今回はmegane/zeroさんからのリクエストです。ずっと雪花さんだけ書いてたので久々だぁ...
『レクリエーションがしたい?』
『うんうん!!そうなんだよ!!』
そっくりそのまま返した質問に、言ってきた球子がブンブン頭を縦に振る。
『別に、俺に聞かなくてもいい気が...』
『そうか?園子に聞いたら椿にはちゃんと確認とっとけって』
『......確かに園子が関わってるとなると少し嫌な予感はするが。ちなみに内容は?』
『えっとな__________』
球子の言うことを脳内で軽くシミュレーションして、俺は結論を出した。
『ま、良いだろ』
『本当か!?』
『嘘はつかないって』
『よっしゃあ!じゃあ決まりだな!』
そして、そんなやり取りから二日後。
「じゃあいくよ~?」
「どんとこーい!」
『王様だーれだ!!』
テンプレな台詞と共に、王様ゲームが始まった。
一応、王様ゲームの簡単なルールをおさらいしておく。
人数分のくじを用意し、参加人数から一人分引いた数字を書いていく。残った一つには王冠でもなんでも良いが、特別なマークをつけておく。
準備が出来たら全員でくじを引き、特別なマークを引き当てた人が王様となる。王様は基本的になんでも命令することができ、数字で相手を指名し命令を下す。例えば『16番は15番の良いところを言う』みたいな感じだ。
相手の名前ではなく番号にすることでランダム性を持たせ、いつ当たるか分からないドキドキも与える。
利点としては大人数でも比較的簡単に出来る上、いつ指名されるか分からないか以上、参加してるけどただいるだけという感覚を持ちにくい。
当然利点、メリットがあるということは、デメリットも少なからずあり。
「あ、私だ!」
「じゃあ友奈!最初の命令しちゃいなさい!!」
「はい!」
風の言葉に頷いて友奈が「んー...」と悩みだす。
そう。このゲームの特徴は、王様の命令として言うことは基本従わなければならないということ。勿論これがないとゲームそのものが成り立たないが、内容は王様に一任されるのだ。
周りの状況だったりにもよるが、誰かが嫌な思いをする可能性も十分存在する。
(今回で言えば......)
俺の隣を確保している人間は乃木園子。ちらりと見て、目線を戻す。
例えば園子が自分のメモ帳を書き進めるためにすんごい命令をしてくる可能性はある。皆が本気で嫌がるようなことは言わないだろうが、疲れそうなことを言ってきそうなのは感じる。というか言わない方が違和感があった。
(こいつ発案ってのがもうヤバい予感がするけど...)
更に今回の俺個人の話で言えば、いつものように男女比が言えるだろう。
女子同士なら大したことない命令が出やすい状態で、抱きつきとかが出るかもしれない。しかし、俺が誰かとすることになったら気まずくはなるだろう。
そうした意味で、かなり不味いのは確かだった。
だが、その条件が分かった上で参加した理由も勿論ある。
「...ちなみに椿先輩、何番ですか?」
「いや、それ答えると思うか?」
「......」
「そんな目で見てもダメ。ゲームにならないだろうが」
「じゃあ...5番の人が16番の人の頭を撫でてください!」
友奈がそんなことを聞いてきたのは少し意外ではあったものの、問題なく進む。
「あ、タマ5番」
「私が16番ね」
「おー。じゃあ芽吹、いくぞー?」
わしゃわしゃーと撫でられる芽吹と満足そうに撫でてる球子を見て、俺は一安心した。
(やっぱり...)
俺がすんなり受け入れた理由は、ただ参加人数が多いからである。
今の勇者部は20人を優に超えている。その分王様になる確率は減るが、別に俺の目的は王様になることではなく、皆と楽しむことだ。
指名されることがなくても参加はしてるし、もし広範囲の命令が、例えば『全員王様の良いところをあげる』とかがあっても、内容はどうしても簡単なものになってしまう。そのくらいなら心の許容範囲である。
詰まるところ、皆で楽しむことと自分の心労の可能性を天秤にかけ、前者を取っただけだった。
「ふー。満足だ!」
「流石に雑じゃないかしら...」
「そうだったか?すまんすまん」
「......まぁ、いいわ」
いつの間にか終わった二人を合図に、またくじを戻していく。今回は割り箸を使っているため、縦長の缶に割り箸を突っ込んでいくだけ。再度掛け声が放たれ、俺達はくじを引き直した。
「次は誰だ!」
「私だな」
「若葉か...」
「命令か。そうだな...2番の人は、明日私の鍛練に付き合ってもらおう」
「えぇ!?」
「みーちゃん、ファイトよ!!」
驚いた水都は咄嗟に歌野を見たが、歌野自身はグッと親指を立てるだけだった。
(水都、大丈夫かな...)
若葉の鍛練に巫女が付き合う姿を想像出来ず、代わりに別のことが思い浮かぶ。
「ていうか、後日に回せる命令ってありなのか?」
俺の気持ちを代弁するように、雪花が口を開いた。
「うーん...いいんじゃないでしょうか?無理のない範囲でしたら」
「私が若葉さんの鍛練に付き合うのは無理のない範囲......?」
「す、すまん水都。ダメなら撤回を」
「いやダメだ!!例外作るのはこれからゲームしにくい!」
「う、うーん...」
球子の言うことは確かだったわけで、悩む若葉と水都を見て、俺は手をあげた。
「ひなたの監視をつけて水都が無理しない程度で付き合ってもらえば?若葉が軽いメニューで済まそうとしても、水都にとって軽いとは限らないしな」
「椿...そうだな。ひなた、水都、それでいいか?」
「私は構いません♪」
「わ、私は...頑張ります!」
「よし...ありがとう、椿」
「いいよ。うまい落としどころになったみたいでよかった」
「じゃあ、続ける?」
「賛成です!!しずくさん!」
「ん。了解」
俺達はまた、誰からともなく割り箸を戻す。王様ゲームはまだ始まったばかりだった。
そして。約一時間が経過。
(......)
俺はひたすら無心でくじを引いて、目を閉じて合図を待っていた。
『王様だーれだっ!!』
(落ち着け。明鏡止水の心を保つのだ)
手元の番号は3。
「あ、私だ~」
「園小ね。じゃあ命令をどうぞ!」
「ん~と...じゃあ、6番の人が19番の人に愛を囁いてください!」
「私が...」
「私を...?」
「はい~!」
声をあげたのは樹と夏凜。園子ちゃんの目は相手が分かった途端輝きだした。勿論園子とセットでメモの準備もしている。
「あんた達そのメモ帳しまいなさい!全く...樹、軽くでいいわよ」
「...そう言われると激しくやりたくなりますね」
「ちょっ!?」
記憶的には五年くらい前の、勇者部に入ったばかりの彼女だったら絶対しないだろう嗜虐的な笑みを浮かべた樹が夏凜に近づいていく。
「ふーっ...」
「い、樹っ!?」
「夏凜さん、反応可愛い...じゃなかったですね。よし...夏凜さん、愛してますよ」
「ふわわぁ!?」
「「ビュオォォォ!!!!」」
(...ありがとう園子ズ)
それなりに遠かったのにはっきり聞こえた樹の声と、夏凜の真っ赤な顔と反応に明鏡止水の心は完全に揺らいだものの、すぐさま二人が大声をあげてくれたので正気に戻れた。
(てか夏凜。そんな顔で見ないで)
何故か潤んだ瞳でこっちに助けを求めてくる夏凜を見て、見てはいけないものを見てる気分になってしまった俺はそっと目をそらした。視界の端で驚いた表情をし、どことなく赤みも増している気がしたが、それは多分気のせいである。
(いやいや。落ち着け。俺)
今日の下校時間までを考えると、遊べる時間は大体後30分。半分以上の時間プレイしてきたわけだが、俺は一度も命令せず、命令されていなかった。ちなみにそんな人間は俺だけである。
だからこそ、いつも以上に冷静さが必要なのだ。
(大体ここで『勝ったな』とか『やったか』とか言うのはフラグ。冷静さを保ち、このまま乗り切ればいい)
まぁ正直、今の愛の囁きとか壁ドンの時もっとやってるしとかは思ったが。またやるのは精神的な消費カロリーが大きい。
「...あたしの妹ってあんなだったっけ?」
「アタシに聞かないでくださいよ...成長ってことで良いんじゃないですか?」
「成長...まぁ何言っても変わらないか」
「はいはいそこまで!時間も少なくなってきたし、ちゃっちゃと行くぞ!」
(一度も何もしないってのは遊びに混ざれてるのかどうなのか...)
そういう意味では、序盤の奴に当たっとくのがよかったかもしれない。運だから何か出来るわけでもないが。
(過激派にはそこまで当たらないしなー...)
「つっきー」
「ん?」
「どうぞ~」
「あ、ありがと」
発案者で何か企んでそうだった球子は王様になってないし、杏も園子もなってない。
「全員渡ったわねー?じゃあいくわよ...」
『王様だーれだ!!』
「あ、俺だ」
園子に回された一本の割り箸には、ちょっと小さめな字で『王』と書かれていた。
(どうしよ。なんも考えてない)
「椿さん、何を言うんですか?」
「そうだな......8番と10番がハグで」
パッと思い浮かんだ命令で被らないものを選らんだ結果、口にしたのはそんなことだった。自分じゃないと分かってれば平気である。
「私だ!」
「た、高嶋さん!?」
「もしかしてぐんちゃん?じゃあはい!ぎゅー!!」
「あ、あぁぁ...!」
どうやら結果はユウと千景だったようで、部室で割りと見る光景が展開された。
「もういいぞー」
「えー?もうちょっとしたいです王様!」
「じゃあ二人が気がすむまでやってていいから、くじだけ戻してくれ」
「はーい!」
「...古雪君」
「ん?」
「......」
俺以外に見えないようにしながら親指を立ててくる千景に、苦笑いで返した。
(まぁともかく、これで参加もしたし完璧...)
「じゃあ、次いくわよー」
「そういえば古雪さん、今日初めてゲームに参加しましたわね」
「くじなんだから仕方ないだろ、弥勒」
「ふふ...ではこの弥勒夕海子が古雪さんに命令をしてみせますわ!」
「そんな張り切らんでも...」
弥勒さんにそう言われると、逆に安心できた。絶対これから王様にならなさそうで_____________
「私ですね...じゃあ11番の人が12番の人を抱きしめてください!!」
「弥勒ぅぅぅぅ!!フラグ立てるからぁぁぁ!!!!」
「え!?ちょ、やめてくださいまし、揺らさないでっ!?」
弥勒『は』王様にならなかった。しかし、バッチリ俺は命令された。見事なまでの爆速回収である。
(いや、まだ勝機はある!!)
「...杏。俺がやってもいいのか?男だが」
王様である杏へ直談判し、命令内容を変える。これならまだ__________
「つっきーダメだよ。女王様の命令は絶対なんよ?」
「そうだぞ椿ー」
「私は椿さんなら大丈夫だと思いますが...それに、椿さん自身がさっき命令してましたし」
「......ぁ」
言われて、整理する。
王様の命令の変更はゲームのルール上しないのが良い。そして、ついさっき俺自身がその命令をしたことで、周りがその命令を下すことへのハードルは低くなっていた。
つまり、自分で墓穴を堀り、これ以上何か言うのは空気が悪くなってしまう。
(......自分で首を絞めたのは俺かぁ!!)
恐らく、俺の目はハイライトがなくなった。
「椿先輩...」
「ん...!」
「そんなに、嫌でしたか...?」
後ろを振り返ると、少し涙目の亜耶ちゃんがいた。恐らく12番、俺に抱きつかれる人なんだろう。
(そんな顔しないでくれ...)
一瞬で凄い罪悪感を受け、その奥に見える鬼の様な形相をした芽吹に恐怖に塗りつぶされた。
「いや、そんなことはないよ。ごめんな...」
「いえ...」
(...えぇい。覚悟をきめろ)
「...杏、俺から抱きしめればいいんだな?」
「は、はい!」
「うん。メモは出さないでね。園子達もだけど...じゃあ亜耶ちゃん、大丈夫?」
「はい!いつでもどうぞ!!」
そう言って手を広げて構えた亜耶ちゃんは、それでも簡単に押し倒せてしまいそうなくらい儚く感じられて。
「じゃあ、いくぞ」
だから俺は、壊れ物を扱うように優しく抱きしめた。
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「つっきー、つっきー」
「園子...?」
「終わったよー」
体育座りで目を瞑り耳を塞いでるつっきーはちょっと可愛かったけど、私の言葉を聞いた途端、いつも通りに戻った。
「はぁ...球子...」
「あっはっはー!!すまんすまん!!」
「......」
(タマ坊、明日の朝日を拝めるのか素直に心配なんよ...)
王様になったタマ坊が下した命令は、『王様がマウンテンする!(意訳)』だった。指名した番号はなんとわっしー。
察したつっきーは自分から防衛行動を取り、命令が終わるまで動かなかった。ちなみに嫌々ながらも命令は実行され、わっしーは今から雷を落としても不思議に思わない顔をしている。
_________メモの取り甲斐があるとか思っても顔に出してはいけない。流石に消される。
(今日はもう十分取れたから大丈夫...引き際を間違えないのは大事)
「と、東郷さん...きょ、今日は一緒に寝よ!ね!?」
「友奈ちゃん...」
危険を感じ取ったゆーゆが最高の精神安定(メモの加速)をしてくれたけど、それでも心配だった。
(わっしーなら夜中数分で片付けるとかありえ...ないよね?大丈夫だよね?)
「次!次いきましょう!!ね!?」
「...そろそろ時間だぞ」
「じゃあ、これで最後ですね」
同じく敏感に危険を悟ったちゅん助にアッキー、ひなタンのコンボでラストになった。こうなったら素早く帰りたいのでありがたい。
「あ、私だ」
「いや早いわ」
「えへへ...ごめんね、引き直す?」
「...そのままでいくか?」
「私もそのままで良いと思います」
引いた時に見えてしまった王様の印は、つっきーの進言ととイッつんの判断で私の手元に残った。
「じゃあ一応全員でな」
『王様だーれだ!』
「私!!」
「知ってるよ...最後の最後で王様になったな」
「園子さんおめでとう!」
「ありがとう~」
「んで、命令は?」
「えーっと...そうだね~」
私の心は揺れていた。理由は、今隣にいるつっきーが原因だったりする。
円を作って座ってるこの並びは、今日部室に入ってきた順番だからあまり関係なかった。元々運を使ったゲームでもあるし。
ただ、問題は________アーヤとハグして動揺し出したつっきーが、ずっと番号を私に見えるような状態にしてしまっていることだった。今も、つっきーが引いた7番が私の視界に映る。
つっきー自身に見せようとしてきる気は全くなくて、自分が番号を把握した後の置き場所がたまたまそうなっちゃっただけだろう。
(うーん......)
今日はもう王道ペアから意外なペアまで、もう十分に堪能させて貰った。新作小説のネタには全く困らない。タマ坊の提案に二つ返事で乗った甲斐があった。
しかも今なら、偶然を装ってつっきーを名指しした命令が出来る。当然、バレてないだけで王様ルールでは反則ではあるけれど。
運も実力のうちとはいえ、これは良いのか。
(...やっぱりやめといた方が)
「園子?」
「はいぃなんでしょ!?」
「いや...そんな悩んでる?」
『一体こいつはどんな凄い命令をするんだろう』みたいなことを考えてそうなつっきーの顔が、すぐそばにあった。
(...やめてよ)
本当にやめて欲しい。心の奥が疼くから。
(つっきーの考えてること、このくらいなら簡単に分かっちゃうって、喜んじゃうから...もっと知りたいって思っちゃうから......)
「そのっち?」
「んなぁー!!!」
「!?」
私は大きく声をあげて、そのままの勢いで叫んだ。
「ラッキーセブン!!今度王様とお出かけ決定!!!」
『なぁ園子』
「んー?」
『今更なんだが...良いのか?わざわざ命令で出掛けるなんて、そんなの普通に言ってくれればいくらでも......』
「つっきー」
『ん?』
「そんな簡単に受けるから来週の予定までほとんど埋まってる人になるんだよ?」
『......はい』
私は自分の部屋で、つっきーと通話していた。電話をかけてきたのはつっきーからで、日時をどうするかを話したいと言われ__________
「ゆっくり休めてる?」
『夜は寝てるというか、強制的に寝落ちさせられるというか...』
「?」
『まぁ睡眠時間は取れてるし、一日空いてる日がないだけで午前か午後は空いてるとかあるからさ』
結局、デートの日は大体半月後に決まった。内容はまだ何も決めてない。
『別に他の予定を蹴らせるわけでもないし、命令にしなくても...』
「そっかー。じゃあどんな命令しよっかなー。7番だけ分かってるけどなー」
『女王様!!私(わたくし)全力で同行させて頂きますので!!!』
「ふぉっふぉっふぉ。そうかそうか」
『それだと女王様というより王様だな...』
「園子ー。風呂あがったぞー」
「分かった~。つっきー聞こえた?」
『聞こえた。じゃあまた明日な』
「お風呂でも通話しないの?」
『しないわ。銀としてくれ』
「うん...じゃあ、おやすみ」
『あぁ。おやすみ』
通話を切ると、しんとした空気が部屋全体に伝わった。
「はぁー...」
「園子ー?」
「聞こえてるよミノさん」
「いやそれは知ってるけど...風呂入らないの?今なら暖かいぞ?」
「その前に...濡れた髪をこうだー!!」
「あぁ!?やめろ!こらぁ!」
「拭くのが面倒だからってぇ!ちゃんと洗面所で拭いてこんかい!!」
「何キャラだそれぇ!?」
何とかミノさんに後ろを向かせ、髪を拭いていく。
「ちゃんと伝えたらドライヤーとかも使ってやる気だったんだが!?」
「よいではないかーよいではないかー」
「あーもう...好きにしろぉ」
結局、しばらくはそのままだった。
だらけた顔を何とか普段の顔に戻せたという自信を得るまでは、そのまま。