古雪椿は勇者である   作:メレク

190 / 333
200話まであと10話。その頃には花結いの章終わるのかな?

今回はリクエストになります!




ゆゆゆい編 28話

「今日はわざわざありがとう」

「いえ...それで、俺に見せたいものってなんですか?」

 

いつものファミレス。先に座っていた春信さんは、極秘と右上にかかれてる資料をこちらに渡してくる。

 

「思いっきり極秘って書いてありますけど...」

「勇者なら問題ないよ。というか、君に見てもらわないと始まらないから」

「......」

 

ページをめくっただけで、俺の目は見開かれた。そのまま何枚かめくってみる。

 

「これは...」

「これまでの勇者のデータを元に作り上げた、完成品のレイルクス。そのペーパープランだよ」

 

大赦考案の疑似満開装置の試作品『レイルクス』。俺自身何度か身に纏い、窮地を救われたこともある装備だ。

この世界の春信さんは俺がこの装備で壁の外に出ていた頃の記憶で止まっているのだが、この人がそれを知るよしはない。

 

(神の力ってのは、ホント便利よなぁ...だからこそこの人の異常さも分かるけど)

 

正確に言えば、春信さんは恐らく勘づいている。俺の態度なんかから異なる場所から来たことを感じてはいても追及するほどじゃない。と言ったところか。俺もわざわざ説明する必要もない。

 

「これが作られた時、始めに使うのは君だろうから。使用者の意見も求めようと思って」

「...武装のラック部分はもう少し減らしていいと思います。基本勇者はそんなに多くの武器を持ちませんから」

 

武器の性能もテストする試作機なら大量に装備させて良いが、完成品ならデッドウェイトでしかない。

 

「武器の種類は作って、全部の武器を選んでつけれるラックパーツがあれば困らないと」

「成る程ね。君は二つ?」

「斧二本なのでそれで。腰は今の銃をそのままにしておきたいので背中が嬉しいです」

「分かった。やってみよう」

「...作ったとして、他の勇者がこの装備を使うかと言われれば微妙ですけどね」

 

懸念があるとすればそこだろうか。俺は純粋に興味もあるし使ってみたいが、他の皆が喜んでこれを使いだすかと言えばすぐには頷けない。

 

「というと?」

「武器は自分達のがありますし、空中性能、能力の底上げ。魅力的ではありますが、勇者部は樹海の上で戦うことに慣れていて、チームワークを重視してます。今さら慣れない装備で空中を舞台に戦って、滅多にしない三次元的な連携を突然できるようになるとは思えません。経験不足を補ってなお今より強い状態になれないなら...」

 

試作品の段階だと、本気であれば樹海を走った方が速かった。その程度じゃ全員が使うことはないだろう。

 

「そこはもう頑張ってくださいとしか言えません。俺、これがどういう仕組みで動くのかすら全然知らないですから」

「...うん。意見ありがとう。もう少し練ってみるよ」

 

そう言って、春信さんは紅茶を飲む。気品があるように感じるのは天性のものか、努力の賜物か。

 

(夏凜には無いもんだし努力に一票)

 

案外格式のある大赦もめんどくさいのかもしれない。なんて考えながらみかんジュースを飲んでると、春信さんが「そういえば」と続けてきた。

 

「もう一つ付き合ってほしいことがあってね」

「はい?」

「これなんだけど」

 

バッグから出てきたのは小瓶。日光の影響を受けるものなのか茶色で覆われている。

 

(...てか)

 

「なんですか、そのいかにも怪しい薬が入ってそうな...」

「実際そうだから。これは違う部署から勇者部に依頼として頼んで欲しいって来たんだけどね。普段心のうちに秘めている感情を解放する薬なんだって」

「突然ロクでもねぇもん出てきたなおい!?」

俺の口は否応なしにツッコミを入れざるを得なかった。

 

 

 

 

 

(で、貰ってきちゃうし...)

 

部室にて、俺は小瓶を太陽にかざす。茶色が透けて中にある錠剤のシルエットが見える。五、六粒といった所だろうか。

 

流石に俺も理由なしにこんなものを貰ってきたわけではない。

 

『勇者は普通、純粋な乙女にしかなれない。つまり勇者になった夏凜は純粋な乙女である証明でありかわ...ごめん。そんな顔しないで。流石に傷つく...こほん。それで、勇者には生まれた段階で持つ素質が必要になる。一方、僕の目の前には例外である君がいる。男の勇者。記録されている文献にはいないイレギュラー。おまけにトップクラスの適性がついたのは数年前、突然だ。後天的にその力が男にも手に入るなら...』

 

「その、後天的な力を利用した勇者の量産計画...」

 

男であれ女であれ、世界の守り手たる勇者の母数を増やす。この時空の世界の住人ではない(神が消えた世界を知る)俺からすれば、それを補うだけの神の力が必要だと思うし、そもそも俺の力は銀のお陰なので計画が実を結ぶとは思えないが_______そんな事情を知らない人の計画を真っ向から否定するのも微妙だった。

 

そういうわけで、計画の前段階の実験として付き合うことにしたのだが。

 

(効果が、素直な感情を吐露させる...ってのが、なんか変な所だけど)

 

誰か来ればこれを飲んでもらって録画しながら幾つか質問する。服用実験としては甘い気もするが、そういうオーダーだしいいんだろう。

 

第一ガチでヤバいやつなら、今や伝説とも言える若葉たちがいる勇者部に大赦が頼む筈もない。

 

「あ、椿君!」

「ユウか」

「正解!!よくわかったね」

「もう間違えるわけにいかないからな」

「へ?」

「...いや、なんでもない」

 

前にあったのは友奈との話である。ユウが知るはずもないので適当に誤魔化した。

 

「椿先輩!」

「やっほ~つっきー」

「あら、椿さん一人ですか?」

「皆来てないのね」

「他の方々は知りませんか?」

 

後ろから件の友奈に園子にひなたに千景に東郷。

 

(六人もいれば良いかな)

 

巫女と勇者の力を持つ東郷、巫女のひなた、勇者として千景、ユウ、ただの勇者でなく『御姿』の友奈、それに近い園子。これだけいれば十分だろう。

 

「俺は今日誰がどこにいるか分かんないわ。ま、依頼はきてるから協力してくれるか?」

「うんうん。良いよ」

「私達も平気ですよ」

「ありがと。じゃあこれをセットして...と」

 

携帯を録画状態にしてペン立てに立て掛ける。案外集音性が高めなのは確認済みだ。

 

「実は大赦から依頼を貰ってな。この薬の効果をテストしたいんだと」

「何その怪しさ全開の瓶は......」

「嫌なら突き返せばいいから無理にやってくれとは言わないよ」

「椿先輩はやらないんですか?」 「俺はあっちでモニタリングしながらやるって」

 

本当に例外たる俺は、後日大赦からお呼び出しをくらうとか。

 

「ちなみに、服用するとどうなるんですか?」

「ん?あぁ、素直な気持ちを出す薬らしいぞ。即効性が高くて効果は5分ちょっと」

「でしたら私は協力させていただきますよ。椿さん」

「ホントかひなた?」

「そのくらいでよろしければ...」

「つっきー、私も飲むよ~。楽しそう!」

「二人がやるなら私も!」

「私もお手伝いします!椿先輩!」

「「高嶋さん(友奈ちゃん)がやるなら私も」」

 

最後の二人の即答具合に一言いいたくなったが、折角やる気になってくれたのを削ぐ必要もないだろうと抑え込む。

 

「ありがと皆。じゃあこれ...誰からやろうか?それとも一斉にやる?」

「データとして撮るなら一人ずつですよね。最初に言いましたし、私が」

 

ひなたが気軽そうに蓋を開け、中の薬を一粒飲んだ。俺が言ったこととはいえもう少し疑ってもいいと思うのだが。

 

「どうだ?」

「そんなすぐに出ません......!!!」

 

微笑んでいたひなたの目の色が変わる。いや、実際に色が変わってはいないのだが、そんな表現が適していると感じる変化があったように思えた。

 

「効いてきたか?じゃあ適当に質問でも...」

「あの、椿さん」

「?」

「ちょっと、手を貸して頂けませんか......?」

「手?何か手伝えることあるのか?」

「そうではなくて、こう、こちらに...お願いします」

「?まぁいいけど」

 

いまいちピンとこないまま右手をひなたに向けて伸ばす。握手する形で伸ばした手に、彼女は何かに耐えているような表情で、祈りを捧げるように両手で挟んで握り込んだ。

 

「はぁ...はぁ...」

「ひなた?」

 

まさかアレルギー的な不味いものが入っていたのか。不安になった俺の感情は瞬時にどこかへ吹き飛んだ。

握られた右手を彼女の胸元に持ってかれて体勢を崩され、咄嗟にひなたの肩に手を置く。

 

「...」

「ふゎっつ!?」

「「なっ!」」

 

そのまま、右手の人差し指のひらを舐められた。全身がぞわぞわして変な声に変換される。

 

「ひなた!?」

「っ.......っ!?!?」

 

ひなたがちらりとこちらを見て、みるみるうちに真っ赤になっていく。固まった体で目だけが仕事をしたようで、自分の口元_______俺の指を舐めている口と、それを拘束している両手を見つめ、バッと離した。

 

「ぁ、あ、あの...椿さん!!申し訳ありません!!今日は失礼します!!!」

「え、ちょ、ひなた!!」

 

部室を飛び出すひなたは俺が見たことないくらい速く、俺自身動揺していて全く追いかけられない。

 

『若葉ちゃぁぁぁんっ!!!』

『?ひなたぁ!?何を!?』

『すみません五分でいいのでお願いします!!!全く止められないんですっ!!!あぁ若葉ちゃん!!若葉ちゃんっ!!!』

『うわぁぁぁぁ!?』

 

廊下の遠くから叫ぶ声も、ひなたに舐められた指をどうしようか考えていた俺にはちゃんと聞き取れなかった。

 

「じゃあ次は私やるね~」

「この流れで!?」

「さ、流石ねそのっち...」

 

東郷がひきつった顔で褒めているが、そうじゃない。

 

「今のひなた見てたのか?これ結構ヤバいやつじゃ」

「え~?素直な気持ちを出させるんでしょ?成功してるから平気だよ~」

 

園子の言葉の真意を考察してる暇もなく、彼女が薬を飲みこんでしまう。

 

「案外美味しいね...あぁ、これは耐えられないな。ひなタン凄い」

「園子、大丈夫か?」

「大丈夫だよ。つっーきー♪」

「おわっ」

 

今度は襲いかかられ、床に倒れこんだ。ぶつかった衝撃で頭が滅茶苦茶痛いが、俺が下だからといって園子が平気というわけでもない。

 

「古雪園子より乃木椿の方が語感が良いと思うんだ」

「へ?園子なにいって...怪我ないか?」

「私から体当たりしたのに、なんで心配するのかなぁ...優しすぎるよ。つっきー」

 

(自分の状況に集中したくないだけだから!!)

 

押しつけられている彼女の柔らかさが、どうしても俺に『異性』の魅力として伝わってくる。理性を保つので精一杯なのだ。

 

「そんな優しいつっきーにはご褒美を...およ、およよ~?」

園子が俺から離れていき、一瞬名残惜しさもあったが、その原因を見て固まるしかなかった。

 

「五分経過するまでガムテープで口も塞ぎましょう。そのっち?古雪先輩に迷惑かけちゃダメでしょ?」

「んー!むぐー!?」

「と、東郷、いつの間に...というかやりすぎじゃ」

 

園子の攻撃というかスキンシップは今に始まったことじゃない。あれが園子の素直な行動なら、もっと皆と遊びたいんだろう。

まぁそれも、東郷によって縛り上げられなにも出来ない状態になってしまったが。

 

「一人縛り上げるくらいどうということありません。古雪先輩もそのっちを甘やかし過ぎないでくださいね?」

「...はい」

 

東郷の技の凄さと放たれる威圧感を受け、俺は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、これ、実験になってるの?」

 

園子が落ち着き、『今日はもう暴れません』と書かれたスケッチブックを手に持たせてから、千景が口を開いた。

 

「現状、素直になるというより暴走させるって言った方がしっくりくるよな......」

 

もし本当に素直にさせる薬なら、園子はともかくひなたは人の指を舐めたい人になってしまう。流石にそれはないだろう。

 

「はぁ......これは今度大赦に突き返すか」

「椿先輩、私もやってみていいですか?」

「友奈ちゃん!?危ないわよ!それに私友奈ちゃんのことは縛りあげられない!!」

「別に縛らなくてもいいんじゃないかな~?私もつっきーにキスしようとしむぐぐぐぐ....」

「いや東郷、園子苦しそうだから」

 

東郷が園子の口から手を離すと、『ぷはぁ』と大袈裟に呼吸した。

 

「とにかく、私は」

「じゃあ東郷さんも一緒にやろ?ね?二人なら大丈夫!」

「やります」

 

(大丈夫かなぁ...)

 

「いいのか友奈?無理しなくても」

「いえ...普段恥ずかしくて言えないことも、言えるかもしれないので」

「そうか?んー...」

 

頼んだのは俺だし、乗り気な友奈を止めるのは申し訳ない。

 

「じゃあ、お願いします」

 

結局止められなかった俺は二人が薬を飲むのを待つしかなかった。

 

(まぁ、東郷は...)

 

「友奈ちゃん好きぃぃぃぃ!!!」

 

予想通り友奈に熱烈なハグをかます東郷。友奈もしっかり受け止めているし、五分間いつもより激しめの二人を録画しておけば_______

 

「私も東郷さん大好きだよ!!でも...ごめんね。私...」

「ゆ、友奈さん?」

 

何故か寄り添ってきた友奈が、上目遣いで見つめてくる。

 

「椿先輩...」

「あぁ、友奈ちゃん......つまり、私が古雪先輩を射止めれば、友奈ちゃんもついてきてくれるのね...」

 

なんだか話の雲行きが怪しくなってきた。右手は友奈に腕ごと組まれ、左手は東郷に握られる。

 

「古雪先輩っ!!」

「椿先輩!!」

「え、えっ?なんで俺中心になってるんだよ?」

「つっきー分かってないなぁ。そんなの皆つっきーの事が」

「「園ちゃん(そのっち)勝手に言わないで!!!」」

「じゃあ流れで言っていいの?薬の力で言っちゃって。私ちょっと後悔しそうだったけど」

「「......うぐぐぐぐ」」

 

その後も周りは騒いでいたが、俺は左右の花に意識をもってかれないよう努力するのに全神経を使っていて全くついていけなかった。

 

 

 

 

 

(なんか、全然運動してないのに疲れた......)

 

周りが可愛すぎるだけあって、誘惑じみた行動をされると冷静になるだけで苦労する。

 

「椿先輩...」

「ん?どうした友奈」

「あのですね...さっき撮ってた動画、見る前に消してくれませんか」

「でもデータとして」

「古雪先輩、私からも何卒...資料として纏めるのは自分達でやるので!」

「お、おう...わかったよ」

 

元々断ってもいいと言ったのだから、別に構わない。

 

「私は、やっぱりやめておくわ...こんなの見てやりたいとは」

「ぐんちゃん、やらないの......?」

「...古雪君がいないなら」

「あはは...分かった。じゃあ今日は帰るから」

 

確かに服用者が一番絡んでるのが俺である以上、俺が消えれば変化があるかもしれない。

 

「じゃあ東郷、動画撮っといてくれ。お前らのは見ないで送信したら消すから」

「絶対ですよ...?」

「わかってるって。じゃな」

「つっきー、私も一緒に帰るよ~」

 

空っぽになった瓶を鞄にしまい部室を出ていく俺と、それについてくる園子。

 

「はい、あーん」

「あー...あぁ、た、高嶋さぁぁん!!!」

「ぐんちゃんおいで...うん、幸せだよこれ」

「始まったみたいだな」

 

どんどん遠ざかっていく声を気にすることなく歩き出す。今日はバイクじゃないし外に出たらそのまま校門まで向かえばいい。

 

「にしても、大赦のとはいえ実験段階なだけあって散々な物だったな」

「結構うまく出来てると思うけどな」

「そうか?」

「うん。でもつっきーはそのままでいてね」

 

微笑む園子はそれ以上話すつもりがないようで、俺は首を捻ることしかできなかった。

 

「もう少し簡単でもいいけど......ね」

 

 

 

 

 

後日。俺は東郷から簡単に纏めて貰った資料に軽く追記し、春信さんに渡す。素直な気持ちを出す効果があるのか、欲望に従った行動をさせる効果があるのか、矛盾点も含めて幾つかのせ、最終的には不明として提出した。

 

最後の一文『勇者部に依頼するときは俺を経由しないでするか、頼まないでください』と本心を添えて。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「ふぁぁ...」

 

今日はなかなか大変だった。椿さんが大赦から依頼されたという薬の服用実験、その被験者一号の私は、効果が出た瞬間動揺した。

 

目の前にいる彼に抱きつきたい、キスしたい、それ以上にもっともっと__________と、思ってしまったから。

 

(私、あそこまで......)

 

でも、薬の力で大事なことをしたくなかった。我慢しなければと椿さんの手だけで満足しようとしたら、次には舐めとっていた。

 

『ひなた!?』

 

そのせいで近い距離にいた椿さんに耐えられず。部室を飛び出して見つけた若葉ちゃんに激しく抱きついて時間を使い、効果が収まってから若葉ちゃんに謝罪して帰った。

 

『ひなた?大丈夫か?』

『はい。すみません若葉ちゃん』

 

素直な感情を出す______己の欲望を解放することに近いのだろう。とはいえ、あそこまでとは思っていなかった。

 

あれだけ強力だったのは薬の効果なのか、それとも溜め込んでいた私自身の感情が大きすぎたのか。

 

(どっちみち、はしたない子だと思われてなければ良いのですが...)

 

寝る前に自分の髪を整えながら悶々としていると、携帯から音が鳴り出した。電話が来た際に鳴るよう設定してある音声で_______

 

「!もしもし?」

『もしもしひなた?今いいか?』

「は、はい。後は寝るだけですが...どうかされましたか?椿さん」

 

電話の相手はさっきまで考えていた椿さん。思わず声が上擦ってないか確認したくなる。

 

『さっき若葉から、お前の様子がおかしかったって連絡が来てな。ひなたは本当に辛い時は私に隠すことが多いから心配だって言ってたぞ』

「若葉ちゃんが...」

『薬飲んだときも変だったし...無理してないか?』

 

若葉ちゃんへの愛が深まる一方で、私の悩みも消し飛んでいた。

 

「えぇ。上里ひなた、問題ありません!」

『そっか。ならよかった』

 

(だって、そんな優しい声の裏で、私のことを『はしたない奴』なんて思ってるわけないですもん。ね?椿さん)

 

こうなると不安感は消え、好きな人が夜に電話をかけてきてくれる状況にドキドキしてくる。

 

『寝る前に邪魔して悪かったな。おやすみ』

「え、椿さん!?」

『どうした?』

「あ、いえ、その...よろしければ、もう少しお話しませんか?」

『ひなたが良ければ』

「!ありがとうございます!」

 

その日は結局、日付が変わって少しするまで話した。内容は別段特別なものじゃなく他愛もない日常ではあったけど、通話を終わらせてすぐ寝付けないくらいには興奮していた____嬉しかった。

「......おやすみなさい。椿さん」

 

良い夢を見れますように。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。