古雪椿は勇者である   作:メレク

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いつもなんですが、凄い感想励みになります。ありがとうございます!なんか今回返信書いてて強く感じたので...いや、ここまでずっと見てくださってるだけでありがたいことなんですけどね。

今回はクロックロさんからのリクエスト回になります。内容はすぐ下を見れば分かるはずです。


ゆゆゆい編 46話

「膝枕」

「ダメです」

「なんでだよぉー!!」

 

銀の声が響く。わざわざ俺の家に来て一番に言われたことに、俺はため息をつくしかなかった。

 

「何?もしかしてそれが目的で来たの?」

 

奥を見れば、杏だけが目をそらした。ひなた、園子はほわほわとした笑みを浮かべたままだ。

 

「だって言ったじゃんか!お花見の時!」

「俺は機会があればと言ったはずだが?」

「機会は作り出すもんだろ!」

「そうですよ椿さん。なかなか椿さんがおっしゃらないから、私達から来たんです」

「ぐっ...」

 

昔からで耐性がついている銀だけならともかく、ひなたもいるとなかなか声を詰まらせてしまう。こっちももうそろそろ慣れて良い頃だとは思うが_____寧ろ過ごす期間が長くなってきたからこそ断りにくくなっているのだろうか。

 

「...後ろの二人は?」

「小説のネタにします!」

「わ、私は話をたまたま聞いて、それで......」

「......なんか、園子はいつも通りで逆に安心するよ」

 

褒め言葉にすらなってないだろう言葉を聞いて、「それほどでも~」と笑う園子。俺はもう一度ため息をついた。

 

(まぁ、うちに来てくれただけマシか)

 

以前桜の花見をした時にそんな話をしたのは事実だ。それが目的で押し掛けて来たなら、不幸中の幸いはわざわざ俺の家に来てくれたことだろう。部室だったらより目立つ。

 

(男の膝枕の何がいいんだか)

 

まぁ、膝枕を良いと思うのは俺も同じなので、強くは言えないのが今日の辛いところだ。

 

「......はぁ。それで、四人だけ?それ以外にいない?」

『?』

「周りの誰かに言わない?」

「言わないと思うけど?」

「それならまぁ...いいよ。やればいいんだろ?」

『!』

「おー!椿が珍しい!!」

 

(なんか、やな慣れだなぁ...)

 

彼女達のお願いに逆らえないと心から思ってる証拠に思えて、少し項垂れる。とはいえ二次被害が生まれる前に対策してやれるだけ成長だろう。そう思いたい。思わせて欲しい。

 

「はいはい。俺の気が変わる前にさっさとやりな。誰からいくんだ?」

 

 

 

 

 

「んー...」

 

一人目の園子は、大人しく俺の膝に頭を乗せていた。小説のネタを頭の中で組み立ててるのか、反応はおぼろげだ。

 

(...)

 

堪能しているようにも見えるが、俺の膝元でそんな顔をしないで欲しい。背中の辺りがむず痒く感じてしまう。

 

「園子、満足かー?」

「えー...まだ五分しか経ってないよ」「じゃあ何分なればいいんだよ」

「少なくとも30分かな」

「そしたら全員やるのに二時間かかるんだが」

「つっきーは嫌なんだ...そんなに私から離れたいんだ」

「っ...」

「しくしく...チラッ?」

「声に出して言う奴があるか!」

「あーれー」

 

両手で顔を隠す割に隙間を開けて俺のことをちらちら見てくる彼女に、頭をくしゃくしゃする。

 

「わぁ~♪」

 

(......なんか、喜んでね?)

 

前から園子はよく頭を撫でると嬉しそうにしてることが多かった気がしたが、今回はえらくにやけていた。

 

(何がいいんだか...というか、少しは嫌がると思ったんだが)

 

「...そ、園子?」

「何でやめちゃうの?」

 

少しして手を動かすのを止めると、その手を園子が繋いできた。

 

「ねーねー、どうして?」

「いや、どうしてって...そんなにやって欲しいのか?」

「...ダメ?」

「......」

 

手から彼女の温もりを感じながら、俺はまた一つため息をつく。

 

「ダメじゃ、ない」

「!!やったぁ~!」

 

露骨に喜び出す園子を見ると、尚更ダメとは言えなかった。

 

(俺、甘々だ...)

 

せめて顔に出てないことを祈りながら、俺はまた手を動かした。さっきより優しくなるよう気をつけながら。

 

 

 

 

 

 

「で、あれを見て、見られながら、まだやるの?」

「じゃあそのまま帰ると思ってるの?」

「......」

 

もうため息をつくことすらせず、膝に乗ってる銀の頭を撫で回した。こいつには撫でるにしても気を使うつもりはないので、髪が崩れるまでやってやる。

 

「もうちょっとゆっくりね...ん、そうそう。椿にもやってあげようか」

「もうそんな年じゃない」

「えー。年なんて関係ないでしょ?アタシはずっとやって貰う予定だけど」

「そんな予定は捨てとけ」

「い、や、だ!」

「...」

「へへっ」

 

いたずらが成功した時みたいに笑うこいつを見てると、いつも不思議と納得させている自分がいつもいる。それだけで安心感が芽生えるというか。

 

まぁ、生まれてからいない時間の方が短いくらいの間柄であれば、いない方が不安になるのも仕方ないだろう。

 

「おーい」

「ん?」

「んじゃない。ちゃんと心を込めて撫でるべし」

「...はいはい」

 

言われた通りにやれば、彼女はゆっくり目を閉じる。

 

(...変わったようで、変わらないようで)

 

寝顔は昔より凛々しく思う。でも、あどけない感じというか、可愛らしい感じというか、そういったのも残ってるように思う。

 

前よりしっかりと重みがあって_______いや、太ったとかではなく__________存在を感じられる重さ。

 

曖昧で言葉にしにくいそれを表すなら。

 

(......幸せ、かな。ただぐーたらさせてるだけなのになぁ)

 

「椿」

「はいはい。すいませんね」

 

また指摘され、今度こそ俺は銀を撫でることだけに集中した。

 

 

 

 

 

「お前ら、昼どうするんだ?今人数分揃えられるのカップラーメンくらいしかないけど」

「じゃあそれで。いつもの所でしょ?」

「ん」

「はーい」

「私はお湯沸かしとくね~」

「私は...お皿を!」

「いや皿はいらんぞ。杏」

「わ、私だけ何もしないのも」

「杏さん、私も何もしてませんから」

 

膝元にいるひなたはそう言って、「んー」と声を上げる。

 

「テレビでもつけるか?」

「い、いえ、平気です...」

「じゃあ、タマ坊メインの新作読む?」

「読みます!!」

 

凄い勢いで食いつく杏に苦笑しながら、俺は真っ直ぐ前を見た。

 

「......」

「......」

「...あー、カップラーメンで良いのか?皆」

「たまには悪くないでしょ」

「というより、つっきーのお家に何もないのが珍しいかも」

「今日買いにいく予定だったんだよ」

「そっか~」

「......じー」

「......なんすか、ひなたさん」

 

視線だけでなく声までつけてきたので、俺は下に目線を向けた。ひなたはこの体勢になってからずっと俺の顔を見てたのだ。

 

膝枕されてる時、見上げるのは特に何も思わないが、する側で下から見つめられてると、どうにも気恥ずかしさが生まれてくる。

 

「やっとこっち向いてくれましたね?」

 

嬉しそうに微笑むひなたと目を合わせること、数秒。

 

「...」

「あっ、これでは何も見えませんよ」

「見せないようにしてるんだから当たり前だろ」

 

俺は彼女の目に被せるように手を置いた。

 

「酷いです。椿さんは意地悪ですね」

「...仕方ないだろ。変な気分になんだから」

 

心臓の動きで全身が揺れてないか心配になるくらいには緊張してるし、冷静じゃない。もう三人目だからというのもあるだろうが。

 

絶対聞こえないだろう、口パクでしかないと思われるだろう呟きは、やっぱり返事等なく。

 

(...つい言っちゃったけど、聞こえなかったみたいだな。よかった)

 

「...椿さん」

「ん?」

「手、外して頂けませんか?もうじっと見ませんから」

「......程々にな」

「はい」

 

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

今日、始めは、そんなに乗り気じゃありませんでした。

 

『そうだ、あんずんもくる~?』

 

園子先生と通話した時、たまたまあがった話題。あの椿さんに膝枕して貰うというもの。

 

『人数多すぎると一人辺りの時間短くなっちゃうけど、一人くらい平気だよ~。私もついでのメンバーだし』

 

そう言われれば、行かない理由は何もない。ただ、私の心は少し微妙だった。

 

(椿さんが...男の人が膝枕する側かぁ)

 

恋愛小説にも、膝枕するシーンは沢山ある。仲良くなるための過程だったり、喧嘩してボロボロになったのを介抱する時だったり、単にイチャイチャする時だったり。

 

でも、大体共通してることはある。それは、されるのが男の人で、するのが女の人だ。

 

勿論例外はあるけど、大抵ヒロインが膝枕して、彼を甘えさせたりする。沢山見てきたからこそ、その逆は_____あまり無いように思ってしまった。

 

正確には、思ってしまっていた。

 

(こ、これは...)

 

「なぁ、杏」

「はいぃ!?」

「いや、そんな緊張されてるとやりにくいんだが...」

「べ、別に緊張なんてしてませんよ?」

「うっそだろお前...ガチガチじゃんか」

 

目の前に見える椿さんは、若干呆れた様子で手を伸ばしてくる。それが少しだけ怖くて目をきつく閉じた。

 

「ぁ...」

「はい。よーしよーし」

 

頭を撫でてくれている手は普段以上に優しくて、暖かい。

 

「これが、沢山の女の子にしてきた膝枕の力...」

「すげぇ言い方されてない?ねぇ、それ悪意ない?」

 

私の心変わりは一瞬で、もっと撫でてと思ってしまう。もっと欲しいとねだってしまう。

 

(これは皆さん、やって欲しいとお願いしますよね...)

 

でも、ここまで安心した気持ちになれるのは、絶対、やってくれてるのがこの人だから。私の好きな人だから_________

 

「......椿さん」

「ん?」

「...もっと、撫でてください......」

「仰せのままに。お嬢様」

 

その態度は、まるで本に出てくる執事のようで__________いや、私はそんな難しい想像を全部捨てて、もう一度、ゆっくり目を閉じた。

 

(今はただ、この瞬間を......)

 

ずっと続いて欲しいと願いながら。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「すー、すー...」

「完全に熟睡だ。こりゃ」

 

膝枕を始めてすぐ、杏は寝てしまった。

 

「可愛い寝顔だねー」

「膝枕されて寝てしまった椿さんみたいですね。ほら、見てください」

「ひなた、その写真コピーしてくれる?」

「おい前ら。というかひなたは許可なく撮るな」

「許可があったらよろしいのですか?」

「どうせ断ってもやるだろうから止めはしない」

 

以前見た過去のメモリーカード(今のひなた達にとっては未来となるメモリーカードだが)にも、明らかに盗撮だと分かる物も沢山あった。自然体の皆が見れて確かに嬉しかったけど、そのせいでひなたはそういう奴だと分かっている。

 

(全く...にしても俺、膝もつかなぁ)

 

昼休憩は挟んでいるが、既に二時間近く膝枕している。おまけに今頭をのせている彼女は眠ったまま。

 

(すっと立てるといいんだが)

 

心配はするも、彼女を起こしてまで動こうとはまるで思わない。

 

(さて。杏はいつまで寝てるかね)

 

俺自身の膝枕に利点があるのか未だに疑問だが、こんなに安らかな寝顔をしてくれるくらいには、良いのだろう。

 

 

 

 




椿に撫でられるのが一番好きなのはそのっちだと思います。出会った頃からやられてますし。

ちなみに膝枕の約束を取りつけてるのは、ゆゆゆい編33話になります。
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