古雪椿は勇者である   作:メレク

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ついにこの作品、300話を達成しました!皆さんここまで見てくださって本当にありがとうございます。

この章は始まったばかり。お楽しみに。


花紡ぎの章 3話

結構あっさり、約束の二日間が過ぎた。

 

「...どうやって用意したんです?」

「色々協力して貰ってな。この前の演説で反応が良かった人を中心に話を回して、後は適当に」

 

荷詰めを終えた海来さんが、最後の蓋をしながら答える。

 

「よし」

「よくそんなの、一人でできましたね」

「まぁ、ホントに俺一人じゃ流石に無理があるよ。ちょっと裏技というか...てか、この二日間身体動かしてばっかだったな。ガタが来なきゃいいが......」

 

後半をぼそぼそ呟いたのを聞き取れずにいると、「とりあえずいいや」と話をぶったぎられた。

 

「一応、もう一度だけ確認しておく。俺はお前を四国へ送り届ける。ついでにこの場所にいる人達も。ここにはもう戻れない。いいな?」

「いいですよ。貴方が私を騙そうとしてるならここまで遠回りなことをする必要もないでしょうし、ここより寒い場所もそうないでしょうし」

 

もう、覚悟は決めた。

 

「っし。じゃあ行こう。俺も早く暖かい場所行きたい」

 

そう言ってくしゃみする彼は、とても周りから神の使いとして認識されてるとは思えなかった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「お待たせしました。これより皆様を四国まで送り届けます...いえ、自分も全力を尽くすので、無事辿り着けるよう、ご協力をお願いします」

「あの、使者様...これで行くのですか?」

「はい」

 

及川という人が聞いてくるが、俺は迷わず返事した。まぁ、神の使いが用意した移動手段がバリバリ現代技術のバス三台だと言うのだから、無理もないだろう。

 

(そりゃ俺だって、テレポート能力とかあったら使いたいよ。絶対そっちのが楽だし)

 

北海道近辺から使えそうなバスを探し、免許を持ってる人に声をかけ、ありったけのガソリンと食料を詰め込んだ大型バス三台。それが、俺が北海道から四国まで人を運ぶ手段として選んだものだった。

 

「皆様を転移させるだけの力は、自分にはありません...ですので、こちらで生活をしながら移動し、自分がその防衛を行うというものです」

「も、もっと安全な手段は」

「......申し訳ありません。残念ながら」

 

(ないって言ってるだろ)

 

『お前は皆を連れてくのに説得しなきゃいけないから、今のうちに寝といてくれ。下準備は全部しておく』

 

そもそも、これの準備も古雪椿が寝ずにやったものだ。お陰で今もう一人は心の中でぐっすり寝ている。

(まぁ、こうして交代してるから一日中起きていける訳だが...)

 

いつ来るか分からない敵から防衛するのは、それこそ寝てる暇がない。しかし、『俺』ならローテーションを組んでいける。

 

「当然、無理についてこいとは言いません。ですが、どうか」

 

 

 

 

 

結局、生き残っていた全員がバスに乗り込むのに、そう時間はかからなかった。二台のバスギリギリに人が乗り、もう一台は食料、燃料の備蓄が入る。まぁこれは後で備蓄が減り、代わりに人が乗り、他の二台と同じ状態になる筈だ。

 

「大丈夫なんですか?」

「何が?」

「これで。まず目立ちますよね?」

「目立つだろうな」

 

まず星屑にはよく見えるだろう。そこは殲滅すればいい。

 

「あと、海来さんが知ってるか知りませんけど、青森まではフェリーが基本ですよ?」

「...」

「?おーい。海来さん」

「あ、ごめん俺か。それに関しても大丈夫。地下トンネルが通れる」

 

恐らく鉄道が走っていたんだろうトンネルは、奴等の住みかになっており、線路もかなりズタズタにされていた。逆に言えば、車が通れるほど線路がボロボロになっているということ。星屑はもう倒した。

 

「フェリーでしか行けないなら、それにバスを突っ込む手段も考えたが...そもそも歩きはダメだ。時間はかかるしここの住民がストレスを受けて尚大人しくしてる未来が見えない」

 

特にあの及川という人物は、かなり限界が近いだろう。さっきも俺が乗る車両はどれか聞いてきて、答えたら一目散に入っていった。言動もなかなか危険な物が多い。本当に女子供は食料の無駄遣いと言って置いてこうとしたし。

 

(まぁ、実際は一号車じゃなくて、一号車の屋根上なんだがな)

 

そもそもバス内にいたんじゃ反応が遅れる。三台守れて俺が持つならこれがいい。

 

「まぁ、気長に行くしかないさ。どうせ俺は起きてるし」

「疲れません?」

「そりゃ疲れる。だがやると決めたからな」

 

この命尽きるまで。とは心の中でも思ってないだろう。だが、全力でやらなきゃ俺がここに来た意味はない。

 

「まずは、目指せ長野だな」

「え、長野なんですか?」

「あぁ。運転手を引き受けてくれた三人にだけは、目的地を長野にするよう言ってる」

「四国じゃないでしたっけ?」

「最終目的地は四国だが、長野の諏訪へ行く。休憩地点としてもいいし、あそこにはお前と同じ存在がいるからな」

 

思い返す、勇者と巫女。

 

「...私と同じように、助けるって言ったんですか」

「あぁ。必ず果たすさ。だからまずは...」

 

屋根の上に立ち上がり、食べていた携帯食を口に押し込む。

 

(15...20か)

 

「雪花、槍構えて周囲の警戒を頼む。あのくらいの数なら一人で終わるから」

「了解です」

「...すいません。停車して、窓の外を見ないで隠れるように注意を促してください。敵です」

『わ、分かりました! 』

 

持っていたトランシーバーで運転手に伝え、俺は翼を展開した。

 

「ここには近づけさせない...」

 

(ユウには緊急時以外連絡するなって言ってある)

 

俺達と意識を繋げるのは平行世界で吸い取った神の力を必要以上に消費してしまう。寂しい思いもあるが、未来にマイナスとなる影響が出る可能性が出来る時以外には連絡を取り合わないと決めていた。

 

(だがそれは、逆にあいつから何も連絡がなければ暴れ放題ってことだ!!)

 

一度地面に降りてからコンクリを蹴り飛ばした俺は、先頭の星屑の頭にメイスを叩き込んだ。

 

「30秒で済ます!!!」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

『そう言えば、私の力ってどうなるんでしょう...ここカムイから力を受け取ってる私が、北海道を離れるのは...』

『大丈夫だと思うぞ。土地神は土地神で繋がってるみたいだし、四国でも北海道や沖縄の勇者が力を振るえていたからな』

 

「んっ...」

 

つい先日話したことが夢に出てきたようで、ちょっと目が覚めた。毛布を取っても肌寒くないのが、北海道を離れたのだと実感する。

 

人が密集している一号車、二号車から離れ、食料とかが詰め込まれている三号車で私は寝ていた。他には運転手さんしかいない。

 

既に北海道から離れて三日が経過した。私の力は使えるまま、移動は順調に進んでいる。

 

最も、地面が荒れてたり高速道路が崩落したりしてて、その分進みは早くないけど。

 

(あの人が上手いことバスを支えたりして道を通してるけど、あの人いなかったら無理だったな)

 

そもそも北海道の外へ出ようとも思わなかっただろうけど、まさか1500km近くの大移動をすることになるとは。

 

(...そう言えば、今も起きてるのかな)

 

『雪花、寝れるうちに寝ておけ。俺?大丈夫。休みは取ってるから』

 

寝てるのを見た覚えがないのにそう言っていたのを思い出して、私は眼鏡を手に取った。

 

(何してるんだろ...)

 

「なんだ、寝れてないのか?」

 

バスから出た瞬間、そんな声をかけられる。屋根上から飛び降りてきた海来さんは、バイザーの位置を整えながら寄ってきた。

 

「いつ寝てるんですか?」

「昼とか夜とか?」

「...まともに答える気がないのは分かりました」

「嘘ではないんだがなぁ......まぁ、警戒を怠るわけにはいかない。深夜は動きを止めてるし奴等に見つかる可能性が低いが、ゼロじゃないしな。それに、遭遇する回数も日を追うごとに増えてる。このペースなら明日か明後日辺りには夜の襲撃もありえるし、諏訪じゃ確実に一戦交えるだろうし」

「...そのバイザー、外さないんですか?」

 

別に話題転換をしたかったわけじゃない。だけど、会話の度に邪魔そうにしてるのにつけてるのは純粋に気になった。

 

「外さない。もう手遅れ感はあるが...ま、気にしてるならいずれ分かるさ。その時は適当に話を合わせてくれ」

「はぐらかされてばっかりな気が」

「言えないこともあるんだよ。これからのことも考えてな」

 

はにかむ彼に、私は何も言えなくなり。

 

「...そうですか」

 

決して冷たい言い方にならないよう答えるだけだった。

 

(...でも、なんでこの人と話してると、どこか安心できるんだろ)

 

 

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