古雪椿は勇者である   作:メレク

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ゆゆゆい編 76話

「よっ」

「あ、椿。あんたも買い物?」

「それ以外にスーパー寄る理由があるか?」

 

互いに買い物かごを抱えた状態の俺と風は、同じスーパーでばったり会った。

 

「イネス行かないの?」

「いや、あそこ微妙に遠いじゃん?ただの買い出しにわざわざ行かない」

 

特定の物を買いに行くだったり、みかんジュースの補充をがっつりするならイネスに行くことが多いものの、普段から行くには少し距離がある場所だ。

 

「それに、今日ここは福引きあるし」

「え、そうなの?」

「あぁ。500円ごとにな。大した物は出ないだろうが、箱ティッシュでも貰えたら嬉しいし」

 

適当な会話をしながらもお互い買い物かごに食材を入れ、レジで会計を済ませた。話していた通りレシートと一緒に福引き券が貰えて、枚数を確認する。

 

「椿は何枚?あたしは四」

「俺は六。列はあっちみたいだな。行くか」

「ちょっ、それあたしの袋!」

「筋トレ代わりにするから貸せよ。いいだろ?」

「...全く。ガラガラ回すときは返しなさい。いいわね?」

「はーい」

 

正式な名前は知らないが、ガラガラと回して行う抽選機に並ぶ俺達。そう時間はかからない。

 

「一等はお米、特賞は温泉旅行...どうせ狙うなら特賞だな」

「さっきはティッシュって言ってたのに」

「言うだけならタダだから。逆に一等だと、この荷物に米持ってかなきゃならんし...飴でもいいな」

「次の方どうぞ~」

「あ、一緒に行くか?」

「別々の必要ないでしょ」

「ごもっとも。先引けよ」

「じゃあ遠慮なく回させてもらうわね」

 

思い切り回す風に苦笑してると、あっという間に四回やり終わっていた。結果は全部ポケットティッシュ。

 

「ま、そんなもんだろ」

「そんな...椿。やりなさい」

「物騒な感じ出すなよ...ほい、袋任せる」

 

恨みが込められてそうな風の視線をガラガラ抽選機と共に受けながら、俺は適当に回していく。

 

(ま、どうせティッシュでも貰えるだけ...あれ?)

 

 

 

 

 

「まさか、こんなことになるなんてな...」

「あんたが言うの?」

「いやだってさ...」

「ていうか、あたしの方が意外よ。別にその場にいたからって誘わなくてもよかったのよ?別の子誘って行けば」

「温泉旅行とかだったら流石に俺も誘わないけどな...それに、お前行きたいって言ってただろ」

「うっ...ありがと」

「はいはい。お、見えたぞ」

 

バスの外に見えたのは、大きなお城と城門のような入口。

 

「折角だし、楽しむか。遊園地」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「広いな~...」

 

そう呟くのも椿を見ると、思ったより目がキラキラしてた。最近こんな感じの子供っぽい顔は見てない気がして、新鮮に見える。

 

(今日はあたし達だけだし...うん)

 

結局椿がくじで当てたのは、二等の遊園地ペアチケットだった。充分に凄いことだし喜んだものの、次に言われたことをあたしはよく覚えてる。

 

『新しく出来た遊園地のペアチケ...風、やるよ。樹と行ってきな』

 

あろうことか、貰ったチケットをスッと渡してきたのだ。あたしは勿論抵抗した。これは椿が手に入れたもので、あたしはただ睨んでただけなのだから。

 

『俺別に行く気あんまないし』

『いやだからって貰うわけにもいかないわよ!!』

 

それから話は帰り道で続いて、あたし達二人で行くことに決まって今日を迎えた。

 

遊園地は、大昔に別の地方で大人気だったテーマパークを再現したものらしくて、完成前から話題になってたし、行きたいとも思ってた。

 

その話を聞いていて、強気にあたしへ譲ろうとしてくれていたというのはさっき聞いて、入園前から顔が赤くなったわけだけど_______それは置いといて。

 

(こうして見ると、全然楽しめてそうね...よかった)

 

『俺別に行く気あんまないし』なんて言ってたから、もしかしたら遊園地の中身を知ってた上で興味ないのかと思ってたけど、杞憂だったみたいだ。

 

(なら...ねぇ)

 

新しい遊園地、周りは見渡す限り家族連れやカップル、二人きり。これを活かさない手はない。

 

「よし!椿、今日は楽しむわよ!!」

「言われなくてもっ!ちょっ、腕もってくなって!!」

 

あたしは椿の腕を取って、城の見える方へ走り出した。

 

 

 

 

 

「次何にする?」

「次は...そうねぇ」

 

ベンチに座りながら、地図を広げて全体を見る。改めて遊園地が広いと感じながら、自分達の位置を確認した。

 

ちなみにこれまでで、

 

『なぁ、風』

『何?』

『ちょっと、これは、流石に恥ずかしいんだが...』

『慣れるわよ。いいでしょ?お揃い』

『うっ...うぅ』

 

お互いペアキャラの帽子を買って被り。

 

『『美味しい』』

『食べるでしょ?はい』

『ありがと。こっちも食べるよな?』

『いや、それは食べて...』

『...?』

『......貰う』

『あ、口つけた所は嫌か。はい。千切ったから大丈夫だろ』

『......貰うわよ!!!』

 

ポップコーンとチュロスを交換して食べたり。

 

『何でそんなに納得いってなさそうなのよ』

『いや、連射出来る癖に判定は対応してないし、台によっては絶対狙えないくらいランダム要素強かったからさ...実際の弾が出るか、春信さんに頼んでいつものに変えてもらえればもっと良いスコアが......』

『何言ってるのあんた』

 

的当てゲームで使った銃と自分が普段使いしてる銃を比べてたりした。

 

「うーん...」

 

悩んでる椿は、今も可愛い耳つきのカチューシャをつけて、気に入ったのか二本目のチュロスを食べている。

 

(滅茶苦茶満喫してるじゃない)

 

小学生組を始めとした年下が増えてから、頼れる兄としての姿を見ることが多くなって_______西暦から戻ってきてからより大人びた感じはしてたけど________こんな姿を見るのはどうしても珍しく思う。

 

「よし。じゃあ次はこのお化け屋敷的な所に...行かないから袖掴んで震えないでくれって。嘘。嘘だから」

「ホント...?」

「本当。お前が苦手なのいつも通りだもんな」

「...あんたはいつもより楽しそうね」

「そりゃそうだろ?折角新しい遊園地で遊べるって言うし。風も一緒だしな」

「~!!」

 

(いつもそうやって...)

 

「よし。じゃあ次はここ行くか」

「!えぇ行きましょう!早く行きましょう!」

「何で定期的に急かすんだお前は!?」

 

お化け屋敷以外なら気にならないだろうと、あたしは椿が指差した場所まで引っ張っていった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

隣に座る彼女が少し緊張したように見えて、俺は声をかけた。

 

「まだ抜けれると思うが...」

「べ、別に平気よ」

 

並んでいるのは普通のジェットコースターなのだが、室内で夜空を模した暗闇を走るタイプなのが問題だった。さっき冗談でお化け屋敷の話をしたからか、暗い場所に対して風が不安がっている。

 

「無理しなくていいんだから」

「む、無理なんてしてないわよ!ほら早く」

 

さっさと乗り物に乗っていく彼女。後を追う俺。

 

「それでは、安全バーをしっかり下げてくださいねー」

 

一番前へ乗り込んだ俺達へ係の人から指示が飛び、風が最速で安全バーを下げた。

 

「お前...」

「あたし達は普段跳ねたりしてるわけだし、大丈夫よ。うん」

「それでは皆さん、いってらっしゃ~い!」

 

かなりの初速で飛び出した乗り物は、上昇のために急減速し、体が斜めになっていくのを感じる程の角度を昇っていく。

 

(...)

 

普段であればこれもわくわくの一つではあるが、どうしても隣が気になってしまった。

 

「......風」

「な、何よ」

「まだ怖いか?」

「......」

 

答えは沈黙であり、完全回答だった。とはいえ、もう降りれる筈もない。

 

なら、俺はどうするか。

 

「風。今から俺の言う通りに」

「椿...?」

「目を閉じて」

「ぇ、え」

「大きく息を吸って」

 

カタカタと昇り続ける中、暗闇で隣に座る彼女の顔も分からないまま言っていく。

 

(大丈夫。まだ昇りきる気配はない)

 

「ゆっくり息を吐いて。無理ない範囲でな」

「...すーっ、はーっ......」

「よし」

「ひゃっ」

 

安全バーを握っていた彼女の手に俺の手を重ねる。

 

別に、普段から彼女はこういう訳じゃないのだ。ジェットコースターだって楽しむタイプだし、今動揺しているだけ。

 

なら俺は、普段通りにするか、この状況を特別じゃないものにしてやるだけだ。

 

「目を閉じてれば、外が暗くても関係ないだろ?」

「そういう問題...?」

「大丈夫。普段から飛んだり跳ねたりしてるわけだし...俺はこの手を絶対離さない」

 

(手を繋いどけば、普段より激しめな帰り道...っぽくなるはず。なにより)

 

「俺が絶対、お前を守るよ」

「......」

 

返事がないまま、乗り物が重力と平行になる。恐らく頂上。

 

やがて、ゆっくりと坂道へ入り__________

 

「バカ。ほんっとバカ」

 

風(かぜ)に流されながら、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「はい、これお土産な」

『うわ~っ!!!』

「これチョコクランチ!」

「このキーホルダー可愛い!!」

「取り敢えず頼まれてたのと、それ以外にも色々な」

 

部室に歓喜の声が響いて、皆が口々に椿へ話しかけていく。

 

「風、すまない」

「棗?何が?」

「いや、これだけの土産を二人で買ってくるのは大変だっただろう。私の分だけでも抜いておけば」

「全然平気よ。殆ど椿が持ってくれたし...」

 

正直、あたし自身もそれなりに重たい物を持ってたとは思うけど、あまり感じなかった。皆のためと思えば何ともなかったのもあるだろうけど、その前のことで頭がいっぱいだったから。

 

『はい。買ってきたから...落ち着いてゆっくりな』

 

暗い中を突っ切るジェットコースターを終えて、ベンチに座ったあたしにお水を買ってきてくれた椿。

 

『悪かったな。ここに連れてきちゃって...』

『あたしが意地張っちゃっただけよ。気にしなくていいから』

『もう平気そうだな?』

『えぇ』

 

何なら、ジェットコースターも途中から楽しめた。目は瞑ったままだったけど、多分開いていたとしても変わらない。元々暗い場所じゃなく、怖い場所がダメなだけだし。

 

(それに...あんたのお陰でね)

 

『俺が絶対、お前を守るよ』

 

手を握って、そう言ってくれて。椿の方が手は冷たかったけど、そんなの関係なくて。

 

それに驚いて、逆に冷静になれた。

 

『?どした?何かついてる?』

『...』

『無言で写真を撮るなよ』

『......何でもないわ!さ、皆のお土産買いに行きましょ!』

 

「風?」

「っ、ごめんごめん。とにかく、棗が気にする必要ないわ。遠慮なく受け取って頂戴」

「...ならば、お言葉に甘えよう」

 

輪に混ざっていく棗を見て、その先にいる椿を見る。

 

(...む)

 

スマホで見返したのは、カチューシャ付きで自撮りしているあたし達。

 

(......良かったわね)

 

「そういや椿さん!行ってみてどうでした!?」

「結構楽しかったぞ。俺も色々撮ってきたんだが、風が送ってきてくれた奴の方が上手く撮れててな...あぁ、この自撮りのとか綺麗に」

「ダメー!!!!」

 

明らかに睨まれるだろう写真を食い止めるため、あたしは全力で駆け出した。

 

 

 




以前にも遊園地に行く話は書いたんですが、以前のはとし○えん、今回のは夢の国をモチーフにしてます。記憶の限りではとし○えん行ったことなかったけど。
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