古雪椿は勇者である   作:メレク

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花結いの章 9話

「結城!!須美のフォローを!!」

「任せて!!」

 

須美ちゃんの後ろに迫ってた星屑を殴り飛ばせば、エビっぽいバーテックスに当たって体勢を崩した。

 

「今!!」

「分かったわ友奈ちゃん!」

「どっせぇい!!」

 

隙をついて東郷さんが撃ち抜き、銀ちゃんが連続攻撃。

 

「二人とも、良い連携だ」

「えへへ、東郷さんのお陰ですよ」

「すみません友奈さん。助かりました」

「大丈夫だよ!」

 

戦い始めてから大体20分くらい。私達は順調にバーテックスを倒してきた。

 

相手の反応、布陣から、事前に考えられてた作戦の一つを取っている。

 

敵の進行は前と違って、前から一気に押し寄せてきてる。

 

若葉ちゃん、東郷さんが指揮する一つ目の部隊、杏ちゃん、風先輩の指揮する二つ目の部隊。この二つが左右に広がって敵を倒して、その後ろに休憩と奇襲の対策として、樹ちゃんをはじめとしたメンバーが待機してる場所がある。その後ろに神樹様。今基本にしているのはこれだ。

 

(私はとにかく、ここを一歩も通さなければいい)

 

一緒に作戦の話はしたけど、単純明快な方がやりやすい。

 

「続けて十時方向、数六!」

「園子!結城!」

「は~い!」

「いっけぇぇ!!」

 

相談することもなくそれぞれ三体ずつ倒して、園子ちゃんとハイタッチした。

 

「東郷さーん!次見えるー?」

「友奈ちゃんは右に、園子ちゃんは真っ直ぐ!」

「「了解!!」」

「銀ちゃんは園子ちゃんと一緒に!」

「わっかりました!」

「となると...私はあっちだな」

「はい。お願いします」

 

高く伸びた樹海の枝先で銃を構えた東郷さんに従って進めば、新しい敵が見えた。

 

「行かせないから!!」

 

神樹様の所にも、樹ちゃんの所にも、椿先輩の所にも。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「芽吹も皆も強くなってるし、私も負けるわけにはいかないのよ!!」

 

最前線で暴れてる二人を見習って、ヴァルゴ・バーテックスを上から下へ切り刻む。重力に従って着地を決めて、横に来た星屑も流れるように刀を通す。

 

「夏凜さん、気合い入ってるわね」

「当然、よっ!」

 

隣に降りてきた歌野が構えを取りながら聞いてくるのに、私はすぐに返した。

 

「これで最後だってなら尚更ね」

「前回も多かったけど、今回も大量だものね。セイムバーテックスも沢山」

「でも負けられないわ。今のこっち、風と雪花に負担かけてる分頑張らないと」

 

『あんた達は変に縛るより好きに暴れた方が強いでしょ。疲れるまで行ってらっしゃい』

『そーそー。後は私達に任せなさいな』

『なんかヤバそうになったら、タマと杏で時間稼ぐから助けてくれ!』

『タマっち先輩の言う通りです!私達、頑張りますから!』

 

友奈達の所は小学生組がいるから若葉や東郷が全体的な指示を出すって言ってたのに対し、うちのリーダーである風は雪花、杏、球子と一緒にそんなことを言ってきた。

 

それは________多くを語らなくても分かる、信頼の証だと思う。だから私は絶対に負けない。負けてられない。完璧以上の形で返したい。

 

(この戦いの後どうであれ、今は...)

 

この前雪花が見せた、悲しそうな顔が浮かんできて、頭を振った。

 

(今は!!)

 

「行くわよ歌野!!」

「オーケー!私の鞭に打たれたいバーテックスは出てきなさい!!」

 

 

 

 

 

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「戻ってきたよ~」

「お疲れ様です、雪花さん」

「ありがとう須美ちゃん」

 

人を分けて戦闘し、疲れた数人は休んだ人と交代する。この戦術は西暦時代、若葉さん達がやった戦術らしい。

 

確かにこの人数が固まって戦うのは非効率過ぎるだろう。

 

(脇から来てる敵もいない...)

 

バーテックスはただひたすらに一方向から真っ直ぐ来ていて凄く戦いやすかった。突破力の高いジェミニもいない。他のバーテックスと比べると攻撃力がないからだろうか。

 

「左側の交代、千景さん、お願いできますか?」

「任せて。鏖殺して来るわ」

「ぐんちゃん頑張ってねー!」

「えぇ、行ってきます」

 

微笑んで飛び出して行った千景さんを見送って、また私はスマホを見つめる。

 

(なるべく武器の距離感が同じ人を交代、休憩のローテーションは大丈夫。ちゃんと組めてる。異常な敵もいない。椿さん達からの反応も平気)

 

私の役目は、奇襲対策の為スマホのレーダーを見つめつつ周辺を警戒することと、近接武器、遠距離武器を使う人達だけで固まらないよう指示を出すこと。

 

最初は、私も一緒に前で戦いたいと思ってた。

 

『樹はどーんとしてなさい!あたし達が全部倒すから!!』

 

でも、お姉ちゃんがそう言ってくれたから。

 

『風さんであれば前に出ないことが心配になるが、樹なら安心して任せられる』

『若葉!?』

 

若葉さんが信じてくれたから。

 

『戦術を考えるのは文献読んでる杏の方が得意そうだし、奇想天外さは園子がずば抜けてる。人を導くなら若葉のカリスマ性も強い。でも、その全てを混ぜて人を纏めあげるのは、樹が一番だと俺は思ってる。この二年ちょっと、部長としてやってきたのを見てきてな。自信もっていいぞ』

 

椿さんが、背中を押してくれたから。

 

だから私は、自分の意思でここに立つ。

 

「それにしても、ミノさん凄いね~」

「そんななの...って、うわー。私あの子がどういう経緯であぁなったのか知らないけど、一人だけ次元が違うじゃん」

「......」

 

ここからでも直接見える赤い光。流れ星みたいに線を描けば、レーダーに映る敵の群れが一瞬で消えていく。

 

(でも、無理はしないで...)

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

『別に俺が命名したわけじゃないぞ』

 

椿がそう言っていたレイルクスの翼を広げて、空を駆ける。ただ残念なことに、アタシの力だと相手を蹴り飛ばした反動の方が速度としては速い。

 

だから、蹴り飛ばして別の敵に近寄ってから翼で体勢を整えてまた切る。

 

「ッ!!」

 

無理に体勢を変えたことでかかる圧に耐えながら、相手の吐き出してきた矢を避けてみせた。そのまま滑り込んで横凪ぎに斧を振るえば、綺麗な三枚下ろしの出来上がりだ。

 

その瞬間、嫌な感じがして振り向けば、さっきの矢が目の前まで迫っている。

 

(ちょ、またかよ!?)

 

回避は間に合わないため斧を構えて逸らす。矢は甲高い音を立てて樹海に突き刺さった。

 

「あいつら...」

 

かつてアタシを殺した三体が、仲良くこっちを向いている。

 

「...ふ、あははっ」

 

そんな状況で、アタシは笑った。この間の戦いでコツを掴んだのか、したことなかった戦いに体が順応してきたのか、今までより凄く戦いやすい。

 

『銀、頼む』

 

それとも、直前に、たったそれだけを言われたからか。

 

(...負ける気が全くしない)

 

これまでだって最後まで負けるとは思ってなかったけど、今日は絶対に勝てると確信できる。

 

流石に数が多過ぎて取りこぼしはあるけど、長く戦いながら、一体でも多く。

 

後ろには皆がいるから、アタシはただひたすら暴れられる。

 

だから、全力で。飛び出した弾丸のように。

 

「今のアタシを止めたいなら、それこそ椿でも出してきな!!」

 

一声と共に切り刻んだ敵は、ガラガラと音を立てて落ちていった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

耳をすませば戦いの音が聞こえてくるだろう場所で、俺は足を止めた。

「こんなもんか?」

「いいんじゃないかな?これ以上邪魔は入らないだろうし、貴方達も向こうへは行きにくいでしょ」

「別に行く必要ないからな。あっちの相手はあいつらに任せてる。俺達のやることは...お前を倒すことだ。赤嶺」

 

嘘をつきながら振り向き睨んだ先には、飄々とした顔を浮かべる赤嶺がいた。

 

「この前散々だったのに、そんなこと言えるんだ...いや、この前みたいに暴れれば勝算があるつもりかな?」

「そしたら芽吹達連れてきてないだろ...勝つのは『俺』じゃない。『俺達』だ」

 

この前のようにはならない。ならなくても勝ってみせる。仲間と一緒に。

 

それぞれの方を向けば、それぞれが返事をしてくれた。加賀城さんのやる気を弥勒が奪ってるようにも見えたけど。

 

「...いいよ。やってみて。出来るものならね」

 

構えを取る彼女を見て、俺は心の中でガッツポーズをとった。

 

(これで、ようやく土俵に立てた...勝負はここから)

 

「椿さん」

「あ?」

「気負いすぎないでくださいね」

「ーっ......あぁ。分かった」

 

俺の心情を読み取ったような芽吹の言葉に、沸騰しかけた頭を落ち着かせる。

 

(大丈夫。俺は一人じゃないから)

 

「じゃ、皆手筈通りに。頼むな」

「了解です」

「やらなきゃ死にますもんね...死にたくないから頑張ります」

「分かりましたわ」

「ん...」

 

皆の表情が引き締まったものになって、俺は赤嶺の方に向き、目を閉じる。

 

(赤嶺はわざわざ俺と、俺達と戦うためだけにここまで離れた。目的があるのは明らか)

 

今の彼女なら、一人で全員と戦うことも出来た。それをしないのはやはり、自分を囮として使い、俺達を引き離しておくのが目的な筈。

 

狙いは俺か、防人か、それ以外か。本命は造反神か、大量の軍勢か。はたまた別の何かか。

 

(勇者としてのシステムは、同じなんだろうな)

 

以前東郷はバーテックスを利用して神樹を倒そうとした。それは神樹そのものから力を与えられている勇者に、産みの親を倒せる力はないから。今は造反神側にいる赤嶺も、元々神樹から力を授かった身。ここは覆せない。

 

そうでもなければ、神樹へ向かう赤嶺を追いかけるだけの鬼ごっこが始まりかねない。

 

(まぁ全部引っくるめて、一番面倒なのは...後手に回らざるを得ないってこと)

 

今の俺達と赤嶺の差は、ただの小細工の詰め合わせで勝てるようなもんじゃない。あいつの作戦がある程度成功して心理的余裕が生まれ、隙を作らせ、やっと希望が見える程度。銀がいればまた別だが、あいつがいなければ戦線は長く持つか分からない。

 

だから何らかの状況に陥るまで、恐らく赤嶺は倒せない。というかそれでも倒せるか分からない。

 

でも。それでも。

 

(こいつは敵であり、敵じゃないから。全力で、本気で)

 

「俺達は、お前を『倒す』。絶対だ」

 

音で皆の準備が整ったことは分かった。俺は静かに目を開く。

 

赤嶺の瞳を真っ直ぐ見つめて_______背中に懸架してある『双斧』を掴んだ。

 

「行くぞ。赤嶺友奈」

「来なよ。本気で私を倒してみせて」

 

刹那の間から、同時に一歩目を踏みしめ________

 

「叩き潰す!!!」

「火色舞うよ」

 

斧と拳がぶつかった。

 

 

 

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