古雪椿は勇者である   作:メレク

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花結いの章 15話

「頼んでいたものは?」

 

「ここに。使い方は他の方々と同じになっています」

 

「ありがとうございます...すみません。いきなりで」

 

「いえ...お伝えした通りですが、そもそも使用出来るのか、という問題にはお答え出来ません」

 

「分かっています。駄目なら諦める他ありませんし...でも、今ならやれると思うんです」

 

「......」

 

「ただの思いつきなんですけどね」

 

「...個人的な思いとしては、彼は間違いなく驚いた顔をするでしょうから。陰ながら応援させて頂きます」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「喧嘩しよう!なんて言い出した時はびっくりしたんですよ。アタシ達も」

「そんな風には言って...いや、似たようなもんか」

「まぁ、もっと驚いたのはこんなにすぐやることになったほうなんですけどね?」

「それは俺じゃないだろ。予想の一つではあったけどさ」

「予想はしてたんだね...椿君」

「いやー、いつもお世話になります。春信さん」

 

俺の言葉に、春信さんはついに動いた。

 

「折角作り上げたレイルクスを一度の戦闘でダメにしたのはまだいい。必要経費だ。その報告が次の日になるのも。だけどその話のついでに大勢の勇者が全力で戦える場所を用意しろなんて...随分人使いが荒くなったね。君は」

「いやー」

「でも僕が一番怒ってるのは夏凜と反対意見だということだよ僕は君を許さない!!!」

「そう言われると思ったら別にいいかなって」

 

俺が言った大喧嘩とは、言ってみればただの試合である。ルールは単純。残る派と戻る派の二組でチーム戦。残った人が所属するグループの意見に従うというもの。

 

『だから!他に方法がないからこうやって!!!』

 

相談が出来なかったというのもあったが、言い争って分裂したことがあるから。

 

『出ていって!来ないで!!』

 

無理矢理連れ出したとはいえ、拒絶されることを経験しているから。

 

だから、後腐れないように提案した。やってることは河川敷で殴りあい、友情を深める不良と同じである。

 

「にしても、まさか丸亀城にまで来るとはな。確かにこの人数が戦える場所なんてそうないだろうけど...」

「訓練と言っても基本は少人数、使えて防人の訓練場じゃしょうがないか」

 

西暦にいた頃俺も暮らしていた丸亀城は、大赦管轄で保存されている場所の一つだと聞いた覚えがあったし、それこそ昔バトルロワイアルで使った場所なのだから、全域を使うならば最適なのだろう。

 

(一部は改築されてるな。曖昧な記憶を思い出しながら戦わなくていいのはいいと捉えるか。今から覚えるなら皆条件は同じはず)

 

正直、提案したその日に出来るとは思わなかったが、気持ちがぶれる前にやった方がいい。

 

『腕っぷしで会話ですか。分かりやすくていいですね』

『メブそんな脳筋だったっけ!?』

『...うん。話し合いの一つとしてはありだと思う』

『確かに、悠長に話し合ってる隙をつかれて任務失敗、ここから追い出されるなんてオチ、笑えないし』

 

皆からの意見は、意外に乗り気だった。もう少し否定的な意見も出るかと思ってただけに拍子抜けで、同時に嬉しくもある。

 

『決まってんだろ!!大切な仲間に向ける武器なんて、俺は持ってない!!!』

 

(昔はそんなことも言ったけどなぁ...)

 

唐突にフラッシュバックした記憶の状況とは違う。相手を倒すため、殺すための武器ではなく、相手と交えるための武器だから。

 

その上で_____意志を、通す。

 

「椿」

「...」

「椿!」

「っ、悪い。どうした?」

「...ついたよ」

 

銀に言われ、視線の先にいた春信さんが示す奥には、行き止まりの扉があった。張り紙で控え室とかかれている。中には俺達と同じ、戻る方に一票いれたメンバーがいる筈だ。

 

作戦会議なんかもあるだろうからと、バスで移動した俺達を一人ずつチームごとの部屋へ誘導するよう提案したのは杏だ。確かにこれで、次会うときには戦う時になるのだろう。

 

俺と銀が一緒なのは、最後までバスに残ってた二人で、同じ戻る派だったからだ。 

 

「ありがとうございます」

「いや、いいんだ...良い場になるといいね」

「「はい」」

「古雪君!三ノ輪さん!」

「安芸先生?」

 

別方向の廊下から走ってきた安芸さんは、少し息をきらしていた。

 

「どうかしましたか?」

「いえ...あの子の姿が見えなくなって、貴方達なら何か知ってるかと思って...」

「あの子って...シーナのことですか?」

「えぇ、そうよ」

「......気にしなくて大丈夫だと思います」

「椿?」

「詳細は話しにくいんですけどね」

 

あいつについては、ある程度察しがついている。とはいえ、小さい子が突然行方不明になったら戸惑うのも無理はないだろう。

 

「...大丈夫なのね?」

「はい。というか俺達が何か出来ることはないと...少なくとも、探した所で意味はないでしょう」

「......手紙もあったし、なら、探すのは一旦中止するわ。これから審判の役もするからよろしくね」

「はい」

「僕もするから...じゃあ、先に行って待ってるよ」

「分かりました。色々決まったらまた連絡します」

 

春信さんと安芸さんが並んで歩いていくが、年を重ねたことによる経験か、その人自身の才なのか、歩く姿すらどことなく大人っぽさを感じる。

 

「椿」

「ん?」

「いいの?あんなこと言って。というかアタシも心配ではあったんだけど」

「放置する以外俺達がとれる行動がない」

「ふーん...そこまで言うなら平気か。じゃあ気を引き締め直して、行こう!」

「あぁ」

 

『よーし!椿!行こう!!』

『うん!!』

 

どことなくやり取りに懐かしさを覚えながら、扉を開けて入っていった銀に続いた。

 

 

 

 

 

『では、これより勇者の皆様による模擬戦を行います』

 

春信さんのアナウンスが耳を打つ。それを聞いた俺は静かに目を開けた。

 

あの後別室の残る派と通話で話した結果、具体的なルールが決まった。

 

丸亀城を挟んだ反対位置をスタート地点とし、残る派と戻る派で分かれて戦う。最終的に残った一人のいるチームの意見を勇者部の主軸行動とする。

 

勿論バリアを貫通させ命を狙うなんてことはしないため、バリアに強打が入った者が失格扱いとなり以降戦闘禁止となる。判定は公平にするため、開始、終了宣言と同じく大赦にしてもらう。メインは春信さんと安芸さん。

 

判定材料として使うため、辺りにはカメラつきのドローンが何台も飛んでいた。気分は有名なスポーツ選手の試合だ。

 

また、誰がやられたなんてアナウンスも逐次行うことになり、春信さんが戦闘途中のメンバーがいないタイミングになってから告げてくれるらしい。

 

(色々決めたが、とりあえず生き残りながら相手を倒せばいい...そして)

 

倒すべき相手は、丸亀城を挟んで向こう側に待機している。既にこっちのチームで作戦は組んだし、抜かりはない。

 

気になる点があるとすれば_________

 

「にしてもさ」

「?」

「なんか不思議な感じ」

「何が?」

「まさかアタシと椿が同じ服で一緒に戦うことになるなんて思わなかったからさ」

「あ」

 

銀に言われて気づいた。今の俺は昨日から引き続き、いつもの戦衣ではなく、かつての、銀と同じ勇者服を身に纏っている。彼女の隣に立っていながら彼女と同じ服を着ているのは、これが初めてなこと。

 

「......これで俺が男の姿に戻ってたら、完璧だったんだがな」

「何が?」

「何でもないよ」

 

女の俺はどうしても自分の体という認識が持ちにくく、むず痒く思うところがあった。

 

__________それでも、確かに、熱が籠る。こんな状況なのに嬉しさを感じてしまう。

 

心を落ち着けるように、ミサンガをつけた左手を胸に当てると、服越しにサファイアのペンダントが確かな感触を返してきた。

 

『制限時間は特になし。事前に話された通りのルールに従うものとします。また、例外が出た場合、公平に行うためこちらの判断で決めさせて頂きます』

 

「っと、そろそろか」

 

気合いを入れ直すため頬を叩く。パンパンと大きめの音が鳴って、頭のギアを上げさせた。

 

「じゃあ皆、最初は作戦通り、後は適当に...やるからには全力で倒そう」

「言われるまでもないです!ノープロブレムですから!!」

「三姉妹コーデに不可能なし!やりましょう!!」

「なぁ三姉妹って俺入れてるよな?せめて三兄妹にしてくれない?」

 

なんとも微妙な空気にしてしまったのを察し、咳払いをして場を整える。ここで不安を煽る必要はない。ただ士気を高めるだけ。

 

「ともかく、頑張っていこう!!」

『おーっ!!』

 

『では、模擬戦を開始します』

 

春信さんの号令後鳴り響いたブザーの音と共に、俺達は走り出した。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

「初動としては成功でしょうか...?」

「油断しないで須美ちゃん。相手は古雪先輩に樹ちゃんに芽吹さん。こちらもだけど、指揮官は大勢いるわ」

 

戦場において指揮官は少ない方が一人の指示が通りやすいものの、勇者部ならより有益な会議が行われていて当然とも言える。そして、古雪先輩等は奇抜な意見を出しやすい。

 

(ここにこうしてすんなり来れたのも、怪しい気がするし...)

 

丸亀城の最上階部。周りを見渡すのに絶好の場所に、私達は難なくたどり着いた。初動から向かったとはいえ相手も予測出来ることであり、少し拍子抜けだ。

 

(それとも、読んでいる...?)

 

楽観的想像は出来ない。読まれていると考えるのが自然だろう。

 

「皆さん警戒を怠らないように。最低でも仕事は果たしましょう」

「伊予島さん...えぇ。そうね」

 

もし読まれていても、迎撃し、それ以上の戦果を出せれば良いだけのこと。そのために射撃武器を持ったメンバーが揃っているのだから。

 

遠距離の高所を取れたのは大きい。

 

「ま、大船に乗ったつもりでいろよ。タマに任せタマえ」

 

私、須美ちゃん、伊予島さんに加え、小さな声で気合いをいれる球子さんの四人編成。ここから敵を見つけて意識外から攻撃する。

 

他の味方と通信は出来ない為、自分達で見つけるしかないが________

 

「じゃあ、始めましょう」

 

銃を構えた瞬間から、私達は一気に静かになった。この場所が見つかっていないなら、初弾は大きな意味を持つ。

 

(敵は...!)

 

相手は余りにも早く見つかった。木の上に乗って左右を見渡しているのは________

 

「そのっちを見つけたわ。隣に園子ちゃん」

「私は棗さんを見つけました...こんなにすんなり見つかるものでしょうか?」

「あり得ないと思います。そのっちなら尚更」

 

別に隠れてないわけではない。それでも私達が遠距離から狙うことも分かっている筈で、少し不気味さがある。これでもし、あちらがこの高所を陣取っているなら話は別だが。

 

気づかれて罠を張られているのか、まだ普段のように眠たそうにしてるだけなのか。

 

(いえ...それはないわね)

 

「...そのっちを狙って一発だけ撃ちます。その後どんな結果であれここを放棄する」

「いいのか?それだと...」

「私としては、ここで皆を失うことに抵抗があるわ。いくらお願いされたとはいえ......もう目的も」

 

 

 

 

 

「それは出来ないわね」

『ッ!?』

 

本能でそれまでいた場所から飛び退くと、その場所に銃弾が当たる。

 

「芽吹さん...!」

 

二本の銃剣を構え、追加装備で空を飛んでいる芽吹さんは、躊躇うことなく乱射を始めた。

 

(制空権を取られた...っ!!)

 

私達は何も言わずとも迎撃を始める。空へと飛んでいく弾丸や弓矢はすれすれの所で避けられていた。

 

「きゃっ!?」

「大丈夫か須美!!」

「球子さん...ありがとうございます」

 

回避に失敗した須美ちゃんに飛んでいった弾は、球子さんが間に入り込んで防いだ。

 

芽吹さんの一瞬驚いた隙は逃さない。無心で放った弾丸は芽吹さんに当たり__________その直前に、銃剣を滑り込ませた。右手の武器が芽吹さんの手元から吹き飛ばされるものの、これでは失格の条件には当てはまらない。

 

「くっ...でも、まだあるわ」

 

そう言った彼女は、背中に携えられた銃剣を握った。

 

(これじゃあ元のままね...)

 

「おい芽吹!!そんな空飛んでないで降りてこーい!!」

「嫌に決まってるでしょう」

「!タマっち先輩!!東郷さん!!須美ちゃん!!」

 

杏さんが何を言いたいのかは、完璧ではないにせよ何となく分かった。

 

「っ、おっしゃあ!!タマに任せタマえ!!!」

 

恐らく完璧に理解している球子さんは、勢いよく旋刃盤を投げる。芽吹さんは危なげない動きで回避して、球子さんを狙った。

 

「させません!」

「いって!!」

 

続いて須美ちゃんと杏さんの狙撃。須美ちゃんのは芽吹さんの回避先を潰し、杏さんのは全く別方向へ_______

 

(......)

 

私は一度目を閉じ、心を落ち着かせた。『今この瞬間は攻撃が来ないから』

 

(...ここで、決める)

 

目を開いて高々と銃を掲げる。狙い澄ませた先には、体勢を崩している芽吹さんがいた。

 

杏さんが狙ったのは、球子さんが飛ばした旋刃盤の弦の部分。力を受けて途中から他の方向へ曲げられたそれは、円を描きながら芽吹さんへ当たった。

 

咄嗟に気づいた芽吹さんも銃剣で防いだものの、無理な体勢で防いだためか、慣れない空中制御のためか動きが止まっている。狙撃体勢をとる私を見てはいない。

 

何も言われず任された最後の一撃。狙撃の準備は出来ている。私は引き金にかける指を、躊躇なく動かした。

 

 

 

 

 

「はぁっ!!!」

 

銃声と共に爆発音と閃光が次いで、更なる銃声が鳴り響く。

 

『!?』

 

思いっきり光を見てしまった私は思わず目を瞑った。強烈な刺激に脳が処理しきれず、片手で頭を抑える。

 

「悪いな」

 

間髪いれずに聞こえた声は、背中への衝撃と共に訪れた。

 

(......あぁ)

 

「これで終わりと...樹、お疲れ様」

「お疲れ様です...ちょっと重たいですね、これ」

「普段ワイヤーしか使ってない奴からしたらな」

 

正常へ戻ってきた目は、予想と違わぬ姿を映した。

 

「樹ちゃん...古雪先輩」

「よ、東郷。悪いが脱落してもらう」

「うおぉ!?目が!目がぁ!?」

「閃光弾...」

「すみません、これも作戦なので...椿さん」

「分かってる。長居する気もないしな。じゃ」

 

暗殺者のように現れた二人は、すぐに消えた。

 

(してやられたのね...)

 

階下に潜伏していた二人が、上空の芽吹さんに気を取られているうちに奇襲。閃光弾で目を眩ませてから背後を攻撃。完全にやられた。

 

芽吹さん一人を道連れに、やられたのは四人。割には合わないだろう。

 

それでも_______私は、少しだけ笑った。

 

(最低限の仕事は果たした...作戦通りにいくよう、祈るだけね)

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「第一戦は圧勝ってところかな」

「そう言う割には、顔が渋そうですよ」

「まぁな...」

 

戦闘を行った城の一階に潜伏しながら話していた所、脱落者のアナウンスが流れた。作戦を組み立てた初動としては十二分の戦果と言えるだろう。

 

だからこそ、不安がよぎる。

 

「何が不安なんですか?」

「配置だ」

 

こちらの主な作戦としては、基本二人一組で動き相手と戦うもの。人数有利は戦術上有利を取るための基本認識とも言える。チームワークに関してはこと勇者部に対して不安はない。

 

そして、初動限定で立てた作戦が、昨日の戦いで破壊されていない芽吹のレイルクスによる上空監視、それによって見つけた遠距離武器所持者への強襲だった。芽吹が気をひいている隙に俺とパートナーの樹が接近し、対赤嶺戦用だった閃光弾の予備を使って一気に倒す。

 

目的は二つ。俺自身の意思表示と相手チームとの武器構成の違いだ。

 

前提として、俺達は今後どうするかを決めるために戦っている。しかし、戻る組はどうしても残る組より意志が弱いのだ。積極的に別れたい奴なんていないのだから。

 

だからこの作戦を通した。敵味方関係なく全員に、本来は造反神と戦うために取っておくべきだろうレイルクスや閃光弾等の消耗品を使ってでも、勝ちにいくと。容赦はしないと示すために。

 

閃光弾はそういう意味でかなり役に立ったと言える。かなりのメンバーに見られた筈だから。

 

そしてもう一つ。こちらは近距離重視の射撃武器である銃剣しか持たない一方で、相手には長距離射撃用の狙撃銃を持つ東郷、曲射に使える弓矢とクロスボウを持つ須美ちゃん、杏がいる。別の相手と戦ってる時に放たれればどうしても劣勢になりかねない。そういう意味で、先に叩きたいメンバーではあった。

 

だが、だからこそ。

 

「あそこには、遠距離武器を使うメンバー全員が揃っていた」

 

メンバーをおさらいすると、戻る組が俺、友奈、樹、園子、銀、銀ちゃん、芽吹、加賀城さん、弥勒、しずく、棗、歌野。計14人。

 

一方、残る組が東郷、風、夏凜、園子ちゃん、須美ちゃん、若葉、杏、球子、千景、ユウ、そして雪花。計12人。

 

槍投げを遠距離武器にいれなければ、遠くから相手を狙える武器を持ったメンバー全員があの場にいたことになる。

 

「単純に相手は数的不利だ。その上で、多方向から狙撃を狙うより、密集して一網打尽にされるリスクを負ったのは何故か」

「...各個撃破されるのを恐れた?」

「その理由がピンとこないから迷ってるんだ。このまま攻勢に出て取り返しのつかないことになってから目的に気づくのはまずい」

 

ルール上、失格のアナウンスは全員の戦闘が一通り落ち着いてから、戦ってる人に迷惑にならないようになっている。逆に言えば、各所で連続して戦闘が行われたら、気づかぬ内に自分がやられたら負け。なんて状況が出来かねない。

 

そして、この後は通信が出来ないことも考慮して各個自由にするようになっている。全く作戦がないのはどうしても不安要素が高くなる。

 

(何か見落としている...?でも、何を?)

 

「あの、椿さん」

「?」

「私はとりあえずここから動くことを優先した方が良いと思います。というより、それ自体が目的だったんじゃないかなって」

「それ自体?」

「椿さんが色々考えるため、適当な場所で潜伏させるためです」

「!!」

「違和感があるって隠れて考えくれれば他の人から戦えますし、少なくとも人数差を一定時間小さくできます」

 

言われて、ハッとした。俺にそこまで重きを置く必要があるのかは分からないが、ここまでの展開と目的としては合致する。

 

「成る程な...じゃあ急いで」

 

 

 

 

 

「その必要はないわよ」

「「!!」」

 

本能的に樹を庇って横に跳ぶ。直後、天井が崩れ俺達がいた場所に落ちた。

 

「悪いけど、今回は色恋抜きにして本気で行くって決めたの。だから、相手してもらうわよ」

「...丸亀城をこんなにして」

「もう屋上だって銃弾で穴だらけにしてるでしょうが」

「確かに」

 

咄嗟に出せた軽口を閉じる。というか、閉じるしかなかった。

 

「......お姉ちゃん」

 

大剣を構える風の目を見れば。

 

「さぁ!!いくわよ!!!」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「無理無理無理むり...」

「はぁ...全く、しっかりしてくださいまし」

 

隣の雀さんが盾を構えつつ震えているのを見て、いつも通りのため息が出た。

 

茂みに隠れているから声を出さない方が見つからないに決まっているのに、どうしても口は閉じれないらしい。

 

「だって弥勒さん考えてもみてよ。普段守ってくれてる皆が私を倒しに来るんだよ?メブだってさっき撃ち落とされてたし...」

「私(わたくし)ではそこまで信用できませんか?」

「信じられるけど弥勒さんだし。今までの行動考えて?」

「この雀は...」

 

小声で話し、辺りの警戒もしているとはいえ、流石に苛立った。

 

「...もう少し信じてくださってもよいではありませんの」

 

『加賀城さんはずっと隠れててくれ』

『私一人でですか!?』

 

先程出された指示は、至極当然のものだった。私が指揮官でも同じことを言うだろう。

 

雀さんの基本兵装は盾。本人の性格も考慮して、誰かを守ることはせず、どこかで潜伏するのがベストだろう。

 

もし最後に戦っていた人が相討ちでも、こちらの勝ちに出来る。実際芽吹さん達もそう話していた。

 

『でしたら、この弥勒夕海子が護衛につきますわ』

 

雀さんは本能的に自己防衛は出来る。ならば、彼女が出来ない露払いは私がすれば良い。

 

「ごめんごめん。つい近くにいるからさ...一人だったらもう怖くて自主退場してるもん」

「雀さん...」

「そ、それにほら、弥勒さんだからさ、気楽なこと言えるんだよ。なんだかんだ、付き合い長いしね...?」

「......」

 

照れてるように言ったその言葉を聞いて、私は。

 

「なんだかこれから死ぬ人のフラグにしか聞こえませんね」

「酷すぎる!?折角人が慰めたのにー!」

「はいはい」

 

軽く宥めながら、私は雀さんの方を向き_________飛び出した。

 

「へ?」

 

いつもの危機感知能力が働かなかったのか、それとももっと遅くから回避できたけど、庇われたことで阻害されたのか。原因は分からないが_____

 

「ぐっ...!?雀さん、逃げてくださいまし!!」

 

雀さんに向けた攻撃を庇ったことで私が切られ、蹴り飛ばされたのは事実だった。

 

木々の隙間から降り注ぐ日の光が、銀の刃を輝かせる。私自身、あの光が見えなければ動くことはなかっただろう。

 

「へ、あ、うわわわわわわわ!?!?」

 

段々事態を理解し始めた雀さんは、今尚振るわれる刀をすんでの所で避けている。

 

 

 

 

 

だが。

 

「逃がしは、しない」

 

その瞳は、その姿は、まるで死の概念を植えつけてくる死神のようで。

 

(これが、あの人の...西暦で最強と謳われている、彼女の本気...?)

 

既にルール上脱落し、何も出来ない私には、雀さんが盾を弾かれ上から切られる様を見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

『加賀城雀、弥勒夕海子、脱落です』

 

 

 

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