古雪椿は勇者である   作:メレク

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ぐんちゃんハピバ!(挨拶)

短編作ろうとしたけどゆゆゆいは作ると歯止め効かなくなりそうだしアイデア出ないして止めました。すまぬ...

あと、昨日投稿してからゆゆゆラジオでタカヒロさんの初期の話を聞いたり、頂いた感想での考察だったりで自分が考えさせられることの方が多く、こうして人型バーテックスを出した偶然に喜びと緊張が走ってます。

まぁ、自分が出来るのは一生懸命書くことだけなので。これからも読んで頂ければ。勇者部の皆を可愛くかっこよく魂込めて書くぜ。

下から本編です。


四十三話 黒の銀

「ん...」

「!みんな!!目を覚ましたよ!!」

 

目を開けると、皆がぼんやり映った。

 

(私、あれ...)

 

「わっしー!」

「そのっち、みんな...」

 

私は確か、奉火祭の儀を_________

 

「助けて、くれたの?でもこのままじゃ世界が」

「事情は聞いたわ。火の勢いはもう安定して、生け贄がいらないんだって 」

「そんな...まさか」

「あんたがタフで、普通の人なら死ぬくらい生命力を取られたんだって。それでお役目を果たしたのよきっと。で、そこに私達が間に合ったみたい」

「結局大赦がらみだったし...」

「まぁまぁ」

 

そんな都合の良い話、あるのだろうか。

 

「本当に、助かったの?」

「そうよ、セーフ!」

「お勤めご苦労様。まぁまだ病院でしょうけど」

「東郷さんごめんね。私忘れないって約束したのに、何日か忘れちゃって...」

「......それでも、みんな思い出してくれたのね」

 

友奈ちゃん、そのっち、夏凜ちゃん、風先輩、樹ちゃん______

 

「...ねぇ、古雪先輩は?」

 

その言葉に、返事はなかった。きょとんとはしてないから私のように記憶がないわけじゃない。

 

「古雪先輩はどこ。みんな...まさか私の代わりに!」

「そうじゃない!!」

「...今は集中治療室だよ」

「そんな...」

 

そのっちが、口を開いてくれた。

 

「腹をばっさりやられてるんだって」

「...バーテックスが?」

「うん。そうだと思うんだけど...」

「?」

「...そいつ、新種の人型だったのよ。黒いもやみたいなのがかかってる」

「...それに、そいつのことを『銀』だって」

「!!」

 

私達の知る銀なんて一人しかいない。

 

「ともかく、椿が復活しないとね......」

「...生きてるよね?椿さん」

「死ぬわけないでしょ!」

「......ともかく、待ってよう。今の私達にはそれしかできないから」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「...ぁー」

 

ぼんやりと体と意識が戻ってくる。ここ半年でよく経験したことだ。

 

「夜に目覚めてくれて、ありがたいです」

「...驚きはしないぞ」

 

月明かりの中、俺には酸素マスクやらケーブルやらで今までで一番厳重にされていた。

 

そして、イスに座っていたのは三好春信。

 

「とてもファミレスで待ってられなさそうな怪我なので」

「東郷は?みんなは無事か?」

「全員生きてますよ。君が起きないせいで悲しんでましたけど」

「...そんなに寝てたのか?」

「三日ほど」

「最長だー...でもあんたじゃない方が嬉しかったな」

「深夜に起きた自分を呪ってください。夕方は皆さんが来てますよ」

「へー」

 

隣に置いてあった差し入れだろうみかんジュースで喉を潤すため、酸素マスクを外した。体は痛いけど呼吸は問題なく出来てる。

 

「...今回のこと。知ってたんだろ?」

「勿論」

「なぜ言わなかった。あそこでは三好春信本人なんだろ?隠す必要のある大赦じゃなくて」

「それが東郷美森の希望だったからですよ」

 

生け贄を捧げて天の神の怒りを静める奉火祭。本来の生け贄だった巫女の代わりを勤めた東郷。淡々と話される言葉に俺は黙るしかない。

 

「記憶の消去、もし話したら東郷美森の世界を救う行為を許さないから」

「...でも、俺達が思い出すと踏んでいたわけだ」

「まぁ、はい」

 

前回ファミレスで会ったときの言葉はそういうこと。

 

「...んで、まさかその説明をするためだけにここにいるわけじゃないんでしょ?」

「......君が壁の外で勇者システムを解いたと聞いたものですから。事情を聞きに」

 

ここからだ。大赦の関係者に秘密を話す。どうなるかは俺とこの人次第。

 

(でも...もう一度、会わなきゃならないから)

 

起きたばかりの頭を一気にトップギアまであげる。

 

「全部話してもいい。でも一つ頼みを聞いてくれ」

「頼み?」

「レイルクスの全面改修、それから......戦衣(いくさぎぬ)を一着、用意して欲しい。もう一度会わなきゃならないやつがいる」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

壁で対峙した人型バーテックスに、俺は動揺を隠せなかった。

 

「......お前らが、あいつの真似をするのか。ふざけるなぁぁぁ!!!」

 

似たような武器を打ち付け、衝撃が手を走る。

 

「...っ!」

 

戦えば戦うほど、斧をぶつければぶつけるほど、相手の挙動と、かつての俺の挙動が似ていることが理解できた。

 

「この動き...やっぱり銀の!!」

 

許せるわけがない。こんなバーテックスの愚行を切り捨てる必要がある。

 

(風との約束通り生きなきゃいけないしな...手段は選ばない!)

 

「一気にかたをつける!!まん」

 

か、まで言ったところで、勇者服が消えた。

 

「い...!!」

 

さっきまで着ていた私服になっていて、燃える世界の温度が異常なほどに感じられて声も出しにくくなる。

 

(熱い熱い熱い!!)

 

そして、目の前の敵がそれを見逃す筈がなかった。

 

「...がはっ」

 

一閃、腹を切られてうずくまる。咄嗟に抑えた手を見ると、深紅に染まっていた。

 

(...やば、痛くなくなった)

 

一瞬で痛覚が消え去り、視界がぼやける。

 

黒い敵は持っているように見える武器を降り下ろす。

 

(やくそく、まもれそうにないや)

 

見ているのが嫌で目を閉じてしばらく、衝撃がこなかった。

 

(......あれ?死ぬのってこんな感じなのか?)

 

目を開くと、相変わらずの灼熱世界。敵も目の前にいる。

 

だが、その黒いもやが______斧とわかるくらいはっきりした位置で、止められていた。

 

ぼんやりした視界が捉えたのはそれと、赤い服、そして______

 

(ぎ、ん?)

 

次には蹴り飛ばされていて、足を振り上げたシルエットだけが映った。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「こっから先は、俺の予想...というより妄想だ」

 

月を眺めながら、淡々と自分の考えを述べる。

 

「俺が勇者になれていたのは先代勇者、銀の『魂』があったから。以前の満開の供物としてこれは取られなかったから勇者になれた」

「...」

「だが今回、あの人型バーテックスは俺と戦うことで残っていた『魂』を取った。だから変身が強制解除された」

 

勇者アプリを押しても変身は全く起きない。

 

「だが、『魂』を取られたタイミングでの攻撃は腹を切るも浅く、最後は武器を降り下ろさなかった。それは、銀の意識がバーテックスと葛藤して止めてくれたんじゃないかと考えてる。そうでなきゃ加減をする必要なんかどこにもない」

 

そして、もし銀の『魂』がうつったのがあの瞬間なら、

 

「だとすると、人型が初めから銀の動きをしていたのは、今こっちにもいない銀の『魂以外』全てを取り込んでいるから...」

 

元の満開は神樹様から力を授かり、代償として供物を捧げるシステム。供物として取り上げられた物は、神の一部と捉えられてもおかしくはない。例えば__________『魂』以外、『記憶』とか『精神』とか。別のものとして捉えられるのかは怪しいが、説明づけるならこれが確かだろう。

 

加えて、家族から銀の遺骨は大赦に保管されていると聞いた。それも神樹様への捧げものだとすれば、その『身体』すら。

 

理解の範疇なんてとうに越えている。それでも予想は立てられるはず______願望を多分に混ぜた声が漏れる。

 

「地の神の力で作り上げた勇者システムを天の神が恐れ、それを模倣するため神が干渉しやすい散華の一部、銀を取り込んだ...そして、自分の使い魔たるバーテックスへ落とし込み、俺と戦わせることでその全てを奪い取った。だが銀の占める部分が強くなったせいで、俺は殺せなかった...こんなところだ」

「妄想も甚だしいですね」

 

俺の話を、春信さんは一蹴した。

 

「...だよな」

「君が二重人格じみてたというか、かつての勇者と一緒だったということも驚きですけど、この際そこは置いといて...それでもやるんですね?」

「当たり前だ。バーテックスなら倒さなきゃならない。銀なら助けなきゃならない」

 

そう。願望を混ぜて話したのはこう思えるから__________銀を、助けられるんじゃないかって。

 

迷うことなんて何もない。

 

「戦衣は適性のレベルは低くても良いぶん勇者に比べれば格下の装備。勇者の状態で互角なら間違いなく死にますよ」

「それでもやらなきゃならない。あいつを助けられる可能性が一つでもあって、それを逃すことなんか出来るわけがない」

 

春信さんの目を見つめる。やがて彼の方から目を離した。

 

「はぁ...戦衣の用意、及びレイルクスの強化は恐らく出来ます。一日くらい時間があれば...」

「本当か!?」

「友人である夏凜の兄としても、大赦の人間としても死なれては困るので最大限の援助はします」

「助かる!!」

「じゃあもう準備に入りますね」

 

病院を出ていく春信さんに、俺は頭を下げた。

 

「お願いします」

「こういうときだけしっかり敬語になるの、その時だけ感謝してる子供っぽくて嫌いです」

 

ピシャリと扉が閉められた。

 

「......」

「あ、お代は夏凜の写真百枚で! 」

「そういうところで尊敬できれば俺だってずっと敬語になるんだがな!!」

 

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