古雪椿は勇者である   作:メレク

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今回はリクエストになります。大分待たせちゃってて申し訳ない!


ゆゆゆい編 70話

「はい、はい。いえ、こちらこそありがとうございました。個人としても良い経験をさせて頂いたので」

「おつかれー...って、電話中?」

「昨日の依頼主さんからだそうです」

 

亜耶ちゃんが銀に説明している通り、椿は先日私と行ったお寺の住職さんと電話を繋いでいた。

 

「はい、いつでもお待ちしています...では失礼します...ふぅー」

「お疲れ様です」

「あ、悪いな東郷。この後剣道部の方行かなきゃいけないから」

「そうなんですか?」

「夏凜が行ってたんだが、二刀流の対戦相手がもっと欲しくなったんだと...ほとんど我流だから、読みにくい対戦相手としては使えるんだろ」

 

そう言う椿は、東郷が持ってきていたお茶を一気に喉へ持っていく。

 

「あっ」

「ーッ!ごちそうさま!折角美味しいお茶いれてくれたのにすまん!また今度じっくり飲ませてくれ!!じゃ!!」

「うおっ、そんなに急ぎで呼ばれたのか?」

「...違うわ、銀」

 

部室を飛び出した椿を見て銀が言うものの、東郷が首を横に振る。

 

「このお茶、淹れたてで熱いから...無理せず戻ってから冷めたのを飲んでもいいのに」

「ふ~ん。とかいって須美さん、飲んでもらえて少々口許が緩んでましてよ?」

「!そっそんなことないわよ!!」

「ちょっ、お盆で叩くのはやめっ!?」

「そういえば、若葉先輩はよかったんですか?」

「?何がだ?亜耶」

「いえ、剣を使うお二人が行かれたものですから」

「確かに私が一番剣道の基本には近いだろうが...いや、私も構えから違うからな。使うのが一本ということくらいしか同じ点がない。今回は呼ばれてもないし、あの二人がいれば平気だろう」

 

指導が担当教員より出来ないのであれば、せめて練習相手は普段滅多に見ない相手の方が良いこともあるだろう。

 

(一応、剣道のルール上は問題ないようだしな...)

 

「弥勒夕海子!!ただいま到着ですわ!!」

「あ、弥勒先輩!」

「あたしもキター!さ、依頼見るわよ!」

「パソコンならもう起動してありますよ。風先輩」

 

東郷の言う通り、数分前にパソコンは起動させてあった。触ろうとしていた東郷がお茶を配りだしたため放置されていたそれに、風さんが手早くパスワードを入力する。

 

「若葉さんもどうぞ」

「あぁ、ありがとう東郷」

「今日の新規依頼は一件ね。よし、ちゃちゃっと片付けて今日は早めに......」

「?どうした風さん?」

「...いやね。また話そうとしたら誰かに止められるんじゃないかな~って」

「?何の話です?」

「あれはもう随分前のこと。チア部の手伝いをしに行ったあたしは」

「あ、風さんもういいです」

「ぎむー!!」

 

片手で風さんの口をふさいだ銀は、もう片方の手でパソコンのマウスを動かしてメールの中身を読み始めた。

 

「えーと、何々...『愛の言葉を送られるとどんな気持ちになるのか、教えて下さい』」

「あら、素敵ですわね。まさしく恋バナって感じがしますわね」

「恋バナかー...勇者部に?この部に??」

「そうみたいだな」

 

雀が首を傾げるも、銀は疑問に持つこともなかったらしい。

 

(しかし、恋バナか...)

 

西暦四国勇者の中で興味があるなら、確実に杏だろう。何なら目をキラキラ輝かせた姿まで想像出来る。

 

「まぁ、とはいえ何が正解ってわけでもないし、今いるメンバーで思ってることでも言って送ればいいんじゃない?」

「ぷはっ。そういうことなら任せなさい。この犬吠埼風がチア部の時」

「もうそれいいんで」

「んぐー!?」

「椿と一緒にいたとき含め、何回目だと思ってるんですか...」

「あ、あはは...」

 

ため息をつく銀に、愛想笑いを浮かべる東郷。とはいえ私もそこそこの回数を聞いてきたため、特に異論は________

 

「ちょっと待ったコール!!!」

「きゃっ!?」

「そ、園子っ!?」

 

_____なかったのだが、突然開けられた扉の先にいる彼女は、その限りではなかったらしい。

 

「話は聞かせて貰ったけど、皆、甘いよ!!ホイップクリームをのせてハチミツをかけたパンケーキのように甘い!!」

「甘いって、何が?」

「この依頼人さんはきっと、一大決心で愛の告白をしようとしてる。どんな告白をすれば相手の気持ちを揺さぶれるか知りたくて、勇者部に依頼を出してくれたんよ。それをそんな適当に言ってって良いの!?いや良くない!!」

「お、おう...今日の園子は元気だな」

 

いつもより凄まじい勢いで話続ける園子は、そのままビシッと指を掲げた。

 

「つまり!!勇者部皆の気持ちを正直に吐き出して、それを書くのが良いと思うんよ!!!」

「正直に...」

「そう!全部!!余すことなく!!!」

「さらっと言ったけど、一体どうするんだ?正直私は」

「ストップ御先祖様」

「んぐっ」

 

掲げられていた指がそのまま私の唇に触れる。

 

「目を閉じて想像して」

「想像...?」

「そう。ここは学校の屋上。綺麗な夕日が沈んでいってて、部活帰りの生徒がぞろぞろと帰っていく中、手紙で呼び出されたんよ」

 

彼女の言い始めたことが分かりだしてから、静かに目を閉じて想像した。周りの声は小さくなっていき、半分星空が見えだしたような空の元で二人きり。

 

「いたのは大好きな...うん、そうじゃなくてもいっか。えーと、何かしている時ふと目で追ってしまう人」

「目で追う...」

 

すんなりとイメージが浮かんでくる。朧気な筈なのに、現実味があるというか。

 

「その人に『何の用?』って聞いたのに対して、ゆっくり近づくだけで答えない彼。徐々に距離が縮まって、もう一度聞こうとしたけど、大きな声で遮られるんよ。こうやって」

 

『愛してる。若葉、付き合ってくれ』

「......」

 

やがてアイツは、固まっている私へ更に距離をつめて、その唇が__________

 

「御先祖様?」

「うわっ!?いや違うぞ!!私は別に!!」

「?どうしたの?」

「ッ...いっ、いや、何でもない」

 

ハッとした頃には、園子が最初より近い位置にいた。

 

「んっ、んんっ。それで?」

「それでも何もないよ!自分の携帯で良いから今の自分の気持ちを打ち込むんよ!!」

「あ、あぁ...」

 

動揺したままの私は言われるがまま気持ちを入力していく。

 

(えっと、この気持ちは...なんだろう。驚きはするがフワッとするというか、嬉しいというか。分かりやすい気持ちの伝え方だったし、夕日がバックなのもどこか似合ってたような)

 

思ったよりスラスラ言葉は出るものの、言葉に残すには少しずつしか書いていけなかった。

 

「さぁ皆も書いて書いて!」

「......」

「ミノさん?」

「...いや園子。お前これ自分の小説ネタの補充も企んでるだろ?」

「そんなことないんよ」

「没収」

「アー!!」

 

園子の胸元から出されたメモ帳とICレコーダーを回収した銀は、園子を椅子に押さえつける。

 

「ちょっ、力つよっ!」

「?とにかくこれは没収。出せそうな人が須美にメールして、須美がそれを纏めて送って終わり。樹、それでいい?」

「はい。いいですけど...」

「銀さん、なんだか今日は手際良いですわね」

「このメンバーだと園子が暴れてよりアタシや風先輩が苦労しそうだからさ...それこそ夏凜や椿がいないとね」

「つっきー...!!」

「あ、ちょっ!?」

 

一瞬の隙をついて逃げ出す園子。追おうと手を伸ばし、間に合わないことを悟って固まった銀。

 

「いつにも増して元気ですわね」

「...」

「銀?どうしたの?」

「いや、何でも...それより園子はどこ行ったんだ?」

「恐らく椿の所だろう」

「そうね。最後椿のこと叫んでたし...」

 

(嵐のような奴だな......)

 

急に静まった部室で、ふと自分のスマホを見る。書きかけの文章を見た私は、静かに消した。

 

代わりに書いたのは、『相手を思う気持ちがそのままの答えだ』というもの。

 

(...少なくとも、外に出すものではないからな)

 

ちょっとした気恥ずかしさも交えながら、私は樹へ送信ボタンを押した。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「早く早くっ!」

「いや、そんな引っ張るなって...ただいま戻ったぞー」

 

園子が戻ってきたのは結構後のことで、椿も引っ張られていた。

 

「剣道部の方は終了したんですか?」

「俺はもういいって。夏凜も後少しやったら終わりにするってさ。で、即行で連れてこられたんだが...どうしたんだ?」

「それすら聞かなかったのか!?」

「いや、だから聞く間もなく連れてこられたんだが」

 

困惑したままの椿に話す前に、園子が口を開く。

 

「実はさっき勇者部依頼が来たんよ」

「うん」

「それで、愛の言葉を送られた時の感想を皆で持ち寄りたいんよ。なるべく最新の、熱い気持ちを」

「うん...うん?」

「だから、皆で愛してるゲームをしたいと思いまーす!!」

『えっ』

「これも依頼のため。協力してくれないかな?」

 

愛してるゲーム。お互い『愛してる』と言い合い、先に照れた方が負けというシンプルなゲーム。

 

突然の宣言に皆が驚くものの、当の本人は全く気にせず話を続けている。

 

「...お前、自分の小説のネタに使うつもりじゃ」

「そんなことないよ!だってほら!あそこに録音機とメモ帳置いてるでしょ?それだけ真剣なんよ!!」

「ホントだ...じゃあ単に依頼のため?」

 

(しまった!!)

 

机には確かに(さっき没収した)園子の道具が置いてあった。

 

(でもそれは否定すれば問題なし!)

 

「そう!だからつっきーにも協力して欲しいんだ。勇者部唯一の男の子だし!」

「うーん...ホントにしなきゃダメか......?」

「?どうして?」

 

椿に園子の嘘を伝えようと口を開いて__________

 

「だって、愛してるって言うのは...こう、もっと大事な時に言わないといけないだろ。告白とか、さぁ...」

「......」

 

開いた口が、何も言葉を発せなかった。

 

(なにそれどんな乙女だよ何で赤らめて頬かいてるんだよ椿ぃ!?!?)

 

「いや、これまで何回か言ったことはあるけど、ただ愛してるを連呼するのはまた違うというか...」

 

(何それ可愛いんだけどぉ!?)

 

普段落ち着いてきた、大人っぽくなってきた勇者部唯一の男子が、愛してると言うのは好きな人だけが良いなんて乙女チックな考えを持っていたことへのギャップに、アタシの脳は完全にバグった。

 

そしてそれは、アタシの心を揺さぶる。こんな椿に、愛してるって言わせてみたい__________

 

「ま、まぁ椿?ちょっとだけだからさ?」

「そ、そうですね。依頼として答えなきゃいけないことではありますし...」

「皆さん...」

「あ、これ逃げられない奴ね」

 

多分園子の計画通りなのに歯噛みしながらも、アタシと同じように落とされた何人かによって、椿の目が徐々に濁っていった。慣れきった展開なのか、既に逃げる気配はない。片手園子と繋いだままだし。

 

「椿先輩のお気持ちは分かりますが、愛してるという気持ちを言葉にするのは大切だと思います。私はやってみたいです。皆さんに普段の感謝を伝える良い機会ですから」

「...亜耶ちゃんの考えてる愛してると少し違うと思うんだが......まぁ、いいか」

 

天使亜耶ちゃんに言われてしまえば、折れるしかない。そして、覚悟を決めた椿は強った。

 

「んじゃやるか...銀」

「え!?アタシ!?」

「いやだって、一応慣れてるだろ。昔やって。お前が言ってきてさ」

「え、そ、そうだったっけ...?」

 

(ヤバい。完全に覚えてない。からかう目的だったんかアタシ!?)

 

「ほら、いくぞ?」

「ちょっ、ちょっとだけ待って。心の準備を...」

「銀、愛してる」

「ッ...~ッ!!」

 

思った以上にダメージがでかくて、思わず顔を俯ける。

 

「もう照れちゃったのか?」

 

(っ...負けたくないっ)

 

悔しさと、もうちょっと聞きたいという気持ち__________アタシは椿の服の裾を摘まみながら、か細く言った。

 

「つ、つばき...あぃしてる」

「っ...銀、愛してるよ」

 

そこからのことは、いまいち覚えていない__________

 

 

 

 

 

「愛してるよ。亜耶ちゃん」

「はい。私も愛しています。椿先輩」

 

意外と言うべきか予想通りと言うべきか、椿と長く戦っているのは亜耶ちゃんだった。ここまでの椿は、

 

『愛してるよ。風』

『......ッ!!』

 

一撃で風先輩を場外(部室の外)へ追いやり、

 

『愛してる。樹』

『私もあ、愛してます』

『手強いな...樹』

『つ、つばきさん近い』

『愛してる』

 

囁いて樹をダウンさせ、

 

『愛してるぞ。若葉』

『わ、私だって好きだ!』

『いやそれは俺も好きだが...』

『!』

『今回は愛してるって言わなきゃいけないルール...?おーい、若葉?』

 

盤外戦術で若葉を倒し、

 

『愛してる。東郷』

『あ、あっ...』

『何だ、東郷も一発か?俺の勝ちだな』

『...むーっ!!!』

『いたっ、悪い、悪かったから脇腹小突くのはやめて』

 

須美に(割りと痛そうに)小突かれていた。

 

『弥勒、愛してるよ』

『私(わたくし)もその通りですが、貴方がその気持ちならば私の飯使い、二代目アルフレッドの名を襲名させて差し上げましょう!!どうぞこれからもよろしくお願い致しましてよ!!おーっほっほっほ!!』

『......うん、俺の負けでいいからその件はキャンセルで』

 

一方で、弥勒さんにはあっさり負けたみたいだけど。

 

ちなみに雀はいつの間にか部屋から消えていた。敵前逃亡と取るべきか、英断と取るべきか悩み所である。

 

「愛しています!椿さん!」

「うっ...お、俺の負け!亜耶ちゃん強いな...耐えられなかった」

「ありがとうございました。私も想像していた以上にドキドキして、恥ずかしかったです......顔には出ていませんでしたか?」

「全く出てないぞ?凄いな...トランプとかも強そうだ」

「トランプも良いですね。今度是非やりませんか?」

「よろこんで受けさせてもらうよ」

 

そして今、亜耶ちゃんとの決着がついていた。やってる間もその後も平和そのもので、こっちまで微笑ましくなるというか、もう邪念のある人間がいてはいけない空間なのではと思ってしまう。

 

(まぁ、椿は合わせてるだけだろうけど...なんにせよ、芽吹がいなくて良かったかもしれない。色んな意味で)

 

「さてと...」

 

いつの間にか話が終わっていた椿は、この場にいる最後の一人の方へ向いて__________

 

「何逃げようとしてるんだ?園子」

「ギクッ」

「ギクッじゃないだろ。さぁやるぞ」

 

(こうなった椿は強いな~)

 

「い、いやつっきー?もう依頼として必要な分は十分やったかなって」

「さっき数があればあるほど良いって言ってたのはお前だろ」

「それはほら、言葉の綾と言いますか...」

「大体、一番に乗ってきそうなお前が逃げようとしている。何企んでるのか知らないが逃がすわけないだろ」

「......」

「......」

「脱兎!!」

「逃がすかぁ!!!」

 

一瞬で動き出す二人ではあったけど、勝負がつくのはすぐだった。

 

「勇者服はずるくない!?」

「お前を逃す方が遥かに危険だろうが!!覚悟しろ!!愛してるゲームするぞ!!」

 

(ここまで甘酢っぽくもないゲームの始め方があっただろうか)

 

「銀!手伝ってくれ!!」

「あいよー」

「ミノさん!?」

「いや、アタシも園子がここで逃げる理由思いつかないから怖いし」

 

後ろから羽交い締めにされた園子は、椿の両手で顔を真っ直ぐ向けられる。多分椿と無理やり目が合ってるだろう。逸らしても意味ないくらい近づいてるし。

 

間近なせいで園子の唾を飲み込む音が聞こえる中で、椿が試合開始を告げた。

 

「よし。いくぞ...園子、愛して」

「ウォォォォォッ!!!!」

「ぐはっ」

「椿先輩!?」

 

始まった試合は、多分園子の負けだった。高速で放たれた園子の膝が椿の腹に当たって倒れたことを除けば。であるが。

 

「ッ!~ッ!!!!」

「あっ!?」

 

そのまま園子は乱雑にアタシの拘束を振りほどいて逃走。あまりの出来事に誰も追いかけない。

 

(...あー)

 

そんな中で、昔の記憶を思い返したアタシは一人納得していた。だって今のはきっと__________

 

「皆やっほー!今部室から誰か勢い良く出ていったけど、どうしたの?」

「そのっち!?」

「いやどうしたのじゃない!!出ていったのはお前だろう!?園子!!」

「んん?ってつっきー!?なんで倒れてるの!?」

「...あーもう滅茶苦茶」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

最初はただの_____いや、最初から最後までただのいたずら、撹乱に過ぎなかった。普段から突飛な行動をしがちな彼女に変装して潜入してみれば、まるで事前準備をしていたかのような依頼。そこに便乗しない手はない。

 

誤算があったならば、一つは乃木銀に勘づかれた点。恐らくの話ではあるけれど、これはいい。寧ろバーテックスをよく狩っている彼女の力を直に体験できたのは、悪くなかった。

 

ただ、もう一つは。

 

『お前を逃す方が遥かに危険だろうが!!覚悟しろ!!愛してるゲームするぞ!!』

 

吹っ切れた彼が想像以上に面倒だったという所。何度か経験していた筈なのに、今回もしてやられた。戦衣まで持ち出すのは完全に予想外だったけど。

 

『よし。いくぞ...園子、愛して』

 

私は乃木園子ではなく、赤嶺友奈。だからこれはノーカウントである。あんなに顔を近づけられたのも、目を無理矢理合わせられたのも、敗走するようにここまで走ってきたことも。全部、全部。

 

「あいつのせいだから...っ!!」

 

全部、ノーカウントである。

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「つっきー先輩。今どうして私が怒ってるのか、分かりますね?」

「はい...」

「よろしい。言ってみなさい」

 

現在、時刻は午後九時を回る頃。場所は園子の部屋。俺は正座で園子の前にいた。

 

「お前を赤嶺だと思って突っかかったからです...」

「そうですね。突然肩を掴まれてビックリしました。でもつっきー先輩。それだけじゃないですよ?私の偽物だって分からなかったこと。ミノさんから聞いた話だとなかなかな発言をしてたことも確認してます」

「はい...」

「ここまでで、ご自分の処遇はどうされるつもりですか?」

「今日この部屋から出るまでは園子様の好きなようにお使いください...」

 

ちなみにここまで、お互いのセリフは全て原稿に刷られていた通りである。いつ作ったのかは知らないが、部屋に入るなり渡されて『五分後に始めます』とだけ言われた。

 

まぁ、今回依頼は確かにあったが園子は全く関係なかったわけで、俺自身に大なり小なり非があるのは自覚している。だからこそこの原稿通りにしているのだ。

 

問題はここからである。この先原稿は白紙で、答えを得るには目の前でニコニコしている園子の口から聞くだけ。正直怖かった。

 

「ではつっきー」

「はい」

「今から私と愛してるゲームするんよ」

「ですよね」

 

予想通り過ぎる内容で喜ぶべきかまるで分からないが、多分俺の目は死んでいた。園子の手にはメモ帳とレコーダーがバッチリある。

 

(恨むからな赤嶺...)

 

あの時より更にヤバい状況、確実に後日聞き返され、小説のネタになるだろう。しかし、当然俺は拒むことなど許されない。

 

とはいえ、あれからもう数時間経っている。時間を置いてから相手の部屋に通されてやる。単純に言えば、くっっそ恥ずかしかった。

 

「ただし、三つ条件があります」

「はい」

「一つ目。つっきーは全力でやること。これは大丈夫だと思うけどね。つっきー自分が悪いって顔してるし」

「...分かってるよ」

「あ、後私のリクエストにも答えてね?」

「あぁ...あの、せめてレコーダーはなしでも」

「??」

「はいすいません」

 

謎の威圧を感じてすぐに謝る。言葉は発してない筈なのに怖さがあるのはなんなんだろうか。

 

「二つ目。この勝負、私が勝ったら終わりね。終わったらつっきーも帰っていいよ」

「うん...?」

「いい?」

「あ、あぁ」

 

意図が読めずに促されるまま頷く。終わりの条件なんて出されると思わなかったが、一体園子は何を________

 

「じゃあ最後、三つ目!全試合先行はつっきーからで!反対意見は聞きません!!」

「......あぁ、はい」

 

一瞬で意図が分かったのは、幸か不幸か。今回でいけば、不幸だったのかもしれない。事前に脳死ではダメという念押しがされていたのだから。

 

「じゃあ始めよう!!はい」

「...園子、愛してる」

「つっきーどうしたの?顔赤くして小さな声で」

「...園子っ!!俺はお前のこと愛してる!!」

「んっ...恥ずかしいよつっきー。私一回目で負けちゃった~...もう一度だね?」

「っ...園子!愛してる!」

 

こうして永遠に園子が負ける愛してるゲームに決着がつくのは、日付が変わる頃だった。

 

気恥ずかしさでおかしくなりそうな俺がなんとか考えていたことの一つは、恥ずかしそうに笑う園子が可愛いかったということだった。

 

 

 

 

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