ただ、最近他のゆゆゆ二次創作作者さんと話す機会も増え、モチベは高いです。これだけ話数も書きましたし、更新がない時は是非好きな話を見返して頂ければと思います。
今回は本当に久々のリクエスト。頂いたのは一年以上前。今も見ていただけてることを祈ります!
ちなみに、ゆゆゆい編は今後も続ける予定ですが、全て花結いの章、花紡ぎの章より前の時間軸にする予定です。場所を入れ換えるかは考え中。
「お疲れー...?」
「んー」
あたし達が高校から勇者部の部室に向かい、扉を開けると、異質な光景が広がっていた。
先に向かってた椿がみかんを食べながらパソコンを弄ってるだけなら別に変なことじゃない。ただ、普段部室にある机が端に寄せられて、代わりにこたつが圧倒的存在感を持って置いてあることがおかしかった。
ちなみに、今の季節は春と夏の間くらいだ。
「...それ、どうしたの」
「何故部室にこたつが?」
隣にいた千景と夕海子が聞くと、椿はみかんを一口で食べ終えた。手は次のみかんの皮を剥いている。
「ほら、この前おばあちゃんの依頼で倉を整理しただろ?その後、このこたつを処分したいけど、手続きが分からないからもう一回依頼をしたいって話が来てな。結局俺が大赦とやりとりして処分することにはなったんだが、急な手続きだったから今日だけここに置いといてくれって話になってな」
「それで、有効活用してるってこと?」
「そういうこと。明日には大赦が持ってってくれるって。今日肌寒いし丁度いいなーって」
言いながら手早くみかんの皮を剥き終えた椿は、割いた一つを口に入れて、もう一つをこたつの中に入れた。
「...ん?」
「パソコン作業しながら食べてたら、パソコンが汚れてしまいますわよ」
「ちゃんと毎回拭いてるから。俺だって東郷に怒られたくないし。あ、三人も入るか?他の皆は今日もう部室には来ないみたいだし」
「いやいや。待って椿」
「?」
「そんな不思議そうな顔されても....ねぇ千景?」
「そうね...」
あたしは意を決して、口を開く。
「さっきあんた、こたつにみかん食わせたでしょ。何やってんの」
「みかんの布教を無機物にまでやるなんて...」
「え、そうなんですの?」
「いやお前らあまりにも酷くない?俺そこまで変人じゃないと思うんだが......って、そういうことか」
何かに合点がいったのか、椿へもう一つみかんを摘まんだ。
「見えなかったとはいえ流石にその勘違いは...まぁいいか。正解はこれ」
椿はあたし達と反対側にみかんを降ろし、素早く引き上げる。それに釣られたように出てきたのは、人の手だった。
「「「!?」」」
逃げる椿の手を掴んだこたつの手は、ゆっくりと更にあがる。やがて見えたのは_________
「全く。意地悪なことをする」
「棗!?」
「ん?風、皆も来ていたのか」
「...そういうことね。理解したわ」
「そういうこと」
千景と椿が言い合ってることは、あたしも流石にもう分かった。こたつに入っていたのは椿だけじゃなく棗もいて、椿は棗にみかんをあげてたのだ。
「なんか無駄にビックリしたわ...はぁ」
「俺も驚いたわ。お前だってうどんを無機物にまであげないのに」
「......」
「え、何その沈黙。もしかしてやったこと」
「いやー今日は寒いわねぇ!!!」
「嘘だろお前ッ!?」
騒ぐ椿を無視して、椿から一番離れた反対側に足を入れる。
(幼稚園の時のことだし、時効よ時効)
「風、お前...」
「違うからね棗!?」
そっぽを向いたら、そこから追及はなくなった。
「まぁいいですわ。では私(わたくし)も失礼して」
「やっぱ寒かったか?」
「そうですわね」
棗の反対、椿の右隣に座る夕海子。
「......」
一方で、千景は動かなくなる。
(...あ、そっか)
今四方向から一人ずつこたつに潜っていて、どこに行っても場所が狭くなる。
あたしは少し横にずれて、千景が入るだけのスペースを作ろうとして_____今度はあたしが動きを止めた。
「少し詰めなさい」
「ん」
千景が椿のすぐ隣に座り、こたつに潜り込む。
いや、ただそれだけ。ただそれだけなのだが、それ故あたしは動きを止めた。
(千景がそこに入った!?それに椿もさらっと避けた!? )
千景がらしくないのもあるけど、椿も椿でこの状況なら自分がこたつから出たりしそうなもの。でも、あいつは気にする様子もなくみかんを食べつつパソコンを触り続けて_____
(!!!)
その時、あたしに電流が走った。気づいてしまったのだ。
(椿...神経を全部持ってかれてる!?)
みかんにこたつ、そしてパソコン作業。それらから集中力や判断力を全て吸いとられてるのだ。皆が来てもパソコンを触る手を止めないということは、さっき言ってた通り早めに必要な用事だってことで。
「食べるか作業するか、どちらかにしませんの?」
「男にはどちらもやらねばならぬ時がある。これは今日のうちに作って東郷とひなたと大赦に連絡しておきたいし」
「男かどうか関係ありませんし、明らかにみかんが非効率じゃありませんの」
「非効率だから風からうどんを取れるのか?」
「それは無理だな」
「なにぉう!?」
「そういうことだ」
さらりと流され、あたしはせめてもの抵抗で賛同していた棗を睨む。棗は自分でみかんを剥き出して、口に運んでいた。
「...はぁ、全く。仕方ありませんわね」
諦めたのか、同じようにみかんを剥き出す夕海子。一瞬沈黙が流れて、気力が削がれてしまったあたしも、仕方なくこたつに乗ってるみかんに手を伸ばし________
「口を開けなさい」
「ん」
「んんんっ!?」
あたしは今度こそ完全に硬直した。
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(......)
目の前で行き来する手を見て、私は動けなかった。
『これなら東郷さんに怒られることもないですし、貴方も作業に集中できますわ』
『助かる。あむ』
弥勒さんが古雪君にみかんを食べさせることをただ繰り返す。確かに彼のやりたいことは全部叶うし、パソコンを動かす手も、効率は上がる。
パソコンとみかんに夢中な今ならいけるかもと隣に入ったのはいいけど、まさかこんなことになるとは思わなかった。
(とはいえ...)
古波蔵さんは我関せずでこたつに入ってるし、目の前の犬吠埼さんはにらめっこでもしているのかと思うほどコロコロ表情を変えている。
ただそれも、私が似たような動揺をしているのではないかという不安に繋がっているわけだけど。
「この環境最高」
「もっとこの弥勒を讃えなさい」
「弥勒様最高。素敵、淑女」
「そうでしょうそうでしょう!!」
あまり淑女とは思えない高笑いが響いて、逆に少し落ちついた。
(......どうせ、ここで何をしても古雪君は気にしないし、一人相撲になるだけなんだから)
そう思えば少し気が楽になる。恥ずかしがってたとしても、それはせいぜい目の前の彼女にしか知られない。
なら、こんな珍しい機会は逃すべきじゃない。期間限定でドロップ率の上がってる素材集めをしない理由がない。
「弥勒さん、私がやるわ」
「えっ」
「そこだと私を挟んでになるし、大変でしょう」
「うーん...そうですわね。千景さんがそう言うなら、お任せしますわ」
弥勒さんは、持っていたみかんを自分の口に運び始める。一方で、半自動で開く彼の口。
(......)
「は、はい。あー...」
「あむ」
「ッ」
「んー、美味しい」
すぐに私の手から消えたみかんを食べて、幸せそうな顔でパソコンを打ち続ける古雪君。
(...餌を待つ雛鳥みたいね)
何かと気を使う彼のことだ。普段ならきっとこんなことさせないだろう。何なら目も向けずに食べてるからか、少し指先まで食べられる。
(......)
「ち、千景?」
「ッ!!何でもないわ」
「美味しい。やはりみかんは良い」
「...普段麺類で戦っている風達を見ていると、椿は実は愛媛で生まれたのではないのかと考えてしまうな」
「別にうどんも好きだけどな」
「で、でも椿?食べ過ぎは良くないわよ?あたしにだってうどんを食べ過ぎたら止めるじゃない」
「別に俺は体重増えても気にしないし、これだけ運動して尚太る体質でもないからな」
「うぐっ」
「まぁないならないでいいけど、みかんがあるなら欲しい」
「...あるわよ。はい」
「あむ」
躊躇うことなく私からみかんを食べる古雪君。
(...うん。これは、うん......)
沸き上がってくる未知の感情に動揺しながら、私はみかんをあげ続けた。
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「椿さん?」
「っ!あぁ、ひなたか...」
部室前、扉を開けずに立っていた俺に、廊下から歩いてきたひなたが声をかけてきた。
「昨日はありがとうございました」
「いや、俺がやるって始めた書類だしな。別に気にしなくていい」
「ふふ、分かりました...それで、今は何を?」
「あぁ、うん......」
ひなたの質問に言葉が詰まる。思い出されるのは昨日のこと。
みかんにこたつという最強環境で作業をしていて、途中から同級生メンバーが来ていた。特に気にせず作業を続け、書類が完成して時間にもなったからと一人帰り道に入ってから、ふと足が止まったのだ。
今日の俺、何かとんでもないことをしてなかったか。と。
そこからは酷かった。思い出した途端悶え、即帰宅からの布団の中に入って申し訳なさと恥ずかしさに震え。
『おい、大丈夫か?』
今日一日彼女達の方を見れず、裕翔に心配される始末。だが、部活の時間は来てしまう。
(結局、全員から餌付けされてたし...いやみかんは美味しかったけど)
少なくとも、わがまま言って悪かったと謝らなければ__________
「椿さん?」
「...いや、なんでもない」
「はぁ」
「くっ、えぇい」
意を決して扉を開くと、すぐ目の前に二人がいた。
「!風、千景」
「あら椿」
「遅かったのね」
「あ、あぁ。掃除が長引いて...あの二人とも」
「じゃああたし達依頼に行くから。あ、今日はこたつないから大人しく机で作業するのよ」
「上里さんもいたのね。丁度よかったわ」
「はい。いらっしゃらなかったら現地に行こうと思ってたので、合流できてよかったです」
「そうね。じゃあ古雪君、また」
「お、おう...」
あっという間に曲がり角へ消えた三人に、俺は立ちっぱなしになってしまう。
(...気にしすぎてたの、俺だけ?)
確かに、あっちも気にしてたら高校で会った時に話を振られてもおかしくないわけで、そうなると、俺が一人で悶えてたのも気にしすぎなだけになって。
(......まぁ、あいつら優しいし)
「椿先輩。どうしたんですか?」
「...いや、何でもない」
部室にいた友奈に声をかけられて再起動した俺は、部室に足を踏み入れる。
彼女達が気にしてないのなら、昨日ことは、ドキドキしたことは、俺だけの中に入れとけば良いと思いながら。
「つっきー」
「確保~!」
「ん?」
「昨日のことゆみきちに聞いたんよ」
「離せ園子ズ!!今日俺は部活を休む!!!」
「何故ですの。昨日貴方の口にみかんを運んだだけですのに」
『!?』
「そうだぞ椿。私も」
「弥勒ぅぅっ!!棗ぇっ!!!」
結局、この感情が俺だけの中になることはなかった。
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「お二人とも、昨日椿さんと何かありましたか?」
「何もないわよ」
「えぇ」
「...ふふっ」
『!』
「いえ、お二人とも、耳が真っ赤ですよ」
『!?』
「そもそも私、園子さんから教えて貰ってましたから」
『!?!?』
「あら、噂をすれば...これ、話を聞き出した時の椿さんですって」
『......』
「顔が真っ赤ですね。必死に手で隠そうとして可愛らしい...こちらの方々もお送りしますか?」
『やめてください』
「そうですか...ところで、この写真はいりますか?」
『...ください』
「ふふっ、分かりました」