好評価バーの青色幅が増えてて凄い...夢じゃないのか?ってなってますね。まさかここまでいくとは。しかもこの文章を見てる方々は、大体が最新話まで追ってきて来てくださってる猛者...いや、本当にありがとうございます。
さて、今回は祈願花さんからのリクエストになります。久々の神世紀での話。
神樹様が消え、無尽蔵ではなくなった石油の使用が制限されてきた今現在。当然バスの本数は減っていき、それだけ乗車する人が集中するようになった。
俺に限って言えば、専用バイクがあることもあって不便さを感じることは少なく、寧ろ道がすいててありがたいわけだが、いざそれが使えないとなると、確かにちょっと不便さを感じてしまった。
(とはいえ、厳格そうな家に初回からバイクで行くわけにはいかないわけで...)
「古雪先輩、すみません。私の我が儘に付き合わせてしまって...」
「気にするな...とは流石に言わない。今回に限って言えば、俺はほぼ無関係だし、東郷が自分で整理する問題ではあると思うから」
「......」
「...だけどまぁ、絶対一人だけで終わらせろとも思わないし、頼まれたわけだしな」
「......ありがとうございます」
「この駄賃はみかんジュースでいいぞ」
「手塩にかけて作りますね。畑から」
「畑から!?いやそこまではいいからな!?」
普段部室でしていそうな話をしながら、俺達は緩やかな坂道を歩き続けた。
(門だけ見たら、洋風の家って感じがするな...そっか、東郷が日本文化に重症ってだけで、普通って可能性もあるのか)
「ここか?」
「はい...呼びますね」
「...その必要は無さそうだ」
「え?」
豪邸と言いきれるレベルの建物に、身長の倍以上ありそうな縦格子状の門。その奥に見える庭にいた女性がこちらを見た。
遠目ながらにも目を開かせ、驚いた表情に変わったのが見てとれる。そのまま女性は小走りでこちらに来て、隣にいる東郷へ呟いてきた。
「お嬢様...」
「...お久しぶりです。中に入れて貰っても良いですか?」
詳しくは知らないが、鷲尾家は大赦においてかなり格式の高い所だったらしい。それこそ、別の家系から勇者の素質を持つ者を、養子として受け入れるほどには。
そうして生まれたのが鷲尾須美。約二年の間、東郷美森が名乗っていた名前だ。
彼女を養子として受け入れた鷲尾家は、まるで本当の子供かのように接してくれて、東郷家への出資も惜しむことなくしてくれていたとか。
今年の春、天の神騒動の影響で機能縮小した大赦に今も所属しているらしい。
大方この辺りが、俺が持っている鷲尾家に関する知識だ。ほとんどが銀、園子、春信さん、安芸さん、そして他ならぬ東郷本人から聞いたもの。
「大丈夫か?」
「...手を、握ってもらえますか?」
「ん」
「......」
「旦那様、奥様、失礼します」
「...ありがとうございます」
扉が開かれる頃、感謝の言葉と同時に冷たい手が離れて、東郷が一歩踏み出した。
「お久しぶりです。お父様。お母様」
「須美...いや、東郷さんか」
「そんな他人行儀な言い方はやめてください。今ここにいるのは東郷美森ですけど、鷲尾須美でもありますから。ね?」
「...ここでこっちに振られても困る」
突然飛んできたパスに動揺するも、そのやりとりだけで視線が集まってきたのを感じた。まぁ、俺だけこの場では部外者なわけで、当然ではある。
「君が...」
「えっと...はい。古雪椿といいます。勇者の一人として戦っていた他、今はとうご...彼女を初めとした仲間と勇者部という部で活動しています」
「そうか...」
その後、鷲尾さん夫妻は軽い自己紹介をしてくれ、それ以外にも色々俺に向けて話をしようとしてくれたのだが、俺は悪いと思いつつ遮った。
今日の俺の目的は、東郷の付き添いなのだから。
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「綺麗でしょう」
「そうですね。本当に...」
私とお母様は庭に出ていた。話をしている中で、新しく育てたという朝顔を見ることになったのだ。
「こうして花を育て、愛でることが出来るのも、貴方達のお陰よ」
「私は...確かに私は勇者として活動しましたが、同時に四国にいる人全員を危険に巻き込みました」
自暴自棄になって神樹様の結界である壁に穴を空け、バーテックスを侵入させた。それは、到底許されるべきじゃない。
「でも、その贖罪のために『奉火祭』に自ら参加したんでしょう?」
「知っていたんですか?」
「えぇ...話を聞いた時は、心臓が止まったかと思ったわ。多分あの人も」
朝顔を見つめるお母様の目が、すっと細くなる。
「精霊ツバキが提唱者とされる調停の儀。ただ、大赦内でも謎が多くて、効果も神を相手にしている以上不明な点もある。何より前例も古くて少ない」
「...そうですね」
「......だから嬉しいわ。こうしてまた会えて。素敵な彼も捕まえて」
「!ふ、古雪先輩はそういうわけでは...!」
「えー?ただの部活仲間ってだけでわざわざこの家に来てくれるかしら?」
「あの人はそういう人なんです!」
あの人は頼めばきっと断らないし、実際断ることもない。だから、つい甘えてしまう。
「でも、勇者ということはライバルも多そうね」
「お母様!!」
「ふふっ、ごめんなさい。貴女とこんな風に話せるとは思わなくて、つい」
「っ......もっと早く、来るつもりでした」
天の神の騒動、そしてそれに伴う作業は、大体一ヶ月で安定してきた。それ以上延びてしまったのは、私の決心からだ。
「...お母様」
「ん?」
「お母様は、この世界、どう思いますか?神樹様がいなくなったこの世界を」
不安だったことを口にする。私達は自分達の選択_________神の統治を拒み、人として歩む道を選んだこと________を後悔していない。
だが、それは私達だけの考えであり、神様が消えて、資源や環境に問題が出てきているのが現状だ。
特に大赦は規模を縮小させているため、悪い方向を言うならば、私はお世話になったこの家の仕事を大きく潰したこととなる。
「そうね...大変、なんじゃないかしら。これから」
お母様は、小さく呟いた。
「まだ数ヶ月。影響が出ている物の方が少ないでしょう。でも、以前よりは確実に不便になった」
「そう、ですよね...」
後悔してなくても、迷惑をかけたくて行った訳じゃない。実際の声を聞いて、少し胸が苦しくなる。
「でもね」
しかし、お母様はそこで止まらなかった。
「大赦として一般の人よりあった知識を踏まえるなら、こうならなかったら神樹様と一つになっていて、こうして花を一緒に見れなかったかもしれない。そう考えたら、悪いものでもないと思うわ」
「!」
「何より、これからを担う貴方達が選んだ道...いいえ、大切な娘が選んだ道なのだから、応援するのが私達よ」
「...ありがとう、ございます」
言われた瞬間、肩の荷が降りたように脱力した。お母様に、不安を安心に変えて貰ったから。
「そんな他人行儀はやめて。ね?須美」
「...はい。ありがとう。お母様」
「えぇ。じゃあそろそろ戻りましょうか。あの人と古雪君を待たせてしまっているし」
「そうですね」
男性陣二人の会話が想像できなくて、何か予想がないかお母様へ目線を向ける。すると、お母様も何も思い浮かばなかったように私を見てきて、見つめあった瞬間二人でくすりと笑ってしまった。
(置いてきてしまったのは申し訳ないけど、一体どんな話をしているのかしら?)
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「今日は色々とありがとう」
お父さんは_____鷲尾さんは、庭へ出た二人を見送ってからそう言った。ちなみに、間違っても初対面の男性と二人にした東郷を睨んでなんかいない。
「自分はただついてきただけです」
「それも凄いだろう。友人というだけで、義理の親子の家へ一緒に会いに来るというのは...それに、今日だけのことじゃない」
「......」
「お陰で、こうして今日須美と会えた」
鷲尾さんの言うことを、俺は理解している。
東郷は俺を連れて鷲尾家を訪れることを決めた。だが、緊張のためか不安のためか、相手側へ向かう日時を伝え忘れていたのだ。
行って会えなかったらその日を不意にするのは勿論、東郷の精神的にもダメージが入るだろう。かといって、会うことに緊張してる相手に電話しろとも言いにくい。
『すみません。古雪椿といいます。あ、はい。勇者の。単刀直入に用件だけ言うと、鷲尾須美さんがそちらを伺いたいということでして......』
だから俺は、事前に安芸さん経由でこの人へアポを取っといた。鷲尾さんの言いたいことがこのことを指すのは言うまでもないだろう。そもそも、俺との話題なんてそれくらいしかない。
「まぁ、連絡を忘れるのは最近の彼女を見ればしょうがないと思います。張り詰めた感じはしてましたし...でも、ここに来てからはそんな感じもないので、自分は必要なかったかなって感じますね」
東郷は元々芯の強い女の子だ。今さっきも話している様子を見ると、俺が必要だったか聞かれれば怪しいラインに思えた。
やったことと言えば、道中話をして、ちょっと手を握ったくらいだ。
「...そんなことはないんじゃないか?」
「そうですか?」
「これでも二年間、娘として見てきたんだ。あの子が少し緊張しているのは分かったし、ちらちら君の方を見ていたのも分かっている」
気づかなかったポイントをつつかれて、俺は黙り込んだ。
「それに、それこそここに住んでいた頃の友人ではなく、君を連れてきた。そこに意味はあるんじゃないだろうか」
「......多分、丁度いいんじゃないですか?距離感的に」
園子や銀は大赦での繋がりもある友達で、ここにいるのは気まずいだろう。彼女にとって一番不安を拭ってくれるだろう友奈は_________
(確かに、友奈じゃない理由は薄いだろうか...不安にさせちゃうからとかかな)
真相は本人に聞かなければ分からないが、聞くつもりはないからほっといても良いだろう。
「そうか...そう言うならいいさ」
「...そう言えば、まだ大赦に所属してるんですね」
「せめてもの罪滅ぼし...というわけではないがね。あんなに私達を大切に思ってくれていたあの子の命を差し出すようにしてしまったからには、こうした形でしか返せないと思ったから。責任だよ」
話題転換に、「勇者の機能については、我々より詳しいだろう」と続けた鷲尾さんは、天井を見上げた。
「満開という機能は、彼女達が戦いを始めた後につけられたものだ。大きな力の代償として、体の機能を失う。我々は事前に説明を受けていた。その上で、あの子には黙っていたんだ」
「......」
「見殺しにしているようなものさ。記憶のない、車椅子で動くあの子には何度か会う機会があったが、耐えられなかったよ。あちらとしては、見ず知らずのおじさんでしかないからね」
「...」
「今日も、こうして会うまで怖かったのさ。あの子が私達を恨み、拒む理由は十分にある」
「彼女は、恨んでなんかいませんよ」
鷲尾さんの言葉を遮るように、俺は口にした。実際会ってそうではないと思えたのであろう言い方だが、俺からすればここに来る前から分かっている。
「決して一言では表せない感情をお互いに持っているのは理解しているつもりですが...悪い気持ちを持ってたなら、ここに来ることは勿論、俺に対して、この家での思い出をあんな嬉しそうに話しません。きっと」
「!」
「...すいません。でしゃばったことを言いました」
「......いや、ありがとう」
鷲尾さんは、長めの息をついた。
「...あの子が君を頼る理由が、少し分かったよ」
「そうですか?」
「あぁ」
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「どうだった?」
夕飯までご馳走になった帰り道、送ってくださるという好意も受け取って家まで帰って来た私達は、私の部屋で少し話すことにした。
「行けて良かったです。ありがとうございました」
「俺は何もしてないから。少なくとも今日はお前が話してただけだよ」
「お父様と二人の時にも話してたじゃないですか」
私とお母様が庭から戻ってきた時、二人は想像以上に盛り上がってるように見えた。
『君も、よければまた来てくれ』
『機会があれば...でしょうか。すいません。流石に用事も無いのに来るのは...』
『それもそうか。もし次来るとしたら、何かしら用意しておこう』
『あ、ありがとうございます』
帰り際の話も、なんだか気に入られていた様に感じる。
「あー...それは」
「何の話をしてたんですか?」
「...共通の話題、かな」
「共通の?お父様と古雪先輩の...?」
どちらの趣味もそれなりに知っているつもりだが、そこに共通するものなど欠片もなかったように思えた。
(古雪先輩がお父様の話に合わせたという方がしっくりくるけど、そんなのあったかしら...?)
「...え、マジか。分からないのか」
「私にも分かるものですか?」
「寧ろ一番分かるだろ」
「一番...あっ」
答えが分かるとそれ以外の選択肢が出ていたことが信じられない程で、同時に顔が赤くなるのを自覚した。
だって、古雪先輩とお父様は他ならぬ私の話で盛り上がって__________
「何話したんですか!?私の何を!?」
「...内緒」
「!?!?」
「あ、ちょ離して東郷。力強っ!?」
普段なら「大したことない」と言いそうな所をはぐらかされた私は、古雪先輩の腕を振り回す。降参した彼が話した内容で更に振り回す力が強まったのは、仕方のないことだろう。
「東郷さん俺の腕千切れます!!」
「お父様となんて話してるんですか!!馬鹿!!」