたしずくがフラッシュバックして、思わず顔がひきつる。

 

「それが単に同情だけなら、あいつは嫌がって俺を出す筈だ。でもしなかったってことは...悪い感情は持たれてないってことだ」

「...なるほど、ねぇ」

 

防御人格たるシズクが出てこなかったことを、シズクのお墨付きで言われ、少し照れる。

 

「ニヤニヤすんな気持ちわりぃ」

「急に辛辣っすね...」

「冗談だ。そんな辛そうな顔すんなって」

 

シズクがケラケラ笑っているうちに、料理がテーブルに運ばれた。徳島ラーメンと一概に言っても、茶系もしくは黒系、白系、黄系の三つに別れている。ここのメインは濃口醤油ベースの茶系で、それが二つ。あとはライスが中と小。

 

「うっまそー!!」

 

シズクが目を輝かせ、アホ毛をピョンピョンさせているのを見ると、ちょっと面白かった。

 

「じゃ、冷めないうちに食べ「頂きます!!!」ますよねはい。頂きます」

 

徳島ラーメン大好きっ子のしずく達が推すだけあって、滅茶苦茶旨かった。気づいたら箸が止まらなくなっている。

 

「うま......」

「そうだろそうだろ?沢山食べて作れるようになってくれ」

「お前ら、まさか俺に味を覚えさせるために連れてきたんじゃないよな?」

 

疑問を口にするも無視。まぁ美味しいラーメンを食べて真似したいとも思ったので、乗せられていたとしてもそれでいいだろう。

 

というか、恐らく作れない。深みのあるスープに必要だろう豚骨を個人で用意して、何時間も煮込むことは流石にしないから。

 

「旨かった~!」

「え、もういいのか?」

 

もう満足とでも言いたげなシズクだが、ラーメンもご飯も半分ずつ程度残っている。

 

「あ、しずくの分か」

「そうそう。流石にセットを一つずつは食べれないからな。ホントは食べたいが...じゃ、俺は消えるから。これからしずくのことよろしくな」

「分かった」

「なんなら俺の分までしずくに優しくしてくれ」

「え?」

「は?」

「い、いや...ちょっとひっかかって」

「何がだよ」

「お前の分までしずくにって...無理だろって思って。お前かしずくどっちかだけに優しくなんて出来ないだろ」

 

少しだけ生じた違和感を素直に話すと、シズクは変な顔をした。

 

「はぁ?」

「い、いやほら!お前らは確かに二人で一人だが、双子みたいな感じじゃん?」

「俺はしずくから生まれたんだぞ」

「だからってどっちかに偏ることなんてないだろ。どっちも大切だ」

 

普段から見てれば分かる。表裏一体の二人は生まれ方がどうであれ、互いを大切にしあって、もう切っても切れない関係。

 

そんな二人を見てる俺が、しずくだから。シズクだから。と差別することはできない。

 

「...チッ、くそが!」

「ねぇなんで時々すげぇ強いの」

「うるせぇな!わざわざ面と向かってそんなこと言うな!!」

 

そのまま何か罵詈雑言が飛んでくるかと思いきや、徐々にクールダウンして落ちる。

 

「お、おい、シズク?」

「ラーメンが伸びる」

 

一瞬でさっきまでの強気な姿勢が消え、しかしちょっと頬を膨らませて怒り気味な彼女が箸を取った。

 

「し、しずくか?」

「シズクがずっとお預けさせるから、返してもらった」

「あぁ、そう...」

「安心して」

「へ?」

「シズク、熱烈に『しずくだけじゃなくお前も大切だ!!』なんて言われ慣れてないこと言われて恥ずかしがっただけだから気にしないで。またよろしく」

「...お、おう......」

 

なんか、自分で言ってたことの筈なのに、しずくに言われて俺自身も恥ずかしくなってきた。

 

「私も、よろしくね?」

「......もちろん」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「はふぅ...」

 

もうすぐ日付が変わる。私の誕生日が終わる。皆が用意してくれたお祝いも、もう終わってしまった。

 

(結局、閉じ籠っちゃったな...)

 

シズクは、昼間のあれから一度しか出てこなかった。それも、パーティーが始まってすぐありがとうと言っただけ。

 

シズクが、自分から出たくないという思いをこんなに出してくるのは滅多にない。

 

(知らなかったな...案外恥ずかしがりやだったんだ)

 

いや、もしかしたら当然なのかもしれない。私も今日、電車で凄く_______

 

(っ!!!)

 

ブンブンと頭を振って気を紛らわせる。あれは皆と違ってそういう目的でやったわけじゃないから。

 

(もう、寝よう)

 

明日になればシズクも出てくると思って、私はもぞもぞ布団に入る。

 

机には、二枚の写真と、メモ書きを置いておいた。

 

(じゃあ、おやすみ......)

 

 

 

 

 

「んぁー...あっ」

 

目が覚めて、両腕を上に伸ばす。肩関節の程よい刺激が俺の頭を覚醒させていく。

 

「あれ、俺なのか...さては夜更かしでもしたか」

 

しずくはまだダウン中なんだろう。今日は学校があるから起きて支度を__________

 

「ん?なんだこれ...!」

 

机に置いてあったのは、写真とメモ書き。写真の方はパーティーの時に撮ったであろう俺(しずく)を含めた全員の集合写真と、変にスペースがある俺(しずく)単品の写真。そしてメモ書きには________

 

『シズク、誕生日おめでとう。合成して貰うから上手く撮られてね』

 

「...ったく。誰が」

 

言葉に出たのとは裏腹に、俺は撮って貰うことを決める。

 

だって_____俺(シズク)も自然と口角が上がっちゃうくらい、私(しずく)が嬉しそうに微笑んでいたから。

 

「...しゃあない!撮られてやるか!」

 

 

 

 

 

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