古雪椿は勇者である   作:メレク

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お待たせしました。なんと今年5話目だそうです。

嘘だろ...?


ゆゆゆい編 86話

「なぁー頼む!」

「いや、いいけど...それ俺が行く意味あんの?」

「こういうのは3on3がいいんだってネットにあった!」

「お前はバスケ部か。別に2on2でも...いやそれはあれか。もう呼んでるなら確かに...」

 

昼休み。あたしが飲み物を買って教室に戻って来た時、隣の机ではこんなやり取りをしていた。

 

「何の話?」

「あぁ風か、いや、なんか裕翔が」

「今度椿混ぜてバスケしようぜって話!!」

「うるさっ」

「へー...椿がバスケ」

 

前にあった云々を思い出し、恥ずかしかった部分も思い出しそうになったのを抑え、あたしは前を向いた。

 

「また出るの?」

「いや、そもそも...まぁ、部活、とかじゃなくて普通に遊ぶだけ」

「なんか歯切れ悪くない?」

「いや、予定を確認しながらだったから。ごめん」

「ふーん...」

 

違和感を持ちながら、さっきの思い出の椿がちらつく。別に滅茶苦茶上手いというわけではないけど、いや、だからこそかもしれないが、一生懸命なのだ。態度も顔も。

 

「...あ、そしたら応援しようかしら、チアの服着て。こう見えてもあたしは」

「もういいです」

「ちぇっ」

「ま、詳細はまだ決まってないから、今度な」

「はーい。あ、次の授業の準備しなきゃ」

 

ロッカーまで教科書等を取りに行くため、飲み物を置き、二人に手を振って教室を出る。

 

だから、その後の話をあたしが聞くことはなかった。

 

 

 

 

 

「...で、嫌そうだったから話は合わせたけど、本当に俺いるの?」

「いるって!少なくとも今理由の一つが見えたって!」

「はぁ?」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

休日、俺はとあるカフェの前に来ていた。ネットでメニューを調べてもおしゃれな食べ物が多く、密かに楽しみにしている。

 

(主目的がこれなら、何も文句はないんだが...)

 

「あの...古雪椿さんですか?」

「?はい。そうですけど」

「あ、よかった。貰っていた写真に写っていたお顔だったので」

「...あぁ、ということは、今日の」

「はい。よろしくお願いします」

 

女の子、といっても、勇者部ではなく、なんなら会ったこともない。何故俺がそれを平然と受け入れられているかと言えば、今日の主目的がこれだからだった。

 

(これを依頼として受けるのはなぁ...)

 

『合コン?』

『そう!相手が内にいないなら外に!ってことで、中学の友達経由で誘ったんだ。そしたらなんとOKが出て!』

『ふーん。行ってら』

『そこでなんだが!椿も来て欲しいんだよ!』

『俺?何で。別に彼女も欲しいとはそこまで』

『女子受けが良いかつ女子に困ってなくて取りそうにないお前が最適だろう!!』

『今名誉毀損受けた?』

『ついでに手解きをしてくれ!!』

『...』

『なぁー頼む!』

『いや、いいけど__________』

 

あまりにも真剣な目をしている裕翔と、他校の生徒とのセッティングの面倒さを勇者部の活動で理解している俺が、毅然とした態度で断れるかと言われると、そうではなく。

 

結局、三人ずつ来ると言う合コン(というか食事会?)が決まり、その一人に俺が参加することになった。

 

(まぁこれが合コンなのかと言われれば、定義上は合ってそうだし、食事代はあいつから事前に貰ったし、別にいいんだけど...)

 

「早かったですね」

「それを言うなら古雪さんだって。どうしてこんなに早く?」

 

『つっきーいっつも早いから伝える時間ごとずらしました!』

『すみません。そのっちと銀が...』

 

「...癖ですかね」

「く、癖?」

「本来の集合時間より遅い時間を言われたりする時もあるので」

「えぇ...?」

 

戸惑った様子の彼女にハッとして謝る。今日のメンバー的に、裕翔辺りがいつもそんなことをしてきていると捉えられかねない。あいつを立てるために来たのに、いきなり下げてどうするのか。

 

「あまり気にしないでください。個人的な性格もあるので...ところで、そちらは?」

「えっと、私は先に本屋さんへ行ったんですけど、思ったより買い物が早く終わって」

「なら丁度良かったです。一人で待つのは退屈ですもんね。あ、でも本読むつもりだったら」

「だ、大丈夫ですよ」

「なら良かった。ちなみにどんな本を?」

「えっと...」

 

見せてくれたのは、とある恋愛小説だった。俺はそれをよく知っている。

 

「これだったんですね」

「え、知ってるんですか!?」

 

『椿さん!!これすっごくオススメです!是非!!』

『お、おう...杏の目がそこまで輝くのか。楽しみにしとく』

 

「はい。友人が貸してくれて」

「結構しっかりした恋愛小説ですけど...」

「それは確かに。自分だけだったら趣味としてはなかったでしょうね」

「ほ、他にはどんな本を?」

「えっと、そうだな...」

「おーい椿ー!」

「ん?あぁ。来たのか」

 

声のした方を見れば、裕翔が手を振って来ていた。隣にいる男子は恐らく今日のメンバーだろう。中学時代に見覚えがある。

 

「助っ人って古雪だったのか...おい倉橋、大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫。事前に話はしてるから」

 

(せめて聞こえないようにしてくれっかなー)

 

「おーい!」

「あ、二人とも」

「...そっちも揃ったなら、取り敢えずお店に入りましょうか。さっきの話もまた後で」

「分かりました」

 

話を流して店内へ入ろうとした時、裕翔が俺を小突く。

 

「なんでいきなり良い空気になってんだよ」

「そうか?まぁそうだったとしたら、早めに来なかったお前が悪い」

「うぐ...」

「ほら、店入るぞ。ちゃんフォローしてやるから」

 

何をもってフォローとなるのか、具体的なプラン等一つもない俺は、それでも店へ入って行った。

 

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「さて。これで大体揃ったわね。後は...」

「お姉ちゃん。チアガールの衣装は買わないからね」

「うぐっ...はぃ」

 

樹に言われ、あたしは肩を落とした。椿が今度試合をする話をして、姉の希望を聞けばそうもなるだろう。

 

「でも、お弁当はいるかな?」

「さぁね。人数とかも聞いてないから、勇者部総出で行くと一人だけギャラリーが凄いことになりそう...いや、3on3って言ってたかな」

「どっちみち椿さん困っちゃうよ」

「それはそうね。ということで、樹にしか言ってないからくれぐれも注意して...樹?」

 

隣を歩いていた樹が、足を止めてどこか遠くを眺めている。あたしもその視線の先を追って_________開いた口が塞がらなくなった。

 

そこには、見たことない女の子と、椿。

 

(え、勇者部ですらない?今日休みだし誰も依頼は受けてなかったはず...え、ていうか本当誰?)

 

「お姉ちゃん」

「...そうね。依頼なら手を貸さなきゃいけないし。行きましょうか」

 

どちらも長く喋ることはなく。けれど足だけは素早く。着いた先で見たのは、さっきの二人と、新しく来た四人。男子は見知った顔だったけど、逆に女子は一切分からない。

 

「お姉ちゃん、あの男の人は見たことあるけど、他の人は知ってる?クラスの人?」

「いや、全然...どういう集まりなの?」

 

こっちが戸惑っている間に、全員が揃ったのか目の前のお店に入る椿達。

 

「......」

「......」

 

店内に入る足が一切止まらなかったのは、二人ともだった。

 

「あれ、風先輩?」

「うえっ!?」

 

尾行中にかけられた声で驚くも、慌てて口を塞ぐ。

 

「樹ちゃんも」

「ゆ、友奈さん。それに...」

「こんにちは。二人とも」

「東郷、あんたも」

「どうかされました?お二人とも足早に...」

「んっ」

 

見て貰った方が早いと判断し、さっきの場所を指差す。

 

「......」

「どうしたの東郷さ...あ、椿せんむごっ」

「友奈ステイ!ステイ!」

「むごむご」

「あはは...事情は何も知らないんですが、逆に何をするのか気になって」

「確かに、今日は勇者部の依頼は全員ないはず...とりあえず行きましょうか」

「えぇ。尾行開始よ」

 

あたしの発言に誰一人文句は言わず、角の席に座ることができた。ここから椿の姿は見えないけど、相手からもそうだ。

 

「とりあえずで好きなの頼むでいい?」

「うん」

「分かりました」

「私パフェも食べたいです!」

「おう、食え食え」

「お姉ちゃん、友奈さん...」

「っと、そうね。聞き耳聞き耳」

 

少しずつあたし達は静かになる。今一事態を理解してなさそうだった友奈も、何かに気づいたのか、あたし達の態度に思うことがあったのか、静かになった。

 

本当はもう少し詳しい説明をしたいけど、今優先するのは椿の話だ。

 

(...いつからあたし、こんなに)

 

『古雪椿です。讃州高校一年で、中学はこっちの二人と同じでした』

『えー、何で敬語なの?』

『あぁ、これは癖っていうか...初めて話す人は大体年上だから、最初は敬語、みたいなのがな』

『年上の人と話すことが多いの?』

『そうだな。勇者部...ざっくり言うとボランティアをやろうって部活に入ってるから』

『え~すごー!』

 

「...学校の方でもないようですね。それに初対面」

「そうね...そうすると、単純に友達付き合い?」

「わ、悪いことしちゃったかな...」

 

『ねね、良い人じゃん!お店に入る前にも良い雰囲気だったし!』

『えっ!わ、私は...』

 

「......」

「...」

 

今度こそ、あたし達は無言になった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「ねね、良い人じゃん!お店に入る前にも良い雰囲気だったし!」

「えっ!わ、私は...」

「まぁさっき話した部活はホームページもあるから、よければ調べてみてくれ」

 

思ったより興味を持って貰えたが、宣伝をそこそこに次に繋げようとする。

 

「でも、パソコンも詳しいんですね...ホームページも作ってるなんて」

「あ、いや、俺もできなくはないけど、別の人がやってるよ。一生懸命勉強してたから」

 

東郷があれだけのスキルを身に付けたのは、明らかに友奈のためだったし。

 

「へー...」

「ほら、さっさと自己紹介しろよ。いつまで俺の話してるんだ」

「お、おう。んんっ、改めまして倉橋裕翔です!今日は来てくれてありがとう!」

 

スムーズに自己紹介が済んで、お互いの学校の話になってくる。

 

俺が考えてきた基本方針は、とりあえず自分の話題をなるべく流して、他のメンバーの時間を増やすことだ。

 

今回の目的がサポートである、というかそうした依頼だと考えれば、俺がするべきは会話をなるべく弾ませること。

 

呼ばれた女子はここにいる時点で興味があるということだ。だから、そこまで深いことを考える必要はない。と思う。

 

そして、こうなった_________

 

「最近ゲーセンにある音ゲーにハマってて」

「えー、他には他には?」

「他、えっと...」

「近くにあるゲーセンだと、プリクラが大型リニューアルしたって聞いたな」

「え、そうなの!?」

「詳しくは分からないから、今度一緒に行ってみるといいんじゃないか?」

「そ、そうだな!」

 

今度行こうと言われていたゲーセンを勧めて。

 

「弟達が、もうすぐ誕生日なんだ」

「プレゼントか...うーん」

「近くだとこのお店、ちょっと遠出してもいいならここのおもちゃ屋さんは品揃え良くて見せに行くだけでも楽しいと思う」

「そうなんだ。詳しいね」

「弟がいるからな。俺も。よく相談しながら選んだから」

 

答えに詰まっていそうだったから、以前行ったお店を紹介して。

 

「本を読む場所、かぁ...」

「図書室とかは?静かじゃん」

「そ、そこはもうよく行く場所で...」

「んー...変わった場所がいいなら、キャンプ場とかかな。場所を選べば静かだし、意外と屋外で読むのも悪くないよ」

「詳しいねー?」

「たまに行くから」

 

球子と行ったキャンプの話をして。

 

 

 

 

 

「完璧とはいかなくても、そこそこ良いフォローをしたと思っているが」

「...ソウッスネ」

「何でカタコトなんだよ」

「いや、そうだよなぁ...善意だよなぁ。分かってはいるけどさぁ」

「?」

 

全員からお金を受け取り、レジの会計を請け負う。他の人には先に外へ促したが、裕翔だけが隣に残ってぶつくさ言ってきた。

 

「そりゃお前の方が話のレパートリーは多いし普段女子と喋ってるんだから回せるよな...」

「別に、運動とか勉強の話とかはしてたじゃん。その時俺紅茶飲んでたし」

「普通の高校生は紅茶の銘柄なんて当てられんのよ」

「それは、まぁ確かに...『紅茶の道を極めますわ!』ってやってる人間はそういないのは認めるけど」

「まぁ、確かに俺のお願いを聞いてくれたし、これでお前を攻めるのは違うってのは分かってるけど...」

「望み通りにできてなかったなら、次どうするべきか纏めて貰うか、呼ばないことだな。というか、俺の所じゃなくて先に出ろよ。本末転倒だろ」

「作戦会議は大事でしょうが」

「はぁ...」

 

レジを済ませ、外へ歩きだす。忘れ物はないだろう。

 

「じゃあこの後はどうすればいい?ゲーセン行きそうな雰囲気だったけど、先に帰ろうか?」

「これで帰れなんて言えるわけないじゃん。帰れるもんでもないし」

「一人だけ帰りますは感じ悪いか。何かきっかけがあれば出るけど...」

「流石の椿も難しいだろうな!」

「そりゃな」

 

その会話を最後に、お店の扉を開いた。既に四人が待っている。

 

「あ、ありがと~!」

「さて、さっきの話に出てたゲーセンか、近くのカラオケだったっけ?決まったか?」

「えっと、二人の意見はどうですか?」

「俺はどっちでも楽しめるから!!」

「そうだな。俺は......」

 

さっきの会話からして、俺はどうやら依頼を完遂できたとは言いにくいようだ。であれば、女子三人に男子二人となった方が良いだろう。

 

(とはいえ、ここから帰る理由をそう簡単に......)

 

________その時、視界の端に三つ編みが揺れた。

 

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「全く、椿が会計やってるからなかなかレジに行けなかった...確かによくやってるけど」

 

全員分のお会計を済ませて、鉢合わせないようにすっと外へ出る。樹達は既にお店の外に出てるから、椿達はもうどこかへ移動を始めたんだろう。

 

(ただの他校との交流だったっぽいけど...)

 

結局、ただ座ってお喋りをするだけなことは少ないけれど、あのくらいなら勇者部でやったこともある。そうした会話が繰り広げられていた。

 

『高校との交流も、風先輩達が高校生になってからはそれなりに増えましたからね...でも、この四人に古雪先輩がいないと、今でも少し違和感を覚えてしまいます』

『人数はすっごく増えたけど、勇者になる前からいたメンバーだもんね』

『私は環境が変わったばかりで...緊張しっぱなしでした』

『そうねぇ...まぁ、本当はもう一人いたわけだけど』

 

昔の話に花を咲かせながら聞き入っていたのは、恐らくあたし達全員が気にしていたことでもなかった。という結論になる。

 

(まぁいっか。友奈達と普通に楽しんだわけだし)

 

「待たせたわねー。どう?」

 

あたしの声かけに、反応する人はいない。目の前に四人いるのに。

 

「ん?おーい」

『......』

「どうしたー?」

「っ!風先輩...」

「え、何?椿が何かやった?」

 

どうやら一番大切な場面を見逃したらしい。放心状態から抜けた東郷が口を開く。

 

「い、いえ...古雪先輩は何もしていないと言いますか、もう皆さんと別れて帰られたんですが」

「うん。あれ?もう帰ったの」

「そ、その、あまりにもスムーズに帰られて________」

 

どうやらあたしは、本当に見逃したらしい。

 

『全員でも行くべきだった...』

「えぇ...?」

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「アイスうまー!」

 

「そりゃよかった。あいつらの分も買ったし、後で届けに行こう」

 

「そだね。あいつらもきっと喜ぶよ」

 

「そうだなぁ...にしても助かった」

 

「気にしなさんな。アタシと椿の仲だろ?でも、確かに見慣れない人達だったけど、よかったの?」

 

「呼ばれはしたが、お役御免になったみたいでさ。だったら帰ってプラモでも作るかなって思ってたけど、いい感じの言い訳が思い付かなくて」

 

「持つべきは買い物帰りの幼馴染みか」

 

「正解ではある。アドリブ完璧だったぜ。銀」

 

「そりゃよかった」

 

「これ、お前の家まででいいのか?」

 

「うん。よろしく」

 

「了解」

 

「そういえば、連れられた流れで普通に歩いて来たけどさ」

 

「あぁ」

 

「友奈達に何も言わなくてよかったの?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「友奈達?いなかったろ?」

 

「え、同じ店にいたじゃん」

 

「そうだったのか?全然気づかなかった」

 

「あれぇ??」

 

「?」

 

「......まぁ、いいや」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「無理じゃん...!!」

 

「まーうん。そだねー」

 

「た、たまたまじゃない?」

 

「いや絶対無理じゃん!!男子ウケ良さそうな清楚な感じで行ったけど、狙った相手が合コン来といて女子に興味無さそうな上に、もう同棲してそうな二人分の買い物袋持った彼女いたらさぁ!」

 

「流石に見方尖りすぎてない?」

 

「小説もパソコンも詳しくてキャンプもプリクラも行ってるんでしょ!?守備範囲広すぎでしょあの子!!面倒見も良さそうだし!!」

 

「あー、ドンマイ?」

 

「私の計画がぁー!!」

 

 

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