古雪椿は勇者である   作:メレク

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詳しいことは後書きで書きますが、長くなったので『大満開の章に合わせて更新したいので、更新頻度更に下がるかも』これだけ前書きで書いときます。

ダブルラッキーセブンな今回はチャサキさんのリクエストです。ありがとうございます!


ゆゆゆい編 77話

「ありがとうございました~!」

 

やたら元気の良い店員さんの声を背に、俺は早速ビニール袋を漁った。中に入っているのはチキンにピザまんにみかんジュースというジャンクフードな組み合わせ。

 

(ひなた辺りがいたら、栄養バランスがどうとか言ってくるかもしれないが...たまにはいいだろ)

 

女子ばかりの勇者部に所属しているからか、自炊出来る力がある程度あるからか、俺は他の男子高校生よりジャンクフードに手を出すことが少ないと思っている。とはいえ、無性に食べたくなる時もあるわけで。

 

「頂きます」

 

袋から取り出したチキンの匂いで口からよだれが溢れてくるが、そのまま大口を開けて食べた。東郷がいたら怒られそうな食べ歩きだ。

 

まぁ、時間をおいたら冷めて美味しくないし、これから日用品の買い物を考えている俺に帰るという選択肢はなかった。

 

(今日の夕食と明日の飯、歯磨き粉、あ、後シャンプーも切れてたっけ)

 

珍しく部活動もなく、友人や他の部員からの連絡もなし。完全に予定なしで一人というのは、なかなか無い機会だ。

 

(と言っても、何かするわけでもなく適当に一日過ごすんだろうな~...実績解放したいゲームとかあったっけ)

 

持っていた紙から滲み出た油を手につけながらチキンを食べ終わった俺は、紙を丸めてビニール袋にいれてから指を舐めた。普段が普段だけに、凄い悪いことをしている気分だ。

 

(たまにはいいな。こういうのも。さて次は...)

 

「うおっ!?」

「うっ...!」

 

ピザまんを取るため袋を漁っていると、突然軽い衝撃に襲われて尻餅をついた。どうやら曲がり角で誰かとぶつかったようだ。

 

「あぁすいません!急いでいたもので」

「いえ、こちらも不注意でした。すみません」

「いえこちらこそ!それに...」

「...あー」

 

地面の先には、手元から飛んでいったピザまんが転がっていた。

 

「大丈夫ですよ。三秒ルールがあるので」

「室内とかならともかく、外はダメでしょう!すみません。弁償させて頂...」

「......?」

 

突然止まった相手の声を確かめるように、顔を見上げる。

 

「「...」」

 

そこには、ケーキ屋の箱を大事に抱え、顔をひきつらせている『俺』がいた。

 

「...」

「...えーと、それではごきげんよう」

「いやその反応はおかしいだろ!?おい逃げんな!!!」

 

逃げ出した俺を追いかけるため、俺はピザまんを諦めて走り出す。

 

おかしいのだ。自分と同じ顔の奴が逃げ出すということは、同じ顔なことに疑問とかがなく、見つかったら不味いと思ってるのだから。

 

(つまりあいつは、何かしら俺よりこの世界に深い関係者!!)

 

「シュークリームどうしよう」

「呑気だなおい!!!」

 

追いつこうとするも、根本的な運動能力が違うのか離されていく。

 

(素早い!)

 

「!」

 

一度こちらを振り返った奴は、ビルの間の裏路地へ入っていった。俺を撒くつもりなんだろう。

 

だが、それはただのチャンスだった。

 

(やるしかない!!)

 

スマホを取り出し、人の視線が切れてから変身。強化された脚力で地面を蹴り飛ばし、曲がり角にあったパイプを使って方向転換、目の前の俺に追いついた。

 

「止まれ!!」

 

一度飛んで短刀を向ける。敵意はないが、聞きたいことはある。

 

「戦衣はないだろ...」

「だったらお前はその姿で速すぎる。私服型の勇者服か、インナーでも隠してるのか」

「......はぁ」

 

大きくため息を吐いた奴は、諦めたように両手をあげた。

 

「何処へ行く?俺は喉乾いたし、ドリンクバーある場所がいい」

 

 

 

 

 

「ショートケーキ二つ。そっちは?」

「...チーズケーキ」

「じゃあそれとセットドリンクバー二つで」

 

注文を受けた店員は俺達を双子だと思ってるのか、そもそも俺達が同じ顔に見えないのか、特に気にすることなく復唱して戻っていった。

 

「んじゃドリンクバー」

「いや待て。その前に答えろよ」

「いいからいいから。みかんジュースな」

 

有無を言わさぬ様子でジンジャエールとみかんジュースを取ってきた相手は、「ほい」と俺の前にみかんジュースを置いた。タイミング良くケーキも到着する。

 

「あ、すいません。これテイクアウトで」

「......いい加減答えろ。何者なんだお前は」

「...はぁ。めんどくさいな。俺はお前だ」

「そんなことは分かってる」

 

相手も俺も古雪椿で、勇者に関して知識があることは分かってる。問題はその先だ。

 

「質問を変えるか。お前は『何だ』。どういう存在だ」

「ほう?」

「他の世界に勇者になれた古雪椿はいないって聞いた。だったらお前はおかしい」

 

かつて、あの高嶋友奈から言われた。あの後生まれたなら話は別かもしれないが、十分に怪しい。

 

「それをお前に伝えた奴と普段一緒にいる。そう言えば分かるか?」

「...は?」

「お前を過去に送った彼女」

「!!」

「そいつと一緒にいると言ったんだ」

 

思考が止まった。元から人間でない存在かと思ったが、彼女と似た存在だと言うなら__________

 

「...俺は、未来の俺か?」

「何故そう思う」

「あいつと近いなら、お前も神に近い存在。そして、神樹にせよ何にせよ、そうなるきっかけがあった存在。だが、今俺はこうして生きている......だったら、俺がこれから、死んだ先の存在になる」

「成る程な。面白い推理だ」

 

ショートケーキを口に入れた相手は、ケーキがあった場所にフォークを置く。皿にフォークが当たり、食器特有の音を鳴らした。

 

「だが、残念ながらハズレだな。俺は未来からではなく、過去から来た」

「過去からって...」

「俺の名前はツバキ。いや、『精霊ツバキ』」

「!!」

「知ってるだろ?お前のついた嘘やひなた達の立ち回りの結果生まれた、奉火祭の提唱者となった俺のことだ。その存在は後年、信仰心の対象になった」

「...その大赦からの信仰心が、力を与えた?」

「概ね正解だ。簡単に言うと信者の祈りによって俺は意思を持った。お前とは同じで違う、精霊としての存在をな」

 

「さて。ここまでで質問は」と聞いてくる、俺であり俺でない者。その事実に混乱はしていても、自然と聞きたいことは出てきた。

 

「逃げたってことは、それ以上詳しいことはあまり答えられないんだろ」

「察しがいいな。お前が聞きたいことの多くはその通りだろう。まぁ焦らなくていい。『今この場でお前に答えるまで俺は消えない』」

 

どこか引っ掛かりのある言い方を気にせず、俺は口を開いた。

 

「...何でシュークリームを買ってたんだ?沢山」

「久々に外出出来たんでな。あいつに土産を」

「いや自由か。じゃなくて、外出ってのは...単なる室内じゃないんだろ?」

「お前も来たことある場所だよ。あそこが今の俺達の家だ」

 

淡々と、チーズケーキは減らず、ショートケーキは減っていく。

 

「じゃあ、あいつは元気か?」

「元気だよ。今日もいってきますのキ...何でもない」

「?」

「はい次の質問」

「......元気にやってるならそれでいい。次は...お前達はこの世界で、何を狙っている?」

 

あの高嶋友奈が俺達にとって悪いことをするとは思っていない。しかし、あの世界とは別のこの世界にくる目的も、きちんと理解してはいない。

 

何せ目の前の俺とは初対面、彼女と話したことがあるのも、片手で数えられるレベルなのだから。

 

「それは答えられない」

「やっぱりか」

「まぁまぁ。だが安心しろ。お前達にとって悪いことは考えてないし、俺は一番神様を信じてない頃のお前がベースの存在だ。そんな奴がどうしてあいつやお前達より神様を優先するよ?」

「...」

 

(一理ある。な)

 

全部を全部、完全に信じられるわけではない。だが、俺自身に利害を問うのであれば、この話に問題はないだろう。

 

「...疑っててもしょうがないしな。一旦信じることにする」

「そうそう。話がわかって貰えて助かるわ。ごちそうさま...っと、そうだ。もう一つ」

「?」

「ちょいこっち」

 

手招きに応じ、体を机の方へ寄せる。

 

「一体何...を」

 

受けたのは、強い衝撃。

 

「いや、何でもないさ」

 

 

 

 

 

「椿さん」

「!!」

「きゃっ」

 

目を覚ますと、眩しい太陽を見てしまって思わず瞑る。

 

「っ、俺は...」

「椿さん。大丈夫ですか?」

「ひなた...?」

 

俺を呼んでいたのはひなただった。薄手のワンピースを揺らしながら立ち上がる彼女は、俺に手を伸ばす。

 

「はい。どうぞ」

「あ、あぁ...えっと、どうしてここに?」

「どうしてって、椿さんがメールしてきたんでしょう?『今日買い物した荷物が多いから、暇だったら来てくれないか』って」

「そうだったっけか...」

 

公園のベンチで隣を見れば、確かに一人で持つにはちょっと厳しい量の袋があった。

 

「......」

「どうかしましたか?」

「こんな荷物買ってたかなって...」

 

(そもそも、荷物が多いからってひなたを呼ぶか?)

 

寝る前の記憶を思い出そうとするが________買い物した記憶から、あまり思い出せない。

 

スマホでメールの履歴を探ると、確かにひなたへ送ったメールがあった。

 

(...寝ぼけてるだけなのか?)

 

「椿さん!」

「っ!わ、悪い。まだ寝ぼけてたっぽい」

「でしたら、もう一寝しますか?ここでは風も強くなってきてますし、寮が近いので私の部屋で是非」

「......帰ろう。俺の家に。そこでもう一寝するわ」

「でしたら家事をしておきますね」

「いや別に」

「しておきますね」

「そんな申し訳な...」

「...」

「お願いします」

「はいっ!!」

 

(断れない俺は無力だ...)

 

いっそ「同じ布団で寝ます」くらい言ってくれれば否定しやすかったのに_____なんて考え、その考え自体がヤバいことに気づいた俺は、動揺を悟られないようビニール袋を持つのだった。

 

「そう言えば、今夜夕飯を一緒に食べませんか?若葉ちゃんも一緒に」

「いいけど、うどん食べに行くか?」

「食べに行くのも良いですが、作るのも良いですよ?一緒に作りますか?」

「うーん...夕飯何買ってたかな________

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「問題なさそうだな」

 

マンションの屋上で、古雪椿と上里ひなたの様子を見ていた俺は、二人が移動を始めるのが見えて一息ついた。

 

(ばったり会うのは想定外だったが...まぁ、調整は出来たみたいでよかった)

 

ある程度欲している情報を流し、油断させた所で気絶させ、神様と似たような感じで上手いこと記憶を消してひなたを呼ぶ。あいつが俺を探す様子がないことから、上手いこといったのだろう。

 

(......まだ、知らなくていい)

 

いずれは知るかもしれない。選ばなきゃならないこともある。

 

だけど、まだいい。今はまだ、存在を知らず、日常を過ごしていればいい。お互い不干渉でいい。

 

「とりあえず、帰るか。ユウへのお土産これでいいかな...」

 

ショートケーキの入った箱を片手に、俺は空気に溶け消えた。

 

 




前書きでも書きましたが、こちらで詳しい話を。自分語りが多めなので、興味なかったら飛ばしちゃってください。

現在ショートアニメのちゅるっとが放送、原作ゆゆゆいでは新たな巫女が登場したり(天馬美咲の見た目かなり好みです)と、ゆゆゆ界隈は更に盛り上がってきました。

そして、目玉である大満開の章も10月に決定!まだどんな話なのか全く分かりませんが、今から楽しみです。

さて。話は変わってこの作品ですが、前々からリアルと戦いながら短編を書きながら新章の製作に着手していました。Twitterの方では言いましたが、進捗としては一年半書いて大体半分くらい...って感じです。

しかし、折角なので大満開の章に合わせて完成させたいという思いと、四月からの環境がバカ忙しくなったということで、今回のように一月以上あけての更新が今後増えていくかもしれません。正直これでも間に合わないかもしれない。

なるべく諦めない!の精神で頑張るので、皆さん変わらず待っていてくださると嬉しいです。よろしくお願いします。
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