古雪椿は勇者である   作:メレク

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最近、現実で減らしたHPをゆゆゆイラストや小説、頂いた感想で癒し、ゆゆゆラジオで一週間の経過を知る。そんな毎日を送っています。

ラジオ是非聞いてください!(ダイマ)


二十六話 あーん

樹の祈りは、歌にも声にもならないけれど、風の心に届いた。抱き合う二人から離れて思うことは一つ。

 

(風の勇者服血まみれにしちゃった...クリーニング出せるのかなあれ)

 

場違い過ぎるどうでもいいことを考えるくらいには、血が流れすぎて__________

 

「椿、あんた大丈夫なの!?」

「あー、悪い夏凜、病院連れてってくれ。もう血が出すぎて無理...」

「椿?椿!!」

「二人とも、よかっ...」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

気づいたら見覚えのある天井だった。前も入院した病院だ。

 

既に時刻は昼過ぎ。半日近く寝ていたらしい。

 

勇者の状態でいたため腕の治癒も速かったらしく、起きて即退院できた。

 

「...また最終授業出席かよ」

 

憂鬱な気分で教室に入ると、今回は連絡がいっていたらしく怒られなかった。

 

「古雪君、最近大丈夫なの?」

「ん?平気平気...たぶん」

 

隣に座る女子に(最後は小声で)答えると、女子の髪すれすれをチョークが通った。

 

「しっかり聞けお前ら!」

「!!」

 

担当教員の怒号が響くが、俺はそれより怖いものを感じてしまった。

 

(風さんなんでそんな殺意みたいなの込めてこっち見てるんですか!?こえぇよ!めっちゃこえぇよ!!)

 

気づいたら授業が終わっていた。今日は教員の都合で帰りの連絡はなし。

 

「椿!!!」

「よ、風」

 

終わってすぐに風が飛びついてきた。

 

「...こっち、来て」

 

連れてこられたのは屋上。風は固まっている。

 

「部室じゃないのか?」

「...ごめんなさい!」

「......」

「酷いこと言っちゃった上に腕を怪我させるなんて...こんなことじゃ許されないことは分かってる!」

「......あの」

「あたしに出来ることならなんでもする!!だから許して!また一緒にいさせて!ごめんなさい!!」

「...別に、怒ってないんだけど」

 

矢継ぎ早に言われた言葉を無視して言うと、風がきょとんとした。

 

「え...なんで?あんなことしたのに...」

「風が大赦を憎む理由はわかるし、樹のことがショックだったのも知ってるからな。むしろ俺の腕程度で済んだなら安いだろ」

 

その怪我も完治するのに三日とかからないらしい。

 

「というか、そんなことの為にわざわざ屋上来たのか?とっとと部活行こうぜ」

「...ありがとう」

「気にするな。お互い様さ」

 

夏休みに、俺は風に救われた。そのお礼をしただけだ。

 

「...よし!犬吠埼風、完全復活よ!!」

「そのいきだ。あ、でもみかんジュース奢ってくれるぶんにはいつでもいいからな」

「あんたも変わらずね...」

 

教室でバッグを回収し、そのまま部室に直行する。

 

「遅れましたー」

「椿!」

『病院お疲れ様です!椿さん!』

「おう、お疲れー」

 

昨日の現場にいた夏凜と樹が即座に反応してくる。

 

「椿先輩!風先輩も...連絡全然気づかなくてごめんなさい!」

「友奈...」

「いやいや、仕方ないって」

「みんな、あたしこそごめん!」

 

続いて言ってくれたのは友奈。風は謝り、友奈も謝りという無限スパイラルを繰り広げているため放置する。

 

「古雪先輩、腕を負傷したと聞きましたが...」

「あぁ。だけど治癒も速かったらしくてもう...っ」

 

流石にまだ完治とはいかず、制服の下には包帯が巻かれている。無理して無事を示そうとしたものの、逆に痛みが走って顔を歪めてしまった。

 

『......』

「...そ、それよりお腹すいたな!半日近く食べてないから!なんかあるか?」

 

ごまかす為に話題をそらすと、乗ってきたのは風だった。

 

「...これでいいなら」

 

取り出してきたのは弁当。どうやらいつも通り俺のぶんも作ってくれたらしい。

 

「風の弁当に文句あるもんかよ。ありがとな」

 

弁当を受け取ろうとすると、ひょいと避けられた。

 

「風...?」

「っーー...」

 

黙って弁当の蓋を開けた風は、箸を持って卵焼きを掴み_______

 

「あーん...」

「!?」

 

突然の行動に固まってしまった。

 

「ふ、風さん...?」

「早く食べなさいよ!」

「い、いや別に食べなくても...自分で取りますから」

「今あんた箸も使えないでしょ!ペンも持たなかったんだから!」

 

(バレてる...)

 

授業中見られていたのはそれだったのか、それとも別の理由なのかは俺にはわからない。

 

「早く!!」

「...ぁ、あー...ん、美味しい」

 

味はいつも通りだが_______

 

(そんな目で見るなぁぁぁ!)

 

風も、これを見ている勇者部のみんなも顔が赤くなってて恥ずかしさが半端じゃない。

 

「ほ、ほら次!」

 

(えぇい!こうなったらやけくそだ!)

 

「あーん!」

 

こうして、普段より精神を削られながら弁当の中身を完食した。

 

「は、恥ずかしかった...」

 

せめて二人きりならよかったが、周りの視線が辛い。

 

『椿さん、東郷先輩がぼた餅も用意していますよ?』

「...樹さん?」

 

なぜ樹はさらに爆弾を投下するのか。

 

(というかいつの間に椿さんに...悪い気はしないけど)

 

「椿先輩。あ、あーん...」

「友奈お前もか!?」

 

ぼた餅は箸だと落としそうだからか、手で持って口元に運んでくる友奈。

 

一番ヤバいのは、東郷の目だが。

 

(食べたら殺される!だが拒否すれば友奈が悲しむ!!)

 

部室は残暑で暑いくらいの筈なのに、俺には真冬に感じた。

 

「せんぱぁい...」

「っ!!?わ、わかったから!」

「ありがとうございます、はい、あー...」

「あー...ん」

 

東郷のぼた餅が美味しいことは知っている。ただ、状況が状況だけに全く喜べなかった。

 

「食べた...友奈ちゃんの指を...」

「食べたメインはぼた餅だろ!?確かに友奈の指も入ってきたけどさ!」

「あうぅ...」

「なにこの修羅場...」

「むー......」

『椿さんは愛されてますね♪』

 

結局なにもせず解散になったが、とても生きた心地はしなかった。

 

「はぁ......」

 

日課の筋トレ、勉強を済ませ、かといって眠る気にもなれずベッドへ横になる。

 

「ありがたいんだがあの空間は耐えられん...」

 

皆が心配してくれるのは嬉しいが、精神的に辛い。明日には治せるよう勇者の姿になっておいた。

 

(まるでラノベの主人公...)

 

男子として憧れたことが無いわけではないが、こんな風に苦労しているならなりたくないと強く思った。

 

「...樹からメール?」

 

『椿さん、夜分遅くにすみません。改めてお姉ちゃんを止めてくれたこと、相談に乗ってくれたこと。お礼を言わせてください』

 

樹らしい丁寧な文面でお礼を言われて、頬が痒くなる。

 

(やりたいことを好き勝手やって、言いたいことを吐いただけだからなぁ...)

 

『仲直りできたならよかったよ。大したことやってないし、なにより風を止めたのは樹だ。俺じゃないよ』

『それでもすっごく感謝しています!お姉ちゃんも私も!』

 

まっすぐな好意は少しむず痒いので、話題をそらすことにする。

 

『ありがとな。そういえばいつから椿って呼んでたっけ?いや嬉しいんだけどさ』

『...先輩は鈍いですよね』

『いきなりの罵倒!?』

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「お疲れー...って、誰もいないのか」

 

風は日直の仕事で少し遅れ、他はまだ誰もいない。一人だけの部室というのはそれなりに珍しい。

 

「......」

 

暇なので本を取り出して読み始めた。部長が来るまで何を優先するべきか分からないし、依頼を見るためパソコンを開く気もならなかった。

 

「結城友奈ただいま参りました!椿先輩!」

「っ!て友奈か...びっくりした」

 

勢い良く扉を開けたのは友奈。思わず本を落としそうになってしまった。

 

「他はどうした?」

「東郷さんは用事があるって行っちゃって、夏凜ちゃんは日直です」

「今日だけで二人も日直なのか...」

「それより先輩!腕もう大丈夫なんですか!?」

「昨日の時点で本を読むくらいは出来たよ...もう完治した」

「おお、おめでとうございます!」

 

友奈は昨日のことを思い出したのか顔を赤く染めている。

 

(こっちも恥ずかしくなるからやめてくれ...)

 

昨日、デザート扱いだったぼた餅は食べなくてもよかったのだが、友奈の目を見ると断れなかった。

 

「はぁ...111ページっと...」

「栞とかないんですか?」

「貰う機会もないが、買うつもりもないからな」

 

ページ数を覚えて本を閉じる。本を買う際紙の栞をつけてもらうこともあるが、あれはあまり大事に使わないためすぐなくしてしまう。

 

「あの、よかったらこれ...」

 

友奈がバッグから渡してきたのは桜の押し花が施された栞。

 

「春に作ったやつなんですけど...」

「そういえば押し花が趣味って言ってたな。いいのか?」

「はい、是非!」

「じゃあ遠慮なく...」

 

受けとると、部屋の明かりを受けて少し光る桜の花が目に飛び込んでくる。

 

押し花の良し悪しなんてわからないけど、俺にはとても綺麗に見えた。

 

「綺麗だな...ありがとう。大事に使わせて貰う」

「そうしてあげてください。その子も喜びます」

 

栞を挟んでから再び本を閉じ、バッグにしまう。きっとこれから皆が来て__________

 

「!」

「!」

 

突然鳴り響く音。何度も聞いた樹海化の警報。

 

「な...もう敵は全部消えたんじゃ」

「アラームが鳴り止まないです!!」

 

(まだ生き残りがいたのか!)

 

時が止まって樹海を訪れると、スマホに敵が表示された。赤いマークが画面の上を覆い尽くす。

 

 

 

 

 

「は?」

 

慌てて壁の方を見ると、その壁が抉られていた。

 

その向こうから、星空を作るかの様に白い物体が泳いでくる。百や千の単位では収まらないレベルの数が、わらわらと________

 

「せ、先輩...」

「...なんだよ。これは」

 

アラームが未だ鳴るスマホを更に見ていた友奈が、更に信じられないことを口にした。

 

「東郷さん!?東郷さんが壁のところに!!なんで!?」

 

 




この話を書き終わったとき。心境は(椿いいなぁ...)でした。羨ましい。そしてもっと甘く書けたらいいな...自分の力量が悔やまれる...

いよいよ終盤(アニメ11話辺り)です。甘い成分はここで取って、シリアスに望んでください。前書き後書きもなるべく減らします。

全員の気持ちをしっかり表しながらうまくシリアス書けるよう頑張ります。これからもよろしくお願いします!
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