古雪椿は勇者である   作:メレク

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先日ゆゆゆいアプリの方で芽吹の新装備(満開と言っていいのか分からない)URが出ましたね。最初の印象は正直銃の見た目に持ってかれました。あれツインバスターライフルかGNバズーカⅡでしょ。


ゆゆゆい編 60話

「娯楽...娯楽ねぇ」

 

ついこの間綺麗にしたばかりの部屋だったが、どんどん床に物が置いていく。ほとんどを右側に、一部目的の物を左側に。

 

「何してんの?」

「んー?芽吹に頼まれたんだよ」

「何を?」

 

当然のようにベッドで寝転がってる銀に対して、俺は経緯を思い出しながら話した。

 

「昨日芽吹の部屋でプラモ作ってたんだがな。亜耶ちゃんに新しい娯楽を教えてあげたいって話になって」

 

大赦の巫女である彼女は、箱入り娘と言って差し支えないだろう。今までもそれを感じることも多く、色々やってきたりもしたが、それでもまだ知らないことが多いのも確か。

 

『パーティーゲームは一緒にやったりしてますし、私の知ってることは色々話してきたんですが...椿さんは色々詳しそうですから』

 

「まぁ、女子がやってきたものと男子がやってきたものは結構違うだろうしな。複数人のは部室でやるし、一人だったり二人だったりで出来そうなのを用意しようかなって」

「へー...」

「銀も何かあるか?」

「芽吹や皆が何すすめてきたか知らないしなー...それに、何かと一人のゲーム二人でやってたじゃん。アタシ達」

「確かに。RPGとか相談しながらやってたもんな」

「亜耶ちゃんがRPGをやりだすかと言われれば...」

「...案外やりそうじゃないか?難しすぎなくてストーリーしっかりしてるやつなら」

「じゃあ用意したら?」

「そうするかー...亜耶ちゃんがやってたら意外性があるのも用意して...と」

 

(前教えた格ゲー以上にらしくないのはないか。流石に)

 

粗方取り出し終えた俺は、出した物をどんどんしまっていく。気づけばすぐに床が見えた。

 

「ていうか」

「ん?」

「お前何でいるの?」

「えー?いちゃダメなのか?」

「そんなことはないけど、園子に連絡いれてなさそうだったから」

「大丈夫大丈夫」

「何で」

 

聞こうとした瞬間、インターホンが鳴り響いた。無意識に目が銀の方を向くものの、当の本人は笑顔を浮かべている。

 

「......飯足りないんだが」

「ちゃんと買ってきてくれてるよ。当番は園子!」

「...はぁ。作ってくる」

「いってらっしゃい!」

 

ここまでの展開を読んでいたであろう彼女は、俺の布団に潜り込んだ。

 

「......暖かいな」

 

 

 

 

 

「椿さん、寝不足ですか?」

「いや、なんでもない」

 

確かに寝不足なのだが、上手い言い訳が出来ない確信があったので誤魔化した。

 

(匂いに動揺して寝れなかったなんて言えん)

 

「そうですか...」

「芽吹の部屋行くのか?」

「いえ。亜耶ちゃんの部屋です」

「了解、じゃあ行くか」

「はい」

 

寮の入り口からそれぞれの部屋まではそんなに遠くない。見慣れた景色を窓越しに見ながら歩けば、すぐに亜耶ちゃんの部屋についた。

 

「亜耶ちゃん、椿さんを連れてきたわ」

『ぁ、はーい!』

「いらっしゃいませ!!」

 

花が咲いたような笑顔で出迎えてくれる姿は凄く癒され、一瞬意識を奪われる。とはいえ、ずっと突っ立っているわけにもいかなかった。

 

「こんにちは亜耶ちゃん。お邪魔するな」

「こちらこそ、今日はありがとうございます!」

「お邪魔します」

「...来た」

「?」

 

三人以外の声が聞こえて部屋を見れば、防人組が全員揃っていた。

 

「あれ、皆いたのか」

「私はさっきたまたまメブと会って」

「私(わたくし)もです」

「私は、楠に数学のノートを返そうとして」

「成る程な...」

「椿先輩、芽吹先輩、何かお飲みになりますか?」

「んー...お茶あるか?」

「ありますよ。すぐお出しできるのは冷たい緑茶ですが、暖かいのでしたら玄米茶も」

「じゃあ冷たい緑茶で」

「私も」

「分かりました」

 

家主にやらせるのも申し訳ないが、勝手が分かるわけでもないため大人しく座った。テーブルを先にいた三人が囲んでいて、そこにもお茶が置かれている。

 

「これなら飲み物買ってくればよかったな...」

「あ、私お菓子は持ってきてますよ!食べます?」

「寧ろ何故お菓子はある...」

「部屋に置いてたの持ってきたので!」

 

加賀城が取り出したのは細いチョコスティックだった。チョコがかかってない部分もあるので、これなら遊びながら食べれるだろう。

 

(......)

 

「どうかしまして?」

「いや、何でもない。うん」

 

ここにカオス製造機の化身はいない。このお菓子を使ったゲームなんて話になるはずがない。

 

(動揺を悟られるな。邪念を消せ。自然体だ)

 

「一応トランプも持ってきて正解だったな」

「まぁ、いいですわね。大富豪しましょう」

「ババ抜きがいいよー」

「...七並べ」

「まぁまぁ」

「椿先輩、芽吹先輩。どうぞ」

「ありがとう亜耶ちゃん」

「ありがとな...まぁ、メインは俺が亜耶ちゃんに色々教えるって話だし、最初はそっちでやっててくれ」

 

年長者の弥勒にトランプの箱を投げ、俺は持ってきた鞄を更に漁った。

 

「?芽吹はあっちでやんないのか?」

「椿さんが持ってきたものが気になったので」

「成る程」

「椿先輩のおすすめ...わくわく」

「そんな期待されてもな...まぁ、まずは亜耶ちゃんに合ってそうなのから」

「それは...クロスワード?」

「あとナンプレな。やったことある?」

「ありません。どういった本なのでしょうか?」

「本というよりはパズルだな」

 

本人が興味ありそうな反応で安心しながらも「中見てみ」と言って開けさせた。

 

「クロスワードパズル。カタカナが幾つかあって、その縦横に空白のマスがあるだろ?」

「はい」

「その縦横ピッタリに当てはまるワードを書き込んでいって、全部のマスを綺麗に埋められたら完成ってパズルだ。例えばここ。二文字目が『エ』で三文字の言葉。ここにカエルと入れる。そしたら次にこの縦の文字に注目して、一文字目がさっきの『カ』三文字目が『フ』で出来た言葉を埋めるんだ」

「そんな言葉ありますか?」

「カリフラワーとかじゃないか?」

「!!繋がります!!」

 

恐らく正解じゃない単語を適当に言っただけなのだが、亜耶ちゃんの目は輝いていた。慣れない視線が眩しくてちょっと辛い。

 

「まぁ、こんな感じで繋げて...完成するとこんなんになるな。これは俺が前に解いたやつ」

「綺麗に埋まってます!」

「先にやってみるか?」

「うーん...そっちも説明して頂けますか?」

「了解。こっちはナンプレ。ナンバープレース...だったかな。これもまずは見てみな」

 

隣で始まったポーカーの音をバックに、ページをめくる音が響いた。

 

「これは、簡単に言えばそれぞれのマスに1から9の数字を入れるパズルだ。条件は、区切られてる正方形のマスと、大きな枠内の縦横には同じ数字を被らせてはいけないってとこ」

「被らせてはいけない...?」

「この枠にはもう3という数字が入ってるだろ?だとしたらこの枠にはもう3が入ることはないし、この3から十字のラインに3が入ることはない。元々書かれているヒントの数字を参考にしながら入る数字を制限、推測し、全部埋めれば完成だ。完成品がこちら」

 

俺の説明は十分だったようで、すぐに亜耶ちゃんは理解してくれた。『やってみたい』なんて頬に書かれてれば、止める必要などどこにもない。

 

(元々、親が買ってすぐ飽きて、俺に回ってきた奴だしなぁ...俺も半分くらいしかやってないし)

 

好きに書き込めるようシャーペンも渡せば、まずはナンプレに手を伸ばした。俺は暇潰し用に持ってきた普通の本を開く。

 

「綺麗な栞ですね」

「だろ?友奈がくれたんだ...ってごめん、一人にさせちゃうな」

「いえ、それは構いませんけど...でも、確かに亜耶ちゃんに合ってそうですね」

「だろ?」

 

メインの媒体が本であるこれらは、亜耶ちゃんが普段持っててもなんらおかしくないし、大赦にある可能性も考慮していた。まぁ、実際に大赦が遊びとして許してそうと考えてしまうのはけん玉やめんこといった滅茶苦茶古い遊びなのだが。

 

(なんというか、格好とか含めて和の心を残してる感じがするんだよなぁ...東郷とはあんま意見合わないのに)

 

「あ、そだ。どうせならこれやるか?」

「これは?」

「昔流行ってたカードゲーム。二人対戦用のだから」

「私ルールが...」

「元から亜耶ちゃんに教える予定のだし、芽吹にもちゃんと教えるから。どう?」

「そういうことでしたら...やります」

 

一度スイッチが入ったのか、芽吹の目は鋭いものに変わっている。それをみた俺は静かに口角を上げた。

 

 

 

 

 

「勝ちましたわー!!!この弥勒夕海子、完全勝利を掴み取り、見事大富豪になりましたわよー!!!」

「あーおめでとオメデト。これがお前が負続けて11回目じゃなければ素直に喜んだんだがな」

「勝つまでやめなかっただけだもんね...そっちはどう?メブ」

「亜耶ちゃんの呑み込みが早くて驚いてるわ」

「何かとゲームセンス高いよな」

「えへへ...」

 

ナンプレとクロスワードを終えた亜耶ちゃんは、芽吹とやっていたカードゲーム以外にもいくつかやったり、小さなラジコンカーを貸したりした。オススメしたラノベと漫画は流石に後日読む運びになったが。

 

「あとは...これか」

 

持ってきたのも残り一つ、テレビに接続出来るタイプの携帯ゲーム機のみとなった。

 

「何いれてきたんですか?」

「あ、か、格闘ゲームですか?」

「まぁ皆でやってもよかったんだが...今回は別のをな」

RPGは以前ひなたにも貸したことがあるが、今回は別。

 

「弥勒、接続手伝ってくれ」

「お任せあれですわ」

「今日持ってきたのはRPG、ロールプレイングゲームってやつだ。自分で主人公を動かして目標を達成するってのがメインの目的になるな」

「よくやるの?」

「銀とよくやってた。これもその一つだよ」

 

まぁこれは、銀と俺が二人で一人だった時にプレイしたものだが。

 

「よし、上手くついたな...はい亜耶ちゃん。コントローラー」

「ありがとうございます...」

「操作はそんな難しくないから、序盤だけ少しやって、続きが気になればそのまま置いてくよ」

「気になる終わり方をさせる...」

「流石に一日クリアは絶対無理だからな」

 

軽く話しているとOPムービーが流れ、全員が黙った。俺は亜耶ちゃんの後ろに移動して全員の邪魔にならないようにする。

 

「綺麗な映像ですね...」

「うわ、これ主人公?イケメン!!」

「これ女にも出来るぞ。ちゃんとムービーが変わる」

「結構凝ってますのね」

 

OPが終われば、セーブデータを選択してストーリーを始める。勿論新規のもののため最初はあらすじが流れ、主人公選択シーンまできた。

 

「どうしましょう...」

「名前も決められる。亜耶ちゃんの好きにしな」

「あややはどう!?」

「それならアーヤ」

「漢字は出来ないのね...」

「どうしますの?」

「うーん...では、しずく先輩の意見を頂いてアーヤにします!」

「そんなっ!」

「すみません、雀先輩...」

「...ふっ」

「!今笑った!笑ったね!?」

「雀、亜耶ちゃんが困ってるでしょ」

「うっ...」

 

しゅんとする加賀城さんは、母親に怒られてる娘のようにしか見えなかった。笑うと本人に睨まれそうだから必死に耐える。

 

「ん、んんっ...まぁ、あらすじでも言ってたが、大まかに色々話していくな。この物語は勇者の素質がある主人公...いや、勇者アーヤが、世界を滅ぼそうとする魔王の元に行くため旅をするってのがメインになる」

「王道展開ですわね。勇者が魔物を倒しながら困った人々を助け、魔王討伐に赴くのは」

「そうだな」

「......魔物とはいえ、倒してしまうんですね」

 

(...やっぱりというか、なんというか)

 

悲しげに言う亜耶ちゃんに、俺はさらっと言った。

 

「いや、誰も殺さずにいけるエンディングもあるぞ。勿論ハッピーエンドで」

『え』

「このゲームの魅力は本人の行動次第で色んなエンディングを迎えられることだ。ネタバレになるからあまり言わないけど。戦う回数はゼロに出来ないが、倒す回数はゼロに出来る」

 

魔王城まで行って倒すルートもあれば和解することもでき、歌野のように農業をすれば農業王ルートもある。他にも王様ルートとか、行商人ルートとか。

 

元々、亜耶ちゃんは心優しい、それどころか聖女と言っても過言ではないくらいの女の子である。それを知っていながらただ敵を倒すだけのゲームを薦める筈がない。

 

「やり込むかどうかもだけど、本人の意思で結構自由に出来るのがこのゲームの魅力だからな。亜耶ちゃんはどうしたい?」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「...もう、こんな時間ですね」

 

寝る前にちょっとだけと進めていた手を止める。教えて頂いたセーブ方法を済ませて画面を消し、少し伸びをした。

 

「ん~っ...んっ」

 

テレビやゲームを見た後は脳が活性化していて、寝るのには適していない。だから私は寝る直前ではなく、少し前までしかやらないと決めていた。

 

最も、最近は徐々に出来なくなっていってる気がするけれど。物語が進んでいくと難しくなって、どう動けば良いのかを考えてる間、ゲームの時間は進まないけれど、実際の時間はちゃんと進んでいるのだから。

 

でも、なかなか止め時が見つからない。本の物語が気になって新しいページを開いてしまうような感覚。

 

(歯も磨きましたし、少し体を動かして寝ましょうか)

 

程よい柔軟は睡眠の質をあげる。というのはこの間芽吹先輩から聞いた。

 

『へー...』

『椿さんはやってないんですか?』

『柔軟はあまり...まぁ、俺には強制睡眠させるのがあるし......』

 

そう言ってくぎこちなく笑う椿先輩に疑問はあったものの、私はその日のお礼を言ってばかりだった。

 

(...不思議な人です)

 

確かに今まであまり接してくることのなかった男の人。だからというべきなのか、あの方は私の知らない世界を見せてくれる。

 

だから、どんなに私にとって意外で驚くものであっても、まずは手を出した。この、私が今のめり込んで進めているゲームだってそう。

 

初めは誰も倒さない平和な選択肢を椿先輩にアドバイスして頂きながらクリアした。でもそれで終わりにはせず、一から、今度は王道らしい勇者が魔王を倒すまでの道中を進んでいる。

 

当然それだけ物語が感動的でまだまだやりたいと思うものだったけど、悪の幹部(にみせかけた本当は良い人)や人びとを襲う魔物(飢餓に苦しんでいただけ)を倒し、勇者を成長させながら魔王の城を目指す。そんな話は前までの私なら進めなかったかもしれない。

 

自分で動かすゲームである以上、本とは違って自分の選択で犠牲を産み出してるように思えるから。

 

(見つけるのが上手なのでしょうか?)

 

芽吹先輩が私の側にいてくれる人ならば、あの人は私がたまに来て、知らない玉手箱を持ってきてくれるような人。

 

『亜耶ちゃんはどうしたい?』

 

(私は...もっと色々知りたい。教えてもらいたい)

 

「...よし!一問だけ解いて寝よう!」

 

今日は寝るのが少し遅れてしまうだろう。

 

私は、まだ知らないことが多いから。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

『というわけで、亜耶ちゃんが少し夜更かししてるように思います。ゲームについては何も言いません。現実の虫等にもより気を使うようになったくらいです。ですが寝不足は』

 

「と、言われてもなぁ...」

 

『何ですか』

 

「いや、そんなに悪いことかなって。今のところ体調不良になりそうな程じゃないだろ? というより、今までの亜耶ちゃんがとんでもなく早寝早起きなだけだし...第一それ言ったら夜な夜な通話してる今の俺達の方がヤバいじゃんか。もう亜耶ちゃんきっと寝てるぞ?」

 

『それは、そうですが』

 

「...ま、気持ちは分かるけどな。まさかあそこまでゲームに興味持ってくれるとは思わなかったし。クロスワードとかカードはしっかり返してくれたから、それだけ手元に残したのは気に入ったってことだろ?」

 

『......』

 

「もし亜耶ちゃんがマイナス方向にいっちゃったら注意すればいいし、すすめた俺に罵倒してもいいから、もう少し見守ろうぜ?」

 

『別に貴方を罵倒したりしません』

 

「そうか?」

 

『一発殴るだけです』

 

「より怖いわ!!ったく...まぁ、可愛い子には旅をさせろって言うだろ?ちょっと過保護じゃないか?お母さん」

 

『......過保護じゃありません!』

 

「うっ...はぁ、お母さんの部分は否定しないんかい......にしても、ホントに亜耶ちゃんがね...聖女が聖女でじゃなくなったら、俺は打ち首で済むんだろうか。もしかして本当にヤバい?......これからはもう少し薦めるもの考えないと不味いかなぁ」

 

 

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