古雪椿は勇者である   作:メレク

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花結いの章、終わっちまったよ...アプリとしては全然終わらないんで、今後もお世話になります。

こっちの作品としては、予想していた結末とだいぶ違ったので色々頭の中で構想したり、珍しくメモ書きしてストーリーを立てたりしてます。もし投稿するとしてもだいぶ先ですね。ひとまずリクエストもまだまだ受けつけてます。

今回は祈願花さんからのリクエストです。気づけばゆゆゆい編も30話...他の長編と同じくらいになってきた。


ゆゆゆい編 30話

「視線を感じる?」

「はい...」

 

いつも春信さんと会うファミレス。しかし、目の前に座って視線が下がっているのはあの人ではない。

 

「気のせい、だとは思いたいんですが、ここ一週間程度ずっと見られているようで......」

「うーん...」

 

深刻そうに語る相手は東郷美森。勇者部部員にして一つ年下の後輩だ。

 

「何か手がかりはあるか?」

 

彼女の話を簡単に纏めると、ストーカーに付きまとわれている感覚がそれなりに長い期間続いているらしい。

 

「え...」

「どうした?」

「いえ、ここまであっさり信じてもらえるとは...冗談くらいは言ってくるかと思ってました」

「別にお前が嘘つかない性格なのは知ってるしな」

 

加えて言うなら、ドリンクバーで取ってきた烏龍茶のコップを持つ手が少し震えてるのを見た時点で、事実であろうとなかろうと心配するし対処する。

 

「怖がってるのを見過ごせる筈もないし」

「......ズルいです。そんな言い方」

「先輩はズルいもんよ」

「そういう意味では...いえ、なんでもありません」

「?まぁいい。それで?例えば何してる時とか、誰かと一緒にいる時に見られるとか、ないか?」

「いえ。えぇと、実は勇者部の誰かと一緒にいる時によく感じてたんです」

「あぁ、だから俺以外誰もいない状態で相談したかったわけね」

「はい......」

 

今回は東郷からこの場所を指定されていたが、他の誰かを狙っているかもしれない相手だとしたら、そいつら自身に知られるのは良くないかもしれない。

 

自覚してるならともかく、そうでないなら不確定な情報で不安にさせてしまうかもしれないから。

 

「そしたらしばらく俺が見張る。東郷の側にいて、それで消えてくれれば御の字。ダメなら正体を探る。それでもダメなら大人しく皆にも相談。こんなところでいいか?」

「はい。ありがとうございます!」

「このくらいどうってことない。悩んだら相談だ。どんと甘えてくれ」

「...じゃあ、甘えちゃいますね」

 

 

 

 

 

「お疲れ」

「お疲れさまでした」

「はーい。気をつけるのよ~」

 

母親みたいな風の言葉を背に、俺と東郷は帰路につく。東郷に話を聞いてから既に三日が経過していた。

 

(今日はいつも一緒に帰ってる友奈が用事で居残り...逆にこれはチャンスと捉えるべきか?)

 

「なぁ東郷。誰かと一緒にいる時に視線をよく感じてたんだよな?具体的に何をしてたか覚えてるか?」

「具体的ですか?えぇと......一番気になったのは、銀と二人でイネスで買い物してた時、でしょうか」

「ふむ...じゃあ、今日はイネスいかないか?」

「え?」

「手っ取り早く捕まえるために、わざと誘い出す。勿論お前が嫌じゃなければだけど......」

 

怪談好きの東郷だが、まだ中学生の女の子だ。こんなリアルに気味悪いことは精神的にも続かせるわけにいかない。

 

「......まつ」

「ん?」

「週末までは、このままじゃダメですか...?」

 

お願いしてくる東郷の瞳は少し潤んでいた。

 

「全然大丈夫だよ。じゃあ週末空けとくから」

「!はい!!」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「......」

 

日曜日。待ち合わせ場所に指定していたイネスの入口前で、古雪先輩はスマホを見ていた。その顔は少し険しそうに見える。

 

装いは、紺のジーンズに白いシャツ、その上に黒のジャケット。普段は服で隠しているサファイアのネックレスも目立つようにシャツの外に出され、左手につけた赤いミサンガもよく映える。何が言いたいかといえば、普段よりかっこよく見えた。

 

(私服を見る機会は多いはずだけど......いえ!そうではなくて!!)

 

「すみません!遅れてしまいました!!」

「おはよう東郷。大丈夫。待ってないから。大体今だって約束の時間より早いだろ?」

 

そう言ってくれる古雪先輩だけど、私が謝ってるのは今だけの話じゃない。わざわざ今日空けてくれたことだ。

 

だって________古雪先輩と一緒に帰る日数を増やしたくて、先日イネスに行くことを断っているのだから。

 

(私は誘惑に負けて、何を...)

 

つけられているような気分がするのは本当だけど、別にこの前イネスに行くことを止める理由はなかった。古雪先輩は知るわけないけれど、私は今更になって罪悪感が募る。

 

「気にすんなって。俺は気にしないから」

 

私の顔色を見て心配してくださったのか、からから笑ってイネスに歩いていく先輩。

 

「...ありがとうございます」

 

私はその隣にいけるよう、少しだけ早く歩いた。

 

 

 

 

 

「あんま映画館で映画見ないから楽しみだ」

「そうなんですか?」

「テレビの再放送を録画して見ることが多いかな。銀を呼ぶだけですぐ一緒に見れるから」

 

映画館の真ん中辺りの座席に座った私達は、軽い話をしながら上映を待つ。別に二人とも見たい映画があったわけではないのだが、かといって遊技場(ゲームセンター)等に行くこともなく、折角だからと当日券を買った。

 

選んだのは、軍用戦艦に何故か少女達が乗り、戦いに巻き込まれていくというもの。戦艦の写ったポスターをじっと見ていたら、古雪先輩が『それにしようか』と決めた。飲み物もお菓子も買うことなく入り、約二時間。

 

「うん。思ってた以上に面白かった!」

「はい!!」

 

興奮ぎみで映画を見終わった私達は、記念にと戦艦のキーホルダーを買って映画館を後にする。

 

(お、お揃い...)

 

「さてと......!」

「古雪先輩?」

「あぁごめん。じゃ、昼にするか?東郷と行ってみたかった店あるんだよね」

「私とですか?」

「そうそう。湯葉がメインの日本料理屋が新しく開店したんだよ。ほらあそこ」

 

和の趣があるお店が見えて、こんな所が出来ていたのかと目を輝かせる。

 

「いつからあったんですかここ!?」

「確か先々週かな...イネスマイスターなんでね。その辺の把握はバッチリですよ」

 

並んでいたので名前を書いて待ち、約15分。映画の感想を言い合っていたらあっという間で、注文をしてからも同じだった。

 

「やっぱあそこの戦艦のシーンは迫力あったよな」

「はい。一斉射撃の時は音も凄かったです」

「音といい大画面といい映画館だからこそ感じられた作品だったな。いや良かった。東郷に感謝だわ」

「え?私にですか?」

「だってあのポスターの前で止まってくれてなきゃ、別の見てたかもしれないからな」

 

にっと笑みを浮かべる古雪先輩を見て、私は照れ臭くなって視線をそらした。丁度その方向から店員さんが料理を運んでくださる。自分達で湯葉を作って楽しむものと、湯葉あげ。単純ではあるけれど、だからこそ品格があるように感じる。

 

「本当にうまそうだ...早速食べちゃおうか?」

「湯葉ができるまでは掬わないでくださいね?」

「分かってるって。先にこっちのあげてる方食べよう?頂きます」

「頂きます」

 

 

 

 

 

「いや、ハマりそうだった...意外に量もあったし」

「はい...でも良かったんですか?ご馳走になって......」

 

古雪先輩も私も大満足だった。値段が中学、高校生には払いづらい量であることを除けば。

 

「最近節約してたんだが、大赦から逆に心配されてな。他の奴に比べてお金の使用量が少ないって。春信さんにも相談して何日か豪遊しようと思ってたからいいんだよ」

「そうだったんですか?」

「あぁ。節約と言ってもみかんジュースも本もゲームも不自由なく買ってたからそんなことないと思ってたんが」

 

話ながらついた次の場所は書店。調べた所、 先ほど見てきた映画の小説版が販売されているらしく、私も古雪先輩も気になって足を運んでみた。

 

「あ、平積みされてるじゃん...」

「本当ですね。人気作品なんでしょうか...」

「「あ」」

 

買うつもりで来ていたので本に迷いなく手を伸ばすも、同じ場所から本を取ろうとしていた古雪先輩の手と重なった。思わずバッと手を引いてしまう。

 

「そ、そこまでしなくても...」

「!いえ!すいません。ちょっと驚いてしまっただけなので......」

 

恋愛小説にありがちな暗い映画館で手を触れるなんてこともなく、お昼も普通に食べただけだったので油断していた。手が触れただけなのに体が異様に熱い。

 

「...そんな顔すんなよ。からかって悪かった」

「え...?」

 

古雪先輩が頭を撫でてくれている。ゆっくり丁寧に、優しく。

 

その手は女性と比べると確かに少し大きくて、ごつごつしてて。でも凄く落ち着けるし、安心できる。

 

「そんな泣きそうな顔されたら、誰だって分かるわ」

「古雪先輩...わ、悪いと思ってるなら、もう少しお願いします」

「?何を?」

「撫でるのをです!」

 

真下を向いて、しばらく頭を撫でられる。恥ずかしさと嬉しさと幸せな感情でイチゴのように真っ赤になっているだろう顔も、これなら見られないと思いながら。

 

 

 

 

 

「ん~っはぁ!良い休日だった!」

 

夕日が眩しく光るなか、古雪先輩がうんと伸びをする。

 

「また明日から学校か...明日も休みでいいんだがなー」

「ダメですよ。規則正しく生活しないと」

「でも友奈がどうしても東郷と休みたいって言ったら休むだろ?」

「うっ...い、いえ!友奈ちゃんを堕落させるわけにはいきません!」

「ありゃ、勧誘失敗か。じゃあちゃんと行かなきゃな」

 

(もう少しだけ、長く続けばいいのにな...)

 

楽しい一日なんてあっという間に過ぎてしまう。今日も、思い返してみれば一瞬で過ぎてしまったみたいで。

 

(このまま...もうちょっとだけ......)

 

遠慮がちに伸びた手は宙を______切ることなく、寧ろがっつり握られた。

 

「!?」

「東郷、こっち」

 

脇道に連れ込まれて、夕日が見えなくなる。

 

「ふ、古雪先ぱ...」

「喋らないで」

 

更に細い道に入り、肩をがっちり掴まれる。力強くて優しいこの人が男性であることを無理矢理意識される。

 

(え、えぇ!?)

 

一人がなんとか通れる道に二人で挟まる形になり、否応なしに古雪先輩と密着する。見上げたすぐ先にある顔は緊張した面持ちで。

 

「先輩なにを...むぐっ!」

「しっ」

「......」

 

手で口を塞がれる。他にはない。ただ簡潔な命令に私は従った。私はこれから何をされるのだろう_________

 

(そんな、古雪先輩...?)

 

よく見たら、先輩は私のことなどちっとも見ていなかった。鋭い目はひたすら私達が通ってきた細い道を見ている。

 

そして。

 

「あっ!」

「うひゃあ!?」

「捕まえたぞ!!」

 

私の体と接触しながら飛び出した古雪先輩は、そのっちの手首を掴んだ。

 

「そのっち!?」

「あ、あはは~...つっきーにわっしー。偶然だね~」

「バカ言ってんじゃねぇ。昼からずっとついてきてただろ」

「え!?」

「さぁ、洗いざらい吐いて貰うからな」

 

それから、起きた事態を理解できてない私と青ざめた顔をしたそのっちは、古雪先輩に連れられ私の家に帰った。

 

私の部屋で正座したそのっちが古雪先輩に迫られ、ここ数日、私のことをつけていたのはそのっちであることが判明した。小説のネタを補充したくて色んな人をつけ狙い、最後に私にたどり着いたとのこと。

 

(......待って)

 

「つっきー。そろそろ正座辛いかな~、なんて...」

「今回に関してはお前が悪いから我慢しろ。少なくとも頼む相手が違う。東郷怖がってたんだからな?しっかり謝れよ」

「うぅ...わっしー、ごめんね?」

「...はぁ...東郷、被害にあったのはお前だし、今回どうするかはお前が......東郷?」

 

二人の話してることもよく聞こえなくなるくらい、深く思考する。

 

(えっと、うん)

 

まず、何日か私はそのっちにつけられていた。その視線に多少なりとも怯えていた。

 

そして今日、昼頃からそのっちは私達をつけていた。映画館を出た後か、ご飯を食べてからか。

 

そこからさっきまで、私はそのっちから視線を向けられていた筈だ。怯えていた視線をずっと。

 

それを__________今日、一度でも感じただろうか。今日、私をつけ回している犯人を誘き出すためのお出掛けだということを一度でも気にしただろうか。

 

(......それって!?)

 

「東郷?おーい、東郷~?」

「っ!?はいっ!!」

「ひっ!?」

 

古雪先輩の顔が目の前にあって、それが凄い勢いで変わる。まるで目の前に般若でも現れたかのようだ。

 

でも、そんなことを気にしていられるほど、今の私に余裕はない。

 

「と、東郷さん、その...」

「古雪先輩今日はとっても楽しかったですまた是非お願いします!!」

「お、おう?」

「あと銀に連絡しておいてくださいそのっちは今日私の家で泊まるからと!!それでは!!」

「え、あ、おいとうご」

 

古雪先輩を部屋から追い出し、勢いよく扉を閉めた。

 

「はーーっ......」

「...ヘイ、わっしー。私もお帰りの時間がかなーなんて...ひょえっ!?」

 

ゆっくり振り返ると、そのっちは涙目で後退りしていた。

 

「っ~!!!そのっちーっ!!!!」

「お、お、お助けぇぇぇ!!!!」

 

今日一日、周りが見えなくなるくらい古雪先輩に夢中だったという事実から目を背けるため、私はそのっちに襲いかかった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「というわけで、今日園子はそっちに帰らないと思うぞ」

『あちゃー...ついにバレたか』

 

電話先の銀は『分かってました』と言わんばかりの返事をしてくる。

 

「知ってたのかお前」

『まぁね。ネタが足りないー!って叫んでたし。須美がそんな怖がってるとは知らなかったから...ごめん。アタシからも怒っとく』

「いや、それはやめてやれ...流石に園子も反省してるだろうし」

 

外まで届く園子の悲鳴を聞いて、これ以上は可哀想だと思った。俺も東郷に押し出されてはいるが、怖かったのも事実だ。

 

(いや、怖かったと言うよりは驚いたって感じか...)

 

さっき見た東郷の顔は、例えば、秘密にしていた物を見られ、恥ずかしさに耐えながらも『何で見たんですか?』と怒っているような顔で__________

 

(でも、怒るのはともかく恥ずかしくなる理由もないしなぁ)

 

『椿?』

「あぁごめん。とりあえずその報告だけ」

『了解。ありがとね』

「おう」

 

通話を切り、今晩の献立を考えながらも、東郷の珍しい顔がなかなか頭から離れなかった。

 

 

 

 




それから、ソウル(ここな)さんが前話に登場した椿ちゃんのカスタムキャストを、祈願花さんがくの一銀ちゃんのイラストを送ってくださりました!こういうの初めてで本当嬉しい!お二方改めてありがとうございます!!

ツイッターにのっけたので、よければ見てってください!(ハーメルンでの載せかたがいまいち分からなかったので...)下にリンク貼っときます。

https://mobile.twitter.com/mereku817/status/1102711387954921473/photo/1
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