古雪椿は勇者である   作:メレク

282 / 336
花結いの章 14話

かつて、部室に向かうことがこれほど億劫だと感じたことはあっただろうか。

 

自問自答しても答えは曖昧で、また俺自身を責めることが増えてしまう。いつまでも答えを出せないのか。と。

 

(......)

 

『私は...貴方と一緒に、ずっといたくて...ッ!!!!』

 

何度目か覚えてないフラッシュバック。脳内に出てくる彼女の顔は、ずっとずっと泣いていた。笑顔な彼女の方がずっと見てきた筈なのに。

 

(...もし)

 

もし、あの言葉に続きがあるのなら。いや、続きがなくても、ひなたの思いが俺の想像通りであったなら。

 

(もしそうなら、今まで...)

 

あり得ないことだと思い込んでいたことは__________

 

「椿先輩!」

「っ!」

 

突然服の袖を掴まれ、進ませていた足を急に止めた。

 

「何する...友奈?」

「赤信号ですよ!」

「え、ぁ」

 

前を見れば、赤いランプを点滅させている信号があった。適当に歩いてただけで信号無視をしそうになってたらしい。

 

「悪い。ぼーっとしてた」

「大丈夫ですか...?」

「...お前こそ、体調は平気か?」

「はい!もう健康体です!!」

 

勢いの良い蹴りを繰り出して元気をアピールする友奈。俺は綺麗な足先の方にだけ視線を向けて「そっか。よかった」と続けた。

 

(スカートでやるのやめてくれ...)

 

友奈は銀達と同じように病院のベッドで寝ていたメンバーの一人だが、その後の体調に影響はなさそうだった。

 

(...守れたし、守れなかった)

 

彼女達を安静に寝かせることが出来たという意味では守れた。だが、気絶させてしまう程に、俺は守れなかった。

 

「やっぱり、疲れてますか?」

「...かもな。色々ありすぎて」

 

嘘はつかず、かといって正確なことを話す気力も起きず。

 

「んー...」

「っ!」

 

そんな状態だったから、おでこに触れそうだった友奈の手を咄嗟に払ってしまったのも、深い理由は考えられなかった。

 

「あっ...」

「いや、えっとな?ちょっと厚着しすぎて汗がついてたから...気持ち悪がられたら俺引きこもる自信がある」

「そうだったんですか...って!私そんなこと言いませんよ!!」

「わ、悪い...」

「むー...椿先輩」

 

屈めというジェスチャーに応えて膝を曲げると、友奈はもう一度手を伸ばしてきた。今度は俺も抵抗することなく受け入れる。

 

彼女は手を俺のおでこに当てて_____前髪を上げる。

 

「え」

「失礼しますね」

 

今度は完全に固まってしまった。俺のおでこには、彼女のおでこからしっかりと熱が伝わってくる。

 

「...うん!熱はなさそうです!」

「いや、おま」

「?」

 

小さく首を傾げる友奈は、恐らく純粋に心配してるから全く気にしていないのだろう。唇がつきそうな程に近づいたことに。

 

(俺が意識しまくってるだけじゃねぇか...!)

 

「椿先輩?」

「...すーっ、はーっ」

「何故深呼吸!?」

「なんでもない。心配してくれてありがと」

「それはどういたしまして...じゃなくて、何でしんこきゅわわ!?」

 

少し雑に頭を撫でる。これで友奈の質問はキャンセル出来た筈だ。さらさらして綺麗な彼女の髪をこんな風にするのは凄く心苦しかったが、それは許して欲しい。

 

「なんでもないんだ。ほら、行くぞ?」

「ぁ、待ってくださいよー!」

 

友奈は少し慌てて、信号を渡る俺についてくる。その仕草に、少しだけ元気を貰えた。

 

「...ありがとな」

「へ?」

「何でもないから」

 

一度目を閉じて、また開ける。さっきより落ちついた心が、改めて一歩進ませる。

 

(...うん。大丈夫)

 

「はぁ...あ、そう言えば椿先輩。シーナちゃんがいなくなったって聞いたんですけど、何か知ってます?」

「そうなのか?」

「はい。書き置きがあったみたいで、大赦の皆さんもそこまで心配してないみたいなんですが...」

「......それなら、心配しなくてもいいんじゃないか?ひょっこり現れた奴だ。ひょっこり消えるんだろ」

「適当ですね...」

「...まぁ、ちょっとな」

 

 

 

 

 

「おはよう」

「あ、椿君!おはよう」

「結城と一緒だったんだな?」

「たまたま一緒になってな」

 

球子に返事をして、少し視線を巡らせる。目当ての人物は直ぐに見つかった。

 

(......ひなた)

 

「どうかしました?椿さん」

 

彼女は昨日のことなどなかったかのように微笑む。

 

携帯で通話等はできなかった。何を話すべきなのかは今もまだ纏まっていない。

 

でも。

 

(確かめないと。確かめて、答えを定めないと...)

 

一度口をきつくしめてから、俺は声を発した。

 

「ひなた。話が」

「セェェェェフッッ!!!!」

「だぜぇい!!」

「集合時間には間に合ってないわ。銀。そのっち。ダメよ」

「げっ、マジか...」

 

扉をぶち壊しそうな勢いで入ってきたのは銀と園子だった。二人して「たはは~」と笑ってる。

 

「二人とも...」

「お、おはよ椿」

「おはよ~ございま~す。つっきー先輩」

「...それは園子ちゃんと混ざるから」

「私も園子だよ?」

「そりゃそうだが、そうじゃないだろうが」

 

園子ちゃんの方を見れば、嬉しそうに手を振るだけだった。

 

ため息をつくものの、この二人も先日奴に倒された二人だ。

 

「...二人とも、大丈夫か?」

「全然問題なーし!」

「うん。大丈夫だよ」

「そっか...よかった」

「じゃあ全員揃いましたし、始めましょうか?」

静かに目線が一つの方向へ集まる。そこにいるのは、特に拘束もされておらず、椅子に座っている________

 

「赤嶺...」

「寝不足?ちょっと顔色悪いように見えるけど」

「......気遣いはいらない。話すならさっさと全部吐いて貰うぞ。あの古雪椿も含めてな」

 

ひなたへの話は後回しになってしまうが、勇者部として、ここに召喚された者全員のことを考慮したら、赤嶺から情報を聞き出す方が優先度は高い。

 

「あの古雪椿って...皆を襲ったっていう?」

「あぁ」

「そうだね。造反神が用意した秘密兵器。強かったでしょ?」

「......」

 

彼女自身もはぐらかすつもりはないのか、すぐに口を開いた。逆に、俺は少し黙ってしまう。

 

「ふーん...まぁいいや。気を取り直して、まずは現状から話そうかな......貴方達は私と多くの敵を倒し、四国の殆どを取り返した。残るは高知のほんの一部と、造反神のみ」

「やっぱり、造反神とは戦うのね」

「最後の戦いというのは...」

「私が相手するのは。って意味だよ。こうなるか、君達が負けるかの二択だったから。で、今度こそ造反神と戦い、鎮められればお役目終了ってことで、皆元々いた世界に戻ることになる...全ての記憶を失ってね」

「記憶全消去かー...なんかないの?特別措置とか、ご褒美とか」

「...そっちでも色々調べたんじゃないの?ね?」

 

赤嶺からの視線を見ないように、少し顔をそらす。

 

「......現状、こっちにそういった情報はない。お前が何か知ってるんじゃないかと思ってたが」

「上里ひなたさん。貴女は?」

「...召喚された時に戻れば、これまでの記憶は消え、強くなった経験もリセットされて元の世界へ戻る......残念ながら、今はそんな状態です」

「プラスに考えたら、年は取ってないね?」

「確かに年は重要だけど、記憶の方が欲しいわねー...」

「そうですね。今戻れば前よりバーテックス倒し放題なのに」

 

銀ちゃんが言うのを、俺は黙って聞くしかない。ここで否定するのはおかしいから。

 

「確かに、皆ずっと強くなってるもんね...」

「メモとか書いといたらダメなのか!?」

「書くのは自由だけど、そんな物は現実に戻せないよ。意地悪とかじゃなく、世界の理としてね」

「......」

「そして、元に戻った世界で、各々の生活はまた始まって...この内何人かは、過酷な運命を辿る」

『!』

 

放たれた決定的な言葉に、全員に緊張感が漂った。特に、若葉達や、東郷達。

 

「冗談、ではないのよね?」

「冗談なんかじゃないよ。というか貴女は死ぬよ?白鳥歌野」

「おい赤嶺」

「諏訪と四国はやがて連絡がつかなくなる」

「なっ...!?」

「お前!!!」

「確認したいなら、今私に突っかかってきた人に聞けば分かるんじゃないかな?」

「っ...!!」

 

赤嶺に飛びかからんばかりの勢いを見せた若葉は、苦虫を潰したような顔で腕を降ろした。その動作に、狼狽していた水都が更に震える。

 

「あり得なくはない、か。ソロで守ってた私達は危険だもんね...じゃあ尚更、何か方法はないの?一人であんなところに戻りたくはないんだけど」

「簡単だよ。造反神を倒さなければ良い。ここなら年も取らないし、皆でいればいい」

「そういうわけにはいかないだろう!」

「赤嶺友奈、貴女...私達を惑わせようと」

「ちょっと待ってノギー!千景さん!赤嶺の話を遮らないでください!」

 

雪花の荒げた声が強く耳を打った。

 

「雪花、お前...」

「聞いてなかったの?戻れば歌野は死んじゃうんだよ?ノギーは分かってるんじゃないの?」

「っ...」

「あ、あのー...赤嶺さんの嘘ということは、ないのでしょうか?皆様」

「だったら嘘のついでに聞いてよ。三ノ輪銀ちゃん!!」

『!!』

「え、ここでアタシ?」

「貴女は」

「やめなさいっ!!」

「死ぬよ」

 

無慈悲に、容赦なく。東郷の制止は答えの助けにしかならず。赤嶺の言葉は矢のように放たれる。

 

 

 

 

 

「あぁそれですか?別に今更ですよ。分かってましたから」

『え?』

 

しかし、あっけらかんと言う銀ちゃんに、寧ろ周りが困惑していた。

「いやだって!大きいアタシが何故か名字変わってて、屋根を走ったりするんですよ?アタシに気づかれたくなかったらわざと隠すでしょこんなこと」

「...まぁ、そりゃな」

「さっすがアタシ。賢いね」

 

否定することなんて何もない。まさにその通りだった。

 

「...ちっちゃいアタシには、真実を分かった上でちゃんと選んでほしかったから」

「アタシは帰り道を選びますよ。死んだのに生き返ってるとかワケわかんないですけど、未来のアタシがこんな感じなら、全然悪くないです。勿論死なないよう努力はしますけど!」

「銀...」

「...銀ちゃんと全く同じじゃないけど、私も察してたことだし平気よ。若葉は正直過ぎるから。寧ろ誤魔化せてると思ってたのかしら?」

「歌野...」

「うたのん...」

「でも、私だって負けないわ。私自身もみーちゃんも、全部守ってみせる」

 

(あぁ、強いな)

 

率直に、そんなことを思った。幾ら情報が出ていたとはいえ、覚悟が決まっている小学生の銀が。爽やかな笑顔を未だに出せる歌野が。あまりにも大きく、輝いて見える。

 

(強すぎるよ...)

 

「でも、私はソロ同盟も組んでますから」

「ソロ同盟?」

「...私のことだよ。私は反対。よく考えてよ?戻らなければこの世界で楽しくやっていけるんだよ?それなのに......冗談じゃない」

 

雪花の瞳が眼鏡のフレームに隠されているのにも関わらず、表情がたやすく読み取れる。

 

だから、その後の言葉も予想は出来た。

 

「皆。確定的な情報が出てきたところで本音を言い合わない?戻るべきか戻らぬべきか。一人一人の意見を聞いて、戻らない派が多いなら戻らないでおこうよ」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「なんだか、急になっちゃったね」

「そこについてはごめんね...でも、結城っち達と揉めたいわけじゃないってのは、分かって欲しいんだ」

 

これ自体は私の本心。きっとこの世界に来たばかりの私ならそんなことも思わなかった。

 

(でも...それでも私は)

 

だからこそと言うべきなのか、尚更戻りたいとは思えない。

 

「そんで、まず言い出しっぺの私の意見ね。造反神を倒すのは反対。皆でいられるだけいようよ」

「タマも賛成だ。というか、現実に戻れば元の時間に戻るだけなんだろ?だったらバチは当たらないと...」

「メリットとデメリットも考えないとダメよ」

「ん、まず造反神を野放しにしておくことが問題」

 

割と安易に球子ちゃんが反応してくれたけど、そこに手をあげるのは芽吹としずく。

 

「まぁ、最初の状況はあたし達が今の造反神みたいな状態だったしねぇ...自陣が取られ返す、それもありえなくはないか」

「...私は、それこそ赤嶺さんの目的だと思います。この人は完全に降伏しておらず、造反神が何か策を打つまで、こちらの状態を悪くしておこうという...」

「本人の目の前で酷いね。伊予島杏さん。私は事実を言ってるだけむぐ」

「煽るなよ。話し合いが進まないから」

 

椿さんが赤嶺友奈の口を塞ぐ。本人は抵抗する様子もなく大人しくなった。

 

「ともかく。メリットは記憶を保持したまま帰る可能性があるかもしれないことと、長く皆といれること。デメリットは造反神に逆転を許す可能性があること。後は...」

「......一つ付け加えさせて頂くなら。年単位でこの世界に留まることは、それだけ神樹様の地力...エネルギーに問題が出る可能性があります」

「ひなた...お前」

「エネルギー?椿さん、どういうことです?」

「...ある程度推測も入るが、簡単に言えば、この世界は俺達とは別世界の神樹が作ったものだ。俺達がここでこの世界の神樹のエネルギーを消費させ過ぎた場合、本来のこの世界の勇者に送るエネルギーが足りず、それこそ他の神に四国ごと倒される可能性がある...ってことだ」

『!』

 

言っているのは、自分達の判断で、世界を一つ消すかもしれないということ。多くの人が消えてしまうということ。

 

元々造反神を倒すためにこの世界へ私達を呼んだのは、この世界の神樹様って聞いている。突然召喚してきた身勝手なことに対して私達の都合でエネルギーを消費するのは良い感じの仕返しと取れなくはないが、その世界に住む人は全く悪意がないのだ。

 

_______________それでも。

 

「それでも私の意見は変わらないよ...他の人はどう?」

「私個人としては戻ることを選択するわ」

 

目を向けると、一人が反応した。同じ立場の一地方に一人の勇者、歌野。

 

「神樹に悪い影響が出たり、造反神に逆転される前に倒すべき...そして、現世の運命なんて変えてやるわ。諏訪の皆が待ってるしね」

「...あんた、強いよ」

 

羨ましくあり、同時に心から尊敬する。帰りを待ってくれている人がいて、その人達のために危険を承知で進んでいくなんて。

 

「......私が強く見えるのは、みーちゃんのお陰よ」

「うたのん...?」

「みーちゃんが一緒だから、側にいてくれるから、私は頑張れるの...だから、お願いするわ。みーちゃん」

「な、何かな?」

「危ないって分かっているけど、それでも、一緒に戻りたい。ついてきて欲しいの。そうすれば私、全力以上の力で戦えるから」

「!!」

 

真剣な歌野の言葉は、私の胸にも突き刺さるような感じがした。直に向けられた水都は、笑ってから口を開く。

 

「置いていかれるより全然いいよ...ううん。その言葉、凄く嬉しいよ。うたのん」

「私もよ...ごめんなさい雪花さん。さっきソロ同盟なんて言ったのに、破っちゃって」

「......ここでどうこう言うほど無粋じゃないつもりだよ」

 

二人の確かな絆の前に、とやかく言うつもりはない。

 

でも、だったら尚更無策で歌野を帰したくない。

 

「他の人は?」

「私も戻る」

「棗さんも、友達が待ってるんですか?」

「それもそうだが、皆だ。沖縄の皆が待っている。そして...」

 

言葉を止めた棗さんは、赤嶺の方を見た。

 

「さっき無理してそうに話していた赤嶺も、私が関係あるらしいからな。すまない、雪花」

「棗さん...」

「お姉さま...」

「アタシも戻る!さっきと意見は変わらん!」

「銀!」

「そんな顔すんなって須美ー。さっき話題にあげられた人からかなーって思って...」

「そうじゃないわよ!」

「ミノさん死んじゃうかもしれないんだよ!?おっきいミノさんと同じようになるかは分からないんだよ!?」

「そんなの皆同じでしょ?まぁ、どっかの期限までは記憶を残す手段を探すとかなら...とも思うけど、それで何か嫌なことが起こるなら、アタシはしっかり造反神を倒してお役目を終わらせてから帰りたい」

 

(...こういう人達を、勇者って言うんだな)

 

自分が死ぬ可能性が高くても、何かの、誰かのために頑張る。私には眩しすぎるくらいに思えてしまう。歌野も、棗さんも、銀ちゃんも。

 

「それに!ここで決めないとなぁなぁになっちゃいそうだし。ちゃんと決める時は決めないと!」

「っ」

「銀ちゃん......」

「...私は残る派よ。銀」

「ちょっと意外だよ。須美が神樹様と逆の選択をとるなんて」

「...貴女の話を聞いて、帰るなんて言えないわ」

「......ありがとう。ごめんね?」

「むー...ミノさんわっしーとばっかり!私も残るからね!!」

「園子もかよー...」

 

なんならこのままいつもみたいな会話が続きそうなくらいだったけど、小学生の三人はそのまま黙ってしまった。銀ちゃんの視線は泳ぎに泳いで芽吹の方へ向いた。

 

「私達の立場もはっきりさせておくわね。防人組は全員、戻る方を選択する。ただ記憶を保持できる手段を取れるならそれを全力でしてからね...まぁこれは、戻る派全員に言えることでしょうけど。今すぐ帰りたいなんて人はいないでしょ?」

「当然ですわ。ですが、家名はあげてナンボ。私(わたくし)も戻りますわよ」

「私は、神樹様の導きに従います」

「私はメブが戻るなら戻ります。怖いけど。凄く怖いけど!」

「それでいいのですか雀さん...」

「私は皆に守って欲しいけど、メブにしっかり守って貰えれば良いから...そのメブが帰るなら、私も帰ります」

 

椿さんの言うことはごもっとも。でも、雀は芽吹を盾にしながら口にする。

 

「クソ...雀と同意見なのはムカつくが、俺は楠のもんだからな。戻るぞ」

「...これは、シズクの意見であり、私の意見」

「...成る程ね」

 

しっかり自分の思いで言ってるんだと二人は伝えてきた。なら特に言うことなんてない。

 

「じゃあ、後は...」

「タマはさっきと変わらん。残っていいと思うぞ」

「私は...私も、残ります」

「杏?タマに合わせたんじゃないんだろうな?」

「そんなことないよタマっち先輩。私は私の意思で決めた」

「そか。ならよし!千景達はどうなんだよー?」

「私は...ここに残る派。今の私の居場所はここだから」

「高嶋友奈も残る派で...全員が帰る選択肢に納得するまでは、帰りたくないな」

 

戻る派が増えた途端、残る派に賛同する人が_______というか、西暦の四国勇者組が残る宣言をした。

 

「私も残ります。なにがなんでも。それが可能なら」

「...私も同じ思いだ」

 

特にはっきり言ったのは、ひなた。いつものおっとりした感じじゃなく、巫女のお役目をしてる時のような凛とした声を響かせるのを聞いて、どこか安心と納得をした。

 

(そっか...そだよね)

 

若葉も力強く頷いて_____まぁ、結果として味方が増えてくれるのはありがたい。

 

「後は...讃州中学と、讃州高校の皆だね」

「思いは、決まってるのか?」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

『私は...帰る方を選ぶ。ごめんなさい』

 

友奈は、戻ることを選んだ。

 

『結城っち...ううん。謝ることなんてないよ』

『友奈ちゃんと別々...で、でも、私は残ることを選びます』

『!?』

『嘘...あの東郷が!?』

 

東郷は、残ることを選んだ。

 

『わっしー...』

『もし、銀が死なずに済むなら、それに越したことはないと思うの...』

『そっか~...私は戻るね』

 

園子は、戻ることを選んだ。

 

『にぼっしーは?』

『私は...残るわ』

『そっか~』

『えぇ』

 

夏凜は、残ることを選んだ。

 

『ほら次』

『あたしも残る派。てか、なんで死ぬって言われてる奴の方が覚悟決まってんのよ。あたしまた事故に遭うかもなんて言われたら帰るの嫌よ』

『え、風さん事故にあったことあるんですか!?』

『今そこ!?え、えーと...また今度ね』

 

風は、残ることを選んだ。

 

『私は戻ります。勿論皆さんが納得する結果が得られれば良いんですが、二つのうちどちらかにするなら』

『樹...』

『ごめんねお姉ちゃん。今回はお姉ちゃんと別だよ』

『......何言ってるの。喜ばしいわ』

 

樹は、戻ることを選んだ。

 

『後は』

『アタシは帰るよ。今ここじゃちゃんとした理由は話せないけどね』

『何よそれ』

『なーんでも。ま...一定数はいるでしょ?』

『......』

『ほら』

 

銀は、戻ることを選んだ。

 

『じゃあはい。最後の人』

 

その一言で、視線が一気に集まった。

 

(...自分のことは、一度置いとこう)

 

『椿先輩は...どうですか?』

 

一人一人の意見を聞いた。皆が言ってたことをちゃんと、真剣に。

 

ひなたのことや、俺自身のことは置いておく。今の思考には関係ないわけじゃないが、今すぐ答えを得れる訳でも、理解できるわけでもない。

 

今の、俺の意志は__________

 

「造反神を放置しておいて記憶を持ち帰る手段が見つかるなら、俺も嬉しい。銀や歌野が死ぬのも嫌だ。だけど、神に逆らって碌なことはない」

 

なんなら、こうした考え自体も明日には消されているかもしれない。こうして皆で言い合うことなく、造反神に立ち向かっているかもしれない。

 

そんなことは、耐えられない。

 

「だから俺は、造反神を倒してこの世界から元の世界に早く帰る方を取る」

 

全員に聞こえるよう、きっぱり告げた。

 

「...そう、ですか。ん」

 

複雑そうな顔をする友奈が珍しく、笑顔になって欲しくて頭を撫でてしまった。

 

「ま、あくまで二択ならって話さ。なんなら皆うちの時代に帰れればいいんだがな?」

「それが出来ないから言い合ってるんでしょうが!」

「夏凜ナイスツッコミ」

「はっ!!しまった!!」

「いやしまったって何よ...でも、見事に割れちゃったね...どうしようか?」

「そこに提案」

 

すっと手をあげる。再び視線が集まるが、もう慣れっこだ。

 

「このまま話し合ってても平行線。仲間割れは赤嶺の思う壺。かといって時間をかけても造反神が逆転の手を打ってくるかもしれない」

 

ちゃんと悩み、相談して、それぞれが自分の進みたい道を選んだ。この後俺を含めて話し合いを進めて心変わりする人はいるかもしれないが、どうなるか分からないなら。

 

(ならさ...はっきりさせようぜ。俺含めて)

 

 

 

 

 

「だったら、ここは勇者部(うち)らしくなく、大喧嘩といかないか?」

『...え?』

 

俺の提案に皆が十人十色の反応で返してくれたのを見た時、暗くなりかけていた空気も吹き飛んでいくようだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。