古雪椿は勇者である   作:メレク

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ゆゆゆいアプリの花結いの章29話、ついにきましたね...滅茶苦茶続き気になる。




ゆゆゆい編 27話

「椿ー、今週の予定は?」

「市役所付近の清掃活動に保育園の手伝い、目立つのはそのくらいかな」

 

パソコンを弄ってたからか、風が俺に聞いてくる。何気ない日常の一コマだが、皆会話してなかったので適当に話を続かせた。

 

「なんか久々かもな」

「何が?」

「風が俺に予定聞いてくるの。最近は人数多いし、友奈達が入ってからスケジュール管理は東郷がやること多くなったし」

「あー、確かにそうかもね」

 

バリバリとせんべいを食べながら答える風。反応してきたのはその東郷だ。

 

「私達が入る前はお二人で活動してたんですよね?」

「まぁ、半年くらいだけどな」

「この勇者部の始まりですか...興味ありますわね」

「別に面白い話なんて何もないわよ?ねぇ椿?」

「......ここで風がチアやって男子に告白されたエピソードが真っ先に思い浮かぶ辺り、刷り込みが完璧だよなー」

「刷り込みって言い方はないでしょ!?」

「それは私(わたくし)も聞いたことあるので結構ですわ。そうですわねぇ...そういえば、二人のうちどちらが先にこの部を始めたんですの?それとも二人で?」

「 風が俺に声をかけて、二人で始めたって感じかな」

 

勇者部設立の本当の目的は、神に選ばれる勇者適性の高い者を集める為の場所だ。人助けの部を作ったのは風らしいと言えるが。

 

「あの時は、確か________」

 

 

 

 

 

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『すいませーん。古雪椿君いますか?』

 

あたしの声に教室にいた人達が振り向く。そして、不思議そうな顔をした。

 

それも仕方ないとは思う。中学に入ってからまだ半年ちょっと。隣のクラスまで出向いて仲良くなることの方が珍しい。

 

(色々あったし...ね)

 

両親が亡くなった。文字数にしてみれば少ないそれは、私と、二つ下の妹にとって致命的で。

 

でも、それを気にしてずっと泣いているわけにはいかなかった。あたしは妹を守らなければならないのだから。妹との手を離したくないが故に、誰かの養子になるという大赦の提案を断り、二人で生きていくと決めたのだから。

 

(そのためにも、まずは...)

 

『古雪君、誰か呼んでるよ?』

『はーい...えっと、誰?』

 

黒髪黒目で、少し目の隈が目立つ男子。それが、あたしが初めて古雪椿を認識した時の印象だった。

 

 

 

 

 

大赦が協力を頼んできたのは、世界を救う力を持つ勇者になれるかもしれない人を揃えること。ただもしもに備えて集めてくれれば良いと言われて。

 

その大赦が指名してきたのが彼、古雪椿だった。

 

_____今にして思えば、椿が乙女にしかなれない筈の勇者として指名されたのは、大赦の指示が勇者を集めるように言われてから数日経ってからだったのは、この間に椿の元へ銀がついたからなのだろう。

 

『それで、部活勧誘に...?』

『そうなのよ!どう?勇者部に入らない?』

 

入ってくれないと少し困るのだが、詳しい理由を言うわけにもいかない。『何の部活にも入ってないから暇そう』という表向きの理由を言うと、どっちとも取れない声で『んー』と唸った。

 

『まぁ、暇だし、銀と遊ぶために早く帰る必要はなくなったわけだし......』

『へ?』

『あ、いや...返事は明日でいい?』

『えぇ』

 

次の日、彼は朝イチであたしの教室前にいた。

 

『いぬぼうじゃき...んんっ!犬吠埼さん。昨日の話だけど、俺でよければ協力させて貰う』

『ホント!?助かるわ!』

『所で、俺以外には誰に声かけてるんだ?』

『え?』

『え?』

 

よく考えれば椿が気にするのも当然で、普通であればたった二人で作る新らしい部活を承認されるわけがない。

 

大赦に特例で設けて貰った部活だから、気にする必要もないのだけど。

 

『まさか、こうもトントン拍子でたった二人の部活が認められるとは...』

 

用意して貰った家庭科準備室にはほとんど何も置いてない。

 

『やりがいがありそうね...よぅし!じゃあこれからよろしくね!椿!』

『あ、あぁ...よろしく、犬吠埼...風でいいか?言いにくくて』

『寧ろ推奨!』

『分かった』

 

 

 

 

 

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「始まりはこんな感じよ」

 

風視点の部活結成話が粗方終わり、もう一口せんべいをかじる。

 

(まぁ、最初からこう活動してたわけじゃないんだが...)

 

無名の部活に依頼がすぐ届く筈もなく、二ヶ月くらいは樹と二人分の食材を買う風を手伝って荷物持ちをしていた。

 

「椿さんはよく乗りましたね。知り合いでない人からいきなり部活の勧誘をされて」

「まぁな...タイミングが良かったって感じか」

 

銀がいなくなった悲しみを銀本人によって解消された頃。銀が俺と一体になったというのは、俺が勇者への適性を持ったということだ。

 

それに目をつけた大赦が風に指示し、こうなった。なるべくしてなったと言ったところか。

 

(そういや...)

 

流石に俺も最初から勇者部に乗り気ではなかった。突然誘われるとか怪しすぎるし。一日持って返ったのは銀とじっくり話したかったからだ。

 

『アタシは良いと思うけどな。やってみたら?』

 

(銀に言われなかったら、この部活に入ってなかったかもな)

 

「ん?どした椿?こっち見て」

「いや、何でもない」

 

もし勇者になってから勇者部のメンバーと関わりだしたら、溶け込むことは厳しかっただろう。唯一の男子で、戦うために仕方なく集まった感じも出てしまうから。

 

「でも、誘ってもらって良かったよ。風様々...っと、悪い」

 

机に置いていた携帯が震え、画面が通話の着信を示す。互いに迷惑にならないよう部室から廊下に出た。

 

「もしもし」

「あ、にぃーちゃん?」

「鉄男?」

 

映っていた相手の名前は『三ノ輪家自宅』。文字通り三ノ輪の家電だ。誰かと思えば、相手は長男の鉄男だった。

 

「どうした?わざわざ連絡してきて」

「実は__________」

 

 

 

 

 

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「へいお待ち」

「「美味しそうー!」」

 

冷蔵庫にあった物で手早く親子丼、ほうれん草のゴマみそかけを作り、昨日の残りという豚汁と一緒にテーブルに並べる。

 

「卵とろとろだ...」

「冷めないうちに食べるぞ。ほら」

「はーい!頂きます!」

「「頂きます」」

 

手を合わせてから二人は慌ただしく食べていく。自分でも満足いく半熟具合だ。

 

「にしても、いきなりだったな」

 

まだ一人で包丁を持つのは危ない二人は、普段であれば両親か家政婦さんにご飯を作ってもらっている。しかし、両親は急遽夜までかかる仕事が、家政婦さんは急病でお休みだとか。幸い軽い熱らしいが、移されても困るし、俺が面倒見れば良いだろうとも思っている。

 

「おいしーい!!」

「んっんっ...んぐっ!」

「あーあー掻き込むな。はいお茶」

 

ちょっと前と比べても、二人はよく食べるようになった。見ていて和む感情は弟というよりは子供を相手しているのに近いだろうか。

 

「食べたら風呂入ってこい。ためといたから。そしたら今日は宿題して早寝」

「えー!ゲームしようよー!」

「俺がここに来るまでにやってただろ」

「ギクッ」

「先に宿題やっとけって言ったのに...約束守れない子はダメです。いいな?」

「はーい......」

「...今度、ちゃんとやってたら遊んでやるから」

「!うん!!」

 

大人がいない時に隠れてゲームすることの楽しさは十二分に分かるが、それを素直に言っても二人のためにならない。心を鬼にした結果は良かったようで、ご飯を食べ終えた二人は仲良く風呂に入っていった。

 

「やっほー椿、手伝えることない?」

「布団の用意」

「ラジャー」

 

我が物顔で入ってきた相手を一瞥することなく指示をだす。事前に連絡は受けてたが、声や遠慮のなさで相手なんてすぐにわかった。

 

(ま、今住んでなくても自分の家だし、俺よりここが相応しい奴だしな)

 

迷うことなく押し入れから布団を二つ出す銀を確認しながら、俺は油のついていない食器だけ重ねて流しまで運び、全部運んでから皿洗い。洗剤なんかの場所は分かりきっている。

 

「鉄男の茶碗は大きいのに買い替えてやるべきかな...」

「そんなに食べるようになった?」

「あぁ。それなりにな」

 

俺も大食いではないが、当時の俺と比べてもよく食べる方に感じる。

 

「そっかそっかー。大きくなって貰わなきゃ困るからなー」

「この世界だと年とることないけど」

「それでも気持ちよく食べて欲しいだろ~!大体それ言ったら椿がさっきいったのも無駄じゃん」

「...まぁ、それはそうなんだが」

「アタシはあまり近寄れないしさ」

「銀......大赦のあれか」

 

余計な混乱を避けるため等の理由から、銀は三ノ輪家との接触を極力避けるよう言われていた。一度は触れあっていたし、こうしてバレなきゃいいと来るときもあるけれど。

 

「大丈夫。割りきってるよ。可愛い弟達に会えないなんて何事かーとは思うけど、仕方ないから」

 

「いつかは...」という銀に、俺は何も言えなかった。何を言うにしても無責任な形になりかねないから、咄嗟に言えず固まってしまう。テンポ良く皿を洗っていた手も一瞬動きが鈍る。

「よし、敷き終わったー...椿ー、懐かしくない?」

「何が?」

「こうやって布団二つくっつけて敷いてるとさ」

「あー...」

 

銀が言っているのは恐らく俺達が小学生だった頃、それこそ今銀が布団を敷いている部屋で一緒に寝た時のことだろう。

 

「夏休みだったっけか」

「そうそう!丁度雨強くて雷が沢山でさ、二つ用意してたけど結局一つの布団に二人で入って寝たやつ」

「あれ、普通に怖かったからな」

 

今なら別に大したことないと思うが、あの頃は沢山の雨が屋根を叩く音と不定期に鳴る落雷の音が怖くてしょうがなかった。

 

「銀と一緒だったら結構安心できたけど」

「アタシも椿に抱きついてたら平気だったな~。あの後寝れたし」

「起きたら思いっきり晴れたっけ」

「あぁー!なっつ!ねぇ椿、また同じ布団で寝ない?」

「お前何歳だよ」

 

若干呆れながら返事をすると、しばらく何も返ってこない。

 

(あれ?)

 

「ア、アタシは......いくつになってもしたいけど、な」

「冗談言うんじゃありません」

「......はぁ。まぁいいや。用意終わったよ」

 

一仕事終えたように「かっー!」と達成感のある声をあげる銀は、ずっと前から知っている子供っぽいようにも、前より大人びたようにも見えた。

 

「ありがとな」

「アタシの弟達だからな!じゃ、おやすみ」

「いいのか?てっきり俺んち寄るのかと」

「園子も待ってるし、椿もこれから二人の面倒見て時間かかるだろうしね」

「分かった」

「じゃあ、また明日!」

「あぁ。また明日な」

 

玄関から帰る銀を見送って、振っていた手を下ろす。

 

「......」

 

なんとなく見上げた空は雲が多く、隙間から半月がぼやけて見えた。

 

「『また明日』......か」

 

また明日会おうと言える。またねと別れを告げられる。その大切さが改めて胸に刻まれる。

 

普段周りが騒がしいぶん、一人でいる時は感傷に浸りやすい。

 

(...離さないようにしないとな)

 

繋いだ手を決して離さない。これまでも、これからも。また明日、皆と過ごすために。

 

「くすっ...なーんてな」

「にぃーちゃん風呂出たー!!」

「はーい。お前らちゃんと体拭いたのかー?」

 

変な感傷を振り切るように、俺は風呂場まで歩き出した。

 

明日も明後日も、見える月の色が消えないことを願いながら。

 

 

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