「......」
銀の声は今度こそ消えた。俺は言われた通り机を漁る。
「いつの間に...」
中には手紙が入っていた。
これに自力で気づいたのかアタシに言われて気づいたのかわからないけど、椿が寝てる夜にせっせとかいた遺書...じゃないな。なんだろう、手紙です。
椿といる日は、生きてた時も意識だけだった時も楽しかった。わくわくして、どきどきして。
でも、さよならは絶対来る。だからアタシはこれを書いてる。なにも言えずに消えたくないから...思いを込めて。
椿は泣いてるかもしれない。というか泣いてて欲しいな~って思うけど。泣いた後は笑顔でいてほしい。
「バカ...もう手紙濡らしてるってーの」
見えなくても聞こえなくても、それでも椿の魂と一緒に、アタシはいるから。
遠い場所にアタシが消えても、思いを伝え続けるから。
大丈夫。アタシも椿も寂しくなんかない。椿が思っていてさえくれれば、アタシはずっと一緒。
「あぁ...ぁぁ」
だから笑顔で、楽しい姿を見せて。恋人とか結婚とかそういった恋愛ごとは戸惑うけど...まぁそういったこともやって?幸せな笑顔を、見たいな。
大好きだよ椿。三ノ輪銀。
「......俺も、大好きだよ」
P.S.(使い方あってるっけ?)...追記!
この机の三つ目の棚、開けてみて。ちょっとしたプレゼントが入ってるから。大切にね!
ここで、手紙は切れていた。
「...なにが......」
開けると入っていたのは赤いミサンガ。
「ホント、いつの間に作ったんだ...」
なんとなく、左手につける。ミサンガはここが定位置だと言わんばかりにしっくりきた。
「...ありがとな。銀」
見ててくれ。これからの俺を、俺達を_______________
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その後、病院の職員にしこたま怒られ、ベッドに拘束された。
皆は先に友奈の元に行ってから来るらしい。
(なんで動くことすら封じられてんだ俺は...)
おまけに後ろ髪も切られた。これは切りたいと思っていたから丁度いいが、既に健康体なのにも関わらず拘束されているのが納得いかない。
(昨日までぼろぼろだったくせに、いきなり町中を走れるようになるんだもんな...銀の置き土産様々だ)
短くなった黒髪を触りながら適当なことを考えていると、ガラッと扉が空いた。
「椿ー!!」
「うわっちょ!?」
いきなり風に抱きしめられ、変な声が出てしまった。
「生きてるのね!?」
「...もうぴんぴんしてる」
「聞いたわよ。病院抜け出したんだって?」
片目を眼帯で覆ってる夏凜は痛々しさが残るが、口元は笑顔だった。
「まぁな」
「古雪先輩...」
続いて入ってきたのは松葉杖で歩く東郷。
「よ、東郷」
「...先輩ですよね?」
「あぁ。残念ながらな」
「......確かに残念ですけど、あれでよかったと思います。私の所へ来てくれて...もう一度会わせてくれて、ありがとうございます」
「礼ならあいつにいいな。どっかで見てるだろうから」
「なにこの怪しげなムード...」
「あの、椿さん」
「!!!」
最後に入ってきた樹は、もうスケッチブックを持っていなかった。
「樹、声が!」
「はい。少しずつですが...戻ってます」
「よかったな...これは歌姫樹の誕生も近い...」
「そうよ!!オーディション二次も受けれるようになったんだから!!」
「二人とも、病院ですよ」
東郷に注意されて静かにする。樹本人は気まずそうにしながら、それでも嬉しそうだった。
「...それで、風さんや」
「なに?」
「いや...いつまで抱きついてるんですかね。みんな見てるし、そろそろ意識しちゃうんでやめてほしいんですけど」
「!!」
あわてて離れて顔を真っ赤に染める風。
(無意識かよ......)
「お姉ちゃんは椿さんが無事で嬉しいんですよ」
「それはありがたいけどさ...気まずいから。マジで」
「嬉しそうな顔してるわよ?」
「夏凜さんからかわないでくださいよ」
この空間にいると、平和な世界のため戦ってよかったなと感じる。
だが、まだ。
「......友奈は?」
『...』
俺の質問に、全員が黙りこんだ。
「...まだ、意識は回復しません」
「俺も会わせてくれ」
友奈の病室は二つ隣だった。
「......」
入ってから何も言えない。魂だけがぽろっと抜けた様な顔を友奈がしているのは、信じられなかった。
「友奈...」
「ちきしょう...」
「私は...一番大切な友達を犠牲に...私が」
「言うな!」
「っ!」
「言うな...誰も悪くないって、話し合ったでしょ」
全員顔が暗い。
「友奈...早く戻ってこい。皆待ってるから」
俺はそれだけ言って、自分で来たいと言っておきながら皆を横切って部屋を出た。
あの虚ろな顔を見続けていたら、泣いてしまいそうだから。
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あれから数日。俺も退院し、文化祭も目前に迫っていた。
風、夏凜の眼帯はとれ、東郷は松葉杖二本だったのが一本に、樹はカラオケで熱唱できるほどになった。変わって、友奈は戻ってこないまま。
文化祭で予定している劇の衣装は完成。主役である友奈の回復を信じて待つ。
樹が友奈に送る押し花は七本になった。それぞれの勇者服に施された花で作ったらしく、俺の花が牡丹と椿の二つであることをはじめて知った。
花言葉は、牡丹が高貴、椿が誇りなんだとか。
全員が友奈の復帰を願う中、俺はお見舞いに行ったり、別の場所を訪ねたり、演劇の準備に邁進したり。そうして日数が過ぎて__________
『友奈ちゃんの意識が戻りました!!!』
東郷のメールで、勇者部の扉を蹴飛ばして出ていった。後日請求が来たが、最初に「邪魔ねこれ!!」と言ったのは風なので半分にしてほしかった。
「皆ありがとう。私を待っていてくれて...ただいま!」
彼女はやっぱり笑顔が似合っていた。
味覚も足もめきめき調子を戻した友奈、それに釣られて走り出した東郷。笑う樹、突っ込む夏凜、まとめる風、皆を見つめる俺。
そして今。
「世界は嫌なことだらけだろう!辛いことだらけだろう!!お前も堕落してしまえ!」
「嫌だ!!」
文化祭にて、主演友奈(勇者)と、脚本風(魔王)による劇は、クライマックスを迎えていた。
「あがくな!現実の冷たさに凍えろ!」
「そんなの気の持ちようだ!」
「なに!?」
根性論だが、友奈と風の演技で観客は魅了され、何より俺も、そんな脚本も演技も大好きだった。
「互いに思えば強くなれる。無限に力がわいてくる!世界にはどうしようもなく悲しいことも、嫌なことも、自分だけじゃどうにもならないこともある!!」
部活で作った剣を友奈が構え直す。
「だけど、大好きな人がいれば挫けるわけがない!諦めるわけがない!!」
その顔は、どこまでも真剣で、どこまでもまっすぐで。
「大好きな人がいるのだから!何度でも立ち上がる!!」
「...頑張れ」
「だから、勇者は絶対負けないんだ!!!」
勇者の一撃に倒れる魔王。
しかし、友奈の限界もそこまでだった。
「っ!!」
観客に見えようがお構いなしで舞台に出て、滑り込みで友奈を支える。
「椿先輩...」
「無茶しすぎだ。病み上がり」
「えへへ...ありがとうございます」
「友奈ちゃん!」
「友奈!!」
舞台袖にいた皆も我を忘れて出てくる。魔王風もやられたくせに飛び起きた。
「友奈さん!」
「友奈!」
「...ごめん、ちょっと立ちくらみ」
えへへと笑う友奈に安心すると、観客席から拍手が聞こえてきた。
「すごかった!」
「よかったわー!」
「勇者ー!」
大成功の証を目の当たりにして、友奈と東郷が抱き合う。
(なんだって乗り越えられる)
後日。俺は机に新たな写真を飾った。元からあった一枚は小さい頃銀と撮った写真。もう一枚は、演劇が終了した後、勇者部で撮った写真。
(皆がいれば、きっと_______________)
今日も俺は穏やかな日常を過ごす。幼なじみだった彼女と共に。
書き始めて約一ヶ月。ゆゆゆ一期にあたる部分はこれで終了です。長かったような短かったような。
さて、続編に関してですが、ひとまず小話を何話か書きたいなと考えています。そのっちそのっち。
二期、勇者の章を書くかは現在未定です。幸い皆様からの感想も嬉しいものなので、出来れば...とは考えています。
感想、評価は物凄く励みになりました。ゆゆゆファンの方と話せるの嬉しい。この作品も好きだと言ってくださる方もいて何度も電車内だったり自分の部屋だったりでにやけそうになりました。というかにやけてたと思う。うん。
本編と関係ない長文失礼しました。これからも感想や評価くださると嬉しいです!またよろしくお願いします!