あと、先日出たレンちの新イラストが個人的ツボに刺さって思わず叫んでしまった。見てない方は是非。ゆゆゆいアプリで出るまで見ないという方はガチャ頑張って下さい。
野球部と陸上部が仲良く使ってるグラウンドは、穏やかな風のせいで立ってるにも関わらず眠たくなってきた。部員達の掛け声や走っていく音が無ければ、ベンチに座って気持ちよく寝れるだろう。
「ほら起きなさい」
「寝てない」
しかし、それは隣から放たれるチョップのせいで叶わなかった。すぐ返答しても「はいはい」と言われるだけで信じてはなさそうだ。
「寝ぼけたまま言ってないで、行くわよ」
「はーい...」
あくびを噛み殺し、まるでグータラな弟を注意する姉のように振る舞う風に続いて歩きだした。
「あたしは野球部に聞いてくるわ」
「じゃあそのまま陸上部も頼む。サッカー部行くから」
「了解よ」
グラウンドから少し離れた場所を使っているサッカー部の練習場まで歩きつつ、持っていたクリップボードにある紙を見返した。
「すいません、生徒会の調査で来ました。代表者さんはいますか?」
「あぁ、先生から話は聞いてる。俺がサッカー部の部長だ」
いかにも運動が得意そうながっしりした体格の部長さん(恐らく先輩)と軽く話をすると、想像よりスムーズにいった。
元より世間話なんてのはいらない。部長さんは練習に戻りたいだろうし、俺も長居するつもりはさらさらないから。
「では最後に、生徒会への要求などはありますか?」
「要求か...ゴールネットを張り替えたいんだが、そこまで回せる予算がないって先生が言ってたな。通るか?」
「...通るかは分かりませんが、記入はしておきますね」
「通らないのかよー?」
不満げに呟きながら現れた新たな(恐らく)先輩に、俺は笑みを作った。
「自分には分かりません。生徒会メンバーではありませんからね」
讃州高校生徒会。その生徒会室に向かったのは俺と風だった。
「先日勇者部へ送られた依頼、自分達二人で協力させて頂きたいと思います」
「ありがとう、助かるよ」
この間俺達宛に来た依頼は、高校にある各部のアンケート調査へ出向く人の補充だった。要は色んな所を回る仕事が、生徒会メンバーだけでは人数不足だったということだ。
この中の誰かが讃州中学校の卒業生なのか、一年から聞いたのかは分からないが、依頼をこなす勇者部の話を耳にして依頼してきたんだろう。
高校に来てるのは勇者部には棗も弥勒もいるが、それぞれ別の依頼で中学校に向かってるはずだ。
「じゃあやることはこんなところで...早速お願いできるかい?」
「分かりました。では失礼します」
必要事項と必要書類を受け取り、足早に生徒会室を出る。ざっと見た感じ、サクサク回らないと今日中に終わるのが難しいだろう。
「...どうした?」
「どうしたって?」
「いや、なんかこっち見てたから」
生徒会室でほとんど喋らなかった(というか、俺が全部進めちゃったから喋る必要がなかった)風は、俺からすっと目をそらした。
「んー...年近い人に敬語の椿って珍しいから」
「あー、まぁな」
元々普段付き合いのある人は基本年下だ。比較的近い春信さんは風と一緒にいる時に会わないし、そもそもそれ以外で敬語を使うのは授業の先生くらいである。
「なんかもっとふざけた感じしか出来ないと...」
「さりげなく喧嘩売られてる?別に教室で先生と話してる時は敬語だろ」
「いや、そうなんだけどさー」
「...なら今日ちゃんと見とけ」
廊下を歩きながらそんな事を口にして、俺達の依頼はスタートした。
最初に歩き回る外の運動系部活を回り、生徒会室の近くで行っている部活は後回しにする。体育館の方は生徒会の人が行うと言っていたし、こうすることで予想より早く片付いた人が別の場所へ行きやすいと踏んでのことだ。
そうして俺達はクリップボード片手に歩き回り、野球部、サッカー部を訪れ、さっさと仕事を終わらせた。
遠目から野球部にいないことが分かった俺は、陸上部に目を向ける。案の定風はそこにいた。
「いいじゃん犬吠埼ー。頼むよー」
「何言ってんの。あんた個人の要望が通るわけないでしょ!」
「そこをなんとか!!」
一緒にいるのは、確か中学からの同級生だった気がする。気がするというのはクラスが別だったから記憶が薄いのだ。
「何やってるんだ?」
「古雪か...」
「あー椿。実は何個かハードルがガタついてるらしくてさ。その分予算くれーって言ってるの」
「先生か部長が言ってきたんじゃないのか?」
「先生とはもう話ついてるわ」
「言いそびれたんだよー。でも必要経費ってやつじゃん?あれ足立たせるのに時間かかるんだよー。頼むよ犬吠埼」
「そう言われてもねぇ」
「......」
状況を見て、俺のとった行動はわりかし早かった。
「「え」」
「まずは先生に話してからにしてくれ。他にも行かなきゃいけなくて忙しいからな。行くぞ」
「ぇ、え、ちょっと椿!?」
風の手を掴み、有無を言わさずその場から離れる。次の目的地は校内でよかった筈だ。
「い、いきなり過ぎるでしょあんた!」
「お前が予算上げるって書くつもり無いくせに話し込んでたからな。あそこで付き合ってても長くなるから」
「そう言われると弱いんだけど...」
「それともあいつがハードル立てるまで見守ってたか?それならこの後は俺だけでも」
「うっ...悪かったわ」
「別に悪いなんて思ってない」
手を掴んだのも手っ取り早くあの場を離れるためにしただけで、今は必要ないと離した。手と手の間を抜けるように風が通る。
「ぁ...」
「?どうした?強く握りすぎたか?」
「う、ううん。何でもない。というかそんなにやわじゃないわよ」
「やわいだろ。お前は」
離した手を今度は両手で捕まえてじっくり見た。別段爪の跡が残ったりもしてなさそうだ。
確かに普段家事をしたり、大剣を握ったりしている手だけど、しっかり女の子の手なのだから。
「ちょっ、あんた」
「どうする?念のため保健室いくか?」
「...いいわよ!ほら、次行くわよ!」
「?」
声を大きくした風は、俺の手をどけて前へ歩きだした。
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「では、特に要望はないと」
「そうね。楽器も新調する必要はないし...うん。これ見ても先生の話でも、予算内でやりくり出来るって聞いてるから」
「分かりました。ご協力ありがとうございます」
「いいよ。寧ろお疲れ様」
吹奏楽部の部室で三年生の部長さんと椿のやりとりを隣で聞いていると、部長さんの後ろ側から同じクラスの女子二人が見えた。確かフルート志望だって言ってた子達だ。
『ファイト!』
『風ちゃん負けるな!』
(何に負けるのよ)
口パクではそんな感じのことを言ってるようで、よく分からなった。
「よかったらこの資料持っていく?コピーはあるから」
「そうですね...折角ですし頂きます。セットで生徒会へ渡しますね」
「よろしく......それにしても、一年生で生徒会の手伝いなんて偉いのね」
「今回は頼まれたからですよ」
「そうなの?」
「ボランティアみたいなものです」
「へー...頼めば吹奏楽部の仕事も手伝ってくれるの?」
「するとは思いますが、メインはこの高校ではないので...勇者部で検索をかけてくだされば、ホームページが出るかと」
(......)
「成る程...じゃあ君個人を指名するのは?」
「それは」
「椿、時間」
「ん、悪い...すいません。失礼します。後はそこの二人に聞いてください。同じ中学校だったので」
「...分かったわ。お疲れ様」
椿とあたしは一礼して、部室をあとにした。
「......あの、風?」
「何よ?付き合ってても長くなるって思っただけよ?」
「いや、そうじゃなくて...」
椿の視線に合わせてあたしも顔を動かすと、あたしが椿の制服の袖を摘まんでた。
「っ!ごめん!」
「いや、別に...寧ろ悪かったな」
「い、いいのよ」
椿は本当に気にしてないようで、その姿を見るとあたしも一瞬無意識でとった行動を気にしないでいれた。
「次は...ぁ、今ので一段落か」
「じゃあ一旦生徒会室に戻りましょ」
「そうだな」
距離は近かったおかげでそう歩かず生徒会室について、あっという間に話も終わった。他の生徒会の人が早めに回れたらしい。
こういう会話は変に参加するより椿に任せた方が大体スムーズにいくのは、前々から知ってること。さっきと同じようにあたしは椿を眺めてるだけで大体片付いた。
「っはー!やっぱ仕事終わりにはみかんジュース!」
「あんたいつでも飲んでるでしょうが...」
「それは否定しないがなぁ......っと」
教室に残してた鞄を取りながら答えてくる椿は、急に外の景色を眺める。
「どうかした?」
「いや、ちょっとな」
言葉にするのが難しかったのか、「あー」だの「ぅー」だの言ってる間に廊下を歩く。夕日が窓ガラスを突き抜けて目に入ってきた。
「懐かしいかもって」
「何が?」
「こうして二人だけで鞄取りに戻ったり、廊下歩いたり。勇者部の最初の頃だけだったじゃん?」
「あぁ...」
言われてみれば、こうして学校を静かに歩くのは珍しい気がした。勇者部を作ってすぐはあたしと椿だけだったけど、その後は友奈と東郷が来たし、今は昔と比にならない人数が部室にいる。
「あの頃は依頼も少なかったし、まさか高校になってからも続けるとは思わなかったわ」
「まぁ、普通の部活なら俺らはもう卒業してもいいんじゃないかとは思うが...あ、でも元の世界だと勇者になれなくなったけど行き続けたままだったな」
「やめたくないんでしょ?」
「否定しないが、それで泣きかけてたお前に言われても」
「な、泣きかけてなんかないし!?」
もう大分前のことを覚えてるとは思わなくて、からから笑う椿の肩を強めに叩いた。
「無理のある言い訳はやめな。高校に入ってすぐあんな隅っこで」
「わー!!ワーッ!!!」
「悪かった。悪かったから耳元で騒がないでくれ...」
「全く...っ~」
嫌そうな顔をしているけど、私はそんな顔を見て恥ずかしさが全然とれない。
「普段好き勝手されてる癖に...」
「それは早くても友奈や東郷が来てからだろ」
「好き勝手されてる自覚はあるのね......」
「否定出来ないだろ...特に園子相手とか」
「あたしも園子の真似をすれば椿を振り回せる...?」
「やめろやめろ」
「わっしーミノさん」
「だーやめろって!?園子が増えすぎたら誰が止められるんだ!?」
元々続ける気はそんなになかったので、すぐやめた。
「はぁ...大体、お前だって振り回す時はしっかりやってくるだろ」
「そう?」
「そう」
「あんたも言えたことじゃないでしょ」
「そう...か?」
「そうよ。思い出してみなさい。あの時は__________」
懐かしさがありながらすぐに思い返せるような思い出話に花を咲かせながら、あたし達は学校から外へ出た。
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「ただいまー...入らないの?」
「樹に言ってないんだろ?先に伝えてから通してくれ」
「気にしないと思うけど......」
「着替え中とかだと不味いだろうが。頼む」
「分かったわ」
風と樹が暮らすマンションの扉の前で、俺は体を壁に預けた。どうしても気を使う点は多い。
『買い物しなきゃ』
『手伝うか?』
『いいわよ別に。そんな重いもんでもないし。大体あたしももう高校生よ?』
『そりゃあの頃とは違うが...あ、やっぱ手伝わせて、ついでに家で食わせてくれ。今日飯外で食わなきゃいけないんだった』
『そうなの?』
『水道管が不調だとかで、今日一杯点検作業してるんだよ。その間断水なんだと』
学校から出た後にそんな会話をした俺達は、スーパーで買い物を済ませて犬吠埼邸まで向かった。
それこそ勇者部を始めたばかりの頃は樹も小さく風も持てる量に限界があり、勇者部の依頼そのものが少なく時間が余ってたりして、俺が買い物に付き添うこともよくあることだった。風が料理を作ってる間に樹と遊び、たまに料理をご馳走になったり。
(そう考えたら、結構前から風の料理には世話になってるんだな)
もしかしたら、親を除けば風が一番料理を食べさせてもらってるかもしれない。
(ま、付き合いも長いしな)
一番長いのは幼馴染みだが、小さい頃は俺も料理することはほぼなかった。
「椿さん!?」
「おう樹。入ってもいいか?」
「は、はい」
物思いに耽ってる間に扉の向こうから樹が出てきて、許可を貰って入り込んだ。女子向けの靴ばかり並んだ玄関に「お邪魔します」と言いながら自分の靴を並べる。
「連絡してくれればよかったのに...」
「悪い悪い。風が連絡いれてるもんだと思ってたんだよ。気づいたのはここについてからでさ」
「話してて忘れてたわ」
舌を出しながらコツンと手を頭にぶつける風は、可愛いと思っても口にしなかった。調子に乗られると少しめんどくさい。
「料理手伝うぞ。グラタンだろ?」
「完全スルーとは...ていうか、お客さんなんだからいいわよ。座ってて」
「客なんて自分で思ってないし、そもそもそっちだって思ってないだろうが。ここに荷物置くぞ」
荷物と上着を適当に放って、台所に立つ。買ってきた内容で丸わかりだし、必要な物の位置も大体覚えていた。
「そう言ってもねぇ...じゃ、お願いするわ」
「案外素直だな」
「これが見えたらね」
おもむろに裁縫道具を取ってきた風は、俺の上着を掴む。見せてきた箇所はボタンが取れかかっていた。
「あたしはこっちやるわ」
「...ありがとうございます」
「椿さん。私も手伝っていいですか?」
「了解。じゃあパパっとやりますか」
樹も自炊した頃から料理を続けてるらしく、少なくとも昔のように台所に立たせるのが怖い存在ではなくなった。
この前は風が作ってきた弁当に一品入れていて、美味しく頂けたのもある。
(今や部長だもんなぁ...)
正直な所、樹が部長、というより人を指揮する立場になるというのは、あまり想像出来なかった。姉と違い芯はあってもそれが表に出てくることはそんなにない。そんな内気な女の子だと思っていたから。
今では色々と覆されたけど。
「椿さん?」
「ん?」
「い、いえ...そんなに見つめられると、少し恥ずかしい...です」
「っ、わ、悪い。そんなつもりじゃなくて」
ボーッとしてただけだと自分でも思うが、もしかしたら無意識にエプロン姿の彼女が物珍しく感じたのかもしれない。
「別に悪いなんて思わなくていいですよ。ホントにちょっと恥ずかしかっただけなので」
「そうか?」
「はい。さ、作りましょう?」
樹に促され、俺達は料理を始めた。
「はい。じゃあ後はオーブンで...っと。取り皿出すぞー」
「あたしが出すわ。もう終わったから」
「マジ?」
さっき見た取れかけのボタンは、綺麗に元の姿へ戻っていた。
「助かる」
「いいのよ。樹の面倒も見てもらったしね」
「お姉ちゃん?私もう見られなくても変な料理作らないよ?」
「いや、今でもたまに一品だけ凄いの作ったりするでしょ」
(料理ってそんなランダム性あったっけ...)
「もー」と頬を膨らませる樹と、「ごめんごめん」と頭を撫でる風。その様子を見て、くすりと笑ってしまった。
「椿さん?」
「なによ」
「くすっ...なんでもない」
「なんでもなくないでしょ!」
「ほらほら、冷める前に食べようぜ」
言いかけた言葉は、何もなかったかのように引っ込んだ。多分、恥ずかしかったのだ。
隣にいることが当たり前だった銀のようではなく、当たり前ではなかった彼女達に対して「家族みたいだな」と言うのは。
「椿さん」
「何?」
「お姉ちゃんには黙っておきます」
「......はい」
何故か樹にはバレてたようで、小声で話しかけられた時は震えたが。笑顔にはどことなく怒りが含まれてるみたいで、娘はそんなに不服だったのかと捉えてしまう。
ただ、そんな疑問もグラタンを食べ終わった頃にはなくなっていた。いつもより美味しかったからだろう。
「お邪魔しました。じゃあな」
靴を履いて玄関を出る。外は風が吹いていて顔が冷えた。
「...椿」
「?」
「あした...明日も来る?うちに」
風にしては小さな声で、けれども確かに俺の耳に届けさせてくる。
「明日は友奈達と別の依頼だしな。多分来ないよ。来れたとしても遅くになっちゃうから迷惑かけられん」
「そ、そう...じゃあまた明日ね」
「あぁ。また学校でな」
合鍵なんかは当然持ってないため、俺は単純に出口へ向かった。
「...__________」
風が最後に何か言った気がしたが、俺の耳には届かなかった。
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こう言うのはおかしかった。今日はもう夜で、夕飯も食べ終わってて、後はお風呂に入って寝るくらいだったから。
「そ、そう...じゃあまた明日ね」
「あぁ。また学校でな」
でも、さっきの食卓で、どうしても家族みたいだなって思えてしまったから。
「...いってらっしゃい」
出勤を見送るようなことを閉めながら言って、思わずそのまま玄関へ頭をぶつける。
(......バッチリ聞かれてたらどうしよぅぅぅ...!?)
明日聞かれ直したら、もしこの後メールで聞かれたら。そう考えたら顔の熱が引かなかった。